2015年6月30日火曜日

削減などで空いた病床に「院内施設を」

日本慢性期医療協会(日慢協)の武久洋三会長と池端幸彦副会長は6月29日、日本慢性期医療協会の定例記者会見で、地域医療構想策定ガイドライン(GL)の方向性などに関する見解を発表しました。武久会長は地域医療構想策定ガイドラインで示された方向性に従い、病床削減が進む可能性がある点について、消極的ながらも受け入れる姿勢を示す一方、削減で空いたベッドなどについては「一時的にでも『院内施設』として利用できる、新たな類型を設けるべき」と述べられました。また7月に開催される「療養病床の在り方等に関する検討会」について池端副会長は、看護配置が25対1の病床や介護療養型医療施設の在り方が、主な議題になるとしました。






地域医療構想策定ガイドラインでは、療養病床の入院受療率の地域格差を是正する方針が打ち出されており、その結果として、病床削減が進む可能性も指摘されています。この方向性について武久会長は、人口減少が続く中では「消極的に賛成せざるを得ない」とする姿勢を示しました。
ただ、療養病床以外では受け入れが難しい人々や、地域に“受け皿”となる施設や在宅サービスがない人々がいるのも事実とし、そういう人を受け入れるため、削減の結果、空いた病床や病棟を介護保険の施設として活用できるよう、新たな類型を一時的に設けるべきと述べられました。また、療養病床の介護施設や在宅の医療施設への転換を進めるため、奨励金制度を設置する案も示しました。
池端副会長は、厚生労働省が7月から「療養病床の在り方等に関する検討会」を開催する方針を示している点について、療養病床の在り方等に関する検討会で主な議題となるのは、看護師配置が25対1の病床や介護療養型医療施設であるとする見解を示しました。
 このうち、25対1の病床については、どんな施設などに転換を進めるかといったことが議題になると予測しています。その上で、病院内の空床を介護保険の施設として認める工夫も検討すべきとしました。介護療養型医療施設については「病院として残すか、施設として残すかが議論になると思われる」と述べられました。さらに池端副会長は、検討会の議論は、確かなデータに基づいて行うべきと改めて主張されました。具体的には、データ提出加算を算定している療養病床や地域包括ケア病棟入院料を算定した療養病床などのデータを公表した上で、そうしたデータに基づき議論を進められるべきだと訴えられました。
この日の記者会見では、リハビリ提供体制の抜本改革に向けた日慢協の考え方も示されました。考え方では、基本報酬については、出来高から包括に全面転換すべきとしているほか、疾患別リハビリの廃止、算定日数制限の撤廃、9時―5時リハビリから24時間リハビリへ、嚥下障害リハビリ、膀胱直腸障害リハビリの優先といった内容が盛り込まれています。

病床削減が進む中で、地域の生活を守っていくためには、医療と介護の連携が必要不可欠となり、その垣根というのはますます低くなっていくことでしょう。ただ、これまで別のフィールドとして提供してきた医療と介護の融合は容易ではなく、その第一段階は在宅で行なうよりも削減された病床に施設を設置することで、良い機会が創成されるのではないかと感じます。








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2015年6月29日月曜日

医療用飛行機にネットで3600万円集まる

沖縄の離島に出動する医療用飛行機の購入費を募っていたNPO法人「メッシュ・サポート」(小濱正博理事長)が、インターネットで不特定多数の人から支援金を集めるクラウドファンディングで目標の3500万円を超える資金調達に成功しました。総額3629万1000円が集まり、メッシュ・サポートが利用したクラウドファンディングサービスの運営会社「READYFOR」によると、募集が終了し、成立したプロジェクトとしては国内の同サービスの中で最高額だといいます。






