2015年1月31日土曜日

大学病院本院の評価のあり方について

中医協・DPC評価分科会 (分科会長=小山信彊・東邦大医学部特任教授)は1月26日、医療機関群I群である大学病院本院について、DPCデータのばらつきが大きいため機能評価係数Ⅱ等のウエート付けなどで適切な評価を進めるべきとの意見を受け、次期診療報酬改定に向けて議論を深めていく方針を確認しました。厚生労働省は、この日の分科会に、昨年11月26日に実施した2014年度特別調査のヒアリング調査結果について報告しました。それによると、大学病院本院と分院の機能分化については「本院と分院で比較した場合に分院の方が高機能になっており、基礎係数で画一化された場合には他大学病院本院から不公平感が出るのではないか」との指摘事項が出たことを提示しました。精神病床を備えていないことに対しては「精神疾患を抱えた高度急性期の患者への対応をどのようにするのか」など3点の指摘を整理しました。






それを踏まえ分科会では、藤森研司分科会長代理 (東北大大学院教授)が「医療機関I群の基礎係数は全体で決定するので機能を持っていない病院が入ると全体が低くなる。I群の下限値をⅡ群の要件で用いていることからも影響を及ぼしてしまう」などと懸念を示しました。 さらに、河野腸一委員 (千葉労災病院長)は「I群の中でもデータにばらつきがあるだろう。それほど均―ではないのではないか」との見方を示し、伏見清秀委員 (東京医科歯科大大学院教授)も「分院を持っていない大学病院本院でもデータにばらつきが大きい現状だ。今後、基礎係数、機能評価係数のウエート付けの見直しを進めていこうという議論もあり、そこで併せて検討してはどうか」などと指摘しました。このほか医療機関I群の評価専用の機能評価係数Ⅱを作るべきとの意見もありました。また、工藤翔二委員 (結核予防会理事長)は、ヒアリングを受けた埼玉医科大病院が分院との機能分化を進めている事例に言及し「埼玉医科大の本院と分院の機能分化の手法は、病院経営の側面から見れば極めて合理的だ。ただ、DPC制度とは実態がずれているということだ」とし、機能分化の流れを踏まえたDPC制度での評価を工夫すべきと提言しました。小山分科会長は「I群の評価をどうしていくべきか。データの ばらつきなども踏まえ分科会で議論を深めていきたい」と述べられました。

7対1の多くの急性期病院がこれからの方向性に院長をはじめ経営幹部が頭を悩ませていると思います。急性期を突き進みたいというのは、医師の本音でしょう。それはまだまだ急性期が医療の最先端であるという文化が強く根付いているからです。そうなると、高度急性期を目指すべきですし、DPCもⅡ群を目指すべきと考えるのが常でしょう。そうなるとそれほど機能が高くない大学病院の本院の存在がどうしても矛先に向けられてしまいます。ただそうはいっても、まだまだ大学の医局の存在は、市中の病院にとっては強いものです。大学病院を軸とした包括ケアの構築がある意味理想像なのではないでしょうか。








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2015年1月30日金曜日

新オレンジプラン 認知症施策推進総合戦略

厚生労働省は1月27日、内閣官房や警察庁、総務省など関係省庁と共同で新たに策定した「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を公表しました。認知症高齢者が約700万人に達することが見込まれる2025年に向け、数値目標を定めて認知症に関する専門医や認定医の養成を拡充するなどの方針や施策を盛り込みました。






また、2013~2017年度の5年 間を対象にした「認知症施策推進5か年計画」(旧オレンジプラン)で掲げた数値目標の一部を引き上げました。認知症に関する医師の養成拡充については「認知症に関する専門医、認定医等について、数値目標を定めて具体的に養成を拡充するよう、関係学会等と協力して取り組む」と明記しました。新たな施策として、看護職員の認知症への対応力向上を図るための研修について2015年度に検討し、2016年度以降に関係団体と協力して実施する方針も示しました。医療に関する主な日標値は、認知症の早期鑑別診断と速やかな医療・介護サービスを提供する初期対応の体制構築に向けた「認知症初期集中支援チーム」を2018年度には全市町村に設置(2014年度は41市町村の見込み)、 かかりつけ医の認知症対応力向上研修の受講者を2017年度末に6万人(2013年度末の実績は3万8053人)、認知症診断 などに関するかかりつけ医の相談を受け付ける役割を担う認知症サポート医を養成する研修受講者を2017年度末に5000人(2013年度末の実績は3257人)、一般病院勤務の医療従事者に対する認知症対応力向上研修の受講者数を2017年度末までに8万7000人(2013年度末の実績は3843人)、認知症疾患医療センターを2017年度末までに約500カ所設置 (2014年度は約300カ所の見 込み) などです。

閣議後に記者会見した塩崎恭久厚生労働相は、新オレンジプランについて「医療・介護基盤の整備だけでなく、地域での見守り体制の整備や生活しやすい環境づくりなど、認知症の方やその家族の視点に立って広く必要な施策を盛り込んだ」と説明されました。「医療と介護がうまく連携して、各人のニーズに合った対応が社会としてできるようにすることが一番大事。今回の戦略は、それをトータルな形で示した。そういった意味で、世界の中でも初めてではないか」とも述べられ、新たなプラン策定の意義を強調しました。
 新オレンジプランは以下の12省庁が共同で策定しました。厚生労働省、内閣官房、内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省。

「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジブラン) を策定したことを受け、日本医師会の横倉義武会長ら医療・介護の専門家3人と認知症当事者2人が1月27日、安倍晋三首相と首相官邸で意見交換を行ないました。 日医の横倉会長は、日常診療の中で患者の変化に気付き必要な専門医療につなげることや、可能な限り認知症の人が地域で暮らせるように支援するなど、かかりつけ医の役割の重要性に言及しまし。認知症当事者の丹野智文さんは、認知症の進行を止める薬が現在存在しないことに言及 し、治療薬開発を国家戦略として支援するよう求めました。 安倍首相は意見交換の場で、認知症は誰でも関わる可能性のある身近な病気だとし、認知症になってもより良い生活ができるよう、社会を挙げて、また国際的にも連携しながら取り組む必要があると強調しました。 この日は、医療・介護の専門家として、横倉会長のほか日本介護支援専門員協会の鷲見よしみ会長と、国立長寿医療研究センターの鳥羽研二総長も出席していました。

認知症対策については昨今よく取りざたされておりますが、抜本的な解決策が無い中で暗中模索に進めていかざるをえない部分が多く、またそれをかかりつけ医といった診療所の開業医に担ってもらうというのは、先行き厳しいと感じます。それほど開業医に業務上のゆとりがあると感じているのでしょうか。もしくは抜本的な制度改革も含めて検討されているのでしょうか。








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2015年1月29日木曜日

外来の機能分化について 東京大医学部付属病院

東京大医学部付属病院 (1163床、精神54床)は、紹介状なしで大病院を受診した場合の定額負担を導入する方針が決まったことを受け、今後中医協で議論される徴収金額の設定や再診患者からの徴収の仕組みなどの動向に注目しています。






東京大医学部付属病院は2014年4月、紹介状なし外来患者の選定療養費5250円について、消費増税分を転嫁し5400円にアップさせています。東京大医学部付属病院の竹田博幸事務部長は1月27日、「2014年10月時点の紹介率は97%、逆紹介率81%で、紹介状なし患者がそもそも少ないが、定額負担の額が5000円以上になるのか、あるいは初診と再診で徴収金額が2 階建てになるのかなど、今後の中医協の議論を見守っていく」としました。また、竹田部長は、次期診療報酬改定に向け、「大病院の外来機能分化をどう進めるべきかという議論に大きな関心を持っている。紹介状なし患者への対応だけでなく、 2014年度改定で行われた紹介率等が一定程度確保されない施設で初診料・外来診療料の減額措置がさらに強化されるのかなど、外来機能の在り方に関する今後の議論に注目したい」と述べられました。 2014年スタートした病床機能報告制度では、2014年7月1日時点で「高度急性期」と報告したのが15万3052床で、集計対象の93万4476床の16.4%となっています。竹田部長は「東京大医学部付属病院では、精神科、治験等の病棟を除く30病棟全てを高度急性期で報告した。教育・研究を含めて高度急性期として解釈したものだ」と説明しました。
一方、2014年度改定の影響では当初予算から9億円の赤字を見込んでいましたが、2014年度末までに5億円の赤字まで改善する見通しを示しました。赤字額が縮小した要因としては、後発医薬品への切り替えを挙げました。東京大医学部付属病院では、後発品切り替えは、薬価なども考慮しながら、上市後1年を経過した薬剤を対象としており、2014年4月からの半年間で新たに31品日、後発品採用全体で約1億数千万円規模の影響があるとしています。

東京大医学部付属病院の竹田博幸事務部長をおっしゃっているとおり紹介状のあり・なしによる利用者の負担額で本当に機能分化が進むのかと考えれば、もっと他にも対策が必要であると感じます。その意味で紹介率に着目し診療報酬に濃淡をつけることが一番効果が見込めるのかもしれません。ただ、それでも外来に来られた患者を診ないわけにはいかないでしょうし、医療の役割・病院の役割が転換していくこの渦中の状況をしっかり地域住民へ伝えることも重要な役割のひとつだと感じます。








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2015年1月28日水曜日

昨年の倒産、老人福祉が過去最悪の水準 帝国データバンク

 2014年に倒産した老人福祉事業者は45件で、介護保険法が導入された2000年以降で最多だった2013年とほぼ同水準だったことが、帝国データバンクの調査で分かりました。一方、診療所の倒産は14年ぶりに1ケタ台にとどまり、病院も2013年に比べて3件少ない5件となるなど、いずれも減少傾向が見られました。






 帝国データバンクでは、訪問介護や高齢者向けデイサービスなどを運営する老人福祉事業者と、病院や診療所に歯科医院を含めた医療機関の2000年から2014年までの倒産動向について調査・分析しました。
 その結果、2014年の老人福祉事業者の倒産件数は45件で、2000年以降最悪を記録した2013年の46件に次ぎ、2番目の多さとなりました。負債総額は77億1400万円で、こちらも2000年以降では最悪の2008年(78億9300万円)に迫る額となりました。倒産態様では破産が41件、民事再生法の適用が3件、特別清算が1件でした。
 老人福祉事業者の倒産件数が高止まりしている背景について、帝国データバンクでは、2000年から2014年にかけて倒産した老人福祉事業者の72.2%が設立後10年未満の若い事業所であることから、「中長期的な展望がないまま業界に参入した事業者の倒産がここに来て相次いでいるためではないか」と分析しています。2015年以降の倒産の動向としては、業界内の競争の激化と人手不足の深刻化に加え、4月の介護報酬改定が引き下げとなったことが影響し、「従来と比べて、やや規模が大きな企業の倒産が発生する可能性もある」としています。
 2014年の医療機関の倒産は29件で、2013年から5件減少しました。その内訳は病院が5件、診療所が9件、歯科医院15件でした。歯科医院の倒産件数は2000年以降、最多となりました。倒産態様では破産が26件、民事再生法の適用が3件でした。負債総額は病院が140億5100万円、診療所が29億7800万円、歯科医院が14億5600万円でした。
 病院や診療所の倒産が減少傾向にある一方、歯科医院の倒産が2000年以降最多となった背景について、帝国データバンクでは「2013年3月に終了した中小企業金融円滑化法は、医療法人を対象に実質的な継続取り組みが行われているが、個人経営が多い歯科医院は、その恩恵を受けにくいためではないか」としています。

