2014年8月31日日曜日

患者申出療養 厚生労働省 宮寄雅則課長

厚生労働省保険局医療課の宮寄雅則課長は、来年の通常国会に提出予定の 「患者申出療養」 (仮称)に 関する中医協案 を今秋にも取りまとめる方針を明らかにしました。2016年度診療報酬改定に向けては、その次の2018年度診療報酬・介護報酬同時改定を見据えながら「地域医療構想の本格化に向け、病床規模や機能区分に応じて医療機関の安定的経営を支える診療報酬の在り方について中医協で議論じていただきたいと考えている」と述べられ、医政局など他局とも連携しながら次々期改定までを視野に入れた改定論議を進めていく考えを強調しました。
宮寄課長は「診療報酬体系に関する腰を据えた議論も重要ですが、まずは喫緊の課題からやっていくことが重要」と指摘されました。「次期改定に向け費用対効果制度の試行導入の議論のため、今秋から具体的事例に即してどう進めていくか検証していきたい」と述べられ、近々にも患者申出療養と費用対効果制度の議論を進めていく方針を示されました。






その上で次期改定に向けては「次々期の2018年度診療報酬・介護報酬同時改定を視野に入れ何をすべきかを検討していく。今回の2014年度改定で足りない部分、議論を深めるべき部分などを検証データに基づき検討していきたい」と述べられました。さらに「次期改定では、2025年の社会保障・税一体改革に向け、地域包括ケアシステムの構築を一歩ずつ進めることが求められています。地域包括ケア体制の確立は地域全体のコンセンサスの下に取り組んでいくべき重要なテーマです。医療課だけでできる話ではなく、今回新設された医療介護連携政策課としっかり連携を取りながら、その一翼を担っていきたい。その際には、国民・患者の意見や医療関係者の意見をしっかり聞いて取り組んでいきたい」と述べられました。 「地域包括ケアシステムについては、病床機能分化と連携、主治医機能の強化、在宅医療の推進などの施策にブレークダウンして、取り組むことが必要です。医学・医療が進歩している中で、国民・患者が最先端技術を享受できるように制度を見直しながら発展させることが重要です」 との考え方も示されました。今回の2014年度改定で焦点となった7対1入院基本料や地域包括ケア病棟などについては、入院分科会などでの検証調査結果や地方厚生局への届け出結果を踏まえ、中医協で検討してもらう予定としました。
一方、DPC制度について宮寄課長は「DPCⅡ群がI群に準じると位置付けてきましたが、中医協での議論を踏まえ見直す方向で議論を進めていきます」と述べられました。次々期の2018年度改定で調整係数が廃止されることを見据え、激変緩和の対象病院への対応策などについても議論を進めていく必要性を指摘されました。
消費増税問題に関しては「税制全般の議論の中で、仮に10%に上げることになった場合、医療関連の取り扱いがどうなるのか。診療報酬での対応ということになれば、中医協で議論することになります」としました。診療報酬で対応することになった場合は「消費税引き上げに伴う医療機関の負担増に対し、どのように診療報酬で対応することができるのか、十分な議論が必要です。来年10月から10%にアップすることになれば、1 0月は消費増税に特化した対応となり、政策的改定については予定通り2016年4月になるのではないか」 と述べられました。
薬価改定については「10月の消費税改定時に行うことになれば、本改定の4月改定でも引き続き薬価調査を行うことは物理的に困難」と述べられ、「しかるべき時期に議論されるべき課題」としました。

厚生労働省の組織変更による改定作業の変化について宮寄課長は「改定率を政府が決め、基本方針を社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で策定し、それらを受けて中医協で具体的な診療報酬点数等の議論をするという流れは従来通りです」としました。その上で「次回の基本方針の策定は、医療介護連携政策課が事務局を務めることになるのではないか。例えば医療と介疲にまたがるリハビリテーションなどについては、これまで医療課と老健課の当時者間で調整を進めてきたが、今後は医療介護連携政策課が保険局、老健局、医政局も見据えて全体を調整できる仕組みになる」と述べられました。

医療機関の安定的経営を支える診療報酬の在り方とありましたが、消費増税がその問題にいかに絡んでいくかが医療機関にとっては大きなポイントであります。消費増税による医療機関の負担増を診療報酬で対応するとなれば、結果として国民・患者の負担増に転換されることと考えると、果たして本当に国民の社会保障を維持するための消費増税になるのでしょうか。ただ診療報酬を見直し無しに消費増税だけが先行されると、多くの医療機関は地域の医療を守ることが困難になることは想像されますし、国はそこによるスリム化を狙っているのではないかと懐疑的にすらなってしまいます。








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2014年8月30日土曜日

終末期の相談体制検討   国立長寿医療研究センター等

 厚生労働省は8月21日に、平成26年度の「人生の最終段階における医療体制整備事業説明会」を開催しました。
 高齢化が進展する我が国においては、終末期医療のあり方が大きな課題であり、これまでにもさまざまな場で検討が行われています。
 たとえば厚生労働省は平成19年(2007年)5月に『終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン』を発表しました。そこでは「医療・ケアチームが、患者の状態を踏まえて、終末期の判断を行う」「患者の意思が確認できる場合にはそれを基本とし、確認できない場合には家族による推定意思を尊重する」ことを確認したうえで、終末期にどのような医療提供を行うべきかを決定すべきと結論づけています。
 また、日本医師会は平成20年(2008年)2月に『終末期医療に関するガイドライン』をまとめました。そこでも「主治医を含む複数の医師を含めた医療ケアチームで終末期の判断を行う」「患者の意思が確認できる場合にはそれを基本とし、確認できない場合には家族による推定意思等を尊重する」「事前の文書による意思表示を確認することが重要」といった内容が提唱されています。

 これらのガイドラインが発表された後も、後期高齢者医療制度の創設、社会保障・税一体改革の推進など社会情勢は変化を続けています。そうした中で厚生労働省は、平成26年度予算において「人生の最終段階における医療体制整備事業」(5400万円)を行うこととしています。これは、厚生労働省が平成19年に発表した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」に沿って、「人生の最終段階における医療などに関する相談に乗る」「必要に応じて関係者の調整を行う相談員の配置や、困難事例の相談等を行うための複数の専門家からなる委員会(臨床倫理委員会)の設置を行う」ことなどで、適切な医療体制のあり方を検討し、整備する事業であります。平成26年度には10の医療機関(社会医療法人恵和会 西岡病院、岩手県立二戸病院、医療法人鉄蕉会 亀田総合病院、地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター、南魚沼市立ゆきぐに大和病院、諏訪赤十字病院、独立行政法人国立病院機構 長良医療センター、独立行政法人 国立循環器病研究センター、医療法人凌雲会 稲次整形外科病院、社会医療法人芳和会 くわみず病院)が参加し、国立長寿医療研究センターと連携して、適切な相談体制などを検討していくこととなっています。






 この10病院では、次のような事業を行う必要があります。
●人生の最終段階における相談員を配置し、研究機関が開催する研修会を受講する●相談員は患者からの相談に応じるとともに、必要に応じて関係者の調整を行う●医療内容の決定が困難な場合には、複数の専門職種からなる倫理委員会を設置する●事業実施においては、研究機関と連携するとともに、事業の評価に必要な報告等を行う
 各病院の相談員に対しては研修会等を実施するだけではなく、実施の前と後で「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」の認知率調査を行います(全職員対象)。さらに、患者に対して「相談員に会ってみたいか」を尋ねるスクリーニング調査、患者家族に対するインタビューなども行い、平成27年3月には事業報告書を提出しなければなりません。
 一方、国立長寿医療研究センターは、「参加医療機関への訪問(平成26年9月、および平成27年2月)」「フォローアップ研修会の開催(平成27年2月)」「相談窓口による個別相談」「ホームページによる情報発信」といったサポート体制を敷いています。

患者の意思が確認できる場合にはそれを基本とし、確認できない場合には家族による推定意思を尊重するというのは、当たり前でかんたんなようですが、普遍的ではないので非常に難しいと思います。そこで事前の文書による意思表示を確認することが重要といったような尊厳死について、本格的に国民一人ひとりが考えるべきなのでしょう。参議院予算委員会での麻生副首相への民主党の梅村議員の質疑でも尊厳死は着目されました。あの質疑は本当に素晴らしく、国民に考えるきっかけを強く与えたことと思います。国は動き始めています。我々国民一人ひとりの意識も、変え始める時期に差し迫っています。








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2014年8月29日金曜日

甲状腺がん57名に 福島県 子供調査

東京電力福島第1原発事故による健康への影響を調べている福島県は8月24日、震災当時18歳以下の子ども約37万人を対象に実施している甲状腺検査で、甲状腺がんと診断が確定した子どもは5月公表時の50人から7人増え57人に、「がんの疑い」は46人(5月時点で39人)になったと発表しました。






福島市内で開かれた県民健康調査の検討委員会で報告しました。地域による発症率に差がないことも報告され、委員会の星北斗座長は、現時点で放射線の影響がみられないことが裏付けられたとした上で、「今後、詳細な分析が必要です」と述べられました。調査を担当する福島県立医大は、今回初めて県内を四つに分けた地域別の結果を公表しました。検査を受けた子どものうち、疑いを含めた甲状腺がんの発症割合は、第1原発周辺で避難などの措置がとられた「13市町村」では0.034%でした。県中央の「中通り」は0.036%で、沿岸部の「浜通り」は0.035%と地域差はなかったと見られます。原発から一番遠い「会津地方」は0.028%とやや低めでしたが、医大は検査を終了した子どもが、ほかの地域に比べ少ないためと説明しました。
国立がん研究センターなどによると、10代の甲状腺がんは100万人に1~9人程度とされてきましたが、自覚症状のない人も含めた今回のような調査は前例がないため、比較が難 しいとしています。

疑いも含めた甲状腺がんの子ども計103人のうち、最年少は震災当時 6歳でした。原発事故から4カ月間の外部被ばく線量の推計値が判明した人のうち、最大は2.2ミリシーベルトでした。
甲状腺検査は今年3月までに対象者の1巡目の検査がほぼ終わり、4月からは2巡目の検査に入りました。1巡目に比べがんが増えるかを比較して、放射線の影響を調べます。1巡目では約29万6000人の1次検査の結果がまとまり、2237人が2次検査の対象となり、がんかどうかの詳細検査に進みました。

エヴィデンスがないような風評で多くの方に影響を及ぼすことは望ましくありませんが、多くの方が安心して暮らせる環境を一日も早く取り戻せるようにお祈り致します。








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2014年8月28日木曜日

民間医療用ヘリ レッドウイング  米盛病院 鹿児島県初

株式会社エス・エム・エスが病院経営をサポートする鹿児島市の米盛病院が、9月9日に新築移転および民間医療用ヘリ『レッドウイング』運航開始いたします。
株式会社エス・エム・エスは2013年10月より、米盛病院の採用及びプロモーション活動の支援を行っております。
米盛病院では、整形外科・救急科を中心に、整形外科慢性疾患の手術加療と外傷を中心とした救急医療に力を入れ、鹿児島県全域の地域医療に貢献しております。2014年9月9日、現在の鹿児島市草牟田から、鹿児島市与次郎への新築移転に伴い、94床から295床へ増床いたします。






救急初療室には、手術台とCT・血管造影装置を組み合わせた「ハイブリット型OR」を設置いたします。全国でも導入の少ないこのORは、救急搬送後の検査や救急オペまでを、患者を移動することなく手術台に乗せたまま行えるため、多発性外傷などの高度医療が必要な際に迅速な処置を行えるとともに、患者負担を軽減することができる設備です。高度先端医療設備を備え、米盛病院は救急医療からリハビリテーションまで、幅広い医療の提供を行っていきます。

米盛病院では、鹿児島県初、日本でも4番目となる民間医療用ヘリ「レッドウイング」(愛称)の運航を開始いたしました。このヘリは、米盛病院の医師、看護師が「フライトドクター」「フライトナース」としてヘリに搭乗し患者のもとへ急行します。治療を施しながら米盛病院をはじめ、県内各地の救急病院へ搬送します。運航はすべて、民間病院である米盛病院が行ないます。
本格運航は9月9日の移転開業からとなりますが、6月4日には、離島病院からの要請により初めての患者搬送を行っています。消防や病院との連携を密に行い、迅速な救命活動に貢献することはもちろん、現在鹿児島県内で運航されている防災ヘリ、ドクターヘリの補完要素として、期待が高まっております。エリアは、フライト約60分で半径300kmとしており、北は宮崎・熊本南部、南は鹿児島県十島村を目安に通常運航を予定しております。

