2014年10月31日金曜日

大病院の初診・再診料の負担額   国立大学附属病院長会議常置委員会 山本修一委員長

紹介状がなく大病院 (特定機能病院)を受診した患者の初・再診時に定額負担5000円を求める意見が社会保障審議会・医療保険部会で強まっています。国立大学附属病院長会議常置委員会の山本修一委員長(千葉大病院長)、日本私立医科大学協会・病院部会担当の小山信輌理事(東邦大医学部特任教授)は、定額負担が導入された場合、選定療養として行っている徴収を定額負担に切り替え、患者負担を極力抑える形で各病院が対応するだろうとの見方で一致しました。両氏は、選定療養での徴収額が5000円を大きく下回る一部病院については、紹介率、逆紹介率のアップも含め早急に対応策を講ずることが必要との認識も示しました。






国立大付属病院、私立医科大付属病院の計71病院について集計したところ、選定療養として5000円以上を徴収しているのは26病院(37%)で、5000円未満が45病院となっています。具体的な徴収金額は3240円が30病院と最も多く、次いで5400円が23病院などと続いています。私大病院では5400円の徴収が12病院と最も多いほか、2病院が8640円を徴収しています。国立大病院は3240円が21病院で最も多く、最も高額は5400円となっています。
山本委員長は、「例えば、千葉大病院は7月に選定療養の徴収を3240円から5400円にアップさせたばかりです。 もし来年の健康保険法改正で、紹介状なし患者の新たな定額負担が5000円になれば、病院としては現行の選定療養の徴収をやめ、定額負担5000円の徴収だけに切り替えるよう判断します。少なくても選定療養に5000円を上乗せして患者の自己負担1万円を徴収する考え方にはならない」との見解を示しました。小山理事は、「紹介状を持たない患者の初再診について定額負担5000円が決定された場合、現在5000円を超える選定療養を徴収している病院は、現在の徴収金額を上回らないよう選定療養分を減額する ことなどで調整するのではないか」と述べられました。選定療養での徴収額が現在5000円を下回る私大15病院については、「定額負担に一本化していくかなど病院としての判断に追われるだろう」との考えも示されました。 現在導入が検討されている定額負担制度では、紹介状の有無と初診・再診の判断に基づき患者に自己負担を求める仕組みとなります。私医大協が、初診の定義(初めての来院を除く)を本院・分院計72病院について調べたところ、「6カ月以上受診がなく医師が初診と判断した場合」としているのが3 0病院と最多で、次いで「3カ月以上受診がなく医師が初診と判断した場合」の16病院でした。山本委員長は、「千葉大病院は『3カ月以上受診がなく医師が初診と判断した』を定義にしている、国立大病院の調査は行われていないようだが、大きな差異はないのではないか」と述べられました。

地域包括ケアシステムの構築において、病院から在宅への移管には、病院の外来を抑えて地域の診療所にかかりつけ医としてゲートキーパーの役割を担って頂く必要がありますが、果たして、初診・再診の定額自己負担でどれほど効果が見込まれるのでしょうか。確かに多少の影響はあるかもしれません。下級層が切り離されていくのだと思います。何か今行なわれている改革の方向性すべてにおいて貧富の差による医療の不公平性が目につきそうです。たしかにこれまでは、すべての方に対し手厚すぎる医療体制だったのかもしれません。生活保護受給者に対するジェネリック薬品へのシフトは良いと思います。ただそれ以外にも患者申出療養(仮称)などもお金が無ければ選択することも申し出ることも治療を受けることができない医療があるということです。この方向性は日本が目指すべき方向性で正しいのでしょうか。








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2014年10月30日木曜日

専門医制度 総合診療専門医の養成   全国医師会勤務医部会連絡 協議会

日本医師会の横倉義武会長は10月25日、横浜市内で開かれた全国医師会勤務医部会連絡協議会で講演し、2017年度から研修が始まる予定の新たな専門医制度における総合診療専門医の養成について、国民にとって安心・安全な医療提供体制の構築を目標にすべきとの考えを示されました。






横倉義武会長は、総合診療専門医が必要と考えられる分野として、人口減少地域で医師1人が多くの診療科を担わなければならないケース、病院などで特定の機器や疾患に限定することなく幅広い視野で患者を診る医師が必要なケースの2つを挙げました。
一方、総合診療専門医の定義は、議論の途上にあると指摘されました。総合診療専門医が議論される背景としては、①複数の疾病を持つ高齢者への対応②人口減少地域での医療提供体制の確立③専門化・細分化され過ぎた、主として病院での医療提供体制への対応④若手医師のキャリア形成、の4点を挙げました。その上で「国民のニーズも勘案した医療提供体制を構築する視点で議論を進めるべき」と強調されました。
横倉義武会長は新たに始まる専門医制度全体についても言及されました。 「自分の専門領域以外は診ないという医師をつくらないということが重要だ」と述べられました。専門医制度により、医学や医療が進歩し、公衆衛生も向上し、国民の健康な生活の確保や安全・安心な医療提供体制の構築に大きく寄与するという利点がある一方、弊害もあるとの懸念を表明されました。考えられる弊害としては、専門医資格を過度に細分化することで地域における医療需要との整合性が取れなくなることや、フリーアクセスを制限する可能性を指摘されました。

地域包括ケアシステムの構築において、総合診療医の存在は不可欠です。ただ、懸念されているように、専門性を細分化し追求するあまり、整合性がとれなくなるというのは本末転倒だと思いますが、十分に考えられる弊害リスクとして潜んでいます。専門に特化し自分の医療技術を高めたいというのは多くの医師の潜在的な意思だと考えられます。しかも医学や医療は著しく進歩し複雑化している中、一人の医師で高いスキルを身につけるには専門性を高めなければ難しく、総合診療医の存在と相反する危険性もあります。しっかり医療の現場を見据えたうえでの方針を打ち出さなければ、空中分解を避けることができないのではないかと危惧致します。








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2014年10月29日水曜日

医師臨床研修マッチング 結果   厚生労働省

 厚生労働省は10月23日に、平成26年度の医師臨床研修マッチングの結果を発表しました。 医師臨床研修制度は平成16年度に見直され、(1)臨床に携わる医師には2年間の臨床研修の義務化(2)研修は、内科・外科・麻酔科を中心とした複数の診療科で行う(スーパーローテート方式)(3)研修先は、研修医と医療機関の希望をすり合わせて決定する(マッチング)―の3点が導入されています。






 医師臨床研修マッチングとは、臨床研修を受ける医学生等と臨床研修を行う病院(臨床研修病院・大学病院)をお互いの希望を踏まえて、一定の規則(アルゴリズム)にしたがって、コンピューターにより組合わせを決定するシステムになります。
 平成26年度の医師臨床研修マッチングの募集定員は1万1004人(前年度1万489人)に対し、希望順位登録者数8767人(同8300人)で、研修先の内定者数は8399人(同7979人)となり、内定率95.8%(同96.1%)となりました。

 地域別の状況としては、大都市部の6都府県(東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、福岡県)以外の道県の全内定者に占める割合は、前年度より1.2ポイント増えて56.5%と、平成16年度の制度導入以来、過去最大となりました。
 内定者の増加率(前年度比)が高い県は、青森県25.4%増(内定者数89人)、群馬県28.8%増(同103人)、静岡県23.7%増(同209人)、滋賀県27.8%増(同92人)、徳島県26.9%増(同66人)などとなりました。

 内定者の割合は、臨床研修病院が56.3%、大学病院が43.7%となり、臨床研修病院の割合が、前年度比1.5ポイント増加しました。

募集定員は1万1004人に対し、希望順位登録者数8767人で研修先の内定者数は8399人と内定率95.8%という値を高いと見るべきなのか、前年の内定率96.1%より0.3ポイント減少したことに着目するべきなのか、ただ言えることは、全体的に募集人数の医師を確保することが引き続き厳しい状況であるということだと感じます。高度急性期であろうが7対1の維持であろうが、地域包括ケア病棟であろうが、医師が確保できなければ目指すべき体制は整いません。さらにかかりつけ医の総合的診療を行える医師の育成もこの先求められていくと思います。そのような中、医療業界でのパラダイムシフトが無ければ、理想と現実の狭間でもがき続ける医療機関が減少しないどころか増加しかねないと危惧します。ただ、これまで治療することに特化してきた医師が、死との接点において患者とどのように向き合っていけるのか、支えていけるのか、国が掲げる地域包括ケアシステムの制度だけでは、決して成立しない問題が現場で見られるのではないかと思います。








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2014年10月28日火曜日

患者申出療養(仮称)の新設に向け、具体的な論点を厚労省が提示

 厚生労働省は10月22日に、中医協総会を開催し、患者申出療養(仮称)に関する議論などを行ったほか、再生医療等製品の保険収載に関して関連学会・団体から意見を聴取しました。患者申出療養(仮称)は、安倍首相が創設を決定した新たな保険外併用療養制度です。「困難な病気と闘う患者からの申出」を起点とする新たな仕組みで、具体的には「患者が最先端の医療技術等を希望した場合に、安全性・有効性等を確認したうえで、保険外の診療と保険診療との併用を認める」というものです。前例のない治療については、患者の申出を受けた臨床研究中核病院が、安全性・有効性のエビデンス等を添えて国に申請します。国が安全性・有効性、実施計画の内容を審査し、原則6週間以内に「保険診療との併用を認めるか否か」を判断します。一方、前例のある治療については、患者の申出を受けた「患者に身近な医療機関」が臨床研究中核病院に申請します。臨床研究中核病院が「当該医療機関で当該医療技術を行うことの安全性」を審査し、原則2週間以内に実施の可否を判断します。