医療も介護福祉も国から定められた報酬に則って収益が確定する分、他事業所との差別化というのが難しい部分があります。職員を増やすなど手厚いサービスへとシフトすれば利益を圧迫しますし、かといって地域に選ばれるだけの魅力が無ければ、集患につながりません。その難しさと、介護は新規参入が増加し競争が激化したためでしょう。しかし、2025年に向けてこれからますます医療と介護の必要性は増していきますが、小さな事業所でもしっかり営んでいける制度の整備をお願いしたいものです。このままでは小さな事業所は事業を継続していくことが難しい状況に拍車がかかっていき、ひいては地域住民にとって安全で安心な生活環境の維持が困難になっていく可能性が高いのではと懸念いたします。







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2015年1月27日火曜日

再立ち入り検査 東京女子医大病院

 東京女子医大病院(東京都新宿区)で人工呼吸中の小児への使用が原則禁止されている鎮静剤「プロポフォール」が複数の小児に投与され、2歳男児が副作用とみられる症状で死亡した問題で、厚生労働省は1月26日、医療法に基づく再度の立ち入り検査を東京都と合同で行いました。2014年6月に最初の立ち入り検査を行いましたが、再発防止への取り組みが不十分だったとして再度の立ち入りに踏み切りました。






 厚生労働省によると、病院側は前回の立ち入り検査の際、副作用のリスクの高い医薬品について安全な取り扱いを徹底するなど再発防止策を示しましたが、取り組みに不十分な点が確認されたといいます。院長ら病院幹部が12月交代しており、新体制での安全管理体制について事情を聴きます。検査結果を踏まえ、高度医療を提供し診療報酬の優遇がある「特定機能病院」の承認を取り消すかどうかを検討します。

 東京女子医大病院では2008年1月からの6年間で、集中治療室(ICU)でプロポフォールを持続的に投与された小児63人のうち、生後0カ月~13歳の重症心疾患患者11人がICU内やICU退室30日以内に死亡しました。東京女子医大病院は2014年12月、11人のうち5人についてプロポフォールの投与が死因となった感染症などを悪化させた可能性を否定できないとの外部委員会の調査結果を公表しました。

 2014年2月には2歳男児が、首の手術後にプロポフォールを大量に投与されて死亡しました。警視庁が業務上過失致死容疑で捜査しています。

 東京女子医大病院は心臓手術の死亡事故で隠蔽(いんぺい)事件を起こし、2002年に全国で初めて特定機能病院の承認を取り消され、2007年に再承認されました。今回の問題で取り消されれば2度目の取り消しとなります。

東京女子医大病院(東京都新宿区)で2014年2月、鎮静剤「プロポフォール」を大量に投与された埼玉県の男児(当時2歳)が死亡した事故で、東京女子医大病院が遺族側に対し、副作用のリスクを左右する累積投与量を医師や薬剤師が把握しないまま4日間投与を続け、死亡に至ったと説明していたことが分かりました。警視庁は安全管理に問題があった可能性が高いとみて医師らから事情を聴いており、業務上過失致死容疑で捜査していました。
男児は2014年2月18日に首のリンパ管腫の手術を受け、集中治療室(ICU)で人工呼吸器を使って経過をみていたところ、2月21日に急性循環不全で死亡しました。この間、患部の痛みで体を動かし呼吸器が外れないようにするためプロポフォールが投与されていました。
 遺族に対する病院側の説明によると、男児の診療には耳鼻咽喉(いんこう)科の主治医やプロポフォールの投与を決めた麻酔科の医師、薬剤師ら複数のスタッフが関与していましたが、いずれも累積投与量を把握していませんでした。また、麻酔科の医師は、人工呼吸中の小児に使うことは薬剤の添付文書で「禁忌」とされていることを主治医に説明していなかったといいます。
 また、麻酔科の医師は使用が48時間を超えると腎機能低下などの副作用の危険性が高まることは認識していましたが、投与開始翌日も患部の腫れが収まらなかったため投与は継続されたといいますい。同医師は「48時間を超えたところで鎮静剤を変えるべきだったが、ICUなどから詳細な報告がなかった。ここまで大量に投与されているとは思わなかった」などと説明したといいます。
 病院の病理解剖結果などによると、男児の累積投与量は成人の許容量の約2・7倍に相当し、死因の急性循環不全もプロポフォールの副作用で起きた疑いが強いことが判明しています。東京女子医大病院広報室は遺族側への説明内容について「事故調査委員会の調査結果がまとまっておらず、遺族の了解も得られていないのでコメントできない」としています。
 麻酔科学に詳しい近畿大の中尾慎一教授は「プロポフォールの長期大量投与は大人でも副作用の危険性が増すという報告もあります。麻酔科の医師が主治医にも危険性を説明し、投与量や経過観察に細心の注意を払うべきだった」と指摘しています。

これは、医療事故に含めるのか。そもそも東京女子医大病院での体制・組織文化に根底から問題があったのではないかと感じます。患者の生命を救うために現場で頑張っている医師も多くいます。このような事故(事件)がもう二度と東京女子医大病院に限らず起きないことを切に願います。








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2015年1月26日月曜日

時間外診療の特別料金ゼロ 新岡山市民病院

岡山市立総合医療センター(岡山市北区天瀬)は1月20日、5月に岡山操車場跡地(同北長瀬地区)に開院する新しい市民病院について、夜間や土日祝日に受診した患者から通常の診療費に上乗せする特別料金を徴収しない方針を示しました。






 岡山市立総合医療センターの業務をチェックする評価委員会(外部の医師、弁護士ら5人で構成)で明らかにしました。岡山市立総合医療センターは2014年11月の評価委員会で、新しい市民病院では一般外来の業務時間外(平日午後5時~翌日午前8時半、土日祝日は終日)は5千円の特別料金を徴収する考えを表明していましたが、委員から「『24時間365日体制で全ての症状に対応する』という市民病院の理念と矛盾するのではないか」と指摘があり、方針を転換しました。 岡山市立総合医療センターの意向を踏まえ、岡山市は岡山市立総合医療センターの中期計画(2014~17年度)変更案を2月定例市議会に提案します。
 特別料金の徴収は国が保険外併用療養費として認めており、軽症者が安易に時間外の救急外来を利用する「コンビニ受診」を抑制するのが狙いです。患者が全額を負担します。岡山市立総合医療センターの松本健五理事長は「開院後、軽症者の対応で救急外来が本来の役割を果たせない事態が起きれば特別料金の導入をあらためて検討したい」と話しています。
老朽化した現在の市民病院(同天瀬)が単に移るだけでなく、365日24時間体制で全ての症状に対応するER(救急外来)の機能を拡充します。在宅の医療や介護に関する総合相談窓口といった新たな機能も備えます。
 新しい市民病院はJR北長瀬駅前に立地し、8階延べ約3万4千平方メートル。総事業費156億6千万円で2013年3月に着工しました。建物は2014年末に完成し、5月までに駐車場や植栽の整備を進めています。現時点で内科、外科、小児科、産婦人科といった18診療科(現行20診療科)を設ける予定です。結核病床などを含めて計400床(同405床)で、一般病床の個室は現在の26床から120床に増やします。
 ERは救急専門医らが初期治療を施した上で、入院や手術の有無など治療の方向性を診断します。広範囲熱傷、多発性外傷といった症状で高度治療が必要と判断した場合には、高度救命救急センターのある岡山大病院(同鹿田町)など他の医療機関に受け入れを依頼します。
病院の運営には市が開設した地方独立行政法人「市立総合医療センター」(同天瀬)が当たります。岡山市の直接運営よりも経営判断の迅速化、効率化が図れるとされ、経営目標に当たる中期計画(2014~2017年度)には最終年度の救急患者数を2012年度比45%増とすることや職員の計画的な採用・育成方針などを盛り込んでいます。

これから大病院においては、初再診料を5000円から10,000円にて徴収するとの方向で進んでいる中、市立総合医療センターの決めた時間外診療の特別料金を徴収しないということが、どのように働くのか。地域包括ケアシステムとして機能分化を進めることができるのか、コンビニ受診が増長しないのか、全国の病院が注目することと思います。








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2015年1月25日日曜日

感染性胃腸炎、東北5県で患者増

ノロウイルスなどの感染によって嘔吐や下痢といった症状を伴う感染性胃腸炎が東北地方で流行しています。1月12日から1月18日までの週の患者報告数は、宮城県と山形県、福島県、岩手県、秋田県の5県で前週を上回りました。患者が増加傾向の山形県は「庄内地区で流行しており、県の過去5年平均を大きく上回って推移している」と指摘しています。患者の吐物や便の処理時に注意を払うことや、手洗いなどの予防対策が必要としています。






1月12日から1月18日までの週の定点医療機関当たりの患者報告数は、宮城県が前週比8%増の10.03人、山形県が同21%増の10.27人、福島県が同35%増の10.04人、岩手県が同1%増の6.9人、秋田県が同10%増の6.03人となっています。
 秋田県の横手保健所管内では警報基準値(20.0人)を上回る24.67人を記録しました。県中保健所管内で19.3人に達した福島県も「県中で流行が続いており、県北、郡山市、県南、いわき市で小流行が見られる」としています。
 感染の拡大に伴い、教育施設で集団発生も起きています。岩手県は1月19日、一関市内の保育所でノロウイルスによる感染性胃腸炎の集団発生があったと発表しました。1月5日から1月15日にかけて園児21人と職員1人に嘔吐や下痢などの症状が出たといいます。
 岩手県によると、医療機関の検査で3人からノロウイルスが検出されましたが、入院者や重症者はいませんでした。一関保健所がこの保育所に対し、手洗いや消毒などの二次感染対策の指導を行ないました。

この時期に、インフルエンザとともに増えるのがノロウイルスです。どちらも感染力が強く、予防に対する意識を高めることから必要となります。どうしても体力の弱い乳幼児や高齢者は感染してしまうとリスクが高くなります。手洗いうがい消毒を励行しまずは自分の身を守るところから、拡大抑制に取り組むことが大切です。