築30年前後の地方病院が多く、いま全国的に病院の新築建替えブームとなっております。ただそこには、新しい病院を建てるというだけでなく、どのような機能に特化してこれからの病院運営を行なっていくのかを見定めなければなりません。高度急性期を目指すのなら、それに応じた医療機器の整備が必要ですし、地域医療を中心に診ていくのなら、その領域を見定め、それに応じた整備が必要になります。この10月の病床機能報告もあり、各病院は方向性を定める時期であり、ある意味転換期であると思います。民間企業が経営サポートを行なう米盛病院のこれから先は、注目です。








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2015年度概算要求、厚生労働省総額は31兆6688億円

厚生労働省は8月26日の自民党厚生労働部会で、一般会計総額を31兆6688億円とする2015年度予算概算要求の内容を明らかにしました。総額で2014年度予算比30%増となります。医療・年金などの社会保障費の自然増として8155億円を計上しました。骨太の方針2014や成長戦略改訂版などを踏まえた諸課題に充当する「新しい日本のための優先課題推進枠」(推進枠)として2443億円を盛り込みました。
自然増の内訳は医療約3000億円、介護約1400億円、年金約2400億円などとなっています。自然増を含めた医療にかかる費用は11兆1400億円(14年度予算比2.7%増 )となっており、 介護にかかる費用は2兆7600億円(同5.2%増 )となっております。
推進枠で要望する事業として、DPCデータの一元管理・利活用に向けたデータベースの構築や、レセプトから得られる医療情報を地域別などに集計した「NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)白書 (仮称)」の公表など「医療情報の利活用等の促進」に26億円、審査支払機関の電子レセプトの受け付けを1カ 所に集約するなど「医療分野における ICT化の推進および基盤整備」に45億円を盛りこみました。このほか、女性医師の効果的な支援策の普及啓発活動などに1.2億円、新たな専門医制度の円滑な制度構築支援などに37億円、医療事故調査制度の実施に伴う「医療事故調査・支援センター」の運営支援に11億円、医療保険分野での番号制度の利活用に向けた調査研究に1.1億円などを盛りこんでいます。





消費税率10%への引き上げ時の社会保障の充実策については、来年10月の税率引き上げの可否を今年中に判断するため、現段階では正確な増収額の見積もりがないとして事項要求扱いとしました。充実策の具体的な検討事項として、医療・介護サービスの提供体制改革に向けた新たな財政支援 (新基金)や介護サービスの充実・人材確保、高額療養費制度見直 しなど医療・介護保険制度改革などを挙げています。


社会保障費の抑制が厚生労働省の一番の課題として、日々揉まれていることと思いますが、実際に自然増が発生する部分については致しかたないとしても、出来る限りの抑制は党内でも強く受けていると思います。この社会保障費をまかなうためには消費税を10%まで引き上げることがほぼ確定している見通しではありますが、各病院等の運営は、潤うわけではありません。診療報酬等では消費税を課税することができず、各病院等では分かりやすく言うと、仕入れには消費税がかかるけれど、売上には消費税をかけることができないので、その分を自腹で埋めなければなりません。しかも診療報酬は固定ですので、自分たちで勝手に値上げすることもできず、正直消費増税で厳しい経営状況となっているのです。そうなると、そもそも社会保障費を保ち、各病院等へ報酬を支払う財源を確保するための消費増税が、本来の医療と福祉の安定化に働いていない別の影響を大きく与えているのです。国は、日本国内には世界と比べ病院が多く病床が多いので、減らすことで社会保障費を抑制しようと考えています。しかし、それが本当に医療と介護の社会保障の実現と沿っているのでしょうか。超高齢化社会を無事渡っていける社会保障となるのでしょうか。








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2014年8月27日水曜日

2013年 医療費総額 39.3兆円 厚生労働省発表

 厚生労働省は8月26日、2013年度の医療費(概算)の総額が39.3兆円(前年度比2.2%増)に上り、過去最高額を11年連続で更新したと発表しました。
 概算医療費は、診療報酬請求書を集計した速報値で、自由診療や労災などの医療費は入っていません。






医療費の伸び率は 2.2%となっており、診療種別にみると、入院は 1.3%、入院外+調剤が 3.1%、歯科 0.8%となっています。

医療費の内訳を診療種類別にみると、入院 15.8 兆円(構成割合 40.2%)、入院外+調剤 20.6兆円(構成割合 52.6%)、歯科 2.7 兆円(構成割合 6.9%)となっています。

 国民1人当たりの医療費は平均30.8万円(前年度比2.4%増)で、後期高齢者にあたる75歳以上では92.7万円、75歳未満は20.7万円でした。後期高齢者の医療費は14.2兆円で、全体の36.1%を占めています。

医療費は75歳未満で23.1兆円で0.3兆円の増加に対し、75歳以上では14.2兆円と0.5兆円の増加となっており、それぞれ対前年比1.3%増、3.6%増であり、後期高齢者の医療費の増加が顕著です。


医療費が11年連続で増加しているということは、国の財政から見れば深刻な問題ではありますが、我々国民の状況が変わってきているということを表していると解釈できます。75歳以上の後期高齢者の人口が増え、後期高齢者の医療費が増えて続けているということです。世界に先だって超高齢化社会に突入している日本が、いかにこの状況を打開できるか、国際競争力を高める一つにもなる思われます。単年単年で一喜一憂する必要はありませんが、2025年にむけて国民にとって異常な負荷がかからない制度を構築して頂きたいものです。








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電子カルテや医事会計で共通システム導入ヘ  JCHOグループ

今年4月に発足した「地域医療機能推進機構 (JCHO)は、傘下病院の電子カルテ、医事会計などの病院システム全般について、共通システムの導入を検討する方針を決めました。傘下57病院がそれぞれの判断で運用してきた形を改め、まずはグループ内の複数施設で共通システムを稼働させ、その後段階的に対象病院を拡大していく計画です。コスト効率の改善、各種データの一元管理・分析といったスケールメリットを生かすため、新組織の発足間もないタイミングでグループ内のシステム全般の見直しに踏み切ります。
JCHO本部が検討しているのは、これまでの“1病院1システム"と閉鎖的だったシステム全般で、段階的に“複数病院1システム共有"に再構築します。システム運用に関するコスト効率の改善に加え、医療情報・業務の標準化や均質化、さらには傘下病院データの一元管理、横断的な比較分析のための環境づくりを狙います。早ければ今秋にも、電子カルテシステムを同時期に更新する2~3病院から共通システムを導入します。JCHO本部は今後、共通システムで生まれるメリットを傘下病院に働き掛けながら、医事会計やDPCデータ分析、健診システムのほか、画像、病歴管理、病理などの部門システムでも共有化を探る方針です。まずは共通システムを導入する複数施設を、数グループに段階的に集約し、中長期的にはJCHO全体で統一システムを導入できるかも検討していきます。また、病院以外でも、年間160万人が受けている健診データや、傘下の介護老人保健施設などでの情報の標準化を進める方向で、多様な機能を持つJCHOの強みを生かした幅広い情報の一元管理を目指します。






グループ内の病院システム全般の見直しに向け、傘下57病院で別々に運用されている患者 IDや、医薬品や医療機器・材料の製品コードの統一にも着手します。JCHO病院での患者 IDの統一化の検討や、約1万品目の医薬品の製品コードの統一作業を進めていきます。ただ、約50万品目近く存在する医療機器・材料のコード統一は、各施設の採用コードが大きく異なることに加え、製品サイクルが早いため大きな課題になる見込みです。また、共通システムの導入に併せて、情報を厳格に保護するためのセキュリティー管理もあらためて徹底します。一方、JCHOグループ以外の施設との連携、情報共有の環境づくりも進める方針です。クラウド技術を活用した情報インフラで、傘下病院だけでなく、地域内の他病院や診療所、介護施設などもネット上の専用回線を通じて同一患者データにアクセスできるようにする構想です。災害発生など緊急時にも活用することを想定しており、地域医療に貢献できるツールとして整備します。

ICTの整備は、これから地域包括ケアシステムの構築に必須項目となっていくと思われます。特に以下に各病院が地域でイニチアティブをとるかにおいて、ICTの整備というのは、とても重要に関わってきます。地域の診療所にとってどこの病院と深くつながり患者の紹介・逆紹介を受け渡していくのか、そのためのシステム構築が整っていれば、自然とその流れに従っていくことは想像に容易です。確かにJCHOとしては、共通システムを導入することで多くのコストを抑制できるでしょうし、リスク管理も一元化できます。その意味合いはあるでしょうが、本当の目的は、地域の診療所の囲い込みだと思います。ある大きな医療法人も、同様の流れでICTの構築を進めていますし、今からまさに国とり合戦が始まるのではないでしょうか。








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2014年8月26日火曜日

在宅介護でストレス

親や配偶者の在宅介護を担う家族の80%がストレスを感じており、3人に1人は「憎 しみ」まで抱いていることが8月21日、連合による意識調査で分かりました。連合は「介護をする人の支援が必要です」と指摘しています。
調査は連合加盟の労働組合を通じ2~4月に実施しました。自宅で親や配偶者、配偶者の親らの介護をする40歳以上から、1381件の有効回答を得ました。ストレスの有無を尋ねると、25.7%が「非常に感じている」、54.3%が「ある程度」と答え、計80%に上りました。「憎しみを感じている」との回答は35.5%でした。 認知症患者の介護では症状が重いほどその割合は増え、日常生活に問題行動がみられるレベルだと69.2%に達しました。






虐待した経験が「ある」とした人は全体の12.3%もいました。重い認知症の場合では26.9%でした。連合は、介護保険制度が始まる前の1995年にも同様の調査を実施しており、虐待経験は減ったが、憎しみを感じる人の割合は約1ポイント増えたと報告しております。ストレスに関しては今回初めて聞いた項目になります。
家族の負担軽減のため希望する支援に関する質問 (複数回答)では「緊急時の相談・支援体制の充実」が34.5%で最多でした。「低所得世帯向けの費用助成」や「家族が休養できる保険制度の新設」も20%を超えておりました。
連合生活福祉局の平川則男局長は「夜間・早朝の介護サービスや、家族に対する支援を充実させ、負担を軽減するべきです」と話しています。

在宅での介護における問題は、とても深刻であり、事件や事故にまでにはならない水面下での現状をまさに上記の数字が表していると思います。
それでも今日では、ヘルパーや訪問看護などが熱心に在宅介護に取り組んでいます。定期巡回・随時対応型訪問介護看護なども始まり、国も在宅療養・在宅介護の重要性を認識しています。しかし、家族の心のケアまではまだまだ遠い道のりです。上手にレスパイトで各サービスを利用されている方もいらっしゃいますが、実際には在宅で重度の認知症患者を看ることは家族にとって負担が大きいです。それまで介護もしたことの無い方がいきなり介護をするわけですから、戸惑いも多いです。また核家族化が進み、親のADLが下がったから一緒にすごし始めるなんて、これまでのライフスタイルが大きく変わり、疲弊してしまう方が多いです。どのように介護を行なっていくか、事前に相談出来ていれば良いのですが、我々日本人はそういったことに対する相談・話し合いは苦手な方が多いです。でも、本当に疲弊しないようにするためには、そのような話を早めの段階で行なっておくことが一つだと思います。








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2014年8月25日月曜日

カジノ 日本人はNG!?