離島にも出動可能な固定翼機の購入を目指し、メッシュ・サポートは3月からクラウドファンディングで資金募集を始め、期限の6月1日までに延べ445人から支援を集めました。一口当たりの支援金で最も高い200万円は3口、次いで100万円は19口、50万円は2口などとなったほか、1万円と3000円もそれぞれ約200口が集まりました。READYFORではこれまで、約1億円を目標額とした別のプロジェクトで5000万円程度の支援の申し出があったものの、未達成で不成立に終わっていたといいます。
 メッシュ・サポートの小濱理事長は、今回の資金調達の成功について、「このたびのプロジェクトは前例がなく、かつ高い目標だったため厳しい取り組みとなったが、多くの応援と当法人の活動に期待し、ご支援を頂いた方々のおかげで達成できた」とコメントしております。さらに、「医療問題を抱える幾多の島々において、医療用飛行機の導入は最善の改善策」と述べ、購入する飛行機を活用した急病患者の救命活動にまい進したいとしています。
 沖縄県の離島やへき地には医師が派遣されているが、本島以外の離島などの医療機関では産婦人科医、小児科医、脳外科医らが不足し、十分な医療サービスを提供できていない現状です。そこでメッシュ・サポートは2007年、フライトドクターやフライトナースが搭乗した医療用ヘリの運用を開始しました。しかし、航空医療を広域で展開する際、ヘリは航続距離の関係上、固定翼機に比べて活動範囲が限られるため、固定翼機の購入を目指しており、今回の経緯となりました。

医療に対する世間の関心の高さが今回の支援金の額に反映されていると思います。確かに沖縄県の離島にお住まいの高齢者に向けた医療の提供はハードルが高いですが、その人がその土地で最期まで暮らすと決めたのであれば、医療人としてできる限りのことを行なうべきであるし、そのための制度と支援は国にお願いしたいものです。








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2015年6月28日日曜日

84億円の赤字要因は2014年度改定と消費増税 国立大学附属病院

国立大学附属病院長会議は6月22日の会見で、国立大学42大学43病院における2014年度収支決算での84億円の赤字見通しについて、2014年度診療報酬改定におけるDPC係数や手術料の引き下げや、同時に実施された消費税率の引き上げに伴う診療報酬での不十分な補填などが赤字要因になっているとの分析結果をあらためて明らかにしました。






病院長会議によると、42大学43病院の収支決算では約84億円の赤字を見込んでおり、その内訳は診療報酬マイナス改定による影響額が約23億円、消費増税の影響額が約54億円などとしました。実際に収支差し引きでマイナスとなる病院は22病院、その内、収支差が5億円を超える病院は9病院でした。平均すると1病院当たり平均2億円の減収になるとしました。この影響で、設備備品費が前年度比較で約87億円の減額になっているとしました。山本修一常置委員長(千葉大医学部付属病院長)は「消費税の補填が不十分なために発生した54億円のマイナス影響は2015年、2016年と確実に続く。もはや経営努力の範疇の問題ではない。高度医療を提供している大学病院が設備投資できない状況は、日本の医療に与える影響も少なくないのではないか。極めて厳しい状況だ」と強調されました。さらに、病院長会議では、2014年度診療報酬改定ではDPC係数や手術料の引き下げが大きな要因になると分析しました。石黒直樹氏(名古屋大医学部付属病院長)は、2016年度改定に向け、DPCにおける暫定調整係数の基礎係数と機能評価係数Ⅱへの置き換えが不十分との厚生労働省の調査結果などを踏まえ 「今後、われわれもDPCにおける調整係数について調査したい」との考えを示しました。
一方、山本常置委員長は、消費増税への対応について「2017年4月に税率が引き上げられる時に、課税あるいは現行の診療報酬による補填など選択肢がある。ただ、直近の課題としては、補填が不十分な状態が続いていくことから、何らかの対応を講じてもらえるか、各方面に働きかけていきたい」と述べ、再増税までに何らかの支援策が不可欠との認識を示しました。このほか、会見では「国立大学附属病院長会議将来像実現化年次報告2014/行動計画2015」についても報告しました。

2014年度の改定と消費増税は国立大学付属病院に限らず市中病院も厳しいインパクトがありました。また次回の改定も厳しくなることは避けられず、本当に地域の健康を守っていける病院は存続できるのでしょうか。何か、抜本的な改革が必要ではあると思いますが、それによって伴う痛みも大きなものである覚悟が必要なのでしょう。