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2015年1月24日土曜日

産科医開業費を助成

沖縄県は2014年、宮古地区を含む離島などの医師不足を解消するための基金20億円を創設し、関係自治体への説明に入りました。地元で産科医を開業する際の費用を助成するなど、医師の確保と定着に結び付けるのが目的です。沖縄県は産科医へ制度の周知を行うとともに、宮古島市など関係自治体には円滑な推進を図るための予算措置と条例制定を求めます。






 沖縄県保健医療部の阿部義則参事、金城弘昌課長、牧志朋幸主事が1月20日、宮古島市生活環境部の平良哲則部長に、同基金の事業目的と概要を説明しました。
 基金の名称は「沖縄県北部地域及び離島緊急医師確保対策基金」で、事業期間は2015年度を含め2018年度までの5年間です。2014年の県議会9月定例会で同基金設置条例案と補正予算案が可決されました。
基金は、宮古、八重山の離島や沖縄本島北部地域で開業したい意思がある人が県立病院で産科医として2年間勤務した後、地元で産科診療所を開設する際の費用を助成するという仕組みです。 ただ、産科医は昼夜問わずの対応や訴訟を起こされるリスクが高く、若い医師らには敬遠されがちの診療科です。 加えて離島地域では先進的な医療を学べる機会や指導員の数が少ないことなどもあり、慢性的な医師不足となっているのが現状です。
 阿部参事は「医師が独立して開業しようとしても、資金調達が難しい場合があります。宮古島市と沖縄県が連携してこれを助成することで、開業する際の負担を減らすことができる」と基金の目的を強調されました。先進地事例として静岡県富士市を示し「二つの診療所がこの制度を活用して開業しています。他県の例だが実績としてはあります」と話されました。

地方の医師不足は深刻さを増しており、いかに医師を確保するか、もう大学の医局頼みだけでは無理な状況となっております。そもそも臨床研修制度が変わり、大学の医局ですら若い医師を充分に確保することが困難になってきており、都市部の大病院に医師が集まっていると言われています。ただそのような中で、地方で地域の医療の為にと考えている医師に開業費用の助成を行なうことが本質的な問題解決ではないと感じる部分があります。先進的な医療を学べる機会や指導員の数が少ないことや、医師同士の互助がなかなか働かず、孤軍奮闘しなければならないその現実へのリスクを恐れているのです。分かっていても解決策はなかなか出てこない各地方自治体だと思います。








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2015年1月23日金曜日

インフルエンザの流行が各地で本格化

インフルエンザの流行が各地で本格化しています。長野県は1月21日に、1月12日から1月18日までの週の患者報告数が警報発令の基準を超えたことから「インフルエンザ警報」を発令しました。警報基準値を上回った富山県では学級閉鎖などの措置を取る教育施設が続出しています。前週に引き続き警報基準値を上回った千葉県は「今後の流行状況に注意が必要」としています。






長野県によると、この週の定点医療機関当たりの患者報告数は前週比14%増の33.09人となりました。長野県は、警報基準値(30.0人)を超えたことからインフルエンザ警報を発令しました。「今後しばらくの間は感染の拡大が懸念される」とし、手洗いやマスクの着用といった予防策の徹底を求めています。
 富山県でも前週比26%増の30.46人を記録しました。1月13日以降は幼稚園や小中学校などで学級・学年閉鎖や休校が相次いでいます。1月19日から1月20日にかけては40施設以上で学級閉鎖などの措置が取られたといいます。
 一方、千葉県でも前週の32.71人を上回る34.35人となり、海匝(70.29人)や君津(46.77人)、夷隅(41.6人)、印旛(41.17人)、松戸(39.8人)など11保健所管内で警報基準を超過しました。年齢群別の割合は5―9歳が27.8%で最も高く、定点医療機関から寄せられた迅速診断の結果はA型 が6568例(97.3%)、B型が126例(1.9%)などでした。
インフルエンザ注意報を発令中の群馬県でも感染が拡大しています。この週の患者報告数は前週比6%増の29.11人となり、「警報値に迫る勢い」(群馬県)だといいます。前週に比べて増加した新潟県(29.55人)も「警報基準に迫っている」とし、警戒を強めています。

インフルエンザの院内感染が起き患者が死亡した医療機関も出てきており、細心の注意が必要になってきました。インフルエンザウィルスの感染は油断が出来ないほど拡大していきます。手洗い・うがい励行を徹底し、マスク着用も可能な限り進めて頂きたいものです。また感染された職員が無理して出勤したために、職員間の感染が拡大しているというような医療人としての自覚が弱い方がいらっしゃる職場についても、トップダウンでも何でも感染予防に尽力して頂きたいものです。








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2015年1月22日木曜日

家族の状況が入居理由 サービス付き高齢者向け住宅

高齢者住宅研究所(大阪市)の調査で、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や介護付き有料老人ホームに入居した高齢者の約6割が、入居理由に「家族の状況」を挙げていることが、明らかになりました。また、入居の決定の際、約7割の高齢者で子どもの意見が影響していることも分かりました。






高齢者住宅研究所は、京都市や大阪市、岡山市など5都市のサ高住11施設と有料老人ホーム3施設で、2014年6月までの1年間に入居した高齢者313人(男性119人、女性194人、平均年齢84.5歳)を対象に、入居前の生活状況について調査を実施しました。本人やケアマネジャーらへの聞き取りに加え、ケアプランからの情報収集などを基に入居の理由や生活状況を分析しました。 その結果、入居の理由については(複数回答)、「内・外科系疾患」が64.2%と最多でしたが、高齢者の独居への不安や同居への負担感など「家族の状況」も61%と高い割合を占めました。
 また、入居の決定にかかわるキーパーソンの分析では(複数回答)、「子」が67.7%を占め、「本人」(34.5%)や「配偶者」(7%)を大きく上回っていました。入居の決定に子どもの意見が大きな影響力を持つことが明らかになりました。
入居前の世帯状況では、「単独世帯」が55.9%で最も多く、以下は「夫婦のみ」、「子世帯と同居」、「子のみと同居」などの順でした。入居前の2週間を過ごした場所は、「自宅」がトップでしたがが、「医療機関」も2番目に多く、入院をきっかけに退院後、在宅に戻らずに入居を決めるケースも多いことが分かりました。
 調査結果について、高齢者住宅研究所では「サ高住が、都市部の単独世帯の受け皿になっています。高齢者が在宅生活を継続するに当たって、家族への幅広い支援が必要ではないか」としています。

特に新たな発見があるような報告ではありませんが、想定していたことの裏付けとなります。サービス付き高齢者向け住宅などに入居される高齢者は、在宅での生活に不安が募っているからであり、その不安・不便を取り除くには自宅の大掛かりなリフォームから介護力という人的支援の注力が必要となります。できれば自宅で生活したいが、それが難しいと判断したことが入居の決定へとなるわけですが、難しいと判断するのが、本人ではないということです。本人はまだ自宅で生活を続けたくても、家族の介護力が乏しければ困難なのです。一人で生きていくということがとても難しいのです。ただ最近は共稼ぎ世帯がほとんどであり、子供家族の負担になりたくないという気遣いから入居を決意される方も多くいるのは、親として働いてしまう子への思いからでしょう。それを否定することはできませんし、子供家族も現状生活を維持していかなければならず、致し方ないところもあると思います。そういう状況を踏まえて、高齢者が不安なく暮らせる地域をいかに構築していくかが、本来の地域包括ケアシステムではないかと感じます。








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2015年1月21日水曜日

2015年度 予算案 総額29兆9146億円

政府は1月14日の臨時閣議で、2015年度予算案を決定しました。2015年度から内閣府に移管する事業を除いた厚生労働省の一般会計予算総額は2014年度比30%増の29兆9146億円でした。このうち社会保障関係費は32%増の29兆4505億円となりました。






社会保障関係費の内訳は 「医療」11兆4891億円(2014年度比26%増)、「介護」2兆7592億円(26%増)、「年金」11兆527億円(31%増)などでした。厚生労働省によると社会保障関係費の自然増は約5700億円で、概算要求額の8155億円より約2500億円少なくなりました。内訳は「医療」2200億円、「介護」800億円で、概算要求より「医療」は800億円、「介護」は600億円少ないです。理由として厚生労働省は「1人当たり医療費などの最新動向を踏まえて計上した」としています。医療費の制度別内訳は、協会けんぽ1兆1813億円(57%減 )、国保3兆4330億円(45%増)、後期高齢者医療4兆7629億円(29%増)で、3制度合計は9兆3771億円 (23%増)となっています。消費税増収分を活用した社会保障の充実メニューで、地域医療介護総合確保基金の医療分として国費602億円(総額は904億円)、介護分として国費483億円(総額は724億円)を確保しました。在宅医療・介護連携や認知症施策の推進などに国費118億円(総額は236億円)を計上しました。
他の施策では、医療事故調査制度創設に伴う「医療事故調査・支援センター」の運営費の補助に54億円、新たな専門医制度創設に向けた養成プログラム作成支援に3億円、特定行為に関わる看護師の研修制度に向けた指定研修機関の確保や指導者育成、研修修了者の計画的な養成に27億円などを計上しました。重複・頻回受診の適正化に向けた保健師らの訪問指導などに19億円、医療保険者による医療機関と連携した糖尿病性腎症患者の重症化予防などに51億円を盛っています。

厳しい国の財源、社会保障費の抑制は財務省が何とかしなければと目の敵のようにしていますが、確かにその面だけ見れば分からなくもありません。ただ、高齢化社会が進む中で、今の制度の延長で検討していくと社会保障費の増長は止めることは厳しくあります。ただ、その増加幅をいかに縮めるかは必要かもしれませんが、しかしその圧縮されたしわ寄せは国民一人一人に割り振られるわけで、結局は高齢化が進む日本は住みにくい・長生きしにくい社会であることは間違いないようです。








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2015年1月20日火曜日

医療事故調査制度 予期しなかったもの とは

厚生労働省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」(座長=山本和彦・一橋大大学院教授)は1月14日、10月から始まる医療事故調査制度が対象にする死亡・死産の事案を規定するための省令案を大筋で了承しました。