 政府は、平成27年の医療保険改革の一環として「患者申出療養」を創設する予定を組んでおり、今冬にかけて中医協や社会保障審議会・医療保険部会で詳細な制度設計を検討する方針です。この日は、厚労省当局から「患者申出療養の実際の運用に係る論点」が提示された。大きく次の4つに分類されます。
(1)申請の対象となる医療
(2)協力医療機関
(3)申請手続き
(4)国における審査
(1)の対象医療については、「申請の対象は基本的に限定せず、一定の安全性・有効性が認められたものとする」「保険収載の見込みがないものは対象外とする」「先進医療の実施計画(適格基準)対象外の患者(年齢や合併症など)に対する医療も対象とする」「対象となった医療と、当該医療を受けられる医療機関はホームページで公開する」などの具体的論点が示されています。このうち「保険収載の見込みがないもの」について、判断が難しいのではないかとの意見が鈴木委員(日医常任理事)や白川委員(健保連副会長)から出され、厚労省保険局医療課の佐々木企画官は「たとえば美容医療などを想定している」と説明されました。
(2)の協力医療機関に関しては、「予め医療内容に応じて実施可能な医療機関の判断に資する類型を設定し、それを参考に臨床研究中核病院が個別に判断する(リスクの高い医療は臨床研究中核病院のみ、リスクが中程度の医療は臨床研究中核病院、特定機能病院で実施可能など)」「臨床研究中核病院は、実施希望医療機関の申請から原則2週間で判断し、判断後は速やかに地方厚生局に届出る」などの論点が提示されました。この点、白川委員をはじめ複数の委員からは「類型化は難しいのではないか」との意見が出されています。そもそも「個別の患者ニーズ」に対応する仕組みであるため、多様な医療技術が対象となり、リスクもさまざまである。こうした点を踏まえて具体的な協力医療機関の類型(どの医療機関で、どのような医療技術を行えるのか)を具体的に検討していくことになろう。なお、中川委員(日医副会長)は、「現行の臨床研究中核病院に限ると15施設しかなく、遠方の患者さんのアクセスが阻害される。患者ニーズに対応するために、特定機能病院に拡大することも検討すべき」との意見を示しています。
(3)の申請手続については、「臨床研究中核病院が、患者が実施を希望する医療について申出を受けた場合、必要な書類をそろえて国に申請する」「患者が、臨床研究中核病院以外の病院等に申出た場合には、臨床研究中核病院から共同研究の申請を行う」「国への申請にあたっては、『患者の申出が起点となっている』ことを示す書類を添付する」「臨床研究中核病院等は、エビデンスを用いて患者に十分説明し、患者が理解、納得したうえで申出することを前提とする」との論点を提示しています。本制度では「患者がリスク等を理解し、そのうえで申出る」ことが大前提となります。このため、中川委員は「かかりつけ医と患者の連名による申出書」を求めることを提案しています。
また、(4)の審査に関しては、「【患者申出療養会議(仮称)】を新設し、医学、実施計画、倫理などの各観点を担当する委員が審査したうえで、持回り審議も活用し、臨床研究中核病院の申請から原則6週間で判断する」「エビデンスが不十分などの理由で判断に時間のかかるもの、実施計画対象外の患者に関する審査は全体会議で判断する」「少なくとも年に1回は実績等について臨床研究中核病院から報告を求め、審議を行う」といった具体的な考え方が示されました。このテーマについて白川委員は、「『原則6週間』にとらわれず、安全性は慎重に判断してほしい」との要望を行いました。白川委員の意見には、堀委員(日歯常務理事)など診療側委員も賛意を示しています。なお、患者申出療養において副作用等が発生した場合の補償等について、先進医療や治験の仕組みを参考にしながら対応を検討していくことが厚労省の佐々木企画官から説明されています。

 患者申出療養(仮称)については、平成27年の通常国会への法案提出を目指し、今後も中医協等で議論を継続していくことになっておりすでに線路に乗ったところがありますので、今から大きな転換はなく進んでいくことでしょう。しかしそもそも、何故、患者申出療養(仮称)を導入しなければならないのでしょうか。保健診療に組み込める仕組みづくりを制定してはいけないのでしょうか。その方が、患者の負担は、保険適用分軽減されるはずです。まだ安全性・有効性がエビデンス等で明確になっていないから医療保険は適用は適用外、だけど国が認めたらその医療を受けて良い、というのは何か腑に落ちません。どうしても医療費を抑制する為に保険診療の適用範囲を広げないようにしていると見えるのは私だけなのでしょうか。今後、国民の医療に対する負担は大きくなっていくことは、避けられないでしょう。








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2014年10月27日月曜日

病院・診療所からの訪問看護強化   厚生労働省   社会保障審議会・介護給付費分科会

社会保障審議会・介護給付費分科会(分科会長=田中滋・慶応大名誉教授)は10月22日、2015年度介護報酬改定に向けて居宅サービスを皮切りに各論の議論をスタートさせました。厚生労働省は訪問看護の論点として、病院・診療所からの訪間看護について報酬引き上げを提案されました。訪問看護従事者の増員に向け、病院や診療所からの供給を拡大させる方針を打ち出しました。






厚生労働省は、医療機関から患者の在宅復帰が進められる中、訪問看護のニーズは今後いっそう高まるとして、将来的に訪間看護従事者を増員させる必要性を指摘されました。一方で、看護人材の不足など複数の要因から、病院・診療所からの訪問看護は一貫して減少傾向にある実態があるとし、訪問看護従事者の拡大に向けて病院・診療所による訪間看護について報酬単価の増額を提案しました。老健局老人保健課の追井正深課長は「地域包括ケアの観点からも、病院・診療所には一定程度訪問看護を提供していただく必要がある。減少傾向についてはある程度歯止めをかけていきたい」と説明されました。
鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は「結構だと思うが、全体として病院の機能分化や地域包括ケアの方向性との整合性を図るべき」とコメントされました。齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)は「訪問看護の人材を何とか確保するという心意気は大変感謝する」と述べる一方、「病院・診療所からの訪問看護を単価を増額することで訪問看護の人材が流れてくるかというと、そうだとも言い切れない」との見方も示されました。このほか訪問看護については、在宅における中重度の要介護者への医療ニーズに対応した提供体制を評価する加算の創設を提案されました。また、訪問看護ステーションからの訪問看護の一環としてのリハビリテーションと訪問リハ ビリテーション事業所による訪問リハビリテーションの評価を再整理することも論点に示されました。同日は居宅サービスの訪問看護、訪問介護、定期巡回・随時対応型訪間介護看護、小規模多機能型居宅介護、複合型サービスについて、厚生労働省が提示した論点に基づき議論しました。

今後、訪問看護はステーション中心ではなく、病院や診療所からの訪問診療とのセットになっていくことが可能性として高くなってくるかもしれません。ただしそれは医療におけるケースであり、介護のケースではケアマネが采配権を握っているというか、それぞれの利用者に合った事業所を選択するという立場であるので、少し異なってくるかもしれません。ただ、それを見据えて、ケアプランセンターを併設した診療所などが出来てきて、地域での医療と介護を一手に診ていく体制が整備されても良いかと思います。連携といってもなかなか利害関係を越えての連携は難しい部分が多いと思います。そうなれば、どこが一手に体制を整える、まるで非営利法人ホールディングカンパニーをなぞるような話になっていますが、全体のストーリーはそのように辿っていくのかもしれません。








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2014年10月26日日曜日

マイナンバー制度の導入にむけて   医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会 厚生労働省

厚生労働省は10月22日、「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」(座長=金子郁容・慶応大教授)に、医療分野などで番号制度の活用が想定される具体的な場面を整理して提示した。2016年1月から始まる社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の枠組みで自治体や保険者が利用するケースと、医療機関同士でのやり取りなど民間が利用するケースの2つに分けて議論することを提案しました。






マイナンバー制度で想定される活用場面としては、医療保険のオンライン資格確認、保険者間の連携、予防接種の履歴管理、全国がん登録の4つを提示されました。一方、民間利用では、病院での検査結果をかかりつけ医の診療に活用する場合や、紹介・逆紹介で患者を継続的に診察するなど、医療機関が地域レベル・複数地域間で連携する場面を挙げました。また、コホート研究など健康・医療の研究分野での利用も挙げました。
民間利用に関する議論を進める上での検討課題としては、住民票情報など(個人番号で管理する)特定個人情報とのひもづけが必要かどうか、本人同意なしに利用することがなじむかどうか、医療情報に特有の公益性・要保護性を考慮したプライバシールールの整備などを挙げました。構成員からは、各個人が見られたくない疾患情報などの開示を拒否できるかを検討すべきとの意見などが出ました。厚労省は同日の議論を踏まえ、11月21日に予定する次回会合で、同研究会としての意見取りまとめに向け、たたき台を提示する方針で、年内に意見を取りまとめます。

日本医師会常任理事の石川広己構成員が、医療分野での番号(医療等ID)を活用する場合は、国民全員に付番する“悉皆性"は不要で、希望者のみが利用できる枠組みにすべきとの考えを示しました。また、「医療等ID」を疾患の種類によって使い分けることや、一個人が複数 IDを保持することも可能にすべきとしました。
政府が、マイナンバー制度で使用する予定の個人情報カードと健康保険証の一体化を検討 していることについては、マイナンバーと「医療等ID」の両方が“見えない番号"としてICチップなどに格納されるのであれば検討の余地はあるとの考えを示しました。

マイナンバーの導入については賛否両論あり、利点もあれば問題点もあると思います。しかしこれだけデータ社会が進んでいる中で、医療分野においても個人を特定することができる利点は大いにあると感じます。どのような制度を導入しても悪用しようと思えば方法は山のようにあるでしょう。だからといってその躍動力を衰退させては発展成長は見込めないのではないかという私見です。








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2014年10月25日土曜日

2013年介護サービス施設・事業所調査   厚生労働省

厚生労働省が10月21日に発表した「2013年介護サービス施設・事業所調査」によると、2013年10月1日現在における介護療養型医療施設は1647施設で、前年から112施設減少しました。介護保険3施設における在所者数の割合も7.6%で、0.9ポイント減少しました。利用率は92.2%で9割を超えている状況です。






他の介護保険施設を見ると、介護老人福祉施設は6754施設で、前年から164施設増加しました。介護老人保健施設も3993施設で62施設増加しました。利用率は介護老人福祉施設が97.9%、介護老人保健施設が91.2%と、3施設全て9割を超えました。3施設の在所者数 を要介護度別に見ると、介護療養型医療施設では要介護5が57.3%、要介護4が31.1%で、重度者が9割近くを占めています。平均要介護度は4.41でした。介護老人福祉施設では要介護5が34.3%、要介護4が33.0%で7割近くを占め、平均要介護度は3.89でした。介護老人保健施設は、要介護4が27.0%、要介護3が23.9%などで平均要介護度は33.0でした。
3施設の退所者の行き先では、介護療養型医療施設では死亡が41.4%で最も多く、介護老人福祉施設では死亡が72.7%、介護老人保健施設では医療機関が40.6%となっています。
訪問看護ステーションは7153施設で、前年から563施設増加しました。2013年9月中の利用者の状況を見ると、利用者1人当たりの訪問回数は、介護予防サービスでは4.4回、介護サービスでは5.8回となっています。要介護度別では、要介護5の訪問回数が6.9回で最 も多く、重度になるにつれ訪問回数が増加しました。24時間型の定期巡回・随時対応型訪間介護看護は281施設に増加しております。

いつも医療費の抑制に向けた話題が取り上げられていますが、今後は医療と介護が垣根なく取り上げられていくのではないかと考えられます。ただ、高齢化が進み、地域包括ケアシステムの構築と介護の役割は大きくなっていく中で、在宅への依存度というか期待が高くなってきており、訪問看護がいかに機能を高めていくことが求められていくと思います。今は絶対数が少ない分、施設数も増加傾向ですが、本当に在宅で求められている在宅医療を担う訪問看護となれば、機能強化型・大型化のステーションとなっていくのは自然の流れであり、小型のステーションの少人数で厳しい運営との格差が大きくなるのではないか、地域での訪問看護ステーションの存在意義をいかに発揮するか、機能を高めることがこれから求められていく時に進んでいくでしょう。