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2015年6月27日土曜日

「ブラック病院」も公表対象

厚生労働省は5月中旬から、違法な長時間労働の問題のある、いわゆる「ブラック企業」について、書類送検前の是正指導段階から公表する措置を始めています。厚労省労働基準局労働基準監督課は、大学病院や国立病院機構の病院も含めて「病院や診療所も対象」「対象とならない医療機関はないとみられる」との見解です。ただ、「複数の都道府県に事業所を有している」「中小企業に該当しない」「概ね1年程度の期間に3カ所以上の以上での事実がある」などの条件が付いているため、実際に公表に至るかは未知数です。






 指導段階での公表に至る場合、以下の5つの条件を全て満たす必要があります。
(1)複数の都道府県に事業場を有していて、資本金5000万円超で、かつ常時雇用人数(非常勤なども含む)が101人以上。
(2)労働時間(労働基準法32条)、休日(同35条)、割増賃金(同37条)に係る労働基準法違反が認められている。
(3)1カ月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えている。
(4)1カ所の事業場で、10人以上、もしくは4分の1以上の労働者に、(2)と(3)が認められている。
(5)概ね1年程度の期間に3カ所以上の事業場で、(2)と(3)が認めらている。
 実質的には、(1)の条件で、小規模な医療機関は対象外となるほか、施設の立地範囲が限られる市町村立や都道府県立は対象外となるとみられます。また、(5)のため、3つ以上の経営施設がなければ、指導段階での公表はされないこととなります。ただ、書類送検された場合は、公表される可能性が残ります。
「公表に至るハードルが高い」との指摘があることについて、労働基準監督課は、「目的はあくまで指導によってトップの意識を変えることです。公表は経営などに影響を与える可能性があり、慎重であるべきです」との見解です。また、「(公表に至るかとは別に)違法な実態があれば、事実が大事。労基署に相談してほしい」としています。

実際の現場を見たら、ほとんどがブラック病院として挙がってしまうのではないでしょうか。医療の現場の過酷さが社会に伝わるのなら、それも良いのかもしれませんが、ただ固有の病院名が出てしまうと、患者動向に影響を及ぼすわけですし、情報の取り扱いには細心の配慮を願いたいものです。







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2015年6月26日金曜日

社会保障費の伸び「3年で1.5兆円」

政府は6月22日の経済財政諮問会議 (議長=安倍晋三首相)で 、6月中にも閣議決定する「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2015)の素案を提示しました。骨太に盛り込む「経済・財政再生計画」では、社会保障を歳出改革の重点分野と明記しました。安倍政権下での社会保障費の伸びは3年間で1.5兆円程度で、高齢化に伴う増加分に相当しているとし、経済・物価動向も踏まえて、その基調を2018年度まで継続していく方針を示しました。






医療分野では都道府県別1人当たり医療費の差の半減を目指すほか、都道府県への診療報酬特例、外来時定額負担を検討する姿勢です。焦点となっていた社会保障費の伸びは「3年で1.5兆円」の基調を2018年度まで継続し、2020年度に向けて「高齢化による増加分と消費税率引き上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめることを目指す」と記しました。社会保障・税一体改革の主要な改革については、2018年度までの集中改革期間に精力的に取り組む方針です。
医療分野については、地域医療構想も視野に、データ分析で都道府県別の医療の「見える化」を進め、医療費や提供体制の地域差縮小を図る考え方が大きな柱の一つになっています。医療費適正化計画も活用して、都道府県別1人当たり医療費の差の半減を目指す構えです。療養病床では、病床数や平均在院日数の地域差が大きいとして、入院受療率の地域差を縮め、地域差是正を進めます。医療構想との整合性の確保、地域間偏在の是正などの観点も踏まえ、医師・看護職員らの需給も検討します。外来医療費についても地域差を分析し、重複受診・投与・検査の適正化を図る方針です。改革に取り組む都道府県を重点的に支援する観点から、高齢者医療確保法で定める都道府県への診療報酬特例の活用についても検討します。2015年度から地域医療介護総合確保基金の配分にメリハリをつける方針 も盛り込みました。
また地域包括ケアシステム構築を進め、人生の最終段階における医療の在り方を検討します。かかりつけ医の普及の観点から、診療報酬上の対応や、外来時の定額負担についても検討します。負担の公平化の観点から、高額療養費制度や後期高齢者の窓口負担も検討課題に挙げています。