厚生労働省は、海外からの観光客誘致の一環として政府内で検討が進むカジノ解禁に関し、ギャンブル依存症患者が増加する懸念があるとして、日本人の利用を認めないよう求めていく方針です。安倍政権は内閣官房に検討チームを設け、米国やシンガポールなどの先進事例の調査に乗り出していますが、厚生労働省は関係府省に対し、解禁の場合も利用者は外国人観光客に限るよう働き掛けています。
 2013年に日本を訪れた外国人観光客は1000万人を超えました。東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年に向けてさらに増える見通しで、政府は加速させようと、五輪に間に合うようカジノ整備ができないか検討中です。6月に改定された成長戦略でも、カジノ解禁の検討が明記されておりました。






 厚生労働省は、観光立国推進のためのカジノ整備自体には反対していません。一方で、依存症などの精神疾患対策を所管する立場から、カジノ解禁によってギャンブル依存症患者が増える事態を懸念しています。それを避けるため、日本人の利用を認めないよう訴える考えです。
 厚生労働省によると、日本人はパチンコなど、ギャンブルに比較的のめり込みやすい傾向が統計上見て取れるといいます。

日本国内にカジノができても日本人は、利用できないなんて、まず実現は難しいのではないでしょうか。もしそのような法案が可決され、実現化されたとしたら、一部の方のギャンブル依存症の問題以外の大問題がおきると多くの方が思うでしょう。ダメだと言ってもやる人はやります。今も多くの繁華街の裏ではバカラやルーレットが行なわれています。それならば、簡単に禁止というのではなく、いかに付き合っていくかを国として考えて方向を導くべきではないでしょうか。








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介護療養型医療施設は看取りの場

社会保障審議会・介護給付費分科会の委員に新たに就任した日本医師会の鈴木邦彦常任理事は8月1日、2015年度介護報酬改定に向けた本格論戦を前に、本紙の取材に応じ、2017年度末に廃止が予定されている介護療養型医療施設について「重度の要介護者の看取りの場になっています。重度の方も看取りの数も増えていく中で廃止は難しいです。役割として機能が果たされているのであれば、廃止の見直しも必要になってくるのではないでしょうか」と述べられました。
特別養護老人ホームが「終の住処」とされているものの現状では十分にサービス提供できる体制ではないとも指摘されました。「既存資源として介護療養病床があるのだから、その活用はおのずと必要ということになるのではないでしょうか」との見解を示されました。介護療養病床は約7万床まで減少しているものの、転換先は介護療養型老人保健施設ではなく、医療療養病床や一般病床に転換している場合もあるとし「現場の実態を無視したようなことを無理やりやろうとしてもうまくいかないことの一つの証明です」と述べられました。







中医協委員も務める鈴木常任理事は、診療報酬改定と介護報酬改定の両方の議論に参画しておられます。2014年度診療報酬改定で医療機関に在宅復帰が求められることになったことを受け、介護サービス側の受け皿づくりが課題になるとし「介護保険の施設や在宅サービスの充実が必要です」と述べられました。
地域包括ケアの構築に向けては、医療と介護が連携し、重医療・重介護の人を介護保険の施設や在宅サービスでみることが必要になると説明されました。診療報酬と介護報酬が連携して、2025年に向けた改革を実行していくことが求められるとし、中医協と給付費分科会の両方に出席する立場から「両方をつなげて整合性を取れるような形で連携が進む発言ができればよい」と意気込みを述べられました。
特養での医療提供にも言及し、重医療・重介護の人が入所しているからといって、特養内のサービスを手厚くするのではなく、配置医師の役割を明確化した上で、それ以上の医療提供は「外付け」を中心に提供していくことが考えられるとしました。かかりつけ医機能を持つ中小病院や有床診療所の医師が、介護保険サービスも総合的に提供する在宅ケアセンターのようなものをつくることで、医療と介護の一体化が進むと提案しました。

介護療養型医療施設は国の社会保障費の抑制の方向性から鑑みると、間違い無くこれ以上の役割を求めることはないと考えられます。確かに、重度の方の看取りの場が不足するのではないかという見解はありますが、そこに社会保障費をつぎ込むことはないでしょう。だから在宅復帰であり、地域包括ケアなのだと考えられます。確かに現状の制度からのシフトでは歪みが生じることは想定されますし、そこに対するケアは必要になってきます。在宅ケアセンターを設立し医療と介護を一体的に進めることはとても利にかなっていると思います。ただそこで医療に従事する医師のマンパワーは明らかに超過でしょう。制度やしくみだけでなく、しっかり医療と介護の現場を見て検討していかなければ、機能していかないという助言を国に届ける人が必要です。








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2014年8月22日金曜日

医療と介護連携

厚生労働省の三浦公嗣老健局長は8月1日、専門紙の共同取材に応じ、「今ほど医療と介護の連携が必要な時期はありません。この時期に私が老健局長に就くのは非常に象徴的なことです」と述べられ、初の医系技官としての就任の意気込みを語られました。その上で「医療と介護を結びつけるときに一番の鍵になるのは「医療側」だとし、「医療がしっかりと介護を支える、そして安心して介護が受けられるような体制をつくることが一番重要です」とコメントされました。医療関係者らの現場感覚を政策に反映させる必要性も指摘し、「(医系技官として)これまでと違う色合いの視点からアプローチができれば良いと考えます」と抱負を述べられました。






現在、社会保障審議会・介護給付費分科会で議論が進む次期介護報酬改定については、「報酬の基本的な考え方や狙いを、一つ一つの報酬ではっきりさせていく必要があります」と指摘されました。報酬には、事業者に何が望まれているのかのメッセージや、より良いサービスにするためのエンパワーメントの要素が含まれると説明されました。報酬改定では、単に単位数が変わったことを示すのではなく、報酬に込められたメッセージを明確に示す考えを強調されました。 また、医療介護総合確保法の成立については「利用者本位、高齢者自身がどういうことを望んでいるかを反映した制度が必要です」と述べられ、利用者や住民に身近な市町村の役割が高まると指摘されました。自治体が動きやすく、利用者が使いやすい仕組みに向けた仕掛けが必要としました。
認知症対策は、高齢社会を迎えた日本にとって「一番重要な課題の一つ」と述べられ、認知症対策のオレンジプランに基づく政策を進める意向を示されました。認知症高齢者とその家族をどのように支えるかを課題にあげ、「本人や家族を孤立させずに地域全体でいかに支えるかが重要です」とコメントされました。
また、2017年度末で廃止予定の介護療養型医療施設については、介護給付費分科会で現状分析などを踏まえた議論が行われるとし、「まずは審議会での議論の内容をつぶさに見ていきたいです」と、当面は分科会での議論を見守る考えを示されました。

医療と介護の連携は今まさしく厚生労働省が目指している姿です。いかに医療費の増長を介護費で抑制することができるか、ということです。ただ医療と介護の連携は、そんな社会保障費の抑制だけでなく、高齢者にとって利点は多いです。ただ現実にまだまだ医療と介護には垣根が見られます。それをうまく取り払えるのは医療側だと思います。遺留と介護が効果的に機能を分化して連携すれば、認知症の高齢者にも地域で支えていくことが実現できるのではないでしょうか。








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2014年8月17日日曜日

介護の人材不足

介護労働安定センターが8月11日に公表しました「2013年度介護労働実態調査」の結果によりますと、介護サービス従事者の過不足状況で不足感を感じている事業所の割合は56.5%に上りました。前年度から0.9ポイント改善したものの、依然半数を超えています。過不足状況が「適当」と回答した事業所は43.0%でした。
介護労働安定センターは事業所に対するアンケート調査(7808事業所から有効回答)と介護従事者に対する調査(1万8881人から有効回答)を実施しました。調査対象日は原則として2013年10月1日でした。






過不足状況について不足感を感じていた事業所のうち、「大いに不足」が5,7%、「不足」が19.8%、「やや不足」が31.0%となっていました。職種別では訪問介護員の不足感が最も高く、73.6%でした。不足している理由(複数回答)については「採用が困難」が68.3%で半数以上を占めました。今年度から新たに採用が困難な原因(複数回答)を聞いたところ、「賃金が低い」55.4%、「仕事がきつい(身体的・精神的)」48.6%、「社会的評価が低い」34.7%と続きました。
介護サービスを運営する上での問題点 (複数回答)について最も多かったのは「良質な人材の確保が難しい」の54.0%でした。次に「今の介護報酬では人材確保・定着のために十分な賃金を支払えない」の46.9%で、介護報酬上の課題が挙がりました。

2012年10月から2013年9月までの離職率は16.6%で、前年度から0.4ポイント改善しました。離職者のうち、勤務年数が1年未満の人は39,2%、1年以上3年未満の人は34.0%でした。一方、採用率は21.7%で、前年度から1.6ポイント減となりました。  介護従事者に対して現在の仕事の継続意志を聞いたところ、最も多かったのが「働き続けられるかぎり」の54.9%で、半数以上を占めました。以下、「わからない」20.7%、「3~5年程度」10.3%と続きました。現在の仕事を選んだ理由(複数回答)については「働きがいのある仕事だと思った」が54.0%となり、最も多い状況でした。


医療もそうですが、これからますます超高齢化社会に突入し、社会保障の増長が予測されていますが、その現場に業務に就かれている人材確保の問題も潜んでいます。医局体制からのシフトにより、都市部の強い病院は医師の確保は進んでいますが、地方の医局に完全に依存している病院では、厳しくなってきております。一方看護師も7対1から転換する病院が増えれば、病院内での看護師は飽和状態となります。ただし、訪問看護の需要が高いのでそちらにシフトしていくこととなります。介護の現場では、ケアワーカーの確保をどのように進めていくか、良質な人材を確保するためには魅力のある施設へと進化していかなければならないのですが、そこは待遇(賃金)だけしかないのでしょうか。利用される方々にとってもそこで働く職員にとっても魅力のある施設を目指していかなければならないという、経営責任者につきつけられる課題はなかなかの難題です。








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2014年8月16日土曜日

社会保障審議会医療保険部会が意見を整理

 厚生労働省は8月8日に、「社会保障審議会医療保険部会での主な意見」を公表しました。

 医療保険部会では、7月24日の会合までに医療保険改革に向けた1巡目の議論を終えており、これまでに出された代表的な意見を整理したものになります。
 秋から2巡目の議論を始め、年末の予算編成に向けて意見とりまとめを行う構えです。政府は、来年(平成27年)の通常国会に医療保険改革法案(健保法改正案など)を提出する予定であります。






 「主な意見」は、医療保険改革のテーマに沿って整理されています。
 まず、改革の目玉である『国保改革』については、医療保険部会に加えて、市町村・都道府県・国による協議の場(国保基盤強化協議会)でも議論が行われています。
 そこでは、主に(1)財政上の構造問題の分析と解決方策(2)都道府県と市町村の役割分担の在り方―の2点に関する検討が進んでいます。
 この国保改革というテーマについて、医療保険部会では、主に都道府県側から次のような強い要望が出されていることが確認されています。
●国保の構造問題を解決するためには赤字を解消するだけでなく、将来にわたり安定した制度となることが必要であります。
●国保では、保険料負担の重さから「一般会計からの法定外繰入」を実施せざるを得ないという実態もあります。法定外繰入をやめるべきとの指摘があるが、そうであるならば基盤強化のための公費による財政支援が不可欠であります。
●「所得水準が低いにもかかわらず保険料負担が重い」という逆進性を是正するような、抜本的な財政基盤の強化が必要であります。
●公費財源を予算編成過程で確実に確保してほしい。国保が崩壊すると、地域医療が崩壊してしまう可能性が高い。
●後期高齢者支援金への全面総報酬割導入により生じる財源を国保支援に優先的に活用することを含めて、国の責任において財政確保を行うべきと考える。
 なお、国保改革は「大改革」であるため、システム整備などの面での実務への混乱を避ける必要があります。そのためにも早期に都道府県と市町村の役割分担を明確にしなければならないが、医療保険部会の委員からは「(一体改革の項目とスケジュールを規定した)プログラム法では『平成29年度までを目途に措置を講ずる』旨が規定されているが、難しい場合には実施時期について柔軟に考えるべき」との指摘が出されています。

 また、今般の医療保険改革では「紹介状なしに大病院外来を受診する場合の新たな定額負担導入」も注目される項目の1つとなっています。
 厚労省は「初診料・再診料等を保険給付から除外する(全額患者負担とする)」ことを軸に具体案を検討しています。
 この考え方に明確に反対する意見はないが、次のようなさまざまな見解があることが確認できます。
●「なぜ紹介状なしで大病院を受診するのか」等の受療行動に関する分析をして、対策を立てたほうが効果的ではないか。
●医療保険の枠内に限らず、選定療養の拡大等を通じて、紹介状なしの大病院受診を抑制する仕組みを考えるべきではないか。
●ゲートキーパーとなりうる地域の医師をどのように確保・育成していくかが課題ではないか。研修等を実施したうえで(医師を)地域に適正配分し、紹介状を書いてくれる医師について患者に情報提供していただきたい。
●「より機能分化が必要とされる大規模な医療機関」ほど負担額が大きくなるというように、病床規模で分けてもよいのではないか。
●大病院の範囲について、「病床数なのか」「機能なのか」「両方なのか」などが考えられる。

 ところで、医療保険改革では「費用負担の仕組み」を見直す議論がメインとなりますが、医療費が増加を続ければ、いずれ負担の限界が来てしまいます。このため、医療保険部会では医療費適正化等に向けて次のような意見が出されています。
●被用者保険の保険者が医療費の適正化・効率化や、加入者の健康の維持・増進に効果的に取組んできた努力を十分尊重するとともに、国保と被用者保険が共存し、連帯を基礎に保険者機能を発揮できる制度体系を維持すべきではないか。
●今後、生活習慣病の予防を進めていくうえで、特定保健指導の実施率を上げることが重要ではないか。
●健診やレセプトのデータを分析して活用し、自治体において効果的な保健事業を企画できる人材の養成や確保が必要ではないか。
●健康・予防インセンティブの付与について、個人・保険者に加えて企業の取組みも重要です。海外では「健康経営(社員の健康づくりを生産性向上や業績改善につなげる)」が普及しています。日本でも「社員の健康づくりに取組む企業」に対し、税制優遇や保険料の軽減などを行う仕組みが必要ではないか。


