2014年6月27日金曜日

複合型サービスについて

平成25年12月の厚生労働省 社会保障審議会 介護保険部会での意見をまとめると、複合型サービスとは、医療ニーズの高い中重度の要介護者が地域での生活を継続できるための支援の充実を図る目的で「通い」「泊まり」「訪問看護」「訪問介護」といった複数のサービス利用を組み合わせることによって、退院直後の在宅生活へのスムーズな移行や家族の介護負担の軽減を図るとともに、不安が強い看取り期等においても在宅生活の継続に向けた後方支援となり得るサービスです。

サービス参入事業所からみた複合型サービス開始後の効果としては、
看護師が事業所内にいることで医療ニーズの高い利用者に対しても看護が提供でき、介護職員との連携が促進されたこと等が挙げられています。ただ医療ニーズを有する在宅利用者を訪問看護サービスで支援する上で、「通い」や「泊まり」を組み合わせることが、必ずしも十分に活用されていないといった課題があります。また、複合型サービスへの参入理由は「従来から医療ニーズの高い利用者が増加していたため」が最も多く、参入時に困難であったことは「看護職員の新規確保」が最も多くなっています。




平成25年10月末日現在、複合型サービスは、78保険者で90事業所が指定を受けています。登録者数は1,432人になり、地方自治体において複合型サービスの制度、参入メリット等が十分に理解されていない現状もあるため、更なる普及啓発を図る必要があると考えられています。同時に、複合型サービスとして求められている医療ニーズへの対応の更なる充実に向けて、医療機関との連携の強化や、地域のニーズに合わせた登録定員の柔軟な運用等も含めた検討を行っていく必要があります。

複合型サービス事業所の実態として(介護給付費実態調査(各月審査分)・平成24年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成25年度調査)より)

利用者数・事業所数について
複合型サービスの利用者数は約1,580人、利用者の約62.5%は要介護3以上の中重度者です。 請求事業所数は増加しており103事業所、開設主体別にみると営利法人が約46.6%で最も多い状況です。1事業所あたりの平均利用者数は平成26年2月審査分で約15.3人と平成25年5月審査分からほぼ横ばい傾向で、平均利用者数が20名を超えた平成24年度よりは減っています。

開設前の事業種類について
87ヵ所の事業所のうち68ヵ所からの調査回答によると(平成25年10月1日時点)、① 開設前の事業実施状況については、小規模多機能居宅介護事業所を運営していた事業所が52.9%と半数を超えています。② 事業開始時期については、半年以内(平成25年4月以降)の事業所が半数です。③ 訪問看護ステーションの指定状況については、指定有(注)の事業所が63.2%です。④ 1事業所あたりの看護職員数(常勤換算)については、平均4.3人で平成24年度調査では4.1人であったため若干増加傾向です。

定員状況 について
平成25年10月1日時点で開設している複合型サービス事業所68ヵ所について、1事業所あたり、登録利用定員が平均24.8人、通いサービス利用定員が平均14.5人です。 宿泊サービス利用定員が平均6.9人、宿泊室数は平均6.8部屋、登録利用者数は平均16.3人です各事業所からの定員に関する要望としては、「(利用定員(通い、宿泊)の増員希望」や「病状の状況などに応じて臨機応変に対応をする定員の柔軟な運用を希望」が多く挙げられていました。

併設・隣接の住まいについて
「事業所と同一建物」又は「事業所と同一敷地内の別建物」に居住する者に対してサービスを提供している事業所の割合が39.7%(27ヵ所)を占めていました。そのうち、約7割(19ヵ所)が「サービス付き高齢者向け住宅」「有料老人ホーム」でありました。

利用者概況として
性別は、「男性」が約3割で、「女性」が約7割。年齢は、「85~89歳」が約3割で最多であり、平均83.3歳。世帯構成は、「その他同居」46.0%が最多であり、次いで「独居」31.1%。主たる介護者は、「同居の家族」が半数を超えるが、「家族等の介護者はいない」も18.6%。住まいは、「一戸建て」が59.5%と最多であり、「高齢者向け住まい・施設」は20.5%。サービス利用開始直前の居所は、「在宅」が半数を超えており、「入院」、「施設入所」の順に多い。 要介護度・自立度に関しては、平均要介護度は3.06(要介護3~5の合計が60.9%)であり、小規模多機能型居宅介護事業所の平均要介護度2.44(同44.4%)に比べて高い。 認知症高齢者の日常生活自立度は「Ⅲa」が21.5%で最多である。また、「Ⅱa」以上であって、なおかつ医療ニーズ(服薬管理以外)を有する利用者は34.7%である。 障害高齢者の日常生活自立度は「A2」22.4%が最多となっている。医療ニーズに関しては、84.5%が何らかの医療ニーズを有し、小規模多機能型居宅介護事業所の62.0%に比べて有意に高い。 医療ニーズの種類別の利用者割合では、ほぼ全てにおいて小規模多機能型居宅介護事業所利用者を上回っており、一番多いのは服薬管理であった。「看取り期のケア」を実施している登録利用者は5.9%となっている。 死亡場所に関しては、開設後に死亡した登録利用者189名のうち、「在宅死」は64名(33.9%)で全国平均割合(12.8%)と比べて高く事業所内での死亡は56名(29.6%)でした。