間違いなく次の診療報酬改定は厳しい改定になるでしょう。7対1も落ちるのがほとんどというか、いかに回復期へ転換するのか、それともどのような医療を提供するのか、医療機関としては、決断の時が迫ってきていると感じます。








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2015年6月25日木曜日

1都3県の医・介・住まい対策、検討開始

国と東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県は6月2日、各都県が2015年度中に策定する地方版総合戦略や地方創生に関する情報を交換するための連絡会議を初めて開催しました。石破茂地方創生担当相や東京都の舛添要一知事、神奈川県の黒岩祐治知事らが出席しました。会議では今後の要介護高齢者の収容能力の不足や医療・介護人材の確保といった課題が示され、1都3県の医療・介護・住まいの総合対策を検討する必要があるといった点を確認しました。






1都3県では2025年までの10年間で後期高齢者が175万人増加すると見込まれています。これは同じ期間の全国の増加数の3分の1を占め、このままだと1都3県全域で介護施設などが足りなくなるとされています。会議では、こうした状況に対応するためには、地域の医療・介護体制の整備や空き家対策などについて、1都3県の連携や協働を想定した「広域的視点」と「早期の対応」が重要だといった意見が出ました。
 黒岩・神奈川県知事は、政府の国家戦略特区として神奈川県が「未病を治す」という取り組みを実践していることを紹介されました。また健康寿命を延伸することで、医療や介護が必要な人の増加を抑える必要性を首都圏全体で共有すべきだとしました。会議の次回会合は7月にも開かれる見通しです。

地域医療構想・地域包括ケアシステムで病院から地域・在宅へという流れが進みそうではありますが、実際には地域で看るための環境が整備されていないことが顕著に分かってきました。特に首都圏が大きな問題を抱えております。CCRC構想もありますが、日本全体でみていくことも必要となりそうですが、移民の意識を持たない国民風土にいかに浸透させることができるのか、2025年2040年に間に合わせることができるのか、問題はまだまだ山積みです。







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2015年6月24日水曜日

地域包括ケア病棟、手術を出来高評価とする方向へ

地域包括ケア病棟において、より多様な状態の患者の受け入れを促進するために「手術を包括評価の外に出す」ことなどが論点に掲げられました。今後、手術(診療報酬点数表のKコード)すべてを出来高評価とするのか、一部手術のみを出来高評価とするのかなどを、他病棟で行われている手術の内容なども見ながら議論していくことになります。