厚生労働省が示した省令案は、事案に関係する医療の提供前に、患者・家族に対して死亡・死産の予期を説明、死亡・死産の予期を診療録などの文書に記録、提供した医療の内容に関わった医療従事者間や安全管理のための会議体により、死亡・死産が予期されている状況・情報を共有の3条件すべてを満たさない場合のみを「予期しなかったもの」とする内容です。実際の運用は、この条件で「予期しなかったもの」に該当することを確認し、医療機関の管理者が「医療に起因するまたは起因すると疑われる死亡または死産」であると判断した場合に、第三者機関への報告や院内調査を実施することになります。
死亡・死産の予期について、統計学的・一般的な内容ではなく、個々の患者や妊婦の状態に応じた説明や記録、情報共有が必要であることを省令で明確に求めるべきとの意見が相次ぎました。日本医師会副会長の松原謙二構成員は、「(統計学的な)何%というような説明だけでは十分ではない」と述べられ、省令での記載を明確にすべきだと主張しました。この意見に対し、患者の視点で医療安全を考える連絡協議会代表の永井裕之構成員は「ぜひ、医療界の意見としてまとめていただきたい。患者・家族が納得した上での手術であれば、(結果が悪くても)問題にならないことのほうが多い」と同調されました。南山大大学院教授・弁護士の加藤良夫構成員も「非常に重篤な患者を致死的な覚悟で助けようとする手技もあると思う。いろんな場面ごとに経過が具体的に説明されることが必要」と続けました。 運用通知で考え方を示す予定の「医療に起因するまたは起因すると疑われる死亡または死産」については、次回以降の会合でも引き続き議論することが決まりました。会合では、医療事故調の運用について学術的・専門的な検討を進めている厚生労働科学研究費事業 「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究班」における検討状況をたたき台に議論しました。研究班は、医療機関における“管理"の参考例として、自殺、転倒・転落、拘束・隔離・身体抑制、誤喩、その他の5点を例示しました。ただ「医療に起因するまたは起因すると疑われる」かは、一概に判断できない内容として整理しています。

熱意のある医師は、その熱意を失わざるを得なく、システマチックな医師が存在価値を発揮しそうな現場の逆転が懸念されます。確かに事故は起きてはならないものですが、何とか可能性を膨らませようとする努力は報われなくなっていきます。高齢化社会が進む中で、国は国民の長生きについてもどこかで歯止めをかけるための切り口を探していたのかもしれないと斜めにみてしまいます。








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2015年1月19日月曜日

介護福祉士取得の留学生の就労について

 外国人介護人材の受け入れについて議論する厚生労働省の検討会が1月8日、東京都内で開かれました。日本国内の養成施設を卒業し、介護福祉士の国家資格を取得した外国人留学生が、国内で働き続けられるよう制度を見直すための検討が行われました。EPA(経済連携協定)の枠組みでは認められていない介護福祉士の訪問系サービスでの就労について、委員からは、地域包括ケアシステムを構築する必要性から、実務経験や日本語能力といった一定の条件を付けた上で、将来的には就労を認めるべきという声が多く上がりました。






 現在、「高度に専門的な職業」に就く外国人は日本で働くことが認められています。具体的には医師や看護師などがこれに当たりますが、介護福祉士は含まれておらず、田中博一委員(日本介護福祉士養成施設協会副会長)によると、養成施設を卒業して資格を取得しても帰国してしまう留学生が少なくないといいます。
 こうした実情から、2014年6月に閣議決定された「日本再興戦略」では、日本の養成施設を卒業し、介護福祉士などの国家資格を取得した外国人留学生について、「引き続き国内で活躍できるよう、在留資格の拡充を含め、就労を認めること等について年内を目途に制度設計等を行う」とされていました。厚生労働省は当初、2014年末までに議論を取りまとめる予定でしたが、衆議院選挙の影響などで遅れが生じているため、厚生労働省は早期に次回会合を開いて取りまとめ案を示します。
 今回の在留資格拡充の対象者の範囲について厚生労働省は、「介護福祉士の国家資格取得を目的として養成施設に留学し、介護福祉士資格を取得した者を想定する」との対応案を示し、これについて委員から反対意見は出ませんでした。
 また、EPAの枠組みで働く外国人については、在留の状況を適切に管理する必要性などから、介護福祉士取得後も訪問系サービスには従事できないとされています。厚生労働省はこれを踏まえ、介護福祉士資格を取得した留学生が、利用者と1対1でサービスを提供することが想定される訪問介護など訪問系サービスで働くことについて、外国人労働者の人権を守る観点などからどのように考えるべきか、委員らに議論を促しました。
 石橋真二委員(日本介護福祉士会長)は、「実務経験や日本語レベルなどある程度の条件の下であれば、将来的に訪問介護を認めてもいいのでは」と発言されました。白井孝子委員(学校法人滋慶学園東京福祉専門学校ケアワーク学部教務主任)も、「卒業後すぐに在宅サービスに就くのは難しいだろうが、経験を積む中では在宅も視野に入れられるよう(就労を認める範囲の)幅を持たせるのがいい」と述べられ、他の委員からも同様の声が上がりました。
 一方で、熊谷和正委員(全国老人福祉施設協議会副会長)からは、「これまでの諸外国の例を見ると、訪問系は1対1なので介護する側への人権侵害もあると聞いている」とし、慎重な議論を求めました。

 技能実習制度を通じた外国人介護人材の受け入れについても議論されました。これまで同検討会で4回にわたり話し合ってきたが、この日は検討課題として残っていた「適切な実習実施機関の対象範囲」などについて検討しました。
 厚生労働省は、技能実習制度の対象職種に介護分野を追加する場合、適切な実施機関の対象範囲として、「『介護』の業務が行われていることが制度上想定される範囲に限定すべき」とし、具体的には、介護福祉士の国家試験の受験資格要件を満たすための実務経験として認められている施設などとする案を提示しました。この中には特別養護老人ホームや介護老人保健施設、病院、診療所などが含まれており、さらにその中でも、経営が一定程度安定しているところに限定すべきとしました。
 これについて多くの委員が賛成したが、訪問系サービスについては、実習実施機関の対象外とすべきという意見が数多く上がりました。「外国人実習生が訪問介護に行った場合、利用者は不安を抱くだろうし、本人もうまく実習ができないということが考えられる」と石橋委員が述べたほか、白井委員も、「訪問系ではいろいろな利用者がいるため何が起きるか分からないし、他の人が手を差し伸べてあげられない状況では、実習生の人権を守るために避けた方がいいのでは」と述べられました。
 厚生労働省はこのほか、介護人材を確保するため、外国の看護師資格取得者が日本の介護分野で働けるようにすべきかどうかも論点として提示しました。しかし、平川則男委員(連合総合政策局生活福祉局長)は、これまでの同検討会では、いかに介護の質を担保するかを前提に議論してきたにもかかわらず、「日本語能力について何ら検討もされておらず、単に外国で看護師資格を取得したことをもって日本の介護分野で働けるようにするのは相当乱暴な議論だ」と述べられました。他の委員からも、外国人介護人材の受け入れについては、まず技能実習生や留学生の国内就労の議論を深めるべきとの声がありました。

2025年を見据えて、介護職員を大幅に増やさなければならないことは必須です。しかし少子高齢化の中で、それだけの人員を確保することはとても難しいでしょう。そこで目を向けたのが外国人労働者。もちろん、有資格者に限ると言えど、なかなか判断が難しいところです。それは、日本が島国という文化でこれまで歩んできたからであり、我々日本人に刷り込まれた思想はなかなか変えられないでしょう。しかし、医療と介護の体制だけでなく、我々国民一人ひとりの考えも変えていかなければ、ならない時に差し迫っているのだと痛感いたしました。








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2015年1月18日日曜日

地域包括ケア整備 広島県

広島県は、2017年度末までに広島県内125の日常生活圏域に地域包括ケアシステムを構築するため、先進的な圏域を選定して重点支援する取り組みを始めます。社会資源や環境の違いを踏まえ、都市型、団地型などの5類型を設け、類型ごとに計22カ所をパイロット圏域として選定しました。先進事例として積み上げ、ほかの圏城を整備する際の参考にしてもらうねらいです。






広島県の笠松淳也健康福祉局長は、「地域包括ケアシステムの構築は今後の地域医療の基盤整備につながるもので、広島県としても最も注力している事業です。今後、中心となる市および町の関係者と包括ケア構築の手法を共有していきたい」と述べられました。広島県内の地域包括ケア体制については、2012年6月に設置した地域包括ケア推進センターを拠点にするかたちで検討してきました。しかし市町関係者から「地域包括ケアの必要性は理解できるがどうつくり上げていくのか、何をすればいいのかと聞かれるのが実態」 (笠松局長)と いいます。
このため広島県は、社会資源などの違いを踏まえ広島県内の日常生活圏域を「大都市型」 「都市型」「中山間地域型」「団地型」「島しょ・沿岸部型」の5類型に分類しました。5類型の中から22のモデル的地域 (パイロット圏域)を選定し、医療中心の包括ケアシステムや福祉中心の地域包括ケアなどの先進事例を具体的に示します。パイロット圏域での取り組みを参考に圏域ごとに、地域の実状にあった地域包括ケアシステムを構築してもらう計画です。
さらに県では、地域包括ケアシステムの到達目標と、その評価指標を提示する方針です。具体的な目標・指標は検討中ですが、定量的指標として在宅看取りの件数やショートステイの日数、医療従事者・介護従事者の人数、サービスの提供量などを検討していきます。定性的指標としては、多職種連携による事例検討などができているのか、見守りなどの地域資源や住民参画の状況はどうかなどが指標の候補として挙げられています。こうした地域包括ケア体制の構築は、地域医療介護総合確保法に基づく2014年度の広島県計画でも、地域包括ケア推進センター事業およびパイロット圏域への集中支援として掲げられています。広島県の計画では、病床の機能分化・連携、地域包括ケア体制の確立 (地域包括ケア体制の構築、在宅医療(歯科・薬剤)の充実、認知症対策の充実)、 医療従事者の確保・養成(医師の偏在解消、看護職員等の確保、医療従事者の勤務環境改善) を掲げ、基金として26億4000万円 (国17億6000万円、県 8億 8000万円)の 内示を受けました。
このうち、「地域包括ケア体制の構築」に9786万円の交付金を充当するほか、認知症患者の地域生活を支える循環型医療・介護連携システムの構築に1億 7913万円、医療従事者の確保・養成に10億4893万円をそれぞれ投入する計画です。

地域包括ケアシステムとは、言葉では奇麗ですが、実情としてどのような体制なのか、どのように構築していけばよいのか、だれが主導となって進めていけばよいのか、悩んでいる地方は多くあると思います。各都道府県ですらまだ青写真がしっかりできていないのが実情だと思います。今回の広島県のパイロットは多くの注目を集めることになると思います。








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2015年1月17日土曜日

若年層の生活習慣が課題

 厚生労働省は、2013年に実施した「国民健康・栄養調査」の結果をまとめました。血圧や食塩摂取量、習慣的に喫煙している人の割合などが減少傾向にあった一方で、20-30歳代の若年層では、食事や運動に関する生活習慣に「課題が見られた」としています。
 厚生労働省は2013年11月に、5204世帯を対象に調査を実施しました。そして3493世帯から有効回答を得ました。