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2014年10月24日金曜日

都道府県ごとの平均在院日数や1人当たり医療費の差  経済財政諮問会議

政府が10月21日に開いた経済財政諮問会議 (議長=安倍晋三首相)で、伊藤元重・東京大大学院教授ら民間議員は、都道府県に「過剰病床」の解消を進めるよう求める資料を提出しました。資料では、都道府県ごとに平均在院日数や1人当たり医療費に差があると指摘しており、臨時議員として出席した塩崎恭久厚生労働相は「地方にお任せではなく、適正化・効率化が一層進むよう、何ができるか検討したい」と述べられました。






民間議員の資料によると、平均在院日数は高知が東京・神奈川の 2倍、人口10万人当たり病床数は高知が神奈川の3倍で、病床数と患者の受診率には高い相関関係があると指摘しました。後期高齢者の1人当たり医療費は、上位5県平均(福岡、高知など)が108万5000円、下位5県(新潟、岩手など)が75万8000円だとし、全体が下位 5県並みに下がれば 2兆2000億円を節約できると説明されました。厚生労働省に対しては、年度内に整備する予定の「地域医療構想策定のためのガイドライン」で、2040年度までの人口動態を考慮に入れた病床機能別標準病床数などを具体的・定量的に示すよう要求しました。地域医療構想と整合的な医療費水準(支出目標)や医療提供目標(平均在院日数、後発医薬品使用率など)を 設定し、取り組みの加速に向けて医療費適正化計画の枠組みを見直すよう求めています。
会議後に会見した甘利明経済再生(一体改革)担当相によると、菅義偉官房長官は「社会保障はなかなかメスを入れられないが、都道府県ごとの差をなくしていく、他県でできているならできないはずはない、というアプローチは大変に分かりやすい。積極的に取り組んでいくべき」と発言されました。民間議員からは「入院日数、病床数の地域差の是正を行うべきだ。アメとムチを使って、改革の目玉として厳しく取り組むべき」との意見が出たといいます。
議長の安倍首相は塩崎厚労相に対し、「医療費の見える化を含む医療保険制度の改革、薬市場の実態の早急な把握をはじめとする薬価制度の見直し、メリハリの利いた介護報酬の適正化など、社会保障の効率化・重点化により、質を維持しつつ国民負担を軽減していくよう議論を進め、年内をめどに諮問会議に報告してほしい」と指示されました。
医療費の抑制は、国の財政の健全化に向けた重要な取り組みであるということは理解できます。他国に比べ在院日数が長いこと、各都道府県により差があること、それらも十分理解はできます。ただ、高知県が東京都や神奈川県より平均在院日数が長いのは、本当に病床数と比例しているからと特定してよいのでしょうか。それぞれの地域における背景が異なることを考慮することがまず大事ではないでしょうか。それゆえ、都道府県ごとに地域医療ビジョンを策定するように方向付けされているはずだと思います。都道府県ごとで差をなくしていく、とは何故今そのような発言があったのか理解に苦しみます。








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2014年10月23日木曜日

花粉飛散量 予想   気象情報会社ウェザーニューズ

気象情報会社ウェザーニューズ(千葉市)は10月8日、来春のスギとヒノキの花粉飛散量について予想を発表しました。全国平均は平年(2008~2014年平均)の1割増と予想しています。今春との比較では、全国平均で5割増しとなり、東北から近畿、山陰までの広い範囲で2~3倍に上る地域もありそうとのことです。






一方、四国や九州などは、今夏の天候不順の影響を受けて平年より少なくなる見込みで、2014年の半分程度となる地域もあるとみられています。気象情報会社ウェザーニューズは「例年と同様、来年2月以降は徐々に花粉が増えるので、早めに事前の対策を」と呼び掛けています。北海道はシラカバ花粉で調べ、沖縄県は対象外となっております。
気象情報会社ウェザーニューズによると、スギやヒノキ花粉の発生源となる雄花の成長は夏の天候に関係するとされています。今年の夏は北日本から東日本にかけては高気圧の影響で晴れて暑い日が多く、雄花の生育に適していた一方、夏らしい日が少なかった西日本は育ちにくい天候でした。北海道から近畿までは全ての都道府県で平年比、今春比が同じか多い予想をしております。東京都が今春の約3倍、神奈川県や茨城県が約2.9倍などで、関東甲信や東海では特に飛散量が増えるとみています。

今や多くの方が罹患している花粉症ですが、どんどん状況が悪化しているように感じます。今では小学生の子供でも花粉症の子も増えてきており、現代病と言っても良いでしょう。来春は東京から九州へ逃避することが良さそうですが、私たちヒトとしてスギやヒノキとうまく共存していける方法はないのでしょうか。








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2014年10月22日水曜日

介護の実態 厚生労働省 介護報酬改定検証・研究委員会

 厚生労働省は10月16日に、社会保障審議会・介護給付費分科会の「介護報酬改定検証・研究委員会」を開催しました。前回の介護報酬改定(平成24年度改定)に関する調査結果(速報値)が報告されました。 介護報酬についても「改定の効果・影響を調べ、次回改定に活かす」プロセスが平成24年度改定から導入されました。介護報酬は3年に1度改定されることから、その効果等の調査・分析は(1)影響が出やすい報酬項目は平成24年度に調査を実施する(2)影響が出るまでに一定程度の時間がかかる報酬項目は平成25年度に調査を実施する(3)改定の影響が出るまでに相当の時間がかかる報酬項目は平成26年度に調査を実施する―という3段階に分けて行われます。今回の速報値は、(3)の平成26年度調査によるものです。






 平成26年度調査では、次の7テーマについて調査・分析が行われました。
(i)介護保険制度におけるサービスの質の評価 (ii)集合住宅の入居者を対象としたケアマネジメントの実態 (iii)複合型サービスにおけるサービス提供実態 (iv)介護老人保健施設の在宅復帰支援 (v)介護サービス事業所における医療職の勤務実態、および医療・看護の提供実態 (vi)リハビリにおける医療と介護の連携 (vii)中山間地域等における訪問系・通所系サービスの評価のあり方、の7項目です。
 このうち、(iv)の「老健施設における在宅復帰支援」については、平成24年度改定では、老人保健施設を(a)在宅強化型(在宅復帰率50%超など)(b)加算型(在宅復帰率30%超など)(c)通常型―の3つに区分しました。これにより在宅復帰や在宅療養の支援を強化することが期待されています。今回の調査では、(c)の通常型が全体の4分の3を占めており、(a)在宅強化型や(b)加算型へのハードルが高いことが伺われます。区分別の在宅復帰率を見てみると、(a)の在宅強化型では59.2%であるが、(c)の通常型では18.1%にとどまっている状況です。在宅復帰が困難な理由(複数回答)としては、全区分で「自宅で介護できる親族がいない」がもっとも多く、約80~90%を占めていました。また、在宅復帰が困難な入所者本人のうち約20~30%が「自宅への退所」を希望しているが、家族では約4~9%しか「自宅への退所」を希望していないという現状もありました。ところで、通常型では「医療ニーズが高い」ために在宅復帰できない入所者も70%以上いることがわかりました。在宅復帰を推進していくためには、社会的入院ならぬ「社会的介護」への対応や、医療機能の強化が重要テーマとなってくることがわかります。ちなみに、各区分において、在宅復帰が困難な入所者の「要介護度」「認知症高齢者の日常生活自立度」別の割合に大きな差はありませんでした。
(vi)の「リハにおける医療・介護連携」に目を移すと、次のような結果が示されました。高齢者リハの見直しに向けて検討が進められているが、「活動」「社会参加」に向けたリハの実施は少数にとどまっている実態が浮彫りとなっていました。
●リハ職員が提供しているリハの主な目的は「心身機能維持」が47.1%、「心身機能回復」が14.2%で、あわせて6割超が「心身機能関連」となっています
●リハの実施内容は、「筋力トレーニング」86.6%、「関節可動域訓練」74.2%、「歩行訓練(屋内)」71.2%という具合に、心身機能訓練関連が多い
●「排泄・入浴などのADL訓練」は8.2%、「社会参加訓練」は2.2%にとどまる
●利用者のリハ継続理由を見ると、「身体機能を治したい」79.0%、「筋力・体力をつけたい」75.7%が目立つが、「移動や食事、入浴や排泄などの動作ができるようになりたい」56.0%、「社会的活動をできるようになりたい」42.3%も少なくない
●身体機能やADLの今後の見通しについて、「説明を受けた」利用者は52.6%でした
●リハ終了後の生活等に関連し、利用者の6割以上が「定期的に開催される地域の体操教室や趣味活動の集まり」を知らない、あるいは名前を聞いたことがある程度という状況でした。

来年度は介護報酬が改定されますが、一律6%ダウンなどいろいろな話が飛び交っています。その中でいかに社会保障費を抑制するかというのは、国としての命題です。このまま増加一方で財政を圧迫し続けてはなりません。ただ、医療費を抑制する為には、介護の役割の機能を高めることが一つあると思います。それは分かりつつも、介護の実態としては、本当に利用者のADLが回復しているのか、在宅復帰に向けた取組みが行なわれているのかということが重要な問題です。しっかり取り組んでいるところには厚く、そうでないところに対しては薄くと、傾斜的に配分することが一番効果が上がるのではないかと感じます。








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2014年10月21日火曜日

医療需要と各医療機関の病床の必要量の推計 厚生労働省 地域ビジョンGL検討会

10月17日の地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会(座長=遠藤久夫・学習院大経済学部長)では、地域医療構想における将来の医療需要と各医療機関の病床の必要量の推計方法についての議論を開始しました。同日は、都道府県が構想区域を単位として医療需要などを推計する上での考え方をおおむね了承しました。厚生労働省は早ければ10月31日の次回会合で、DPCデータやレセプトデータなどを活用した推計方法に関するたたき台を提示します。






