中医協総会 (会長=森田朗 国立社会保障・人口問題研究所長)は2月18日、次期診療報酬改定に向け、在宅医療に関する議論をスタートさせました。検討課題の一つとなっている在宅医療を専門とする保険医療機関の位置付けでは、厚生労働省が外来応需体制を求めている現行の運用の在り方を見直す際の考え方を提示しました。必要に応じて往診、訪問診療に関する相談に応需することや、軽症者を集めて診療するなどの問題が起きないようにする方向性を提案しましたが、診療側、支払い側ともに慎重意見が目立ちました。
在宅医療を専門に行う保険医療機関については、政府の規制改革会議が開設要件の明確化を検討するよう提言しており、フリーアクセスの観点から外来応需体制を求めている現行の運用との整合性をいかにとるかが課題になっていました。厚生労働省は、外来応需体制の在り方について、健康保険法63条第3項に基づく開放性の観点から、医療提供範囲内の被保険者の求めに応じて、医学的に必要な場合の往診、訪問診療に関する相談への応需な どの客観的要件、在宅医療の質と供給体制確保を図るため在宅医療の専門性の評価、在宅医療を中心に提供する医療機関に軽症者を集めて診療するなどの弊害が生じないような評価の在り方を検討することを提案しました。こうした外来応需体制の運用に関する提案に対し、総会では診療側、支払い側の委員から慎重な検討を求める意見が相次ぎました。
診療側の中川俊男委員 (日本医師会副会長)は「かかりつけ医を外来で受診していた患者が、通院困難となり、かかりつけ医が往診をするという形が在宅医療の大原則。これは守っていかないといけない」と強調されました。その上で「24時間態勢で、在宅医療の提供体制を補完する新たな仕組みという視点は大事だが、前回改定で見られたような不適切事例によって健全な在宅医療が阻害されないよう慎重な検討は必要」と求めました。
鈴木邦彦委員 (日医常任理事)も「軽症者を全て外来診療なしで在宅で診るような形態が出てくる可能性がある」と慎重姿勢を示しました。一方、支払い側の矢内邦夫委員 (全国健康保険協会東京支部長)らは、外来応需の運用の在り方の見直しについては「患者のメリットがあまり見えない。この視点からの検討をお願いしたい」と述べられました。
次の診療報酬改定は2025年に向けた大きな意味があります。いかに医療と介護を連携させて病院から在宅へ移管させることで社会保障費の増加を抑制できるかが、財務省から厚生労働省に課せられた最大の課題です。そのためには在宅復帰を浸透させて、在宅医療で地域で看ていくことが鍵となっています。しかし、これまで病院というスケールメリットで効率化してきた医療の現場において、訪問という非効率的な体制で本当に満足のいく医療を提供することが可能なのでしょうか。患者の満足のいく医療を提供できるのでしょうか。医療はサービス業であると言われてきていますが、国民の健康を維持するための医療を他のサービスと同じように図ってしまっては、体制にひずみが生じ、国民の健康と安全に支障をきたしてしまうのでは、強く危惧します。
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虐待の事実が認められた施設・事業所の種類は、特別養護老人ホームが69件で最多でした。 認知症対応型共同生活介護34件、介護老人保健施設26件、有料老人ホーム26件と続きました。
介護施設従事者などから虐待された高齢者402人についてその内容(複数回答)を見ると、「身体的虐待」が258名、「心理的虐待」が132名、「介護等放棄」が67名などでした。
虐待の発生要因 (複数回答)について市町村の任意・自由記載を集計したところ、「教育・知識・介護技術等に関する問題」が128件で最も多く、「職員のストレスや感情コントロールの問題」が51件、「虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ」25件と続きました。
虐待者の性別の割合は、男性が51.8%、女性が48.2%でした。これだけ見るとほぼ半分であり特徴はないように感じますが、実際は介護従事者全体に占める男性割合の21.4%と比較すると、虐待者の男性割合は高いと読み取れます。
家族や親族などから虐待を受けたとの相談・通報は2万5310件で、同じく2012年度から1467件増加しました。このうち虐待と判断された件数は1万5731件で、529件増加しました。相談・通報者は介護支援専門員が31.3%で最多でした。
厚生労働省老健局認知症・虐待防止対策推進室の水谷忠由室長は「増えたこと自体は大変遺憾」とコメントされました。一方で、虐待に対応する体制整備が進んだことなどにより「従来拾われていなかった虐待が拾われて増加している要素もある」と述べられました。 厚生労働省は、高齢者虐待の防止や高齢者の世話をする家族らの支援に向けた老健局長通知を各都道府県知事宛てに発出しました。これまでは事務連絡で対応を求めていたが、対応強化のため通知に格上げしました。
虐待はもちろんあってはならないことです。虐待者を擁護するつもりはありません。ただ、介護者にそれだけ精神的な劣悪を及ぼすほどの業務であるということを改めて認識することが大切なのでしょう。諸軍改善加算で金銭的な支援を行なうことも良いですが、介護従事者のストレス・情緒コントロールのサポートも必要ではないでしょうか。また介護は介護職員だけではありません。家族介護による介護者の負担も非常に大きなものです。レスパイトをはじめ、いかに自宅で最期まで共に過ごせるのか。そのあたりの支援体制もさらに高めていくことが地域包括ケアシステムの構築には必要不可欠であると痛感します。
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