 それによると、一日の野菜摂取量や、習慣的に運動している割合、睡眠時間が足りないと週3回以上感じる割合などは、いずれも60歳以上の人が良好でした。一方、20-30歳代の人では、食事のバランスが取れておらず、継続的に運動せず、睡眠時間が足りていない傾向が見られたといいます。
 また、糖尿病に関する状況なども調べたところ、男性の最高血圧の平均値は135.3mmHgで、前年調査と比べ0.7mmHg上昇したものの、07年から低下傾向にあるとしました。女性も10年間で低下傾向が見られるとし、2013年の調査では129.5mmHgでした。
 血清総コレステロールの平均値は、男性が196.6mg/dL、女性が207.3mg/dLで、どちらも10年間で変化が見られないと考察しました。血清総コレステロールが240mg/dL以上の割合は、男性が10.3%、女性が16.8%でした。
 BMIが一定の基準以上の肥満者の割合も調べたところ、男性は28.6%でした。この割合について厚生労働省は、2010年まで増加傾向だったものの、2011年から変化が見られないと指摘しています。一方、女性は20.3%で、10年間で減少傾向が見られるとしました。
やせている成人女性の割合が過去最高の12.3%となりました。体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数「BMI」が18.5未満の「やせ」に該当した成人女性の割合は12.3%でした。2012年より0.9ポイント増え、調査を始めた1980年以降最高となりました。年代別では20代が最も高く21.5%、30代は17.6%、40代は11.0%でした。   女性の減量志向が続いていることが影響しているとみられ、健康上問題が出る恐れもあることから、厚生労働省は適正体重を維持するよう注意を呼び掛けています。   一方、成人男性の「やせ」の割合は4.7%でした。
 HbA1cの値が一定の基準を超えていたり、糖尿病治療を受けていたりする「糖尿病が強く疑われる者」の割合は、男性が16.2%、女性が9.2%で、男女ともに変化が見られないとしました。
 また、一日の食塩摂取量の平均値は、男性が11.1g、女性が9.4gでした。2012年の調査と比べると、男女とも0.2g減っていました。

 習慣的に喫煙している人の割合は、男性が32.2%、女性が8.2%で、男女とも10年間で減少傾向にあると分析しました。平均は19.3%でした。割合を年齢階級別に見ると、男性は30歳代(44.0%)、女性は20歳代(12.7%)が最も高い状況でした。
 習慣的に喫煙している人のうち、たばこをやめたいと思う人の割合は、男性が23.4%、女性が28.6%でした。たばこの本数を減らしたいと思う割合は、男性が35.4%、女性が26.7%でした。


医療においてこれからの課題の一つが予防と健康であります。いかに病気にかからないように予防するか、そして平均寿命にいかに健康寿命を近づけるか、これからの医療の見解が少し変わってくることが予測されます。日本は諸外国と比較し予防に対する意識が低く、患ってから医師にかかればよいと考えがちですが、欧米は違います。いかに患わないようにするかの意識が高いです。よって健診の受診率等に差が出てきます。国としても医療費の抑制を進めたい状況下、予防を促進することは間違いありませんし、我々一人一人も健康で過ごしたい気持ちは共通ですから、まずは意識改革に向けた情報の共有からとなるでしょう。








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2015年1月16日金曜日

脳死判定の女児 4人に臓器提供

2010年の改正移植法施行後、国内で3人目になる6歳未満で脳死と判定された女児からの臓器摘出手術が1月14日午前、入院先の大阪大病院(大阪府吹田市)で実施されました。肺と肝臓は岡山大病院でそれぞれ10歳未満女児と50代女性に、腎臓は関西の2病院で成人女性に移植されました。腎臓移植を受ける患者1人が変更になりました。
 女児は、2014年4月の幼稚園入園後に特発性拡張型心筋症と診断され、補助人工心臓をつけていました。海外での移植を目指し、受け入れ先が決まった米国に渡る準備をしていた時、人工心臓でできた血の塊が脳の血管に詰まる「心原性脳梗塞(こうそく)」を起こし、脳死になりました。移植を待つ患者の脳死臓器提供は成人で1人ありましたが、子どもでは今回が初めてです。






提供された肺と肝臓を2人の患者に移植する手術が1月14日、岡山大病院(岡山市北区鹿田町)で始まりました。肺は肺胞壁に炎症を起こし、ガス交換ができにくくなる特発性間質性肺炎を患う8歳女児=関東地方在住=へ、肝臓は急性肝不全の50代女性=広島県在住=に移植しました。手術はすべて無事成功し、移植を受けた女児は順調にいけば1~2カ月後に退院できるといいます。6歳未満の臓器提供者(ドナー)から10歳未満の患者への脳死肺移植は、2014年11月に京都大病院で実施されたのに次いで国内では2例目です。
 両肺の提供を受けた女児は出生直後から呼吸障害があり、2014年10月に日本臓器移植ネットワークに登録していました。これまでに心肺停止となったこともあるといいます。手術は大藤剛宏・肺移植チーフの執刀です。肝臓は八木孝仁・肝胆膵(すい)外科教授の執刀です。女性は移植以外に救命法がなく1月8日に日本臓器移植ネットワークに登録していました。
 岡山大病院で6歳未満の小児から提供された臓器を移植するのは初めてです。 日本臓器移植ネットワークによると、ドナーの女児は大阪大病院に拡張型心筋症で入院。補助人工心臓を装着し、心臓移植の待機患者としてネットワークに登録するとともに、海外での移植に向け渡航準備をしていました。臓器を提供した女の子の両親は、「娘が発病してから暗闇の中にいました。同じようなお気持ちの方に少しでも光がともせられたら」とコメントしています。

救うことができる命と救うことができなかった命。もちろん命に重い軽いはありません。ただ救うことができる命があるのなら、そのことに対し全人的に医療を行なうのが医療従事者の責務です。








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2015年1月15日木曜日

医療保険制度改革 骨子について

政府の社会保障制度改革推進本部 (本部長=安倍晋三首相)が1月13日に決定した医療保険制度改革骨子の主なポイントです。






国民健康保険については、2015年度から保険者支援制度を拡充するなど財政基盤を強化し、2018年度に財政運営の責任主体を市町村から都道府県に移します。都道府県は県内の統一的な国保の運営方針を定め、市町村ごとの分賦金決定、標準保険料率の設定などを手掛け、市町村は保険料の徴収、資格管理・保険給付の決定などを担います。
後期高齢者支援金で現在「3分の1」に適用している総報酬割を、2015年度は「2分の1」、2016年度は「3分の2」とし、2017年度以降は全面導入します。併せて、高齢者医療への負担が重い被用者保険への支援も実施します。
協会けんぽの国庫補助率を、当分の間16.4%と 定めます。準備金残高が法定準備金を超えて積み上がっていく場合は、新たな超過分の国庫補助相当額を翌年度減額します。
医療費適正化計画で、都道府県は地域医療構想と整合的な目標(医療費の水準、医療の効率的な提供の推進)を設定し、国はこの設定に必要な指標などを定めます。現行の指標(特定健診・保健指導実施率、平均在院日数など)について必要な見直しを手掛けるとともに、後発医薬品の使用割合などを追加します。計画の目標が実績と乖離した場合は、都道府県は要因分析を行うとともに、必要な対策を検討し、講ずるよう努めます。
都道府県は地域医療構想の策定後、構想と整合性が図られるよう医療費適正化計画を見直し、第3期計画 (2018~2023年度)を前倒して実施します。
国が策定するガイドラインに沿って、保険者が保健事業でヘルスケアポイント付与や保険料への支援などができることを明確化します。
一般所得者の入院時食事療養費について、1食分の自己負担を2016年度から360円、2018年度から460円へと段階的に引き上げます。ただし低所得者、難病患者、小児慢性特定疾病患者の負担は現行のままとします。
2016年度から紹介状なしで特定機能病院、500床以上の病院を受診する場合には、選定療養として、初診時または再診時に原則的に定額負担を患者に求めます。定額負担の額は例えば5000円~ 1万円などが考えられますが、今後検討します。
所得水準の高い国保組合の国庫補助を2016年度から5年かけて段階的に見直し、所得水準に応じて13~32%の補助率とします。
後期高齢者の保険料軽減特例を段階的に縮小します。低所得者に配慮しつつ、2017年度から原則的に高齢者医療確保法施行令 (政令)の本則に基づいて対応し、急激に負担が増える高齢者については、きめ細かな激変緩和措置を講じます。
健康保険の保険料について、2016年度から標準報酬月額の上限額を121万円から139万円に、標準賞与額の年間上限額を540万円から573万円に引き上げます。一般保険料率の上限も2016年度から13%に引き上げます。
国保の保険料(税)の賦課限度額を段階的に引き上げ、2015年度は4万円引き上げます。
新たな保険外併用療養の仕組みとして患者申出療養(仮称)を創設し、2016年度から実施します。

医療保険制度改革骨子が明確になり、これから社会保障は抑制の力が強く働き始めます。そして国民の負担は徐々に増えていくことになりますが、どこまで負担増を進めるのか、適正値がはっきり分からぬまま進んでいくことになります。もちろん、右肩上がりで増え続ける社会保障費の額が国として良い状態ではないことは承知しています。ただ、高齢化で苦しくなるのは国の財源だけではありません。国民の懐事情も厳しくなっていきます。これまでは、多くの子供で支えてきた親の介護を、少ない子供たちで看ていかなければならず、昔と違い共稼ぎしないと生計が成り立たない世帯も多くあります。そのような世帯がどのように親の介護を担っていくのでしょうか。ますます生きにくい時代へとシフトしていくように感じられます。







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2015年1月14日水曜日

介護報酬 2.27%下げ 2015年度

 政府は1月9日、介護報酬を2015年度から2.27%下げる方針を固めました。引き下げは9年ぶりで、利用者や財政の負担を抑える狙いがあります。2015年度予算の最大の焦点だった介護報酬の改定率が決着したことで予算案の大枠が固まりました。一般会計の歳出総額は96兆円台半ばで、2014年度当初予算の95.9兆円を上回り、過去最大となります。