この日の議論で厚生労働省は、2011年6月の社会保障・税一体改革で示した「医療・介護に係る長期推計」について説明しました。長期推計が、各医療機関の将来の患者数や平均在院日数や在宅・外来等への移行を一定の仮定をおいて推計を行っているとした上で、今回の地域医療構想の推計で留意すべき点を提示しました。 具体的には、DPCデータやレセプトデータなどを活用し、各医療機関の将来の患者数については、できる限り患者の状態や診療実態により即した推計、平均在院日数や在宅・外来等への移行については、患者の状態や診療実態を前提にした推計―を行う必要性を示しました。さらに、都道府県間・構想区域間の患者の流出入や地域差の要因分析等を踏まえた推計をどのように行うかも留意点にあげました。 議論では、中川俊男構成員(日本医師会副会長)が、2011年の長期推計について「DPCおよびDPC準備病院が急性期病院の代表と仮定しているが、こうした議論はしていない」と指摘したほか、平均在院日数について2割 、3割短縮などとの仮定の仕方を問題視し、地域医療構想の推計では十分配慮すべきと主張しました。西澤寛俊構成員(全日本病院協会長)は、「平均在院日数が短縮していく仮定では医療従事者の増加が前提になっていたが、実現の方向には動いていない」との見方を示しました。土居丈朗構成員(慶応大教授)は 、2011年の長期推計を「基本的モデル推計として注視していくことはいいのではないか」としたが、DPCデータやレセプトデータなどの数値を手掛かりにアップデートする必要性も指摘 しました。
DPCデータやレセプトデータなどを活用し、各医療機関の将来の患者数とありますが、これはなかなか精度を高めることは困難ではないかと思います。その要因の一つが平均在院日数の変動です。国としては諸外国より平均在院日数が非常に長い我が国の状況から改善すべきだと、効率化が図れるのではないかという見解だと思います。確かにその値を単純比較だけすればそのようにとられます。しかし、退院後の医療の提供体制はどうなのでしょうか。今の日本の在宅医療はそこまで進んでいるのでしょうか。そこに対する改善を大きく行なわない限り、平均在院日数だけを指標として患者が在宅へ帰らされては、本末転倒ではないでしょうか。平均在院日数が長いことが日本の医療費を膨らましている要因となっていることは否めません。地域包括ケアシステムの構築はその意味では非常に意義のある取組みだと感じます。しかし、目先の数字だけで達成度を測ってしまうと歪みが生じます。またその歪みは、弱者である患者にしわ寄せがいきます。医療に携わる医師を大幅に増やすことは簡単ではないと思います。一つのキーは、介護の力に期待が寄せられているのも否定できない事実でしょう。








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2014年10月20日月曜日

高度急性期病院を目指し 仙台市立病院 移転

国が進める医療制度改革が、移転後の仙台市立病院を待ち受けます。開院以来、かかりつけ医の顔を併せ持った「市民の病院」は転機を迎えることになります。新病院で9月、2度にわたり外来患者対応のリハーサルが行われました。小児科を除き、原則、地域の診療所からの紹介状や予約を必要とする外来の一通りの流れを確認しました。高齢人口がピークとなる2025年に向け厚生労働省は、一般病床を「高度急性期」から「慢性期」までの4機能に分類した上で、診療所も含めて相互補完する地域完結型医療の推進を打ち出します。仙台市立病院は、重症重篤な患者を受ける3次救急医療を担う立場から、高度急性期病院を目指します。遠藤一靖病院事業管理者(70)は「医師の陣容や地域での役割を考えると救急、重症患者の治療を軸とする立ち位置を鮮明にするほかない」と説明されました。紹介制外来を昨年始めたのも、国の動きをにらんでのことでした。






 現在、一般病床で最も診療報酬加算が優遇されるのが、入院患者7人に看護師1人を配置する「7対1」と呼ばれる病床です。仙台市立病院は計493床と全体の9割超を占め、経営を下支えしてきました。ただ全国に7対1病床は約36万あり過剰気味と国は判断しており、2025年までに高度急性期の病床として18万に絞り込む方針を打ち出しております。8832床ある宮城県内も影響は避けられないと考えられます。
 高度急性期病院として残るには、厳格化される入院患者の重症度や平均在院日数の水準に適応する必要があります。仙台市立病院の試算では残れなかった場合、年間で約2億6000万円の減収となります。移転後には、新病院の整備費の支払いも加わります。遠藤管理者は「収入面での制約やブランド力の低下で、優秀な医療スタッフや紹介患者を確保できなくなる恐れもある」と影響を懸念しています。「かかりつけ医との役割分担について市民の理解を得ながら、国の制度に合うよう病院機能を高めていく」と力を込めています。2015年度には県主体で、必要とされる機能別の病床数などを定める地域医療構想づくりが始まります。仙台市医師会の永井幸夫会長(65)は「地域の医療機関とうまく連携していかないと、大病院でも生き残れない厳しい時代に入ってきました。仙台市立病院は救急を軸に置いた地域の医療拠点として、仙台市民の期待に応えていってほしい」とエールを送っております。
 34年ぶりの移転という山を登った仙台市立病院の先に、大きな山が控えています。

病床機能を都道府県に報告し、それを基に都道府県は地域医療ビジョンを描くわけですが、先日、厚生労働省から新基金の割り振り額が内示されました。それにより、これから各都道府県はどのように構想を練って固めていくのか、それにより多くの病院は良くも悪くも病院運営に影響を及ぼすことでしょう。ただ、二次医療圏単位では整わない事柄も予測されており、どのように描かれていくのでしょうか。








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2014年10月19日日曜日

第2のエイズ エボラ出血熱の感染拡大

西アフリカを中心に猛威を振るうエボラ出血熱の感染拡大が止まらない状況です。死者は加速度的に増え5000人に迫る勢いです。米国やスペインに飛び火したことで先進国にも大きな脅威となってきました。日米欧での株価下落など世界経済の先行きにも暗い影を落としています。エボラ熱の封じ込めに向けた国際的連携は加速しており、日本政府も感染症法改正案を閣議決定するなど対応を強化します。






「30年にわたる私の公衆衛生分野の経験上、今回のような例はエイズだけだ」。10月9日、米ワシントンで開かれたエボラ熱対策会議で米疾病対策センター(CDC)の フリーデン所長は「エボラ熱が『第2のエイズ』にならないよう、今すぐ行動しなければならない」と訴えました。世界保健機関 (WHO)の10月15日の発表によると感染者は10月12日までに8997人に達しており、死者は4493人となりました。WHOは8月8日、エボラ熱拡大は「国際的な緊急事態」と宣言し、対策強化に乗り出しましたが、約2カ月後の現在も状況はむしろ悪化しております。WHOのエイルワード事務局長補は10月14日、1週間当たりの新たな感染者が現在の約1000人から12月上旬には5000~1万人に膨れ上がると指摘しています。感染が当初の想定をはるかに上回るペースで拡大していることを認めました。
最初は「医療の充実した国では危険はない」とされていましたが、米国やスペインで感染者が確認され患者が死亡しました。ドイツでもリベリアから移送された国連職員が死亡し、一気に動揺が広がりました。感染を警戒して人の移動が控えられ経済活動が停滞するとの懸念から、欧米や東京の市場で軒並み株価が下落しました。世界銀行のキム総裁は西アフリカ地域の経済損失が「2015年末までの2年間で計326億ドル(約3兆5000億円)に達する恐れがある」と警告しています。  WHOは12月上旬までに感染者の70%を治療施設に収容し死者の70%を二次感染 しないように埋葬する態勢整備を目標にしています。しかし感染が深刻なリベリア、シエラレオネ、ギニアはいずれも世界最貧国です。長年の内戦などで医療インフラは貧弱で、衛生環境も劣悪です。対応が鈍かった先進国もようやく連携と支援に本腰を入れだしました。オバマ米大統領は10月15日に安倍晋三首相と電話会談、国際社会の結束した対応を確認しました。各国首脳が集まる国際会議では今後、エボラ熱対策が最重要議題の一つになりそうです。

ここまで医療環境が整っている先進国でもエボラ熱患者の死者が出たことは、全世界的に脅威な事実です。我々日本の医療が、どのように対応することができるのか、解決の糸口がまだ見えぬ中で、まずは感染を抑えることを第一に取り組んでいくしかありません。








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2014年10月18日土曜日

都道府県別  財政支援904億円 基金額 厚生労働省

医療提供体制などを整備する為の新たな財政支援制度での基金の配分を、厚生労働省は10月17日付で各都道府県に内示しました。基金の規模は、合計903億7000万円ですが、都道府県では、東京都が最大で77億3000万円、次いで大阪府が49億5000万円、兵庫県が39億4000万円、神奈川県が38億5000万円、北海道が37億3000万円となっております。厚生労働省は、都道府県へのヒアリング結果や要望内容を踏まえ、今年度の事業実施分を優先して配分を決めたということです。






都道府県は今月末までに、都道府県計画などを厚生労働省に提出することになっており、厚生労働省はこれらに基づいて11月に正式に交付を決定します。そして12月以降に医療介護総合確保促進会議を開き、交付状況を報告することになります。

北海道 37.3億円
青森県 8.6億円
岩手県 10.2億円
宮城県 15.1億円
秋田県 10.7億円
山形県 10.8億円
福島県 15.6億円
茨城県 20.7億円
栃木県 14.5億円
群馬県 17.0億円
埼玉県 36.5億円
千葉県 34.6億円
東京都 77.3億円
神奈川県 38.5億円
新潟県 18.1億円
富山県 9.5億円
石川県 8.1億円
福井県 8.4億円
山梨県 10.6億円
長野県 15.3億円
岐阜県 20.9億円
静岡県 31.7億円
愛知県 32.0億円
三重県 16.5億円
滋賀県 14.2億円
京都府 24.7億円
大阪府 49.5億円
兵庫県 39.4億円
奈良県 10.4億円
和歌山県 9.5億円
鳥取県 13.2億円
島根県 18.1億円
岡山県 9.2億円
広島県 26.4億円
山口県 9.1億円
徳島県 17.8億円
香川県 14.9億円
愛媛県 8.4億円
高知県 8.0億円
福岡県 31.3億円
佐賀県 8.0億円
長崎県 8.7億円
熊本県 18.8億円
大分県 9.1億円
宮崎県 8.9億円
鹿児島県 9.9億円
沖縄県 17.7億円

この額は、確定ではありませんが、総額が決まっている以上ほぼ相違ないと思います。東京都・大阪府・兵庫県が多いのは、戦略特区として挙げられていることも大いに関係していると考えられます。はたしてこれらの基金を各都道府県はいかに活用するのか。変な利権でムダにしてもらわないように監査機能を高めて頂きたいと切に願います。








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2014年10月17日金曜日

紹介状なし 初診 再診料について

社会保障審議会・医療保険部会 (部会長=遠藤久夫学習院大経済学部教授)は10月15日、紹介状なしで大病院を外来受診した患者負担の在り方について議論し、初再診ともに5000円の定額負担を求める方向で検討が進む見通しになりました。部会では、救急患者などへの除外規定を設けた上で、定額負担5000円を支持する意見が大勢を占めました。一方で、定額負担を保険給付の範囲内で求めるか、療養給付に要する費用額に上乗せして求めるかについては意見が分かれました。大病院の対象範囲としては特定機能病院とする意見が目立ちました。