来年(平成27年)の通常国会に医療保険改革法案に提出するために意見を整理されてますが、これから方向性が次第に明確化してくると思います。その内容によっては各病院の経営にも大きな影響を及ぼすことになりますが、大病院の外来について少し。
ここで初診料・再診料等を保険給付から除外し全額患者負担とする具体案が出ているということは、ほぼその方向性で固まっていくでしょう。ただ大病院の外来患者が多い理由は、初診患者というよりもむしろ、退院後の経過観察等の外来患者の多さではないでしょうか。広報連携が地域と出来ていないことの方が今取り組むべき課題ではないでしょうか。確かに携わった医師からすれば、この段階で自分の担当から地域の開業医等へ渡していくことが、適切な判断なのか決断することがまだまだ難しい現状です。連携がもっと進めていけるような対策が必要ではないでしょうか。








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2014年8月15日金曜日

阿蘇医療センターが担う役割とは

熊本・阿蘇地域の中核医療機関として、阿蘇市が旧阿蘇中学校跡地(阿蘇市黒川)で建設を進めていた「阿蘇医療センター」が完成し、8月6日に開院します。阿蘇中央病院(甲斐豊院長)の老朽化に伴う移転・新築で、心筋梗塞など命に関わる急性期疾患に対応する態勢を整えます。過疎地における医療再生のモデルを目指す病院となります。
                   
  7月20日に開かれた阿蘇医療センター完成記念式典後の祝賀会で、佐藤義興・阿蘇市長は、「昼間には、太陽の光が院内に入ってくるよう設計した。南には阿蘇五岳、北には大観峰が位置する絶好のロケーション。心身ともに癒される阿蘇の中核病院となるでしょう」と語られました。
 新病院は鉄筋4階建て、延べ床面積約1万1300平方メートルになります。外来棟、中央診料棟、病棟で構成され、病床数は一般120床と感染症対応の4床です。災害拠点病院として耐震・免震構造を採用し、敷地内に防災ヘリやドクターヘリが離発着できるヘリポートも設置しました。
 MRI(磁気共鳴画像装置)やCT(コンピューター断層撮影装置)など高度医療機器も導入しました。甲斐院長は「心臓や脳周辺の血管を撮影する装置を手術室に備え、急性期疾患にも対応できるようになりました」と述べられました。






 阿蘇地域は高齢者率が30%を超え、急性期疾患への対応は極めて重要となっている地域であります。熊本大医学部付属病院副病院長(消化器外科教授)の馬場秀夫氏も「阿蘇地域でさまざまな治療に対応できる態勢は意義深い」と語られました。
 ただし病院というハードは整いましたが、過疎地医療再生には、医師不足など課題も残っています。
 熊本県によると、熊本は人口10万人当たりの医師数は266・4人と全国平均を上回っています。しかし、医師が熊本市内に集中し、熊本市と阿蘇地域の差は3・26倍の開きがあります。
 阿蘇医療センターは9診療科を持ちますが、常勤医は内科医や脳神経外科医など4人だけで、当面、熊本大医学部付属病院などから派遣される非常勤医で対応する予定です。甲斐院長は「ハード面、ソフト面は車の両輪にあたいします。地域医療のモデル施設を目指して、今後も常勤医確保に力を注いでいきます」と語りました。
 現在の阿蘇中央病院は開院から60年以上が経過し、建物の老朽化が目立つようになっていました。阿蘇市は平成18年11月に同病院経営改革委員会を設置、病院の新たな方向性を検討し、移転・新築を決めました。
 当初計画は、2014年4月の開院を目指していましたが、地盤改良など追加工事が必要になったほか、建設業界での人手不足や資材不足により工事が遅れたといいます。

建物の老朽化や耐震問題などで、全国で病院の改築や新築移転が増えてきております。それぞれがこれからの地域で担う役割を鑑みて新病院を建築しておりますが、ただ地域包括ケアとして十分な機能が担えるかどうかは、他の病院との連携も重要になってくる要素です。一気に診療内容を充実させた病院を開院させても、医師不足というのが、地方の実情ではないでしょうか。人材確保は後で取り組むとして、先にハードを整えるというのが多くの病院の進め方ですが、少し立ち止まって、地域としての役割をそれぞれの医療資源を基に統合的に考えていかなければ、歪みが生じるのは目と鼻の先ではないでしょうか。








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2014年8月14日木曜日

医療費の目標設定へ

政府の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」(会長=永井良三・自治医科大学長)は、都道府県が医療費の水準や標準的な病床数を設定するための算定式案を2014年度内にも取りまとめる方向です。8月11日に非公開で開いた初会合後に記者会見した永井会長らが明らかにしました。
政府が6月に閣議決定した骨太の方針2014では、医療費の水準や医療の提供に関する目標を設定する方針が示されました。「国において、都道府県が目標設定するための標準的な算定式を示す」とも明記されました。ただ、時期についての言及はありませんでした。







8月11日の初会合では、ワーキンググループ (WGの構成員:佐藤主光(一橋大国際・公共政策大学院教授)、 筒井孝子(兵庫県立大大学院教授)、土居丈朗(慶応大教授)、伏見清秀(東京医科歯科大大学院教授)、 藤森研司(東北大大学院教授)、 松田晋哉 (産業医科大教授))の設置を決めました。会見に同席した松田主査は「まずは望ましい医療提供体制とは何かを検証し、医療提供体制を適正化するための仕組みを検討していく」と説明されました。
「それを踏まえ、どのような医療費水準が望ましいかということを、いくつかのシナリオを基に、ある程度の幅を持って推計していきたいと考えています」と述べられました。「2次医療圏単位で、高度急性期・一般急性期・回復期・療養の各病床、外来、在宅と分けて、将来のポリュームを推計するための手法を考えます」とも述べられました。

永井会長は会見で「WGでの検討成果を踏まえ、今後の作業工程表を策定します」と表明されました。「地域横断的な情報の活用方策の具体化や、データの加工、分析の手法、枠組みの標準化などといった横展開が計画的に進められることになります」と述べられました。専門調査会は秋以降、集中的に審議し、年内にも一定の方向性を示す予定です。

介護保険に関する情報を活用する方策については、永井会長が「介護のデータは必ずしも十分ではありません」と指摘されました。「提供体制とコストの関係については、医療と同じようにサービス内容にまで踏み込んで情報を集めることをまずやってみることになるの
ではないでしょうか」と述べられ、集計できるデータの内容を把握して活用方策を検討するとの方向性を示されました。
 これから各都道府県で練っていく地域医療ビジョンの検討のベースが組み立てられていきます。各都道府県も始めてのことですので、おそらくほぼ描かれたシナリオ通りにビジョンは固まっていくことになると思います。過剰に膨れすぎた7対1の急性期病院がどのように地域で役割を担っていくのか、決断の時です。








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2014年8月13日水曜日

エボラ出血熱

世界保健機関 (WHO)は8月8日、西アフリカで拡大の一途 をたどるエボラ出血熱の感染について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言しました。「さらなる感染拡大が招く結果は極めて深刻です」と指摘する一方、現時点で渡航や貿易の全面的規制は必要ないとしました。
WHOのチャン事務局長はジュネープでの記者会見で、今回の感染は「過去約40年で最も大規模で、最も深刻かつ複雑です」と指摘されました。西アフリカの感染地域の各国には「(エボラ熱に)対処する能力がない」と述べられ、拡大阻止には国際社会の協力が不可欠ですと強調されました。






エボラ熱についてWHOは専門家による緊急委員会を8月6日、7日に開催しました。今回、緊急事態を宣言することで、エボラ熱の封じ込めに向け各国に早急な取り組みを促しました。
WHOのフクダ事務局長補は会見で「エボラ熱は未知の病ではありません。封じ込めが可能な感染病です」と説明されました。感染者が集中する地域で「人の動きを制限することが重要です」と語られました。
WHOは 2009年に大量感染が起きた豚インフルエンザ、今年5月にポリオ(小児まひ)の感染拡大でそれぞれ緊急事態を宣言しました。中東を中心に感染が広がった中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスについては6月、緊急事態には至っていないと判断しました。
今回のエボラ感染は昨年12月にギニアで始まり、隣国リベリア、シエラレオネに拡大しました。これまでに感染が疑われる例を含め960人以上 (8月6日時点のWHO集計)が死亡しました。
7月下旬にはリベリアで感染した米国籍の男性がナイジェリアに飛行機で移動後に死亡しました。中東のサウジアラビアでも感染が疑われる男性が死亡し、アフリカ以外に波及した恐れが出ています。
リベリアは8月6日、90日間の非常事態を宣言し、国内の感染地域から首都モンロビアに入る人の動きを制限しました。シエラレオネでも治安部隊が主要道路に検問所を設け、感染地域を封鎖しました。








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埼玉県医師会の取り組み  全員参加型医師会を目指して

埼玉県医師会は8月3日 、さいたま市の県民健康センターで、会員が医療をめぐる疑問や問題点を議論する「わが国の医療をめぐる諸課題に関する意見交換会」を開きました。地域医療や医師会活動などについて自由にテーマを持ち寄って意見を交わすユニークな取 り組みで、ここで浮き彫りにされた課題を今後の埼玉県医の活動に生かしたり、日本医師会に提言することを主な目的に掲げています。金井忠男会長は「会員は普段、『日本医師会がわれわれに何をしてくれるか』と考えがちですが、これからは『われわれが日本医師会に何をするか』という視点が大事です。会員が積極的に関与し、議論や提言ができるような仕組みづくりの第一歩にしたい」と述べられ、会員の誰もが自律的に活動する全員参加型の医師会の実現や組織強化に意欲を見せられました。







意見交換会は30の都市医師会から、医師会活動で発言する機会が少ない医師や若手医師ら約60人が出席しました。出席者に自由に発言してもらうため、埼玉県医の執行部はオブザーバーとして臨み、所沢市医師会から司会者を立てる形で議論が展開しました。医療制度や地域医療、医師会活動などの大枠のテーマを設定した以外は全て“アドリブ"で進行しました。そのため、意見を持ち寄るだけの場面も一部で見られたが、控除対象外消費税問題や介護に対する医師の関与などの論点は関心も高く、積極的に意見が交わされていました。「ケアマネジャーの多くが地域包括ケアなどの国の政策を知りません。医師会で学習会を開いてはどうでしょうか」「東京都医師会のような、水銀血圧計・水銀体温計を自主回収する仕組みをつくれないでしょうか」など、それぞれの問題意識に対する提案も多く出ていました。日本医師会が昨年6月に策定した網領を今回の会合で初めて知り、日本医師会の活動に理解を深めた出席者も多くいました。

金井忠男会長は意見交換会の狙いについて、会員の医師会活動に対する自発的な関与を促すことで組織強化につなげたいと説明されました。地域医療を守る現場の会員の声をできる限りすくい上げ、重要な意見は日本医師会に提言できるようにしたいとの考えも示されました。今秋にも2回目の会合を持ち、個別の論点を掘り下げる委員会も立ち上げながら活動を活性化させるといいます。金井会長は「これからの医師会活動は全員参加型であるべきです。多くの会員から意見集約を図り、日本医師会に提言や全国に発信していきたい」と述べられました。


埼玉県医師会の今回の取り組みは、多くの医師会が見習うところが多かったことと思います。これから地域包括ケアシステムが構築されようと進んでおりますが、そこでいかに医師会がイニシアチブをとれるかが重要です。ここでしっかり働きかけができなければ、医師会の存在意義を強くアピールできる機会は失いかねないのではないでしょうか。そのためには金井会長がおっしゃっていられるように会員の医師会活動に対する自発的な関与だと思います。全員参加型とはいうのは掲げることはたやすいですが、それを実行実現するためには医師会での強烈な先導者の存在が必要不可欠ではないでしょうか。








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2014年8月12日火曜日

行方のわからない認知症高齢者等をお探しの方へ 厚生労働省

厚生労働省は8月5日、身元が分からないまま、各地の介護保険施設などに保護されている認知症高齢者らの情報を集めた特設サイトを厚生労働省ホームページ上に開設しました。身元不明者が保護された時の状況や、現在の写真などが掲載されています。
行方不明者の早期発見につなげるのが狙いで、身元不明のまま保護された高齢者についての情報を、都道府県ごとにまとめてみることができます。新設されたページには現在、千葉県と静岡県の情報につながるリンクがはられています。厚生労働省は今後、ほかの都道府県の情報に結びつくリンクもはっていき、ページの実用性を高めていきたい考えです。






 警察庁によると、2013年の行方不明者の届け出のうち、原因が認知症とされるのは1万300人に上ります。また、厚生労働省では「徘徊などで行方不明となった認知症の人等に関する実態調査(市区町村調査)」の取りまとめを行っていますが、「電車などで遠距離移動した結果、本来の住所とは、まったく別の県の介護保険施設で保護された場合もある」(高齢者支援課)といいます。

 こうした状況を受け、厚労省では各地の身元不明の認知症高齢者らの情報を一覧できる特設ページの設置を決めました。さらに厚生労働省は同日、特設サイトでは、自治体からの依頼を受けた上で、各自治体がホームページ上で公開している情報を転載する、都道府県だけでなく市区町村単位の取り組みについても掲載の対象とする―などの内容を盛り込んだ事務連絡を各自治体に発出しました。同サイトへの積極的な情報提供などを呼びかけました。