事業所の体制について
夜間職員の対応に関して、宿泊サービス利用者がいる事業所における夜間の職員体制の増員状況は「特に増員することはない」が最多であり、次いで「利用者の状態に応じて増員」となっている。その「利用者の状態」については、「看取り期のケア」が最多であり、次いで「不穏、認知症の重度化」、「喀痰吸引」の順に多い状況となっている。医療ニーズへの対応に関しては、訪問看護指示書の利用者が0%の事業所は20.6%の一方で、60%以上の事業所は38.2%を占めています。特別管理加算の算定者が0%の事業所は42.6%の一方で、20%以上の事業所は25%を占めています。看護職員数(常勤換算)が多数になるほど、特別管理加算を算定している傾向が見られます。

運営上の課題について
サービス開始後の効果としては、「従来であれば入院、又は施設入所していた利用者を受け入れることで、入院・入所せずに済むようになった」(47.1%)「従来まで断っていた医療ニーズの高い利用者を登録できるようになった」(41.2%)の順に多く、医療ニーズの高い利用者の地域での療養生活支援に繋がっていると見られる。

サービス開設前に小規模多機能型居宅介護のみ実施していた事業所では、利用者の状態変化や医療ニーズに対応できることを効果と考える傾向があり、これは看護職員の増員によるメリットと考えられる。

同様に、訪問看護ステーションのみ実施していた事業所では、重症者への対応や家族への支援により在宅療養が継続できることを効果と考える傾向があり、これは通所・宿泊時にも看護を提供できるメリットと考えられる。 開設時の困難としては「看護職員の新規確保」(47.1%)「介護職員の新規確保」(36.8%)「利用者の確保」(35.3)の順に多かった。

やはり看護師不足がここでも見られる課題であります。また「開設資金の調達が困難」「開設場所及び物件の確保が困難」と回答した事業所は、開設前に訪問看護ステーションのみを実施していた事業所の割合が高い状況でした。

一方運営上の困難は、「看護職員の雇用維持や新規確保」(57.4%)「利用者の新規確保」(50.0%)の順に多く、共に開設時のポイントより高くなっている。また収支の改善が困難と感じている事業所は、複合型サービスの経営的なデメリットとして、「人件費が経営を圧迫」「安定的な経営が困難」「利用者の確保が困難」が挙げられていました。

収支状況としては、「黒字」(17.6%)及び「収支とんとん(均衡)」(36.8%)と回答した事業所を併せると54.4%と半数を超えていますが、事業期間が短いほど、「赤字」と回答した事業所割合が高く、13カ月を越えた事業所では、90.0%が「黒字」もしくは「収支とんとん(均衡)」という回答をしました。

充足状況として、1事業所あたりの登録利用者の定員に対する利用者割合は、事業期間が短いほど低い状況です。

事業開始時支援加算の算定事業所は、開設前の事業種類が訪問看護ステーションや事業実施なしの割合が多い状況です。複合型サービスの事業開始時支援加算について、サービス利用者全数に占める算定割合は平成25年度以降、25%以上で推移しています。

普及に向けた課題として
自治体への相談として、事業者から複合型サービス事業所の開設に係る相談があった自治体数は、9.8%であった。そのうち開設に係る相談(146件)はありながらも開設につながらなかった事業所(106件)もあり、その理由は「事業者からの応募がなかった」が最多となっており、応募しなかった(できなかった)要因までは把握できていません。自治体による複合型サービスの効果についてのイメージは、「医療ニーズの高い利用者でも在宅生活が継続できる」が81.7%と最多ですが、複合型サービスに対する地域医療機関の期待等については、「わからない、把握していない」が47.3%と最多の状況です。複合型サービス事業所へ参入する上での課題は、「看護職員や介護職員の新規確保」が一番多く、小規模多機能型居宅介護事業所では「利用者の負担増が生じる」を、訪問看護ステーションでは「開設場所・物件の確保」や「開設資金の調達」を課題としている傾向も見られます。  複合型サービスの普及に向けて必要なこととして、複合型サービス事業所、小規模多機能型居宅介護事業所、訪問看護ステーション、自治体(市町村)からの意見の共通項目は、「複合型サービスの周知」「人員確保・養成」「定員等の見直し」が挙げられました。

主な論点として挙げられたのは、医療ニーズの高い利用者が地域での療養生活を継続するための支援の充実を図る(「通い」「泊まり」「訪問看護」「訪問介護」といった複数のサービス利用を組み合わせ)という複合型サービス創設の趣旨から、訪問看護の地域における展開、複合型サービスにおける看護業務のあり方、訪問看護指示書に基づく特別な管理や重度者対応のあり方など。また地域のニーズや運営実態より明らかとなった、登録利用者の定員についての柔軟な運用 、利用者の状態によっては福祉用具を併せて利用することで区分支給基準限度額を超えてしまうこと、そして何より看護職員や介護職員の人材確保の困難な現状についてどのような対策をしていくかが大きな課題であります。





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