厚生労働省はこの日の部会で、定額負担の額として、初再診料相当額から一部負担金相当額を控除した額、外来での平均的な費用などを勘案して定める額(例えば5000円、 1万円など)の2案を示して意見を求めました。自川修二委員(健保連副会長)は 、定額負担について「特定機能病院と500床以上の病院で、初診5000円の定額負担はどうか」と提案されました。松原謙二委員(日本医師会副会長)は、制度化に当たっては救急患者などの除外規定が必要と強調した上で「まず特定機能病院から始めてはどうか。外来機能分化が進んで最終的に定額負担を徴収しないで済むことを目指す前提で初診1万円、再診5000円」と日医としての考えを示されました。 
具体的な定額負担額では5000円を挙げる意見が多数を占めた一方で、厚生労働省が提案した患者負担の制度設計の案をめぐっては、定額負担を、保険給付の範囲内で求めるか、療養給付の費用額に上乗せして求めるかについて意見は分かれました。厚生労働省が、あらためて提示した仕組みの案は①初再診料相当分は給付せず初再診料相当分を定額負担として求める②保険給付の範囲内で一部負担金相当額に加え新たな定額負担を求める③定額負担を療養の給付に要する費用の額に上乗せして求める一の3パターンでした。自川委員は、療養給付に要する費用の額に上乗せして定額負担を求める案(パターン3)について「医療機関の収入が増える。保険給付を減らして医療機関の収入を増やさない方向にすべき」と述べられ、保険給付の範囲内で新たな定額負担を求める案(パターン2)を支持する考えを示されました。小林剛委員(全国健康保険協会理事長)や 、望月篤委員(経団連社会保障委員会医療改革部会長)も保険給付の範囲内で定額負担を求め、保険給付範囲を縮小させる仕組みに理解を示されました。一方で、堀憲郎委員(日本歯科医師会常務理事)は「初再診料を含めて現在保険給付されている一部を患者負担で求めることは機能分化とは異なる議論が出てくる。病院の収入が増えるという意見もあるが副次的なもの」と述べられ、療養給付の費用に上乗せして定額負担を求める案(パターン3)を支持されました。松原委員も同調されました。

これから、初診・再診料は、ほぼ固まっていくことと思いますが、堀憲郎委員がおっしゃるとおり機能分化とは異なる議論が出てくることが予測されます。本当に紹介状なしの初診再診料を患者負担とすることで、病床機能分化が進むのでしょうか。








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2014年10月16日木曜日

患者申出療養、「2016年めど」より前倒し実施を   規制改革会議

 政府の規制改革会議 (議長=岡素之・住友商事相談役)は10月10日、新たな保険外併用療養費制度の仕組みとなる「患者申出療養 (仮称)」をスタートさせる時期について、厚生労働省が想定している「2016年めど」よりもできるだけ前倒しするよう要請しました。






会合後、記者会見した岡議長によると、厚生労働省も「要望として受け止める」と応じ、今後検討する意向を示しました。患者申出療養については、10月から11月にかけて中医協や社会保障審議会医療保険部会で具体的な制度設計が検討される予定で、2015年の通常国会に関連法案が提出される見込みです。同日の会合では、従来の保険外併用療養費制度と違い、患者が 自ら申し出ることを出発点とする患者申出療養の理念を反映させ、今後の制度設計を行うよう多くの委員が要望しました。また、患者ができるだけ自宅近くの医療機関で患者申出療養を受けられるような仕組みづくりを求める声も上がりました。

2015年1月と3月に公開ディスカッションを開催することを決めました。テーマは今後決めるとなっております。

患者申出療養について国が前向きに進めようとしていることに、違和感を感じるのは私だけでしょうか。そもそもなぜ、国は患者申出療養を前倒ししてでも進めるように舵を切っているのでしょうか。国の大きな課題と言えば、増え続ける借金。そこに大きく占めているのが社会保障費です。そこを何とかして抑制したいのです。しかし、医療費を抑制すると言えば、国民から大きな反感を買うことは想像に難くありません。ではそれをうまく導くにはどうするかと言うと、混合診療をすすめて、国が負担している医療費を抑えて自己負担を増やすのが、良い。そのための枠を患者が申し出たというカタチで実行しようとしているのです。国民に最適な医療を提供する為の体制を築くのは、患者申出療養として別枠を設けることではなく、いかに保険対象として認可するスピードを速めるかであるはずです。患者申出療養が浸透していけば、その対象の医療は特に保険対象として認可せずとも国民はその医療を受けることができるので、国民皆保険といえど、その対象が限定的になり、医療に費やせる国民の格差が広がっていくのではないでしょうか。おそらくそのリスクを回避する為に新たな保険事業が拡大していくのでしょう。アメリカが先進として進めている保険です。アメリカはオバマケアとして国民皆保険を目指している一方、その締め出した保険会社の新しい市場を日本に用意するということではないでしょうか。TPPのアメリカの主たる目的はそこであるともいわれているのも、納得できます。はたして、日本の国民皆保険は守られていくのでしょうか。








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2014年10月15日水曜日

HD型法人「地域連携型医療法人制度」の名称へ   厚生労働省

厚生労働省が非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称、HD型法人)として検討してきた新型法人制度は今後、「地域連携型医療法人制度(仮称)」の名称で具体化を図る方向となりました。厚生労働省が10月10日、「医療法人の事業展開等に関する検討会」(座長=田中滋・慶応大名誉教授)で新型法人制度創設に向けた論点と併せて提案、委員から反対意見は出ませんでした。






厚生労働省は、新型法人の論点については、事業地域範囲、対象範囲(参加者)、法人ガバナンス(統治)の仕組み、非営利性の確保、業務内容、透明性の確保の6項目に分けて示しました。事業地域範囲については、2次医療圏を基本に新型法人が定めた範囲を都道府県知事が認可する手続きを提案されました。これに対し、今村定臣委員(日本医師会常任理事)は「厚生労働省の他の施策との整合性のためにも『地域医療構想区域』とすべき」と述べられました。一方、長谷川友紀委員(東邦大教授)は、「広く取るべき」と述べられ、2つ以上の都道府県にまたがる場合も想定した検討を求めました。

参加法人については、医療事業を実施する医療法人と社会福祉法人に加え、病院・診療所を開設している個人も対象とすることを提案しました。また、日本赤十宇社や済生会、国立病院機構など複数地域に医療機関を展開している法人や、自治体が開設している医療機関も参加できる仕組みにすることも諭点として示しました。設立母体と新型法人で事業に関する方針が異なる場合に備え、何らかの「調整規定」を設けることの必要性にも触れました。具体的な規定の内容は今後検討していきます。統治では、社団として設立する場合と財団の場合を分けて示しました。議決権では、社団は「1社員1議決権」とし、財団については、社団の定款に当たる「寄付行為」に定める方法で評議員を選び、評議員が理事を選んで構成する案を示しました。参加法人を新型法人が統括する方法については、事業計画や予算などの重要事項に承認を与える強い関与か、勧告程度にとどまる弱い関与かの2つから選択できる仕組みを提案しました。理事長要件をめぐっては、今村委員が「医師・歯科医師を原則とすべき」と主張したほか、新型法人自身が病院等を経営することについても反対する意見を示しました。参加法人への資金貸付や、新型法人による一定条件下での株式会社への出資については、複数の委員から非営利性が損なわれるとの懸念が示されました。


「地域連携型医療法人制度(仮称)」と名称の方向性が挙げられてきたということは、これから議論が進んでいき、新型法人制度の枠組みが固まっていくと思います。ただ、現状の各医療法人の運営形態に沿った延長線上に制度が落ち着くのか、やはり制度ありきで各医療法人等がその形態を変えていかなければならないのか、まだまだ定まっていない事項が多いですが、あまり現状に沿っていない制度であれば、そもそも地域を複数の法人で統括して体制を整えること自体が実現困難な実態となりかねません。各地域の声を全て聞きながらでは前に進まないでしょうが、現状を把握する為のヒアリングはしっかり行なって頂いた上で、進めていっていただきたいものです。








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2014年10月14日火曜日

県立柏原病院と柏原赤十字病院 統合

兵庫県は9月8日、丹波市の県立柏原病院と柏原赤十字病院を統合し、2018年度にも新たな県立病院を同市内に開設する、と発表しました。公立病院と赤十字病院の統合は全国で初めてのことです。両病院が担ってきた診療機能やサービスは継承し、医師不足の解消などを目指します。設置場所は複数案あり、今後協議することとなっております。
 兵庫県は9~10月、統合再編の検討懇話会(仮称)を設け、県民の意見を募った上で、12月に基本計画を取りまとめる方向で進めています。両病院の協議が順調に進んだため、開設時期を当初よりも2年前倒しする予定です。開設に伴い、地域の医療を約80年間支えてきた赤十字は廃止となる予定です。両病院の医師や職員らは新病院などで勤務できるよう検討していきます。
 本年度の両病院の稼働病床数は計285床で、新病院は約300床を用意する予定です。建設費は200億円程度を見込んでいます。





 現在、柏原病院は急性期を含む3次救急に準じる機能を担い、赤十字は回復期を中心に在宅医療や健康診断事業などを提供してきました。新病院は医療の機能を維持しつつ、健診などのサービスは新病院の隣に整備する保健福祉施設が担います。保健福祉施設は、兵庫県が丹波市と協議した上で、丹波市が中心になってサービス内容を検討していきます。
 一方、慢性的な医師の地域偏在と診療科偏在の解消に向け、総合的で実践的な医療が学べる拠点をつくり、地域医療を目指す医学生や若手医師の育成に力を入れていきます。兵庫県が2015年度に丹波市へ移管する「県立柏原看護専門学校」は施設の老朽化もあり、新病院に隣接して整備する方向で同市と検討を進めていきます。
 井戸敏三知事は9月8日の会見で「統合で病院の総合力を増すことにより、医師の確保につなげたい」と話されました。



県立柏原病院と柏原赤十字病院を統合し、平成30年度をめどに市内に新病院を建設すると発表しました。慢性的な赤字体質から脱却し、医師の養成機能も持ち合わせ、医師の確保も狙います。公立病院と日赤が設置する病院の統合は全国初です。
 兵庫県によると、両病院は新病院の開業まで診療を継続し、施設や跡地は売却を検討していきます。計約470床の病床を、実情に合わせて約300床程度にまで削減し、赤十字の職員は県が受け入れる方針です。
 両病院は直線距離で約1キロと近く、主な建物は昭和50年代に建てられ、老朽化が進んでいます。さらに25年度には、計8億6千万円以上の赤字を計上し、ともに15年以上連続で赤字決算が続いている厳しい状況です。このため、兵庫県が設置した有識者による検討会の提言などを踏まえて、統合が決まりました。兵庫県は10月までに「統合再編検討懇話会(仮称)」を設置予定です。新病院の診療機能や整備場所について丹波市や地元医師会、住民らの意見を参考に、年内に基本計画をまとめる方針です。
 井戸敏三知事は9月8日の会見で「両病院は医療で競合する部分が少なく、持ち味を生かした統合を期待しています。統合で病院の総合力が増せば、医師の確保にもつながる」と話されました。