 同日、記者会見した田村憲久厚生労働相は、「家族が捜しやすい体制をつくるためにページを設置しました」と説明され、「(厚生労働省の特設ページで)より多くの自治体が、(身元不明の認知症高齢者の)顔写真も含めて公表することで、(全国規模の)ネットワークができる」と述べられ、各自治体への協力を呼びかけました。


これからの日本の社会保障において、認知症の問題と言うのは大きな課題の一つとして挙げられています。認知症が原因となっている行方不明者が1万人をこえているとは驚きですが、現状の体制から鑑みると納得できる値でもあります。いかにその人らしく終末期を過ごすのかというのは、一筋縄ではいきません。それは安全を確保しなければならないからです。事件・事故を回避しようとすると、一番に思いつくのが拘束です。事件・事故の発生率は大きく抑制できますが、それが望ましい本人の終末期の姿でしょうか。もちろん事件・事故が起きてはならないので、監視監督が必要となりますが、今の職員配置や在宅での介護体制では限界があります。行方不明者を捜すためのスキームも大事かもしれませんが、それ以前に徘徊による行方不明者が発生しないための地域でのスキームというものが、最重要ではないでしょうか。








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2014年8月11日月曜日

地域医師会に積極関与を  地域包括ケア

日本医師会の横倉義武会長は8月6日、医療介護総合確保法 (医療・介護一括法)に規定されている都道府県計画や市町村計画のほか、地域医療ビジョンの策定を通じて地域包括ケアシステムが構築されるに当たり、これらの取り組みを適切に進めるためには医療の担い手である地域医師会(都道府県医師会、郡市区医師会)が行政と共に中心的な役割を果たすことが重要だと訴えました。
横倉会長は日医会館で開いた定例会見において「それぞれの都道府県、市町村で医療と介護を兼ねる基本方針や計画を策定するようになったことは評価できますが、大切なのは制度を適切に運用することです。そのためには国、都道府県、市町村の各単位で医師会が積極的に関与しなければなりません」と述べられ、都道府県医師会や都市区医師会に対し、日医が提供する医療・介護の需要などに関する情報を積極的に活用するよう呼び掛けました。






地域医療ビジョンの策定スケジュールにも触れ、国に“期限ありき"にならないよう強く要請していく考えをあらためて強調されました。「拙速な対応を強いては元も子もありません。国の(地域医療ビジョンの)ガイドラインも強制的であってはならず、地域の実情をしっか りと反映することを優先させるべきです」と訴えられました。地域医療ビジョンの達成に向けた「協議の場」についても、地域医師会が行政と連携して適切な運営を進めるべきだと指摘されました。

また、地域によっては介護福祉関係の検討会などに医師会が十分に関われていない所もあるとの認識を示され、「例えば在宅医療連携拠点事業や地域ケア会議などへの郡市区医師会の参加状況に温度差が見られるケースがあります。地域医師会の積極的な参画・関与を全国的なものにするのも日医の使命です」と述べられ、医療や介護の体制づくりに地域の医師会が関与するよう働き掛ける方針を示されました。
横倉会長は、日医ホームページからアクセスできる地域医療情報システム「JMAP」も説明 されました。JMAPは、都道府県医師会や都市区医師会、会員がそれぞれの将来の医療や介護の提供体制を検討する際の材料として活用してもらうのが目的です。横倉会長は「それぞれの病院や診療所の情報が掲載されているほか、地域間の医療需給の比較などもできます。積極的に活用してもらいたいです」と呼び掛けました。

地域医療ビジョンの策定を通じて地域包括ケアシステムが構築されるに当たり地域の医師会がどのような役割を担っていくのか注目が寄せられています。地域包括ケアシステムを構築するためには誰かが先導役を担わなければ実現困難でありますし、その先導役を特定の医療法人が担えば要らないところに角が立つことも考えられます。しかし、医師会もその役を担うことはたやすいことではありません。地域を取りまとめていかなければならないことで、多方面で調整が必要となってきます。連携に必要なモノはこの調整力でしょう。いかにそれぞれの医師会が調整力を発揮しイニシアチブをとっていけるのか、大役ではありますが、医師会にとっては大きな機会だと思います。








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2014年8月10日日曜日

神奈川県がん診療連携指定病院に指定  平塚市民病院

平塚市民病院が「神奈川県がん診療連携指定病院」に指定されました。湘南西部(大磯町・二宮町・平塚市・秦野市・伊勢原市)では平塚共済病院に続く指定病院で、住み慣れた地域で質の高いがん医療を安心して受けられるように目指します。7月18日に県庁で交付式があり、平塚市民病院の金井歳雄院長が指定書を受け取りました。指定期間は同日から2018年3月31日までとなっております。

 がん診療連携指定病院は国が指定する「地域がん診療連携拠点病院」と同レベルの機能を持ち、神奈川県知事が独自に指定する病院です。日本人に多い胃がん・肺がん・肝がん・大腸がん・乳がんなどの手術と放射線療法、化学療法を効果的に組み合わせた集学的治療や緩和ケアの提供、地域の医療機関との連携協力、がん患者と家族に対する相談支援、セカンドオピニオン(※)の提示などに取り組みます。







 指定を受けるには医師・看護師・薬剤師ら診療従事者の配置、診療実績、相談支援体制などの要件を満たさなければなりません。国は今年、がん診療連携拠点病院の指定要件を変更しました。「年間400件以上の悪性腫瘍手術件数」「病理診断に携わる常勤医師の配置」などと、ハードルを高くした新たな指針が猶予期間を設けて1月に示されました。神奈川県は県指定病院の要件について国の新指針に沿って同等に強化するかどうか、8月から検討を始める予定です。今回指定を受けた平塚市民病院の指定要件は旧指針に基づくものです。今後、県指定病院の要件も新指針へ移行される予定に対応し、要件を満たす体制を整えていく必要があります。

 高齢化や生活習慣の変化に伴い、神奈川県内のがん患者とがんによる死亡者は増加すると予測されています。神奈川県は昨年度「がん対策推進計画」を策定しました。がんの予防と早期発見・がん医療の充実・患者への支援・がんに対する理解を重要課題としてがん対策に取り組んでいます。

 神奈川県内を11区域に分けた二次保健医療圏にがん診療連携指定病院は9カ所あり、神奈川県は17年度までに全ての医療圏に1カ所以上整備することを目指しています。国指定の拠点病院は県立がんセンターをはじめ北里大学病院や藤沢市民病院など15カ所あります。湘南西部では東海大学医学部付属病院(伊勢原市)がその指定を受けており、当地区に国・県指定の中核施設は3カ所となりました。

 平塚市民病院では「病院の理念である安心と信頼に基づいて地域医療に貢献できるよう、がん診療の質の向上を図っていきたい」と話しております。


先日、厚生労働省は、がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会で新たに「がん診療連携拠点病院」として1 0病院の指定を認めました。現在の医療において、がんに対する予防と治療は非常に重要となっています。その動きは国だけでなく、各都道府県にも波及してきている表れだと思います。特に神奈川県の人口は年々増加を続けており、この先も増加が予測されています。ただそれに伴ない高齢者も増加しますし、医療費も増加していきます。いかに早く医療の体制を整えて2025年に向かっていくのか、各医療機関だけでなく地域の都道府県と共に進めていかなければ実現は困難でしょう。








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2014年8月9日土曜日

トモニン 仕事と介護の両立支援のシンボルマーク

厚生労働省は8月6日、公募で決めた「仕事と介護を両立できる職場環境」整備促進のシンボルマークの愛称を「トモニン」とすることを発表しました。178件の応募作品から選ばれたもので、「介護をする人を職場で支えて、ともに頑張っていく」という意味が込められているといいます。

 厚生労働省では、親の介護などで離職を余儀なくされる人の中には、企業でも中核的な役割を担う人が少なくないことから、「離職防止は、企業の持続的な発展にとって重要な課題であります」(職業家庭両立課)とし、積極的に介護離職防止に取り組む企業であることを示すシンボルマークを公募することを決定しました。今年3月には、WORK(仕事)の頭文字Wと、CARE(介護)の頭文字Cを組み合わせて、仕事と介護を両立させ、未来を歩くイメージを表現したマークを選出していました。







 シンボルマークと愛称を活用するには、厚生労働省の両立支援のひろばに、自社の介護休業関係の取り組みなどを登録すればよいです。ただ、独占的または営利目的での使用、趣旨に反した不適当な使用、育児・介護休業法や労働基準法などの労働関係法令に違反する重大な事実がある企業―では使用することができません。

 今後、厚生労働省では、マークや愛称を用いて、介護離職を未然に防ぐための取り組みを普及・推進する方針です。


これから超高齢化が進み介護の問題を少子化が拍車をかけていきます。みこし型からきばせん型そしてかたぐるま型などと高齢者を支える負担は大きくなってきます。どうしても介護に重きをおくと、仕事との両立は困難になってきます。いかに介護サービスを利用しながら介護をしていくかということがポイントですが、厚生労働省の方向性では施設から在宅へのシフトを強く謳っています。在宅で看れる家族がいなければ実現不可能です。かたや介護による離職防止を謳うとは、両方が実現すれば夢のような話でしょう。シンボルマークや愛称を考えるより、もっと優先課題があると感じるのは私だけでしょうか。








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2014年8月8日金曜日

社会福祉法人が私的整理  宇治病院

経営不振に陥った社会福祉法人を民間企業のノウハウを活用して再生する動きが出てきました。宇治病院(社会福祉法人宇治病院)は社会福祉法人として初めて私的整理手続きに入ることとなりました。京都銀行が債権を放棄し、東証1部上場のノーリツ鋼機グループが再生を支援することとなります。事業を続けながら再生できる私的整理を選び、患者や老人ホーム入居者などへの支障を回避することを目指します。

 政府系ファンドの地域経済活性化支援機構が私的整理と金融支援を仲介します。再生の体制が整い次第、和歌山市に本社を置く精密機器メーカーのノーリツ鋼機グループによる支援も発表する見込みです。
 社会福祉法人は高齢者や障害者を受け入れる福祉施設や保育所などを運営する非営利の法人です。法人税は課されず、国や地方からの補助も受けることができますので、一般企業からすればうらやましい限りだと思います。
 社会福祉法人を取り巻く事業環境は、企業の参入を促した2000年の介護保険法施行と介護報酬の引き下げなど収支悪化につながった2006年の同法改正で激変しました。
 一般企業も含めた老人ホームや在宅介護サービスなどを展開する「老人福祉事業者」の倒産件数は2013年に2000年以降で最多となる46件を記録しました。税制優遇や補助金を受けていても、経営戦略のまずさで経営不振に陥る社会福祉法人が今後も増えるとみられています。





 宇治病院の私的整理は、民間企業のノウハウを生かした社会福祉法人再生のモデルケースとなる公算が大きいです。
 宇治病院は病院のほか、200人程度の利用者を抱える介護事業も兼営しています。3、4年前から経営上の混乱で医師の大量離職が相次ぎ、大幅な減収に陥り、赤字に転落していました。特別養護老人ホームも運営しており、破綻すれば事業を継続できず、入居者が退去を迫られるなど混乱が生じる恐れが強まっていました。
 私的整理で事業存続を目指すのは、宇治市が病床不足で、福祉施設も全国平均と比べ少ない地域だからです。病院以外の介護事業は黒字で、地元自治体も事業の継続を望んでおります。
 京都銀行は宇治病院向けの債権を放棄し、残る債権も劣後ローンに振り替えます。金融支援額は公表しない方向です。宇治病院は保有する不動産の含み損を抱えており、実質債務超過状態にあるとみられ、債務を免除しなければ、再生できないと判断したもようです。
 宇治病院は経営陣を刷新し、新たな体制の下で再生を目指します。社会福祉法人は非営利法人で、企業支援のように出資したり買収したりしてスポンサーになることはできません。しかし、経営改善には民間企業の経営ノウハウや事業運営の手法を取り入れる必要があります。
 政府が出資する地域支援機構も幹部を派遣したり官民共同支援の姿を作ったりして、事実上、ノーリツ鋼機グループが再生を請け負う形になります。
 実際に再生作業を請け負うのは、ノーリツ鋼機のグループ会社で医療機関・福祉事業者向けのコンサルティングや債権の買い取りを手がけるエヌエスパートナーズ(東京・港)になります。人材の派遣も検討しています。ノーリツ鋼機は医療関連機器も製造するメーカーで、医療関連企業の買収を繰り返しています。今回の支援は経営ノウハウを取得する狙いがあるとみられています。
 社会福祉法人を巡っては、厚生労働省も社会福祉法改正を目指し、ガバナンス(統治)強化に着手しており、宇治病院の再生は制度見直し議論にも影響を与えそうです。
 厚生労働省は7月4日、「社会福祉法人制度のあり方について」と題した報告書を発表しました。組織改革や財務面の強化策を盛り込んだ社会福祉法の改正案を作る作業に入っています。