6月19日に開かれた、診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」では(1)地域包括ケア病棟(2)総合入院体制加算(3)医療資源の乏しい地域の診療報酬の3項目をテーマに議論が行われました。 地域包括ケア病棟には、▽急性期後の患者の受け入れ▽在宅復帰支援▽急性増悪時の対応という3つの機能が求められています。厚生労働省が行った調査結果を見ると、地域包括ケア病棟の入院患者の9割は「自院の急性期から、他院の急性期から、自宅から」入棟しており、また97%の病院が3機能を最重視していることが分かり、この3つの機能を相当程度果たしているようにも思えます。
 しかし厚生労働省は「患者の病態が外傷や骨折などに偏っている」点を問題視し、「より多様な状態の患者の受け入れを推進する必要がある」との考えを明らかにしています。
 この日の分科会には、地域包括ケア病棟で実施されている治療内容の実態も示され、次のような状況が明らかになっています。
・入院患者は高齢者が多く、ピークは80-84歳
・検査の実施が少ない
・手術はほとんど行われていない
・7割の患者に個別リハビリが行われているが、実施量は、少ない所から多い所まで幅広い
・疾患別リハビリの大部分は、脳結果疾患等リハビリと運動器リハビリである
・出来高算定できる摂食機能療養は、平均2回弱算定されている
・9割程度の患者が経口での栄養摂取が可能(回復期リハ病棟の患者と同程度)
手術や検査、処置などの実施が少ない背景には、これらが包括評価されている点があります。このため厚労省は「手術などを包括評価の外に出すことをどう考えるか」との論点を提示しています。
 分科会の委員も「多様な病状の患者受け入れを進めるべき」と考えており、特段の反対意見は出されませんでしたが、支払側代表である本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は「手術の出来高評価について議論するなら、具体的な疾患や患者の状態像を示してほしい」と要望しています。
 ただし、前述のように現時点で手術はほとんど行われていないため、「地域包括ケア病棟に入棟する前に実施された手術(それを地域包括ケア病棟で実施できるのか)」や「療養病棟などの他の病棟で行われている手術」などを見て議論していくことになりそうです。
 厚生労働省保険局医療課の担当者は「手術すべてを出来高とするのか、一部手術を出来高とするのかの具体案はまだない」と述べていますが、委員同士のやり取りからは「一部手術を出来高とする」方向で検討が進みそうです。もっとも手術を出来高にした場合、包括部分の点数を下げることになるでしょう。
 なお、リハビリや高額な処置などについて「出来高にすべき」「充実加算を設けるべき」との意見は出されず、手術以外の項目が出来高評価となる可能性は低そうです。本多委員は「濃密なリハビリが必要な患者は回復期リハ病棟に入棟すべきであろう」と述べ、地域包括ケア病棟と回復期リハ病棟の機能分化の必要性も指摘しています。

ところで地域包括ケア病棟については、「退院が見通せる患者を選別しているのではないか」との指摘もあります。厚生労働省の調査では、地域包括ケア病棟の平均在院日数は23.9日(中央値)と比較的短く、在宅復帰率は86.3%(同)と高いのですが、前述の通り「入院患者の状態が外傷や骨折などに偏っている」ために、このような指摘が出てくるのです。
また、厚生労働省の調査結果からも「地域包括ケア病棟の入棟患者の多くは、既に退院予定が決まっている」ことが分かっています。
この点について池端幸彦委員(医療法人池慶應会理事長)は「外傷や骨折など、クリニカルパスが整っている傷病では退院時期が見通しやすい」と述べ、『選別』が行われている可能性を指摘します。
 また筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)も「選別の可能性がある」と指摘した上で、介護保険との連携の重要性を指摘しました。厚生労働省の調査によると、地域包括ケア病棟に入棟している患者の半数程度が要介護認定を受け、要支援1以上と判定されています。こうした患者の多くはケアマネジャー(介護支援専門員)が関与しているため、筒井委員は「ケアマネとの連携を診療報酬でも評価してはどうか」と提案しています。
介護報酬では、ケアマネが病院職員などと面談し居宅サービス計画を作成して退院調整を支援した場合、「居宅介護支援費」の「退院・退所加算」として評価されます。診療報酬と介護報酬の連動という点で、重要な提案と言えるでしょう。
 「退院が見通せる患者」の選別は「多様な状態の患者を受け入れる」という地域包括ケア病棟の目的に反します。このため厚生労働省は、「退院支援の体制強化を図りつつ、より入念な退院支援を要する状態の患者受け入れを促す」ことも論点に掲げました。
 退院支援の具体例としては、「多職種カンファレンスの実施」や「専従・選任の退院支援職員の配置」などがあり、実際に早期退院の効果も上がっています。こうした取り組みを別途診療報酬(加算など)で評価するのか、あるいは施設基準などに組み込みのか、今後の議論が注目されます。

地域包括ケア病棟はこれからの医療提供体制において、大きな意義を担っていくことになりますが、その立ち位置がまだ定まらないというか、どこまでの機能を期待するのかというところの線引きが難しいともいえます。確かに地域包括ケア病棟には3つの機能が求められていますが、そこを本当に高い次元で担っていくと、急性期病棟の存在価値が希薄になるとおもいます。確かにこれから超高齢化社会へと突入していく中で、高機能を担ってくれる地域包括ケア病棟が各地域に存在してくれると地域としては本当に安心ですが、その実現に向けては、制度の整備が未完全であり、まだ道は遠いように思われます。








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