これから地方の経営状態の厳しい病院の動向は激しくなってくることが予想されます。国は非営利法人ホールディングカンパニー制の導入を進めていこうとしておりますが、まさに追い風になると考えられます。ただ、支障のない融合はなかなか難しいのではないかと机上の空論に警鐘を鳴らしたい思いです。








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2014年10月13日月曜日

国民医療費の概況 2012年度 39兆2117億円   厚生労働省

厚生労働省は10月8日、2012年度「国民医療費の概況」を公表しました。2012年度の国民医療費総額は39兆2117億円で、2011年度を6267億円上回り、過去最高額を更新しました。2011年度比は1.6%増でした。診療区分別の推計額は、医科診療医療費28兆3198億円 (2011年度比1.8%増)、歯科診療医療費2兆7132億円(1.4%増)、薬局調剤医療費6兆 7105億円(1.2%増)となりました。GDPに占める国民医療費の割合は2011年度より0.15ポイント上がり8.30%となりました。国民1人当たりでは30万7500円となり、2011年度より1.9%増となりました。






国民医療費の伸び率は近年2~3%台で推移してきましたが、2012年度は1.6%で「落ち着いた伸び」(厚生労働省)となりました。その要因について、厚生労働省は「他の調査などで受診延べ日数が減少傾向にあることの影響ではないか」と推測しています。1.6%の伸びの内訳は、人口の高齢化による影響がプラス1.4%、人口減による影響マイナス0.2%、診療報酬改定による影響がプラス0.004%、医療技術の高度化などが0.5%とみております。
 医科診療医療費の内訳は、入院医療費が14兆7566億円(2.7%増)、入院外医療費が13兆5632億円(0.9%増)でした。入院のうち、病院は14兆3243億円で2011年度より2.8%増える一方、一般診療所は4323億円で0.8%減でした。入院外では、病院が5兆4434億円で1.9%増、一般診療所は8兆1197億円で0.3%増でした。財源別に見ると、公費のうち国庫は10兆1138億円(0.8%増)で、国民医療費に対する構成比率は25.8%でした。国庫を含む公費全体では15兆1459億円(2.3%増)で、構成比率は38.6%となりました。保険料は19兆1203億円(2.0%増、構成比率48.8%)、 患者負担は4兆6619億円(1.7%減、構成比率11.9%)でした。制度別では、後期高齢者医療給付分12兆6209億円(3.0%増)、被用者保険給付分8兆7480億円(1.4%増 )、国保給付分9兆5331億円(1.2%増)などとなっております。年齢階級別では、65歳以上が国民医療費の56.3%を占める22兆860億円となっております。このうち75歳以上は13兆5540億円で、全体の34.6%を占めました。

高齢化社会が進む中で、医療費の増加幅をいかに抑制するかが厚生労働省の一番の課題ではありますが、制度の見直しなどで必ず谷間に落ちる不利益を被ってしまう方が発生してしまうと考えられます。もちろん万人にとってプラスの制度改定であればよいのですが、それは難しいでしょう。万人に対しては難しいのであれば、誰に照準をあわせるべきでしょうか。医療のニーズが高い高齢者、今の日本を支えている労働世代、これからの世代を担う若者、需要と供給のバランスもありますが、これから医療はますます発展していくでしょう。健康寿命の延伸はすばらしいことですが、単に寿命を引き延ばすためだけの医療と言うのは本当に求められているのでしょうか。麻生副総理がおっしゃっていたように生かされているような予後、死なせてくれない環境というのもいかがなものかと改めて考えさせられます。








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2014年10月12日日曜日

ライフデザインノート  終末期医療のあり方

 東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)の高橋龍太郎副所長らの研究グループの調査で、終末期医療やケアについて医師と話した患者の割合が約1割にとどまっていることなどが分かりました。これは、終末期医療の希望を書き残せる「ライフデザインノート」に関する研究で浮き彫りになったものです。医師と話した患者の割合が約1割と少ない一方、医師らが「希望を尊重してくれると思う」と回答した患者が9割近くいたことから、研究グループは「患者やその家族は、医師に言わなくても分かってくれるはずという信頼感が根底にある可能性が示された」と解釈しています。






高橋副所長と島田千穂、中里和弘両研究員らの研究グループは、患者にこれまでの人生を振り返ってもらい、患者自身やその家族らに満足してもらえる医療の提供につなげるために、ライフデザインノートを作成しました。このライフデザインノートの普及方法などについて研究するため、板橋区医師会の会員の協力を得て通院患者114人から、終末期医療やライフデザインノートの有用感などに関する回答を得ました。
 この研究に参加した患者の半数以上が75歳以上で、女性が全体の75%を占めました。48.2%が「介護経験がある」、39.6%が「配偶者を看取った経験がある」と回答しました。終末期に受けたい医療やケアについては、42.1%が家族や友人に「話したことがある」と回答しましたが、医師と話した患者は9%にとどまりました。
 一方、終末期医療の希望を医師らが尊重してくれるかどうかについては、「きちんと尊重してくれる」と「ある程度尊重してくれる」を合わせた回答は、全体の9割近くを占めました。
 実際にライフデザインノートに記入した患者は半数程度だったことから、高橋副所長は「死について考えることや、家族に思いを伝達することは容易でなく、記録を躊躇させた可能性が示唆されました」と指摘されました。「単に記入様式の提示にとどまらず、直接的にかかわり、促す仕組みが不可欠」とし、終末期医療に対する患者の理解を深めるには、医師や看護師などの協力が必要との考えを示しました。

高齢化社会が進み、また地域包括ケアシステムの構築と病床機能の分化により、在宅での医療介護と看取りへのシフトを厚生労働省は方針を打ち立てています。そこで重要なのが、いかに患者や家族の意思を尊重して医療を行っていくのかということです。もちろんその医療提供の環境についても、病院なのか介護施設なのか在宅なのか、納得のいく理解が必要となります。そのためには、やはり早い段階から医師と話し合うことが大切になってきます。医師が自分の思いを伝える相手として二の足を踏むのならMSWなどが病院には配置されています。自分が望む終末期について、いかに巻き込んでいくか、これからの課題ではないでしょうか。








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2014年10月11日土曜日

7対1入院基本料 66病院・6417床減少 日本アルトマーク

日本アルトマーク(平野浩治社長、東京都中央区)が実施した調査によると、今年5月1日時点で一般病棟7対1入院基本料を届け出た病院は1619病院・37万4068床で、2013年11月1日時点より66病院・6417床減少したことが分かりました。全国の厚生局や病院に対して行った調査の結果をまとめました。
 7対1入院基本料を届け出た病院の減少数が多かった都道府県は、東京(10病院減)、 北海道(7病院減)、埼玉(6病 院減)、福岡(5病院減)などでした。一方、一般病棟10対1入院基本料を届け出た病院は今年5月1日時点で2119病院・18万9087床で、2013年11月1日時点より51病院・1040床増加しました。2013年11月1日からの半年間で入院基本料を引き下げた病院(特定機能病院などを除く)は120病院で、このうち7対1から10対1へ の引き下げが84病院を占めました。一方、同期間に入院基本料を引き上げたのは90病院で、このうち10対1から7対1への引き上げが31病院でした。7対1から入院基本料を引き下げた病院の一般病床数は「比較的少ないものが多い」(日本アルトマーク)とし、小規模病院が多かったと見ています。






2014年度診療報酬改定で新設された「地域包括ケア病棟入院料」「地域包括ケア病棟入院医療管理料」の届け出は、今年5月1日時点で114病 院・2720床でした。このうち3 2病院は一般病床7対1入院基本料を届け出ました。同入院料・入院医療管理料1の届け出は104病院・2411床、同2の届け出は10病院・309床でした。

今月はついに病床機能報告が行なわれます。期日は11月14日までとなっていますので、周りの病院の様子をうかがいながら期日ぎりぎりに報告を考えている病院も多くありそうですが、今回の報告はあくまでプレの練習のようなもので、あまり参考にされないのではないかという見解もあります。実際に地域医療ビジョンを作り上げる各都道府県は、すでにある程度は下絵を描き上げていると思います。もちろん上からの指示のもと。それをいかに整合性を持って考慮したかという筋道を作り上げるために、これから多くの医療機関は多くの情報と共に振り回されそうです。









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2014年10月10日金曜日

看護師の特定行為

医道審議会・保健師助産師看護師分科会の看護師特定行為・研修部会(部会長=桐野高明・国立病院機構理事長)は10月2日、看護師の特定行為候補として挙がっていた41項目のうち12項目について、特定行為として位置付けることが妥当か再検討することを決めました。残りの29項目は特定行為とすることで合意しました。
再検討が決まったのは、経口・経鼻気管挿管チュープの位置調節、経口・経鼻気管挿管の実施、経口・経鼻気管挿管チュープの抜管、人工呼吸器モードの設定条件の変更、榛骨動脈ラインの確保、腹腔ドレーン抜去、胸腔ドレーン抜去、心嚢ドレーン抜去、褥癒の血流のない壊死組織のシャープデプリードマン、褥癒・慢性創傷における腐骨除去、病態に応じたインスリン投与量の調整、脱水の程度の判断と輸液による補正の12項目です。






厚生労働省はこれらの12項目を「特に検討が必要な行為」として提示し、社会保障審議会・医療部会や今年の通常国会で出された意見などを踏まえて取りまとめたと説明しました。特定行為候補の各項目について反対を表明している各学会や団体に反対意見の補足説明を求めた結果も公表しました。厚生労働省は補足説明を求める際、あらためて研修制度の枠組みなどを説明したこともあり、反対していた項目について、安全性を担保するため対象患者を一定範囲に制限すれば問題はないとする意見などに変更した団体も複数ありました。一方で、引き続き特定行為にすることを反対する意見も残りました。
同日の会合では、41項目を特定行為として研修制度を始めるべきだとの意見が多数の委員から上がりました。一方で、日本医師会常任理事の釜萢敏委員は「この制度を推進するためにも、安全性が合意できたものに限って始めるべき」と述べられ、厚生労働省が提示した12項目は特定行為にすべきではないと主張されました。「制度が浸透した上で今後、必要に応じて特定行為を追加していくことは十分あり得る」とも述べられました。
日本看護系大学協議会代表理事の高田早苗委員は「各学会から意見をいただいています。最初から無視するなら意見をいただかないほうがいい。極力反映する努力はしていかないと、つじつまが合わない」と述べられました。
桐野部会長は「12項目以外については(特定行為にすることを)ご承認いただいたという前提で、次回に引き続き議論をさせていただきたい」と述べられました。ただ、「ほとんどの委員は現時点において(12項目を)特定行為に含めることは妥当というご意見だったと思う」とも述べられました。