病院を営んでいた社会福祉法人が破たんするなんて、介護施設の経営は黒字を維持していたとのことですが、いかに病院経営が簡単ではないかということを露呈しております。宇治病院は253床でうち48床が療養病棟です。宇治市は病床不足で、福祉施設も全国平均と比べ少ない地域とのことですが、山城北医療圏には宇治徳州会病院(400床)や第二岡本総合病院(419床)・宇治武田病院(177床)などもあります。病院経営は何と言っても医師の確保が大きく影響を及ぼします。その問題を民間企業が入ってどのように再建してけるのか、注目です。








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急性期は下方修正

厚生労働省DPC研究班長の伏見清秀氏 (東京医科歯科大教授)は8月5日 、社会保障・税一体改革の2025年の将来像として政府が推計した医療機能別の必要病床数見込みについて、 「高度急性期」と「一般急性期」を合わせた急性期病床数は多めに推計されているとし、下方修正が必要と指摘しました。一方で「亜急性期・回復期リハ等」は推計値を上回る病床数が必要になるとしています。
政府の推計では、改革シナリオ(各ニーズの単純な病床換算)での2025年の必要病床数として、高度急性期が22万床(平均在院日数15~16日、病床稼働率70%)、一般急性期が46万床(平均在院日数9日、病床稼働率70%)、亜急性期・回復期リハ等が35万床との数字が出ています。





伏見氏は「現在の医療現場の病床稼働率や平均在院日数から見ても、2025年に急性期病床(高度急性期+一般急性期)は68万床も必要ではなく、55万床程度で収まる見通しです」と述べられました。一方で亜急性期・回復期リハ等は、急性期患者の受け皿機能なども考慮すると、推計値を大きく上回る52万床程度が必要になると指摘されました。伏見氏は「必要病床数は、これからの医療提供体制を考えていく上で最も基礎となる重要なデータです。政府の推計は、現場への影響を考慮し、全体の病床数を大きく変えずに急性期と回復期の配分をどうしたら維持できるかという形でシミュレーションをしたのではないか」としており、急性期病床が多めに推計されていると指摘されました。
その上で「病床稼働率80%以上が安定的な病院経営としては一般的な数値であることや、平均在院日数9日への短縮は可能であることを考えると一般急性期は約40万床。一方、大学病院でも平均在院日数が15日を切っており、2025年には12日程度に短縮されています。病床稼働率70%では病院経営が成立しないことから80%で試算すると、高度急性期病床は15万床程度になる見通しです」とし、「高度急性期と一般急性期の定義の違いは明確ではないが、急性期病床全体としておおよそ55万床で充足すると試算できます。医療現場では、急性期病院の病床転換の動きがさらに活発になっていくだろう」と述べられました。

病床機能報告制度にむけて急性期病院とくに7対1病床の病院にとっては、決断の時期が差し迫ってきております。ただ進むも留まるも厳しい経営環境であることはみなが予測できることであり、だからこそ院長理事長は頭を悩ませているのではないでしょうか。ただやはり医療とは急性期であるという信念を持ち続けている医師はまだまだ多いというか大学医局をはじめ圧倒多数でしょう。急性期でなければ医師を派遣しても仕方ないでしょ、とまでおっしゃる大学医局すらありますから。しかし、これからの地域のニーズと厚生労働省の方針を見据えると、最適な医療を提供できる病院へシフトすることが望ましいのではないでしょうか。








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2014年8月7日木曜日

介議療養型医療施設の再編について

2015年度介護報酬改定に向けて、厚生労働省は8月7日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、介護療養型医療施設が担っている看取りやターミナルケア機能の確保策などについて具体的な論議をスタートさせます。医療療養病床 との間で看取りやターミナルケアの提供に違いがあるのか、などを論点として提示する方針です。厚労省老健局老人保健課の追井正深課長は、現行の介護療養病床が果たしている「役割」について、「廃止」ではなく「転換・再編」の方向で議論を進めていきたいとの考えを示しました。
迫井課長は「介護療養病床については、廃止という“制度上の位置付け"と 、現にある施設にどのようなサービスを提供・継続してもらうのかという“現実論"とは全く別の話です。その施設の建物をなくしたり、事業をやめたりするということではなく、あくまでも (老人保健施設などへの)転換や機能分化であり、厚労省の対応は当初から一貫して療養病床の“再編"だということを理解してほしいです」と説明されました。
介護療養病床については、2011年度末までに老人保健施設等へ転換することが決まっていましたが、2011年の通常国会で成立した介護保険法等の一部改正で、現存の介護療養病床は 6年間、転換期限を延長する、2012年度以降は介護療養病床の新設は認めない、介護療養病床から老人保健施設等への転換を円滑に進めるための必要な追加的支援策を実施―などの措置が取られました。





介護療養病床の今後の方向性をめぐっては、日本医師会の鈴木邦彦常任理事は、看取りの場として重要な役割を担っているとして廃止に慎重姿勢を示しています。
看護配置25対1の医療療養病床を持つ病院を会員に抱える全日本病院協会や日本医療法人協会なども強い関心を示しています。医法協の日野頌三会長は「時代背景を考えると、高齢者用の施設数を一定程度確保する必要があります。介護療養型医療施設については、できるだけ早く方向を示してほしいです」と指摘されました。全日病の猪口雄二副会長は「介護療養病床は医療現場で一定の機能を果たしています。今後の方向は、横断調査などの結果に基づき判断すべきです」と述べられました。両氏とも、介護療養病床の活用が必要との認識で一致しています。
一方、日本慢性期医療協会の武久洋二会長は「2014年度診療報酬改定では、7対 1入院基本料の要件強化に伴い在宅復帰率の導入が進められ、地域包括ケア病床だけでは受け止め切れない医療必要度の高い患者については、慢性期・療養病床で対応していかざるを得ない状況になることは必至です。急性期病床の締め付けで、患者の流れが大きく変わろうとしているだけに、もはや介護療養病床の廃止や存続の議論をしている段階ではありません」と述べられ、介護療養病床と慢性期医療を含めた再編の議論に移るべきとの認識を示されました。「今回の急性期の病床機能改革が医療・介護の連携につながるようにすべきです」とも述べられ、経過措置が切れる9月末に向けて、90日を超えて入院する特定患者などが大きく動き出すことを考慮した検討が必要と指摘しました。
その上で武久会長は「患者の流れの大きな変化に対応するには、地域包括ケア病棟の看護配置13対1を下回る看護配置15対1の一般病床と20対1の医療療養で既存の慢性期患者に対応し、慢性期患者の中で医療度の高い患者は“強化型療養病床"(重度長期慢性期病棟)として医療療養の20対1と25対1で診るようにすべきです。さらに要介護高齢者については介護療養25対1と30対1で対応するなど、慢性期医療と介護療養の在り方に関して抜本的な改編策を講じる必要があります」と述べられ、来年度の介護報酬改定だけでなく2016年度の診療報酬改定も視野に入れた論議が必要と指摘されました。

急性期の機能が大きく変われば、療養や慢性期医療に関わる流れも大きく変わることは想像に難くありません。7対1病床も大きく削減される中、在宅復帰についても促進が強まっていきますので、新設の地域包括ケア病床だけではまかなうことはできないでしょう。全体の適切な流れを大事にしながら、介議療養型医療施設の在り方というのが確立されていくのだと思います。しかし、社会保障費を抑制しなければならないという最大の課題をこなしつつ厚生労働省がどのような方向性を指し示すのかと考えると、あまり血の通った策が出てくる可能性も低いのが今のところの現状かもしれません。








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理化学研究所発生・再生科学総合研究センター STAP論文の笹井氏 自殺

STAP細胞論文の共同執筆者だった理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹副センター長 (52)が、センターに隣接する研究棟内で自殺しているのが8月5日見つかりました。兵庫県警や理研によると、秘書の机の上などから、複数の関係者に宛てた遺書のようなものが見つかったとのことです。
笹井氏はSTAP論文を執筆した理研の小保方晴子研究ユニットリーダー(30)の指導役で、再生医療研究の第一人者でした。 STAP細胞の有無を確かめる検証実験が続いていますが、論文に関係する主要研究者の1人が亡くなったことで真相究明への影響も懸念されています。






県警と理研によると、笹井氏はセンターの敷地内にある「先端医療センター研究棟」5階の階段部分の手すりに、ひも状のものをかけて、首をつっていたとのことです。半袖シャツにスラックス姿で、踊り場に靴がそろえてありました。巡回中の先端医療センター関係者が発見し、午前9時すぎに110番 があったといいます。そして午前11時ごろ、死亡が確認されました。研究棟は5階建てで、2階に笹井氏の研究室がありました。理研関係者によると、STAP細胞の論文問題が起きてから、笹井氏は心療内科を受診しており、体調が悪そうだったといいます。笹井氏は今年1月に理研が成果を発表した記者会見にも同席してお り、論文疑惑が発覚した後も、細胞が存在する可能性を強調していました。

このニュースは多くの医療従事者にも衝撃を与えたと思います。再生医療研究の第一人者だった笹井氏が命を絶ったということは、それが答えなのだと捉える方も多くいます。もちろんSTAP細胞の存在を信じて検証実験の結果に夢と希望を抱いている方も多くいます。何かのカタチで結論を出さなくてはならないのですが、人の命を救うはずの医療において絶たれてしまった命がそこにあったことは、これ以上不幸なことは無いと思います。ご冥福をお祈り致します。








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2014年8月6日水曜日

緊急手術手当  東大病院

東京大病院は勤務医の負担軽減に向けて、時間外・休日・深夜に緊急に外科手術を行った全診療科の医師を対象に、9月から新たな手当「緊急手術等手当」を支給する方針を決めました。手当の財源とするため、8月に「手術・処置の休日・時間外・深夜加算1」の算定を開始します。加算による収入の約8割を医師の手当に充当する方針です。

岩中督副院長 (小児外科学教授)は7月31日、「診療科を問わず、常勤医、非常勤医、研修医ら全ての医師に対する手当です。東大病院の今年度の経営計画は極めて厳しい状況ですが、医師の負担軽減策を進めることが重要との考えから、休日・時間外・深夜加算1の収入から手当分を捻出していく」と説明されました。






東京大病院ではすでに医師への手当として、宿日直手当や緊急コールで夜間診療した場合の手当(内科5000円、外科1万円)があります。9月からはこれに緊急手術等手当が加わることになります。緊急手術等手当の支給対象は全科の医師で、所定時間(平日午前9時~午後5時)以外に緊急に外科手術(1000点以上の処置・分娩も含む)を行った場合に支給するとします。支給金額は▽3時間以上の手術・処置は1件につき3万円▽3時間未満の手術・処置は1件につき1万5000円▽分娩は1件につき1万 5000円―などと規定しています。手術・処置の「休日・時間外・深夜加算1」は医療従事者の負担軽減への取り組みとして2014年度診療報酬改定で新設されました。▽予定手術前の当直(緊急呼び出し当番を含む)の免除を実施▽「交代勤務制」「チーム制」「時間外・休日・深夜の手術・1000点以上の処置の実施に係る医師の手当支給」の3つのうち、いずれかを実施一などが要件となっております。日本外科学会や外科系学会社会保険委員会(外保連)の強い働き掛けを受け導入されました。

一方、東京大病院は控除対象外消費税について、税率8%で年間7億4000万円、10%で年間12億4000万円になると試算しています。岩中副院長は「例えば医薬品については、聖域なく後発品へ切り替えるための具体的な検討に入ります。8月中に各診療科と協議していきます」と述べられました。東京大病院では4月から、製薬企業のMRの訪間に対して厳しい規制をかけています。

東京大病院のこのような取り組みは、影響を及ぼしていくと思いますが、その領域は至って健全で力のある病院に限られてしまうのではないかと思います。消費税が8%10%にならなくても経営が厳しい赤字病院が多くあります。もちろんそれらの病院では経営改善の努力が足りていない部分があることは否めませんが、それでも地域の医療のために採算度外視で行なっている医療もあることは事実です。後発品への切り替えは当然ですし、いかに多くの加算を算定できるかシミュレーションをしている病院がほとんどだと思います。加算を算定することは決して報酬に執着度合いが強いからではありません。加算をつけているということは、国がその方向へ誘導しているということです。その先を見越して、病院の方向性を併せていっている病院であれば自然と加算の算定が増えてくるわけです。その加算部分を医師に還元し、強い医療体制を構築していく。本来目指していく病院の姿だと思います。まずは、どの病院も目指すべき方向性をしっかり捉える事が地域で生き残る病院としての最低条件ではないでしょうか。