 介護報酬は国が決める介護サービスの価格で、原則3年に1度見直し、2015年度が改定年にあたります。個々のサービスの改定幅は厚生労働省の審議会で決めます。 介護報酬の財源は、利用者が払う1割自己負担を除くと、国・地方の税負担と、40歳以上の個人と企業が負担する保険料とで半分ずつまかなっています。介護報酬を2.27%下げると、総額2270億円の負担削減につながります。税金は約1180億円、保険料は約930億円、利用者負担は約160億円減らせることになります。 政府は介護報酬を下げる方針を決め、予算編成過程で下げ幅を詰めていました。当初は過去最大の下げ幅となる2%台後半で調整していましたが、介護事業者や与党の一部が強く反発していました。安倍晋三首相と麻生太郎財務相が協議し、下げ幅を過去最大(2.3%)よりも小さくすることにしました。改定率は1月11日の麻生財務相と塩崎恭久厚生労働相による大臣折衝で正式に決めることになります。
 介護報酬を下げてもすべてのサービスの単価が一律で下がるわけではありません。利益率が8%台と一般の中小企業の2~3%より高い特別養護老人ホームは経営に余裕があるとして、利用料を引き下げます。デイサービス(通所介護)も下げます。一方、在宅介護は利益率が低く、事業者の参入も少ないため支払いを増やします。 深刻な人手不足への対策も打ちます。介護職員は平均月給が22万円で、全産業平均より10万円低い現状です。人材が集まりにくく、介護需要の増大に対応しきれていません。賃上げできるように事業者への加算措置を拡充します。1人あたり月1万円で調整していましたが、2千円積み増して1万2千円とします。
 ただ介護報酬を減らしても、高齢化による社会保障費の伸びを完全に抑えられるわけではありません。2014年度の介護費は総額10兆円で、毎年5~6%ずつ増えています。高齢化で介護サービスを利用する人が年々増えており、2025年度には約2倍の21兆円程度に増えるとの試算があります。 国の社会保障費も2014年度当初予算の30.5兆円より多い31兆円台に膨らむ見通しで、予算全体の規模は過去最大になります。 2015年度は税収が2014年度当初予算の50兆円から54.5兆円に伸びますが、それでも基礎的財政収支の赤字幅は13兆~14兆円程度と大きい状況です。国の借金が1千兆円を超えるなか、財政の赤字を減らすためには、社会保障の歳出削減に一段と踏み込むべきだとの指摘もあります。

2.27%の重みがどれほどなのか、あくまで介護報酬全体での値ですので、それぞれの事業により濃淡があります。特養などは以前に出ていた6%などという値が実は生きているかもしれません。在宅は厚くし、職員の処遇へも手当てをするということですから、もちろん特養は2.27%以上のダウンとなるはずです。これから介護の役割が地域において大きくなっていく中で、いかに介護職員を確保しつつ、体制を整備していくのか、現状では道半ばというよりかなり厳しい状況であると思われます。








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2015年1月13日火曜日

県西総合病院 再編統合の険しい道

筑西市の市民病院と桜川市の県西総合病院を再編統合し、救急医療を担う新中核病院を建設する計画が一向に進んでいません。2014年3月、新中核病院は筑西市が単独で整備し、両市で運営する県西総合病院は桜川市が引き継ぐことで合意しました。これに対し、公立病院の再編統合を促す国や県が、地域に二つの公立病院が残ると、互いに経営が厳しくなると指摘したためです。両市と茨城県の三者は、合意の見直しも含め協議しているが、打開策を打ち出せていない状況です。





 「地産地消ではないが、医療問題も地元で対応するのが原則です。できない以上、他の地域に頭を下げて受け入れてもらうしかない」。救急救命の最前線に立つ筑西広域市町村圏事務組合消防本部(筑西、桜川、結城市)の高橋誠一消防司令は、早期の新中核病院の必要性を訴えます。
 筑西広域市町村圏事務組合消防本部の2013年の救急搬送は7154人でした。このうち、手足の骨折や腹痛など、軽度から中程度の患者は約6割を地元の病院に搬送していますが、心疾患など重篤なケースは約4割しか地域で対応できない状況です。主に自治医科大(栃木県下野市)や筑波大(つくば市)の付属病院に頼っており、綱渡りの救急業務が続いております。
 茨城県の最新のまとめでは、茨城県内の人口10万人当たりの医師数は166.8で全国平均の230.4を大きく下回り、全国で下から二番目です。筑西、桜川市などでつくる二次保健医療圏「筑西・下妻医療圏」では99.7人と、特に医師不足が深刻化しております。
 さらに、筑西・下妻医療圏で気になるのが、迅速な対処が救命に結び付く心疾患、脳血管疾患の死亡率の高さです。人口10万人当たりの心疾患による死者は167.5人(全国平均139.2人)、脳血管疾患は143.6人(全国平均100.8人)と、救急医療体制の整備が急務となっています。
 新中核病院の建設を待ち望み、市議会の傍聴席に毎回足を運ぶ筑西市の馬場泰則さん(74)が住む住宅地は、独り暮らしや高齢者世帯が多いです。「高齢者が安心する地域医療を確保してほしい。患者が自治医大や筑波大に搬送されたら、高齢者は看病にも行けない」と行政に要望しています。
 25億円の国の基金を活用して、茨城県が策定した「地域医療再生計画」で打ち出されたのが新中核病院の計画です。筑西市、桜川市と茨城県の三者による協議は現在、地域で求められる診療科目、患者の受け入れ状況など、基礎的なデータの洗い直しの作業が進められています。
 茨城県医療対策課は「国からは3月の合意事項にだめ出しが出た格好です。地域で必要とされる新中核病院の在り方をまず示し、そこから、合意事項の見直しも含めて、話し合いを進めている段階」としています。 

医師不足からの救急医療が対応しきれていない問題は、全国的に聞こえてくる大きな問題です。また一人体制の救急では専門診療科以外の救急を進んで受け入れることは、患者にとってもまた医師にとっても良とはいえない面が大きくあり、また医療における事故責任についてメディアが色をつけて報道したりする中で、特に顕著になってきています。ただ、そこには救えるはずの患者も多くいるはずなわけで、いかに医師にも病院にもそしてもちろん患者にも不要な負荷がかからないような体制整備が求められるわけです。しかし、それは本当に医師不足だけが原因なのかはしっかり追求しなければと感じます。








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2015年1月12日月曜日

地域医療構想(ビジョン)は地域の考え方、政策、裁量が重要

厚生労働省の二川一男医政局長は新年に当たって都道府県が策定する地域医療構想 (ビジョン)について、「地域の医療需要を予測して多過ぎる部分や足りない部分を明らかにするもので、地域の考え方、政策、裁量が重要になる」との考えを示しました。その上で、厚生労働省の検討会で議論しているガイドラインについては、「あくまで都道府県の取り組みを支援するためのもの」と強調しました。






ガイドラインの内容については、「地域の医療需要を予測するための具体的な手法の提示と併せて、予測する際に『考慮すべき事項』も示す」との方針を示しました。「予測の立て方次第で必要な医療の供給量も変わってくる。さまざまな考慮すべき事項を地域の裁量としてどの程度、医療需要の見込みに反映させるかが重要になってくる」とも述べられました。
「考慮すべき事項」の具体例としては「患者の流出・流入」を挙げ、「例えば、患者が流出 している現状を『よし』と考えるのか、それとも住民のために改善を図るのか、改善するにしてもどの程度の改善が理想なのかを考えることになります。 こういう部分をどう考えるかによって、将来の予測・見込みも変わってきます」と説明しました。
医療提供体制と医療費の関係を分析する手法については、政府の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」でも検討しています。二川一男医政局長は医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会とビジョンの関係について、「将来を予測するためにDPCデータやNDBデータを活用する基本的な手法は同じになるが役割は違う」と指摘されました。医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会については「国全体のマクロの予測・見通しを示すことになるだろう。仮定や前提の置き方によって最大値、中央値、最小値などの幅は当然出てくるだろうが、各地域の医療提供体制を具体化するための地域医療構想での予測とは、役割はおのずと異なる」との見方を示 しました。

病床機能報告を基に地域医療構想(ビジョン)が各都道府県で協議されていきますが、国はあまりにも都道府県に責任転嫁しすぎているように思えて仕方ありません。確かにそれぞれの地域の特性を考慮しなければ最適な医療提供体制は構築できませんが、地域の考え方・政策・裁量次第というのは、いかがなものかと思います。ただそのあたりの責任も感じているが故にガイドラインを提示しているのでしょうが、都道府県としても右にならえをせざるをえないと思います。これからの医療需要を予測することは、容易くありません。しかし、地域医療構想によりそれぞれの地域の大枠は決まっていきます。国全体ではとてもまとめきれないから地方へ移譲したわけですが、これから2025年に向けて医療と介護はどのような地域特性を出して地域包括ケアシステムを構築していくのでしょうか。








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2015年1月11日日曜日

国家戦略特区の医学部に警戒感

日本医師会の横倉義武会長は今後懸念される課題のうち、国家戦略特区による医学部新設問題について「今後の医師の養成数を、国としてどう考えるかについて先行して議論しないといけない」として政府内で“新設ありき"で議論が進められることに警戒感を示しました。また、2016年7月の次期参院選に向けて組織内候補を固めたことにも触れて、選挙では30万票以上の獲得を日指して活動を進める考えを示しました。
昨年末の衆院選で与党が大勝したことを受け、医療界では医学部新設の議論が加速することを懸念する声が出ています。そのような中、横倉会長は2014年12月25日、首相官邸で安倍晋三首相と会談し、医学部新設に関する問題点を直接説明しながら、日本医師会がこの問題に反対であるとの立場に理解を求めました。






横倉義武会長は 日医が医師国家試験合格者数と、25歳人口から独自に算出した「同年齢のうち医師になる割合」について言及しました。1976年で437人に1人だった医師の割合が2014年には162人に1人となり、現在の定員が継続すれば2030年には132人に1人にまで割合が高まる点について触れ、「この割合が社会全体の構成として良いのかどうかを議論 しないといけない」と指摘しました。「それでも必要だと言うなら養成しないといけないだろうが、まずはそういう議論を先行すべき」として、手順を踏んだ検討を求め、“結論ありき"の議論を行わないよう牽制しました。
また、国会議員の中で医学部新設の問題点が十分に認識されていない点にも懸念を見せ、医学部新設に消極的な省庁などとの連携も視野に、懸念材料についての情報発信を強める考えも示しました。
また横倉義武会長自身が委員長を務める日本医師連盟に関連し、次期参院選で勤務医の自見英子氏を組織内候補に選んだ点にも触れました。日医連組織内候補への得票の中心は開業医が担つている中、次期参院選は勤務医らからの支持獲得にも意気込みを示し、30万票以上の獲得を目指す方針を明言されました。2013年7月の前回参院選で初当選した羽生田俊参院議員が獲得した24万9818票から、5万票以上の上積みに意欲を見せました。