これから在宅医療介護の必要性が高まる中で、看護師の役割が大きくなってきます。もちろん医師の役割も大きくなるのですが、一人の医師で対応できる量と言うのには限りがあります。いかに看護がその増加する医師の負担を請負って、担っていくかといえば、聞こえは良いのですが、事実はその裏に、例えば訪問看護が行なえる領域を広げてやれば、医療費の抑制につながるという思惑があったり、なかったり。憶測で語るのは良くありませんが、物事が変化するには、それなりの理由というものがあるのが世の常です。








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2014年10月9日木曜日

介護事業経営実態調査  厚生労働省 社会保障審議会・介護給付費分科会

 厚生労働省は10月3日に、社会保障審議会・介護給付費分科会の「介護事業経営調査委員会」を開催し、平成26年の「介護事業経営実態調査」結果が報告されました。介護報酬改定には、「介護給付費(単位数)に経済動向を反映させる」「介護現場の課題を解決する」などさまざまな目的があり、介護現場の目線で考えると「介護事業所・施設の経営を安定化させる」ことが重要となっております。このため、介護報酬改定にあたっては、介護事業所・施設の経営状況を調べ、その結果を改定内容等に反映させることとなっています。平成26年調査の結果をみると、まず目を引くのが有効回答率の高さです。前回の平成23年調査では全体で30.9%(サービス種類別では22.1%~45.2%)にとどまっていましたが、今回の平成26年調査では48.4%(同じく18.1%~62.3%)となっています(17.5ポイントの大幅増)。この背景について厚労省当局は、「回収率は平成23年調査、平成26年調査ともに70%程度だが、記入に不備のない有効回答率が大幅に増加しています。調査票を見直し、記入しやすくした効果がでているのではないでしょうか」と分析しています。有効回答率が高くなった副次的な効果として、たとえば収支差がプラスマイナス50%を超えるような「外れ値」が少なくなっている点も注目されます。この点を捉えて藤井委員(上智大准教授)は、「調査の精度が上がっている」と評価しています。さらに、サンプル数が増加したことから、さまざまなクロス分析(たとえば地域別・規模別・設立主体別などの組み合わせ)も可能になってきます。診療報酬改定においては、医療機関等の経営状況を調べる「医療経済実態調査(うち医療機関等調査)」を行っているが、回答率等の低さが大きな課題となっています。






「収入に対する給与費の割合」、つまり人件費割合をサービス別に見てみると、次のような状況がうかがえます。●施設系サービスでは、平成23年と比べて「老健施設」で若干増加しているものの、大きな変化はなく、50%台半ばとなりました。●訪問系サービスでは、平成23年と比べて「夜間対応型訪問介護」と「訪問リハ」では増加していますが、他では若干の低下が見られ、60%台半ばから80%台半ばに分布しています。●通所系サービスでは、平成23年と比べて大きな変化はなく、60%程度となりました。●その他のサービスでは、30%程度から80%程度にばらついており、「特定施設入居者生活介護」で平成23年からの低下が目立ちます。
 委員会では、「概ね平成23年と同程度の水準を維持している」との総括コメントを打出しています。また、収支差率をサービス別に見てみると、次のようになっています。●施設系サービスでは、平成23年と比べて、「地域密着型特養」で大きく上昇、「老健施設」で大幅な低下、「特養」「介護療養型」で若干の低下が見られます。ただし、いずれも5%以上という状況です。●訪問系サービスでは、平成23年と比べて、「訪問介護」「訪問看護」「訪問リハ」で大幅増加、「訪問入浴介護」「夜間対応型訪問介護」で低下しています。「訪問介護」「訪問入浴介護」「訪問リハ」「訪問看護」では5%以上となっています。ちなみに新設された「定期巡回・随時対応型」は1.0%をわずかに下回っています。●通所系サービスでは、平成23年と比べて、「通所リハ」と「認知症対応型通所介護」で増加したが、「通所介護」は低下しています。ただし、「通所介護」では10%以上をキープしており、他サービスも5%以上という状況です。●その他のサービスでは、「特定施設入居者生活介護」で大幅な増加を見せ、「認知症対応型共同生活介護」「短期入所生活介護」「地域密着型特定施設入居者生活介護」「小規模多機能型居宅介護」「居宅介護支援」で若干の増加となったが、「福祉用具貸与」は低下している。「居宅介護支援」と「複合型サービス」はマイナス(赤字)となっています。

 厚生労働省は詳細な個別サービスの状況も示しており、たとえば「訪問介護」や「訪問看護」では、収支改善の方向に事業所の分布が顕著にシフトしている状況が伺えます。これらを概観して、委員会では「一部サービスを除き5%以上となっており、10%以上となっているものもある」と総括しています。収支差が10%を超えたのは、「認知症対応型共同生活介護」「通所介護」「特定施設入居者生活介護」の3サービスです。委員からは「収支差率が改善し、経営状況が安定してきていることが伺える」とのコメントが相次ぎました。もっとも、収支差率がどの程度の数値となれば経営が安定するかは、設備投資状況などもさまざまなため、施設ごとに考えなければなりません。厚生労働省老健局の迫井老人保健課長は「切りのよい数値として5%や10%の数字をあげたが、(何らかの指標を意味するなどの)他意はない」と説明されています。また、収支差率改善等の要因等については今後の分析を待つ必要がありますが、調査精度が上がったことを一因とする見方もあります。たとえば、前述のとおり地域密着型特養では、平成23年に比べて収支差率が6.1ポイントも上昇しているが、藤井委員は「平成23年調査では収支差率マイナス10%程度の施設が多いが、ここには開設直後で、利用者を確保できていない施設が多く含まれていると考えられる。このため平成23年調査結果が低くなったと読むこともできます」との考えを明らかにされています。なお、調査結果全体を通じて藤井委員は、「1人あたり給与費が増加している(介護療養型以外は、平成23年に比べて増加)が、稼働率を上げることで収益を確保した」と指摘されました。もっとも藤井委員は、「職員のスキルが上がり(給与費増の要因の1つ)、効果的・効率的なサービス提供が可能となったことから、稼働率が上がりました」という見方と、「収益を上げるために稼働率を高め、現場が疲弊している」という見方の両方を提示し、「単純に収益改善という数字だけを見るのではなく、サービスや労働の中身も検証しなければならない」との考えを述べられています。これらの調査結果と、委員会による分析結果は、近く介護給付費分科会に報告されます。個別サービスの状況(たとえば前述の地域密着型特養の収支改善など)については、分科会で議論されることになります。

介護事業者の経営の安定化、社会福祉法人の利益率と剰余金、医療と介護連携、これらのポイントを踏まえながら、絡み合うすべての問題を解決していかなければならず、来年度の介護報酬の改定もそのきっかけとなることは間違いありません。ただ介護従事者の離職率が高い状況において、いかに介護業界全体の底上げを図るかは、介護報酬が定められている以上、国の施策なしでは難しいところがあります。効果的な施策が無い中で今はスケールメリットで安定化を目指さざるを得ない状況です。ただ各事業所の集約・寡占化が進めば地域おける競争が働かなくなり、不合理な地域が出てこないとも言い切れません。地域包括ケアシステムとは、言葉の上では綺麗なモノですが、実現に向けてはクリアしなければならない課題は山積みです。








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2014年10月8日水曜日

医療勤務環境改善支援センター   厚生労働省

 厚生労働省は10月1日に、「医療従事者の勤務環境の改善等に関する事項の施行」に関する通知を発出しました。今年(平成26年)6月に成立した医療介護総合確保推進法では、「医療従事者の勤務環境の改善」等に関する事項(医療法改正)も盛込まれており、10月1日から施行されています。まず、医療機関の管理者には、医療従事者の勤務環境の改善等の措置を講ずる義務が課せられました。これに伴い、厚生労働大臣には措置を講ずるための指針策定、都道府県には医療従事者の勤務環境改善に向けた支援の実施、これらの事務を実施するための拠点確保が求められます。






 都道府県が行う事務は、大きく次の3点になります。
(1)医療従事者の勤務環境の改善促進(医療機関からの勤務環境改善に関する相談に応じ、必要な情報提供、助言、その他の援助、調査、啓発活動など)
(2)(1)の事務について、地域において医療に関する公益的な事業を実施する非営利法人等への委託
(3)医療勤務環境改善支援センターの確保

 このうちの(3)の医療勤務環境改善支援センターについては、まず、「都道府県が直営」することも、上記(2)のように委託することもできます。ただし、いずれの場合でも都道府県が主体的に関与し、都道府県医師会・看護協会・病院団体・社会保険労務士会・医業経営コンサルタント協会、都道府県労働局などの参画を得た「医療勤務環境改善支援センター運営協議会」を設置することが求められます。勤務環境改善にあたっては、医療機関の自主的な活動が不可欠なため、支援センターでは「各医療機関の管理者や医療従事者が勤務環境を改善する目的意識を共有し、参加型の改善システムによりPDCAサイクルによる取組み」を進めることが求められます。具体的な支援体制としては、次のような専門スタッフを配置することなどが求められます。
●医業経営アドバイザー(診療報酬面、医療制度・医事法制面、組織マネジメント・経営管理など医業経営に関する専門知識を有するアドバイザー、この経費は新たな「地域医療介護総合確保基金」を積極的に活用する)
●医療労務管理アドバイザー(社会保険労務士など、勤務シフトの見直し、労働時間管理、休暇取得促進、就業規則の作成・変更、賃金制度の設計、安全衛生管理といった労務管理面全般の知識を有するアドバイザー)
 また、上記のアドバイザーでは対応が困難なケースも想定できることから、次のような関係団体との連携をとる必要もあります。厚生労働省は、支援センターに「ワンストップ機能」「ハブ機能」を発揮するよう期待しています。
●女性医師バンク・女性医師支援相談窓口の相談員
●地域医療支援センター
●雇用均等指導員
●メンタルヘルス等に関する相談員
 さらに、「地域医療介護総合確保基金」や「職場意識改善助成金(労働時間等の改善・向上に取組む医療機関を対象とした助成金)」などの制度を活用することも要請しています。
 また、具体的な支援を行うにあたっては、「医療勤務環境改善マネジメントシステムの導入支援のための集合研修・説明会・ワークショップの開催」「各医療機関からの個別の相談対応」「各医療機関への訪問支援」などを行うことになります。厚生労働省は「個々の支援ニーズに応じ、柔軟な手法を講じる」よう求めています。都道府県では、可能な限り本年度(平成26年度)中に支援センターを設置することが求められているとともに、「勤務環境改善計画を平成26年度中に策定する医療機関の割合等」「支援センターの設置時期、設置方法等」などを盛込んだ年次活動計画を厚生労働省に提出しなければなりません。