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DPC制度の行方  CCPマトリックス  病床機能報告

日本病院会の堺常雄会長は8月2日 、日本病院会が東京都内で開いた病院長 ・幹部職員セミナーで基調講演し、DPC病院の約7割を日本病院会の会員病院が占める現状を踏まえ「医療機関群の在り方などDPC制度の今後の政策決定に向けて、日本病院会としても中医協などに提言していきたい」と述べられました。次期診療報酬改定では、一部の疾患について重症度をより詳細に評価する「CCPマトリックス」がDPCに試行導入される可能性があります。堺会長は「CCPマトリックスの重症度評価の広がりや、重症度、医療 ・看護必要度との連動などを見極めながら、DPC制度の精緻化を日本病院会としても推進していきたい」と述べられました。







堺会長は講演後、DPCと病床機能分化の関係について「高度急性期を担う医療機関はDPCI群とⅡ群にまたがる方向なのか、DPC病院の一部も地域包括ケア病棟を担っていくことになるのかなど、幅広い視点で検討していく」と指摘されました。各病院の判断については「地域での立ち位置を考慮しながら地域の需給バランスを踏まえた上で、病床転換などの方策について柔軟に判断すればよいのではないか」と述べられ、地域内の需給バランスを逸脱しなければ、病床転換などの経営判断は規制されるものではないとの認識を示されました。
その上で堺会長は、同日の病院長・幹部職員セミナーで伏見清秀氏(厚生労働省DPC研究班長、東京医科歯科大教授)が指摘した内容に注目しているとしました。伏見氏は「病床機能報告制度のレセプトデータから、各病院の値について地域平均や全国平均と比較した結果が出てきます。最初は病床機能を高度急性期や一般急性期だとして 自主的に報告するが、最終的にはレセプトデータに基づいて病院の機能を分けていくことができそうです。レセプトデータでかなりの部分が見えることから、DPC病院の一部は急性期でないと判断される可能性もあります」と述べられました。他の講演者からは「地域特性は重視される必要があります」との指摘もありました。
堺会長はこれらの指摘を重要視され、「報告制度でのレセプトデータに基づく病床機能分化の重要性について、参加者は再確認できたのではないか。地域医療の需給バランスがレセプトデータから分かれば、病院の立ち位置はおのずと明確になる」と述べられました。

いよいよデータを基にした病院の運営を行なっていく時代へと突入していきます。DPC制度で自病院の情報が筒抜けになりました。しかし反面、ベンチマークをおいて自病院を客観的に分析することもできるようになりました。情報をいかに活用するかで、それぞれの病院の運営に大きく影響を及ぼします。これまで通りの病院運営では生き残れない時代へとなっていくわけです。幸いにも医師はデータが好きです。データに基づいて説明されると納得します。ある意味、病院経営とビッグデータは相性が良いとも言えます。まずは、実績からどのような機能が求められているのか、見えてきます。それを踏まえてこの先どうしていくのか。いかに地域でイニシアチブをとれるのか。課題は山積みだと思います。








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2014年8月5日火曜日

重度化する特養

社会保障審議会・介護給付費分科会 (分科会長=田 中滋 ・慶応大名誉教授)は7月23日、次期介護報酬改定に向けて、特別養護老人ホームや特定施設入居者生活介護をテーマに議論を進めました。
厚生労働省は特養に関する論点として、医療ニーズの高い入所者に対して適切なケアを行う観点から、施設における医療提供体制や介護報酬上の評価の在り方をどう考えるか、これまで個室ユニット型施設の整備が推進されている一方、地域の実情に応じて多床室整備が行われている実態に鑑み、プライバシーに配慮 した多床室の在り方を検討する必要があるのではないか、多床室は室料を含まない光熱費相当分のみが居住費とされているが、今後の居住費の利用者負担の在り方をどう考えるか―など6点を示されました。






特養における医療提供について、同日の会合から参加 した鈴木邦彦委員 (日本医師会常任理事)は 、入居者が重度化する中で「健康管理や療養上の指導を行う配置医師や看護師だけでは不十分」と指摘されました。その上で、特養が住まいに位置付けられる点に言及し「それ以上の医療や看護は、必要に応じて外付けを中心に提供されるべきです」と述べられました。齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)は「必要な時にピンポイントで訪問看護などの連携で入れるような外付けサービスの充実が重要です」とコメントされました。堀田聰子委員 (労働政策研究・研修機構研究員)は「基本的な考え方として、多職種を施設の中に配置することを評価するのではなく、提供されている機能を評価するという考え方が大事になります」と指摘しました。
村上勝彦委員 (全国老人福祉施設協議会日l会長)は 多床室の居住費について、多床室には低所得者の生活を支えている機能があるとして「光熱水費以上の室料の負担を求めることは避けるのが原理原則」と述べられました。田部井康夫委員(認知症の人と家族の会理事)は、プライバシーに配慮した多床室ができても料金が上がれば低所得者にとって縁遠い施設になるとして、「低所得でも入れる個室型の促進を原則とする以外は無いのではないか」との考えを示しました。内田千恵子委員(日本介護福祉士会副会長)は 、個室ユニットが理想とする一方、実際には多床室が適している利用者もいるとして、「個室ユニットだけという考え方ではなく、もっと多様な考え方で施設が造られていけば良い」と述べられました。
7月23日は、次期介護報酬改定に向けて2014年度に実施する7本の調査研究事業の調査票について了承しました。同分科会の介護報酬改定検証・研究委員会ですでに了承された内容です。
7月23日の会合から老健局幹部が出揃ったほか、吉田学・大臣官房審議官 (医療介護連
携担当)と 苧谷秀信・大臣官房審議官(老健担当)が出席され、次回から保険局の渡辺由美子・医療介護連携政策課長も出席されます。

地域包括ケアの構築に向けて、特養のあり方も変化していかなければならない時期に差し迫っているということだと思います。特養は住まいに位置付けられているということです。そして要介護度3以上の方に限定した施設へと特化していきます。ただ住まいとなれば、どんな状態でもプライバシーは確保されるべきです。一日のほとんどの時間をベッドの上で過ごしているからといって、プライバシーを疎かにすることはあってはならないことと思います。ただし、その方その方にとって優先順位の優劣はあると思います。特養の入居者の方にとって何を最優先とするべきか。金銭的な負担を少なく安心を求める方が入居者のセグメントであるのなら、目指すべき方向性を誤まらないように取り組まなければ、地域包括ケアの実現も揺らぐのではないでしょうか。






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7対1堅持も、空床対策は死活問題   筑波メディカルセンター病院

茨城県つくば市の筑波メディカルセンター病院(413床、平均在院日数は11.7日)は、2014年度診療報酬改定でDPCの医療機関群がⅡ群からⅢ群に移りました。しかし、7対1は堅持し、地域の急性期医療を担っていくとの基本方針を決めました。

筑波メディカルセンター病院の中山和則事務部長は、「10月には病床機能報告制度が動き出します。報告内容には病棟単位での患者数の記載が入っており、その病棟からレセブトが上がってこなければ、稼動していないことが明確となります。今後、空床化対策は病院にとって死活問題になっていきます」として、「周辺病院の変化を見ながら、病院が地域医療の中で果たすべき機能を再確認していきたいです」と述べられました。






さらに中山事務部長は「筑波メディカルセンター病院は循環器系の患者が多いけれど、在院 日数が格段に短くなってきています。例えば在院日数2週間の心臓手術が、ステント治療で1週間程度で退院となっています。ICUを使う期間も短くなり、患者にとっては福音ですが、病院経営にとっては大きな課題です」と指摘されました。「外科手術だけでなく内科系治療への適切な評価を、次期診療報酬改定では具体化してもらいたいです」と求められました。

一方、筑波メディカルセンター病院では今年度から、給与体系を従来の人事院勧告に沿った体系から病院独自の俸給制度に改編しました。中山事務部長は「近年の診療報酬改定を見ても、今後、右肩上がりで推移していくことは考えられません。右肩上がりになっている人事院勧告に準じていくことには限界を感じてきました。3年前から病院独自の俸給制度の検討を進めてきました」と述べられました。   多くの7対1病院が急性期としての役割を担っていこうと、高度急性期を目指したり、DPCⅡ群を目指したりとされているところではないでしょうか。地域の環境やニーズを考慮して地域包括ケア病棟として役割を担おうと舵を切っている病院もあります。その中で、DPCⅢ群に移った筑波メディカルセンター病院の決断というのは、ある意味で多くの病院にとって励みにもなっているのではないでしょうか。どのような算定がされようとも、されなくても、地域の為に必要な医療を提供するために特化していく。それが本来の姿勢でしょう。その取組みが認められて、病院の機能が評価され、加算等が算定されるというべきです。それが逆転した発想で自院の病床機能を検討している多くの病院が多いことが、本来のあるべき医療の姿から逸れていってしまった所以ではないでしょうか。確かにキレイ事だけで病院経営ができるほど甘いご時世ではありません。ただ、その心はそのようにありたいものです。








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2014年8月4日月曜日

がん診療連携拠点病院など12病院を指定ヘ

厚生労働省の「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」(座長=垣 添忠生・日本対がん協会長)は7月24日、新要件に基づく「がん診療連携拠点病院」として1 0病院の指定を認めました。新設の「地域がん診療病院」と「特定領域がん診療連携拠点病院」についても、それぞれ1病院の指定を認めました。今後、所定の手続きを経て各都道府県に通知します。

がん診療提供体制については、がん診療連携拠点病院等の整備に関する新たな指針が2014年1月に施行され、拠点病院の指定要件を強化する見直しが行われました。また、拠点病院の整備が困難な医療圏も存在することから、緩和ケアや相談支援、地域連携などの基本的がん診療を行える地域がん診療病院を新設しました。特定のがん診療について実績があり、拠点 としての役割を果たす特定領域がん診療連携拠点病院も新設しました。






同日はがん診療連携拠点病院の申請があった11病院のうち、県立釜石病院 (岩手県 ・釜石保健医療圏)、 いわき市立総合磐城共立病院 (福島県・いわき保健医療圏)、那須赤十字病院 (栃木県・県北保健医療圏)、自治医科大付属さいたま医療センター(埼玉県・さいたま保健医療圏)、東京医科歯科大医学部付属病院(東京都・区中央部保健医療圏)、災害医療センター (東京都・北多摩西部保健医療圏)、恩賜財団済生会横浜市東部病院(神奈川県・横浜北部保健医療圏)、横浜市立大付属市民総合医療センター(神奈川県・横浜南部保健医療圏)、大阪府立急性期・総合医療センター(大阪府・大阪市保健医療圏)、市立堺病院(堺市保健医療圏)― の10病院について指定を認めました。足利赤十字病院 (栃木県・両毛保健医療圏)は検討の結果、指定は適当ではないと判断されました。
新設の地域がん診療病院には、芳賀赤十宇病院(栃木県・県東保健医療圏)の指定が認められました。特定領域がん診療連携拠点病院には、乳がん治療に実績のある博愛会相良病院(鹿児島県・鹿児島保健医療圏)が指定されることになりました。

これから医療に対する資源は選択と集中が進んでいくと見られます。とくにがん診療については本格的に力を入れていくことになると思いますが、がん診療連携拠点病院の指定もその一環です。ただがん診療連携拠点病院が高度急性期になるというわけでもなく、複数の政策が入り混じり外部の方からは少し分かりにくくなってきつつあります。ただこれからは機能分化が進んでいくことになりますから、それぞれの病院がしっかりと特徴(機能)を掲げて地域に表わせていければ、本来の国が目指している姿に近づくでしょう。ただその実現は、まだまだ先になりそうです。








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医療・年金の自然増は8300億円  15年度予算概算要求基準

政府は7月25日、2015年度予算概算要求の基本方針を閣議了解しました。医療・年金などの経費は今年度予算分 (293兆円)に自然増分8300億円の範囲内で上乗せした額の要求を認めました。裁量的経費については、今年度予算額から1割を削減する一方、骨太の方針2014や成長戦略改訂版などを踏まえた諸課題に充当する「新しい日本のための優先課題推進枠」として要望基礎額の30%(約4兆円)の要求を認めました。
同日の経済財政諮問会議の議論を経て、閣議了解しました。自然増については「高齢化による増加とそれ以外の要因による増加などその内容を厳しく精査していくことを含め、合理化・効率化に最大限取り組み、その結果を15年度予算に反映させることとする」としました。消費税10%への引き上げに伴う社会保障の充実については、引き上げの判断も含めて予算編成過程で検討することとなります。
経済財政諮問会議は同日「15年度予算の全体像」も了承しました。医療・介護を中心とした社会保障給付の自然増の内容を厳しく精査する、地域横断的な医療・介護情報のICT化による「見える化」を進め、先進的事例の普及などによって支出の効率化を図る、地域医療構想と整合的な医療費水準などに関する目標設定などを通じて医療・介護提供体制の適正化を推進する、薬価調査・薬価改定の在り方などについてその頻度も含め検討する、介護報酬改定で社会福祉法人の内部留保の状況も含めた適正化を行いつつ、介護保険サービス事業者の経営状況などを勘案して見直す一などが盛り込まれています。