今年から議論が本格化する次期診療報酬改定については「従来、診療報酬は物価および人件費の上昇分をしっかり手当てすることとして改定幅が決められるもの。アベノミクスの成功、地方創生のためにも医療機関の地方経済への果たす役割は大きい。物価上昇、人件費に見合ったものは不可欠になる」と指摘されました。初・再診の議論については「医療機関の経営基盤は初診、再診、入院基本料も含めて基本診療料でしっかり手当てすべきだというのが基本的な考えです。基本診療料でしっかり手当てしなければならない。地方で医療を確保しなければ地方に人が住めなくなる。基本診療料を重視するというのが当然の姿勢」と述べられました。
昨年末にまとまった2015年度税制改正大綱にも言及されました。控除対象外消費税問題への対応については、医療界の見解として昨年秋に発表した文言の中身がある程度反映され、問題解決に向けて2014年度大綱より踏み込んだとして一定の評価を見せました。

横倉義武会長はいろいろと言及されましたが、その中で、診療報酬についてピックアップしたいと思います。確かに横倉義武会長がおっしゃるとおり診療報酬は物価および人件費の上昇分をしっかり手当てすることとして改定幅が決められていたはずだったものが、最近はその本意をどこか別に外されてしまっていることについては、明確にしなければならないと思います。確かに社会保障費の増大は国の財政を逼迫しておりますが、高齢化社会は確実に進むわけで、労働人口も減少していく中、医療の必要性をおざなりにしては住みよい日本は崩壊するのではないでしょうか。








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2015年1月10日土曜日

大病院受診、16年度負担増

 厚生労働省が政府、与党内で調整している医療保険制度改革案が12月26日、分かりました。市町村が運営している国民健康保険(国保)の都道府県への移管を、2018年度から始めます。国保運営の規模を大きくして財政基盤を安定させるのが狙いです。また、紹介状なしで大病院を受診した外来患者に2016年度から一定額の負担を求める方向で検討。初診で5000円を上乗せする案が浮上しています。2015年1月にまとめる改革案に盛り込み、通常国会で関連法改正を目指しています。






 現在の国保は、無職や非正規雇用など比較的所得が低い加入者が増加しています。加入者の平均年齢も高いため医療費が膨らみやすく、慢性的な赤字構造に陥っており、市町村財政を圧迫しています。運営が移管されると負担の押し付けにつながりかねないと都道府県側は警戒しています。移管を後押しするため、国費から2017年度に3400億円を支援することで調整しています。
 具体的には、厚生労働省は、国保の財政基盤を強化するため、消費税率を引き上げた増収分から1700億円を投入します。さらに75歳以上の高齢者医療に拠出する支援金の計算方法に、大企業社員や公務員の負担が重くなる「総報酬割」を全面導入し、浮いた国費から1700億円を投じる検討を進めています。
 総報酬割は段階的に拡大するため、国費も徐々に節約できます。その一部は2017年度を待たず、2015、2016年度も国保への支援に充てる考えです。

 大病院受診で負担を求めるのは、軽症の患者は身近なかかりつけ医に相談するよう促し、本来の高度な治療に注力できるよう大病院への患者集中を防いで医療機関の役割分担を進めるためです。現在も別料金を求められるが、実施していない病院があります。また徴収していても、初診での平均額が約2000円にとどまっている状況です。
 このほか、医師や薬剤師など同じ業種の人たちが集まった「国民健康保険組合」に対する国庫補助は2016年度から段階的に削減する方針です。


厚生労働省への財務省からの強い圧力が感じられます。もう改革まで待ったなしの瀬戸際であるということで、消費増税を待たずに進めていくことになるのでしょう。ただ、これらの改革案はあくまで社会保障費をいかに抑制するかという国の財政の目線からであり、国民の健康を維持しようという目線ではありません。しかしそれらを、患者は在宅での療養を望んでいるとか、大病院は高度な医療に注力できるようになどと、偽った看板を掲げることはいかがなものかと感じるところが強くあります。社会保障費の抑制は、限りある財源を有効活用するために必要なところに集めてそうでないところは適正化することで、本質的の平等な社会保障体制を構築するということのはずです。そう考えると、例えば整骨院・接骨院などの適正化をしっかり進めて頂かなければ、第一線で奮闘している医師は納得できないのではないでしょうか。確かに大きいところから取り組めば効果は大きいです。しかしそもそも営利団体ではない医療の業界なのですから、適正化という視点で改革の優先度合いを検討してもらいたいと切に願います。








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2015年1月9日金曜日

都道府県の基金 2015年度 介護充実に800億円

政府が2015年度に、地域での介護を充実させるため800億円を確保し、都道府県に設置された基金に配分することが12月27日、分かりました。消費税率8%への引き上げによる増収分を活用し、地域の実情に合わせた施設の整備や、不足する人材の確保を進めます。各都道府県への具体的な配分額は2015年度中に決める方向です。






 基金は、2014年6月に成立した地域医療・介護確保法で定められ、2014年度は医療分野で先行して904億円が充てられました。2015年度も医療向けには約900億円を確保し、新たに加わる介護と合わせ計1700億円規模となります。財源は国が3分の2、都道府県が3分の1を負担します。国の負担分は2015年度予算案に盛り込みます。
 介護の800億円のうち、700億円を施設面へ配分する方向です。特別養護老人ホーム(特養)は、高齢化が進んで入所希望者が増え、待機者が約52万人に上ります。住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、訪問サービスの強化や状況に応じて一時的に入所できる施設なども求められています。
 基金を活用し、プライバシーに配慮した特養の相部屋の整備や、在宅の高齢者が通いを中心に泊まりなどを組み合わせる「小規模多機能型居宅介護」、認知症グループホームなどを充実させます。
 残り100億円で、介護職員を増やすための啓発事業などに取り組みます。団塊の世代が全員75歳以上となる2025年には、全国で約250万人の職員が必要だと推計されており、これから80万人程度増やすことが求められています。しかし低賃金などを理由に離職率が高く、処遇改善やイメージアップが課題となっている現状です。

社会保障費の抑制の対策案として医療から介護へのシフトが挙げられています。もちろん2025年の団塊世代が75歳以上になるという社会状況もありますが、これから介護が担っていかなければならない役割というのは、領域が広がっていくことになるでしょう。もちろん在宅で終末期を過ごすことができればよいのですが、家族の介護力等が足りなければ施設での生活も致し方ないところだと思います。ただ、今回の介護報酬改定で特養は厳しい改定が予測されています。特養の入所希望者が増加し待機者がいるというのにも関わらず、締め付けるというのはいかがなことなのかと思います。それでいて、片方では基金を配分すると言っています。何か一貫性が感じ取れないのですが、私の視点が木を見て森を見ずであり、相対的にしっかりとしたプランニングができていることを願います。








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2015年1月8日木曜日

介護報酬引き下げ、2.5~3%軸に調整

政府は、介護サービスの公定価格である「介護報酬」を、2.5~3%引き下げる調整に入りました。2015年度から実施します。介護報酬の引き下げは9年ぶりになります。2.5~3%の引き下げは介護保険制度が発足した2000年度以降で最大の下げ幅となります。利益率が高い特別養護老人ホームへの報酬を大幅に下げます。引き下げに対し与党内には介護の人手不足を招くとの懸念もあるため、詰めを急ぎます。






 これまでは2006年度のマイナス2.4%が最大の下げ幅でした。介護報酬の引き下げは介護費用が膨らむのを抑える狙いです。報酬を下げると、サービス利用者の支払いが減り、保険料や税金の負担が軽くなります。ただしその半面、介護サービスを提供する特養ホームなど、事業者の収入は減ることになります。
 政府の試算では、報酬全体を1%下げると介護費用が1千億円減ります。うち税金は520億円、保険料は410億円、利用者負担は70億円、それぞれ減る計算です。
 介護報酬全体は引き下げる一方、介護職員の賃金は1人あたり月額1万円上げることができるよう、介護事業者に対する加算措置は拡充する予定です。
 介護報酬は3年ごとに見直し、2015年度が改定年にあたります。大幅な引き下げを主張する財務省と、反対する厚生労働省との間で綱引きが続き、最大で3%の引き下げで調整中です。与党内には大幅引き下げへの反対論が根強く、流動的要素が残ると見られています。

介護報酬の引き下げは、多くの介護施設を運営している事業者にとっては、死活問題でもあります。確かに社会福祉法人で内部留保金が増加している法人もあるようで、ちょうど麻生副総理の守銭奴発言ではありませんが、貯め込むことに非常に批判的です。確かに利益が出れば賃上げ等に回すことが本来望ましいとも感じますが、利益を追求せずに社会福祉の為に貢献している中で、利益を追求すれば高いリターンがあるでしょう。ただ、どちらが本来の社会福祉法人の姿でしょうか。その本質をずらして一部に焦点を合わせて改定を行なってしまうことは、歪みが起きると想像されます。








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2015年1月7日水曜日

総報酬割を1/2に 医療保険制度改革 

政府が検討している医療保険制度改革で、現在は後期高齢者支援金の「3分の1」に適用している総報酬割を、2015年度は「2分の1」、2016年度は「3分の2」、2017年度以降は全面的に導入する案が浮上しています。2015年度に総報酬割の比率を高めた場合、協会けんぽに投入している国の公費が浮くため、その一部を国民健康保険と健康保険組合に回す方向で検討していますが、投入額の規模などが焦点になりそうです。






後期高齢者支援金に関する被用者保険間の負担額については、もともと保険者の加入者数に応じて額が決まる加入者割を採用していました。しかし国は2010年度から、支援金の3分の1については、加入者の所得に応じて負担額を決める総報酬割を導入しました。
現在、政府が検討しているのは総報酬割の比率を段階的に高めていく案で、健保組合と共済組合の負担額が増える一方、協会けんぽの負担は減ります。 これまで国は、協会けんぽの加入者割の負担分については補助金を入れており、2015年度推計は2400億円に上ります。仮に2015年度に総報酬割を2分の1で導入すると国の支出は600億円減ります。3分の2だと1200億円、全面導入だと2400億円浮く見通しです。
厚生労働省が医療保険制度改革について2014年11月中旬に発表しようとしていた「幻の試案」では、全面総報酬割で浮いた国費について、国民健康保険の財政基盤強化のために「優先的に活用する」姿勢を示していました。
国保をめぐり都道府県と市町村は、国が一体改革で方針を決めたものの、まだ対応していない保険者支援制度拡充の1700億円の予算措置を求めています。また、市町村国保では赤字を埋めるため一般会計から約3500億円を繰り入れている状況のため、都道府県側は1700億円に加えて上積みを求めています。
厚生労働省は1700億円については、消費税率 8%への引き上げに伴う増収分で賄うべきだとして2015年度予算での措置を求めています。総報酬割の拡大で浮いた国費については、国保への投入を健保連が「(負担増となる保険者による)肩代わりの構図」と批判するなど反発も出ています。厚生労働省はこうした声にも配慮し、浮いた国費の一部を国保だけでなく健保組合にも投入することを検討しています。しかし、投入額やその目的について国保や健保組合が納得するかは不透明で、大きな焦点になりそうです。