医療従事者の勤務環境を改善し、働き方・休み方が改善され、働きやすさ確保のための環境整備が進められていくとのことですが、どれだけ都道府県の支援センターが各医療機関に入っていけるのか、実際に機能するには多くの障壁があると感じます。もしかすると労働基準監督署のように、労働者が労働上で起きた瑕疵に対する不平不満の窓口のような機能を担うのでしょうか。そのようなスタンスでなければ、なかなか各医療機関の中の本質的なレベルのところには立ち入れないのではないでしょうか。








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2014年10月7日火曜日

めざすべき看護体制   日本医労連

日本医労連は「めざすべき看護体制の提言」をまとめ、 9月8日に公表しました。働き続けるための労働条件として日勤の看護師配置「4対 1以上」など求めたほか、独自に積算した看護職員の必要数を示し、厚生労働省が看護職員の確保に努めるための目安としておおむね5年ごとに策定している「看護職員需給見通し」に反映させることを求めています。
提言では看護職として働き続けるための条件に加え、病棟や訪問看護などの勤務形態ごとに「求められる看護体制」や看護職員の必要数をまとめました。






働き続けるための労働条件については、日勤は患者4人に看護師1人以上、夜勤は患者10人に看護師1人以上の配置、1日8時間労働、夜勤交代制勤務の周期が次第に遅い時間帯となる「正循環」で組む、完全週休2日制と諸休日の完全取得、母性保護の視点を重視して生理休暇の完全保障と妊娠者の夜勤免除、在宅を含めたすべての職場で「1人勤務」をなくす、を挙げました。
看護職員の必要数については、病棟・外来・手術室・透析室・訪問看護に分けて提示しました。病棟については、1病棟を40床とし、全国では171万床として試算しました。1病棟当たり49人、全国では約210万人が必要になるとし、100床当たりの看護職員数は1222人と積算しました。
外来については、病院で15対1、診療所で30対1の「看護職員」配置を前提に、小児科、処置や検査の多い耳鼻科・眼科はプラスアルファの配置が必要、救急外来は、10対1の看護職配置かつ救急医療専門医と検査の専門職の配置、交代制勤務かつ夜間の複数看護職配置、を求めています。
手術室については、医療法と診療報酬上で看護職員の配置基準を明確化することを求めた上で、宿日直勤務や拘束・待機制を廃止して交代制勤務とする、臨床工学技士などの必要な専門職の配置、手術時の人員配置は最低3人の看護職を配置、などを求めました。 訪問看護については、夜間待機は月4日に制限、待機明けの休みを保障する、待機時の複数体制、などの必要性を指摘しました。
厚生労働省が公表している需給見通しの最新版は2011~2015年の5年間です。医労連は、提言内容を16年以降の5年間の需給見通しへ反映させることを求めています。

これからの医療制度の改革に大きく影響を及ぼしていくのがそれぞれの看護の存在です。7対1を脱することを決めた病院では、過剰になった看護師を抱えたままでは収入単価が落ち込むにもかかわらず人件費が変わらなければ利益を圧迫していきます。例えば地域包括ケア病棟へのシフトを決めたのであれば、それに沿った人員体制に見なおさなければなりません。また地域医療への拡大を目指すのであれば、訪問看護の人員を用意しなければなりません。大きな流れとしては、7対1を脱した病院であふれた看護師が訪問看護へとシフトしていけば、全体として丸く収まると国は試算しているのかもしれませんが、ヒトを動かすということは、どこかに集まりどこかに不足する偏りが生じることは避けることができない現実だと思われます。ただその一方で特定行為に係る看護師の研修制度の創設があり、看護師に任される領域がこれまで以上に広くなっていきます。そのあたりとのバランスも気になるところです。








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2014年10月5日日曜日

公立病院 半数以上が赤字

総務省は930日、2013年度の「公立病院改革プラン実施状況等の調査結果」を公表しました。経常収支が赤字の公立病院は53.6%となり、黒字の46.4%を上回りました。黒宇病院の割合は、2012年度は50.4%で半数を超えていましたが、再び半数を下回りました。






現行の公立病院改革プランは、経営の効率化に関して20092011年度の3年間を標準期間としているが、その後も経常収支比率の目標を設定している病院は452病院ありました。このうち、2013年度に目標を達成したのは46.5%に当たる210病院でした。同改革プランに盛り込まれた「再編・ネットワーク化」について、自治体などが策定する計画に基づいて再編などの計画を進めているのは全体の51.5%に当たる458病院でした。このうち、実際に病院の統合・再編に取り組んでいるのは162病院(公立病院以外の病院などを含めると189病院)でした。公立病院改革プランについては対象期間が2013年度までだったことか ら、骨太の方針2014に新たな改革プランを今年度中に策定する方針が盛り込まれており、総務省は調査結果などを踏まえ、今後具体的なプラン策定の検討に入る方向です。

公立病院の赤字経営の実態については、これまでもいろいろと取り上げられてきましたが、まずは公務員体質を脱却しなければ、大きく改善することは難しいでしょう。そのためには独立法人化であったり、または指定管理制度などを取り入れている公立病院も増えてきておりますが、市民・区民の税金が無駄に使われていることに対し、もっと責任を負うべきでしょう。補助金・交付金無しで運営している私立病院も今や地域の医療を維持する為の機能を多く担っています。ただし、消費増税などによりどの病院も運営が厳しくなってきている中、合理化を図るためにも合併などが進む方向ではないかと考えられます。







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2014年10月4日土曜日

経常利益が大幅減収  大阪府私立病院協会事務長会

2014年度診療報酬改定に伴い9月いっぱいで7対1入院基本料などの経過措置が終了することを踏まえ、大阪府私立病院協会事務長会が幹事病院 (36病院)を対象に2014年度上半期の経営収支状況を調査したところ、3割を超える13病院が減収減益に転じていることが分かりました。36病院全体の平均経常利益は年間ベースで約2900万円の減収になるとしています。松本力会長 (社会医療法人愛仁会常務理事)は「極めて厳しい改定であることが調査結果からも明らかです。10月から病床機能報告制度が開始されるなど、医療行政は待ったなしで進められます。多くの病院は10月以降の下半期にどう経営を立て直していくか、重要な岐路に立っている」と述べられ、10月以降の対応が重要になるとしました。事務長会は、10月以降に亜急性期病床が廃止となり7対1などの経過措置も終わることから、多くの病院が機能分化に向け大きくかじを切るケースが出てくることも踏まえ、上半期の改定の影響を調べました。下半期の実態は今後しかるべき時期に調査を進めるとしています。






調査結果によると、増収増益は10病院にとどまりました。このほか増収減益が10病院、減収減益が13病院、減収増益が3病院でした。36病院全体の平均医業利益は年間で約2500万円の減収になる見通しのほか、平均経常利益は年間ベースで約2900万円減となる見込みです。2014年度改定による控除対象外消費税の補填率については、8割の病院が「カバーできていない」と回答しました。10月以降の下半期に向けた取り組みとして幹事会では、地域包括ケア入院医療管理料などの算定準備をはじめ、DPC機能評価係数Ⅱの強化(後発医薬品の採用、平均在院日数の短縮など)、病床利用率の向上、短期滞在手術の強化などが挙がりました。
調査を担当した近畿大病院企画室長代理の土井生資氏 (事務長会参与)は「後発医薬品が係数化されたことは大きいことです。近畿大病院でも日標値である使用割合6割まで、もう一息のところまで来ています」と述べられました。医薬品の妥結率については「ペナルティーがあり、200床以上の病院は当然クリアしてくると思います」と指摘されました。松本会長も「妥結率については、私病協会員で対象病院であればクリアするのが当然です。 こんな厳しい改定であればなおさらです」と述べられました。

2014年度はまさに病院においては大きな変貌の年になります。元々採算性が低く、なんとか繋いできた病院にとっては、経営収支状況はとても厳しさを増すと考えられます。それでも地域の医療を維持する為には病院を維持することが使命と感じている理事長も多くいらっしゃると思います。効率化でしわ寄せを受けるのは弱者という方程式は、解けないものです。








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2014年10月3日金曜日

診療報酬等に関する定期調査

日本病院会は929日、2014年度「診療報酬等に関する定期調査」の中問集計結果報告書を公表しました。診療収益は約6割の病院で増収となったが、病床規模別に見ると100床未満の病院で前年比減収となるなど厳しい結果となりました。12月に最終結果を報告する予定ですが、堺常雄会長は「小規模病院の経営改善は2014年度改定の重要な視点でした。中間集計を見る限り、大・中規模病院への評価が先に立ってしまい、依然として小規模病院の評価が残された格好となった」と述べられました。







日本病院会は2013年から、診療報酬改定が病院収入に与える影響を毎年定期的に精査・検証するために調査を実施しています。2014年は714日~912日の調査期間に、会員2399病院にweb調査を実施しました。20136月と20146月の月別診療収益などを調べました。598病院から回答がありました (回答率24.9%) 有効回答数は484病院。消費税負担を補填するために初・再診料が上乗せされたことや、入院基本料のアップなどを背景に、診療収益 (入院+外来)62.0%の病院が増収となりました。収入増病院の割合を病床規模別に見ると、「99床以下」は35病院のうち20病院で57.1%でしたが、300床を超えると70%前後の病院が収入増で推移していました。病床規模別の1病院当たり診療収益を20146 20136月で比較すると、「99床以下」だけが入院、外来、入院+外来のいずれもマイナスでした。
2014年度改定の目玉の一つだった 7 1入院基本料を算定していると回答のあった285病院のうち、収入増で推移したのが158病院(55.4%) 、収入減は127病院(44.6%)でした。一般病棟入院基本料別に経常利益が赤字となっている病院の割合を前年と比較すると、7 1病院は20136月の61.0%20146月には70.5%に増加し、他の入院基本料の病院よりも割合が高く、急性期病院の経営の厳しさも浮かび上がりました。
このほか、病床区分、病床規模、開設主体などのいずれの区分についても入院延ベ4患者数の減少傾向が顕著に認められました。病床規模別では、規模が大きくなるほど外来延べ患者数の増加割合が高い状況でした。報告書は「大規模病院の外来縮小化策が収まったか、あるいは、71入院基本料の要件が厳しくなったことなどにより、入院から外来ヘシフトしているとも考えられる」と分析しています。

厚生労働省はいかに医療費を抑制するかということで、病院数と病床数を減らそうと次々に改定していくと思います。本当に必要な医療だけにスリム化するという狙いらしいのですが、受けたい医療を受けたいときに受けることができなくなりかねないと危惧しているのは多くの医療関係者だと思います。各病院の運営が厳しくなれば、診療科なども見直さざるを得なくなることでしょう。これからは高齢化が進行し医療の役割は変わり、疾病は治す時代から癒す・抱えて生きる時代へと変化していきます。その時に本当に最適な医療を受けることができるのでしょうか。各病院が強い経営を維持しなければ、地域の医療を守ることはできなくなるのではないかと危惧致します。







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