麻生太郎財務相は7月25日の閣議後の会見で、2015年度予算編成に向けて年金・医療など社会保障分野の自然増の内容を厳しく精査し、合理化・効率化に最大限努める考えを示されました。「持続可能な社会保障制度にするためには(保険料や税財源で賄い切れていない現状から脱却し)給付と負担のバランスを取ることが急務です。毎年1兆円の自然増があるといわれるが、それではとても財政は持たない」と述べられました。

また、田村憲久厚生労働相は7月25日の閣議後の会見で、2015年度予算の概算要求について、社会保障の質を落とさずに効率化を進めるための予算要求にするとの考えを示されました。「医療、介護、障害者福祉を含めて社会保障の質が落ちれば、国民の皆さまからお叱りを受けることになる」とした上で「質が落ちず、一方で効率化が進められるところはしっかりと進めていくということで、年末に向けて予算要求していく」と述べられました。同日に閣議了解された15年度予算の「概算要求に当たっての基本的な方針」では、年金・医療などに関する自然増分8300億円を加算した予算要求が認められた一方で、同経費について合理化・効率化に最大限取り組み、予算に反映させるとの方針も盛り込まれました。田村憲久厚生労働相は「これまでもそういう文言はいろいろなところにあり、効率化は不断の努力をしてきた」としながら、「その中身は精査しなければならず、医療であれば医療の高度化のようにいろいろと要因があるので、どのような形で効率化するか、年末にかけて調整していかなければならない」と述べられました。「新しい日本のための優先課題推進枠」として3割増の要求が認められたことを受け、「こうした別枠を使って、政策的に必要 となる部分に関して要求する」とも述べられました。 抜本的な少子高齢化対策や、若者の東京への流出を止めてそれぞれの地域で充実した職業生活を営むための施策に関する予算も要求する方針を示しました。田村憲久厚生労働相は、政府が「まち・ひと・しごと創生本部」を設置することを踏まえ、「地方創生」に向けた施策を検討する「まち・ひと・しごと創生政策検討チーム」(主査=厚生労働事務次官)を厚生労働省内に設置することを発表しました。その上で「積極的にアイデアを出し、予算要求にも反映させていきたい」と述べられました。同チームには医政・健康・老健・保険の各局長も参加します。


医療・年金の自然増での8300億円は決して少ない額ではありません。合理化・効率化に最大限努めると声多く挙がっておりますが、これからの病院経営にも大きな影響を及ぼしていくことが予想されます。決して各病院がどんぶり勘定で多くの診療報酬を請求している訳ではありません。患者のことを思い、最適な医療を提供しその代価として必要な分を請求しているのですが、その絶対数を減らすような施策がこれから次々に出てくるのでしょう。また病院自体というか病床の削減も進んでいくことでしょう。医療は決して営利主義で行なっている訳では無く、公共インフラの機能として役割を担っている自負もあると思います。ただこれからは少しずつそのやり方を変えていくことが急務となってくるでしょう。








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2014年8月3日日曜日

「現時点」と「6年後」の各病棟機能を毎年報告

厚生労働省は7月24日に、「病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会」を開催しました。この日は議論の整理を行っており、病床機能情報報告制度の大枠が固まりました。

 社会保障・税一体改革の中では、病院・病床の機能を分化し、効率的な医療提供体制を再構築する方向が示されました。そこで、医療介護総合確保推進法では「病院が、各病棟の機能を自ら選択して都道府県に報告し、都道府県が病棟機能の状況や人口動態等をベースに『地域医療構想(地域医療ビジョン)』を策定する」との仕組みを打出しています。

 検討会では、法律成立以前から「病床機能報告制度」の詳細について議論を重ね、この日、制度の枠組みを固めるに至りました。
 まず、全病院・全有床診療所は、毎年、各病棟の機能を都道府県に報告することになります。 報告するのは、「毎年7月1日時点の病棟機能(現時点の病棟機能)」と、「今後の病棟機能の方向性(6年後の病棟機能)」です。
 後者の「今後の病棟機能の方向性」については、「平成37年(2025年)時点の病棟機能」と「6年後の病棟機能の予定」のいずれとすべきかで委員の意見は分かれていましたが、「地域医療構想実現のための協議を行う際、各医療機関の意向等について共通の認識をもつための情報を収集する」という目的に照らして、「6年後の病棟機能」について報告を求めることで決着しました。 もっとも「平成37年(2025年)時点の病棟機能の予定」も、任意での報告が認められています。この結果、病棟機能については、当面、次のように報告することになります。

●平成26年10月に、「平成26年7月1日時点の病棟機能」と「平成32年の病棟機能予定(それ以前に変更予定がある場合には、その情報も報告する)」を必ず報告する。平成37年の病棟機能の予定については、任意で報告することができる。
●平成27年(報告期限は未定)に、「平成27年7月1日時点の病棟機能」と「平成33年の病棟機能予定」を必ず報告する。平成37年の病棟機能予定についても任意で報告することができる。
●平成28年(報告期限は未定)に、「平成28年7月1日時点の病棟機能」と「平成34年の病棟機能予定」を必ず報告する。平成37年の病棟機能予定についても任意で報告することができる。

 今後、報告制度を稼動する中で、「今後の方向」の時点(6年後の予定でよいのか?)などを必要に応じて見直していくこととなります。


 医療機関が報告する病棟機能は、(1)高度急性期(2)急性期(3)回復期(4)慢性期―の4つになります。各病棟がいずれの機能を持つかを病院自らが選択し、都道府県に報告することになります。
 なお、4つの機能の内容は現時点では「定性的」に規定されており、今後、報告制度を稼動させるなかでデータを集積し、「定量的」な基準を模索していくことになります。
 ところで、(1)の高度急性期の内容は「急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、診療密度が特に高い医療を提供する機能」と定義され、(2)の急性期の内容は「急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能」と定義されているように、(1)と(2)の線引きがわかりにくいのが現状です。
 そこで厚労省は、この日の会合に「高度急性期機能に該当すると考えられる病棟の例」として、(i)特定機能病院において、急性期の患者に対して診療密度が特に高い医療を提供する病棟(ii)救命救急病棟、集中治療室、ハイケアユニット、新生児集中治療室、新生児治療回復室、小児集中治療室、総合周産期集中治療室であって、急性期の患者に対して診療密度が特に高い医療を提供する病棟―を示しました。
 しかし委員からは「高度急性期を限定するものと誤解されるのではないか」との指摘が相次ぎ、修正されることとなっています。
 ちなみに、上記例の意図は「特定機能病院やICUを持つ病院であっても、すべての病棟が高度急性期となるわけではありません。逆に、たとえばDPCのIII群病院であっても、診療密度が特に高い医療を行う病棟は高度急性期と認められる」という点にあると考えられます。







 医療機関が報告するのは「病棟の機能」だけではありません。どのような人員・構造を有しているのか、どのような医療を行っているのかも、医療機関から都道府県に報告することになっています。
 まず『構造設備・人員配置等』については、毎年7月1日時点の許可病床数、主とする診療科、保有するCTやMRI・PET、看取り状況などを医療機関または病棟単位で報告します。
 また『医療内容』については、全身麻酔下手術の実施件数、がん手術件数、救急患者への対応状況、退院調整の実施状況、リハビリの実施状況、難病患者の受入れ実績、在宅医療の状況などを報告します。
 もっとも医療機関の負担を考慮し、レセプトの情報やNDB(ナショナルデータベース)の枠組みを活用されます。
 たとえば、救急患者への対応状況については、【救急搬送診療料】や【院内トリアージ実施料】【救急医療管理加算】【救急搬送患者地域連携紹介加算】などの算定状況を、レセプトを活用して都道府県自らが把握します。つまり、多くの情報については医療機関が改めて集計し報告する必要はありません。
 当面は、毎年7月診療分のレセプトを対象に集計しますが、今後、複数月あるいは通年のデータを収集するか否かについて改めて検討されることになっています。
 なお、次期診療報酬改定に合わせて、レセプトに病棟コードを入力する欄を設ける予定であり、医療内容については、次期改定までは医療機関単位で、次期改定以後は病棟単位で報告することになります。


 病床機能報告制度は、今年(平成26年)10月から運用が開始される(医療機関が実際に報告を行う)ため、厚労省は8月にも関係の政省令や通知を整備する考えです。
 厚労省医政局総務課の担当者は、医療機関向けの「病棟機能報告マニュアル」のようなものを作成する考えも示しています。
 ちなみに冒頭に述べた「地域医療構想(地域医療ビジョン)」を策定するにあたり、厚労省はガイドラインを作成します。このガイドライン作成に向けた検討会が9月にも発足し、平成26年内にガイドラインを固める模様です。


病床機能情報報告制度の大枠が固まり、各病院においては取り急ぎ10月の報告に向けて事前準備を始めていくことになります。具体的には厚生労働省が作成する「病棟機能報告マニュアル」が通達されてから本格的になっていくかと思いますが、ただ重要なのは、現時点の報告だけでは無く、6年後の病棟機能が含まれていることです。これは厚生労働省としてもとても良い施策だと感じます。今がどうかということも重要ですが、しっかり先をみて取り組んでいこうという各病院の計画やビジョンを尊重しているということです。ただ実際には各都道府県がまとめる地域医療ビジョンによって、方向性がそぐわなければ叶わないモノとなってしまうかもしれませんが、これからの病院経営は経営力が問われるようになってくることは間違いないと感じるところです。








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2014年8月1日金曜日

医療機関での携帯電話使用について

 日本医師会の石川広己常任理事は7月23日の記者会見で、総務省や携帯電話関連会社などでつくる電波環境協議会が取りまとめた「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針案」に対して見解を述べられました。携帯電話端末による電磁波の影響をなくすために担当者を配置すべきなどとしていることに対し、医療機関に過度の負担が生じないよう、指針の周知・運営の際には十分注意すべきだとの考えを示されました。


 指針案では、病室などでの携帯電話の使用は問題ないとした上で、医療機関での携帯電話の使用に関する適切なルールづくり、電磁波で医療用電気機器の動作に影響が生じる恐れがあるため、携帯電話端末を医療用電気機器の上に置かない、電磁波による他の機器への影響を防ぐため、良好な院内環境を図るための担当者の配置―などが必要だとしています。指針案をめぐっては、7月22日までパブリックコメントが実施され、日本医師会は7月22日に意見書を提出しました。







 意見書によると、「指針の内容は最大限、遵守されるべき」としながらも、電磁波の影響をなくすための担当者の配置に関して、現実的にその体制を構築できる医療機関は限られていると指摘しました。医療機関に負担が生じないような対応が必要だとしました。

 また、厚生労働省から関連する通知などが出た場合、医療界から広く意見を集めて対応すべきとしました。一方、医療用の電気機器メーカーには、電磁波の影響といったリスク情報の提供や適切な注意喚起、電磁波の影響が少ない安全な機器の開発を求めました。

 会見で石川常任理事は、「携帯電話や無線通信器は日進月歩で変わっていくことが予想されます。指針を柔軟にアップデートしていけるような体制を構築していかなければならない」と述べられました。


電子機器には精密な電子回路が内蔵されていますので、比較的弱い電波でも影響を受ける可能性があります。 電子機器そのものにも電波の影響を受けにくくするための対策がとられていますが、万全ではありません。 携帯電話の普及によって電子機器と近接する機会も増えるため、携帯電話の電波が電子機器に影響をあたえる場合が考えられます。 特に、病院内の医療機器や植込み型心臓ペースメーカ、植込み型除細動器などが誤った動作をしないように注意が必要です。
植込み型医療機器への影響の発生・防止に関する情報としては、平成9年に不要電波問題対策協議会(学識経験者、関係省庁、関係業界団体等から構成。現在の電波環境協議会。事務局:(社)電波産業会。)により、医療機関の医用電気機器をも対象とした「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」が策定されています。

電波の植込み型医療機器(植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器)への影響に関する調査として、LTE方式の携帯電話端末について実機による影響測定を実施した結果、植込み型医療機器の動作への影響は確認されませんでした。

ちなみに、携帯電話などから発生する電波については、総務省が電波利用における安全基準である「電波防護指針」を設け、人体に影響を与えない電波の強さの基準値を電波法、電波法施行規則、無線設備規則に定めていますので、携帯電話からの電波が健康に影響を及ぼすことはないと考えられます。

ただ効率化を図るために普及してきた携帯電話をはじめとした電気機器の利用を止めて、人力でカバーするという策はあまりにも稚拙な考えではないでしょうか。ただし病院内は絶対に安全な空間を維持しなければなりません。それが我々の最低限の務めです。それに反するのであれば、携帯電話も使用を禁じることも当然かもしれませんが、0か1かの決定ではない最善の策を我々自分たちで見つけ出していかなければならないということです。






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