社会保障の税の一体改革の実行には多くの痛みも伴うことの覚悟が必要となります。実際、健保の運営状態もとても厳しいところが多く、健保組合を解散して協会けんぽへの移行を検討しているところも多くあると思います。社会保障に回せる予算が潤沢にない以上、少ない資源を全体から少しずつ集めて補填しようという考えも、無きにしも非ずですが、それでも日本の経済を下支えしている企業の負担を大きくするのは、いかがなものかと思うところもあります。国際競争力を高めて外貨を稼いできてくれる企業を支援するのも国の責務ではないでしょうか。








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2015年1月6日火曜日

医療データベースの利用を規制緩和へ 民間に解禁も

 政府が、診療報酬明細書(レセプト)や特定健診などの医療データの研究利用を促進する規制緩和を検討していることが1月3日に分かりました。これらの医療情報を匿名化して蓄積管理している「ナショナルデータベース(NDB)」の根拠法を見直し、情報漏洩への罰則や利用ルールを明確化することで、公的研究機関に加え、民間もNDBを活用しやすい環境を整えます。これにより、生活習慣病の改善や予防医療の研究などを推進し、増大する医療費の抑制につなげる狙いになります。






 政府は、高齢者医療法や行政機関個人情報保護法を根拠としている現在のNDBの扱いを、統計法を根拠とする形に改める方向です。規制改革会議を中心に検討を進め、詳細を詰めます。
 NDBの研究利用は現在も可能ですが、高齢者医療法や行政機関個人情報保護法には研究利用に関する明確な規定がないうえ、情報漏洩に関する罰則がありません。
 このため、研究利用の可否は、厚生労働省の「レセプト情報等の提供に関する有識者会議」が、目的外利用として個別に審査しています。
 ただレセプト情報等の提供に関する有識者会議は開催頻度が少なく、審査の手続きも煩雑との指摘が多い現状です。また利用が認められても、提供されるデータに制約があり、精度の高い研究がしにくい状況にあるといいます。
 政府は、こうした状況を改めるため、NDBの根拠法を、データの研究利用の位置付けが明確で、情報漏洩への罰則もある統計法に変更する方向です。
 さらに、現在は公的機関や大学、公益法人などに限定されている研究利用を、公益性の高い研究を手がける民間機関にも解禁する規制緩和を検討しています。
 平成21年4月から収集を始めたNDBのデータ件数は26年10月時点で約83億4800万件になります。膨大なデータはさまざまな医療研究に役立つと期待されています。

民間の機関にとってNDBの利用が可能になるということは、これからますますデータ活用が各医療機関の運営にとって必要不可欠になってきます。ただし、物販店ではないので、地域のニーズが高いと分かっていてもそれだけに特化することもできなければ、ニーズの低いものを淘汰することもできない、地域の総合的な社会的ニーズに応えなければならない使命があります。ただ、効率性を高めていかなければ、国が推し進めている社会保障費の抑制の波に沈みかねません。ただ、今回の民間機関への開放は研究利用とあります。これからその規制ラインが鮮明になってくるのでしょうが、民間機関と自治体と医師会が一体となり地域の医療を担っていかなければ、最適な医療の実現は困難であると感じます。








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2015年1月5日月曜日

がん拠点病院の症例数が検索可能

国立がん研究センター(堀田知光理事長)がん対策情報センターは、全国のがん診療連携拠点病院(拠点病院)407施設で、2009年から12年までに院内がん登録された診療情報を基に、施設別のがん種ごとの症例数を検索できるシステムを12月9日、本格稼働させました。患者が、治療を受ける施設を決める際の選択肢が増えることにつながります。






 がん患者は、施設の診療実績を知るためには、都道府県拠点病院の中の46施設のほか、国立がん研究センター中央病院か同東病院のがん相談支援センターに問い合わせれば、すべての拠点病院の症例数を知ることができます。このほか、国立がん研究センターは、都道府県拠点病院にある、がん相談支援センターをバックアップする体制も構築しました。
 院内がん登録を検索するシステムは、症例数が独り歩きしないよう全面公開ではなく、がん相談支援センターの相談員がデータの意味を解説しながら伝えます。また、個人情報保護に配慮し、患者IDなどを削除した上で、データを提供します。検索するには、がんの部位や組織型のほか、施設の所在地を入力します。セカンドオピニオンによる症例数かどうかでも絞り込むことが可能です。
 この日、記者会見した堀田理事長は、「(患者さんから)院内がん登録は、私たちにとって、何のメリットがあるのかと聞かれます。がん対策や施設の評価には役立つが、個々の患者さんにとって役立つのかが問題になっていました。そのために今回、患者の病院選択に役立つ情報を提供することにしました」と述べられました。

日本人の多くはがんに罹患しており、厚生労働省としてもがんに向けた対策は注力しているところです。ただ、その中でなかなか国民のがん検診の受診率が向上していないことが問題視されています。まだまだ国民の意識は低いということです。罹患してから情報を収集できるしくみを解放するよりも、いかに罹患しないか予防を高めるかの働きかけもこれまで以上に必要かと思います。








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2015年1月4日日曜日

高齢者、スマホで見守り   メディカル・ケア・サービス

 認知症の高齢者を見守るシステムの開発が広がってきています。介護中堅のメディカル・ケア・サービス(さいたま市)は小型発信器とスマートフォン(スマホ)を使い、施設から迷い出た高齢者の情報を地域住民に収集してもらう仕組みを開発しました。オリックス系の有料老人ホーム運営会社はセンサーによる外出検知をめざします。認知症患者の安全確保や介護職員の負担軽減につながりそうです。






 厚生労働省の推計では、日常生活に支障のある認知症高齢者は2025年に10年比7割増の470万人に達します。自宅や施設から迷い出る「徘徊(はいかい)」は認知症の特徴的な症状の一つです。年間約1万人が行方不明になっています。大半は見つかりますが、家族や介護事業者には探す手間がかかり心労のもとにもなっております。
 メディカル・ケアは認知症高齢者が入居するグループホームを全国で約220施設運営しております。NTTグループのNTTPCコミュニケーションズ(東京・港)やデンソーと組み、徘徊する高齢者を探すシステムを開発しました。2015年度に全施設で導入する予定です。
 五百円玉大の発信器を衣服など高齢者の身の回り品に、家族の同意を得て事前に取り付けておきます。一方、説明会などを開き施設周辺の住民に協力を仰ぎ、発信器の電波を拾って位置情報を介護施設に送る無料アプリ(応用ソフト)を手持ちのスマホに取り込んでもらいます。最大80メートル離れていても検知でき、スマホを持った住民が高齢者とすれ違う程度で自動的に居場所を把握できるシステムとなっております。
 地域を営業で回る企業の社員や自治体職員のほか、認知症患者を助けるため国が養成を進めるボランティア「認知症サポーター」にも協力を求めます。サポーターは全国に540万人います。
 都内のグループホームで効果を検証し、徘徊した高齢者を見つけるまでの時間を従来の3分の1に短縮できる見込みが立ったとしています。発信器は1つ約1千円で、1人に3個ほど装着します。
 認知症の高齢者に全地球測位システム(GPS)機能が付いた携帯端末を持ってもらう方法があります。ただ携帯端末の電池は数日で切れることが多い現状です。今回の発信器は1年以上使い続けられるものになります。
 オリックス・リビング(東京・港)は老人ホームの個室に設置した赤外線センサーを使います。現在はベッド周辺が対象で、起床や転落などを把握していますが、室外に出る動きも検知できるように機能を拡充します。
 まごころ介護サービス(静岡市)も10月から介護施設5カ所に、所外に出る高齢者をカメラで検知し職員のスマホやタブレット(多機能携帯端末)に通知するシステムを導入しました。

認知症対策は、これから大きく進展していくことと考えられています。逆説的に考えるとこれまではなかなか取り組めていなかったともいえます。その理由の一つとして、認知症の高齢者に対する安全管理が拘束などと密に関わっていたからです。管理を徹底するということは拘束に繋がりかねなかったのです。ひどい施設では手や足をベッドに括りつけていたなんて事例もこれまでいくつもありました。その人らしい生活を過ごす支援を行なうということは、言葉では奇麗ですが、リスクも多く潜んでおり、今回のサービスが拡大することで、機能が向上すればと願います。








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2015年1月3日土曜日

ICT活用で医療海外展開

みずほ情報総研とみずほ銀行は12月8日、ICT(情報通信技術)を活用した医療産業の海外展開について、民間企業の立場から日本の新たな戦略を立案する検討会を発足させると発表しました。12月15日に初会合を開き、2015年3月に政策提言を行う予定とのことです。同検討会には、医療機器メーカー7社と国立成育医療研究センター、特定非営利活動法人医療福祉クラウド協会が参加します。






 みずほ情報総研などによると、今世紀に入ってからはいずれの政権でも、医療産業が成長分野と位置付けられてきたものの、国内メーカーの海外市場でのプレゼンスは、欧米メーカーと比べて優位とは言い難い状況が続いています。内閣官房健康・医療戦略推進本部は当初、「次世代医療ICT基盤協議会」(仮称)で2014年内に具体的検討を始めるとしていたが、開設は年明け2015年以降になる見込みです。
 そこで同社などは、官主導の産業振興策に頼るだけでなく、個々の企業が蓄積してきた海外展開の知見を集約し、新たな戦略を立てる必要があると判断しました。政府とも協力しながら、同検討会では、新興国で課題となっている最新情報の取得や、効率的で効果的な人材育成、施設の運用などを支援するICT基盤を導入し、定着させることを目指して議論していきます。
 2015年3月までに計4回の会合を開く計画となっています。また、2015年2-3月には医療機器メーカーを中心に市場として期待されているベトナムを訪問し、意見交換など調査を行ないます。同検討会の議論や調査結果などは報告書としてまとめ、2015年3月に政策提言を行う予定となっております。

医療を成長分野と捉え、全世界へと展開していき強めていきたいという思惑は、以前からあります。しかしそこにある一番の課題は、医療はシステムや構造だけでは決して成り立たず、そこには医師をはじめとした医療従事者の存在が絶対不可欠なのです。ですから、順序立てて考えれば、医療においては教育がまず一番に行なわれるべきであるはずです。ただそうなると英語を母国語としない我々日本は若干のインターバルを感じつつ、それでももっと人の交流をアジアの諸外国を中心に行なっていく、人海戦術をとるべきではないかと感じます。そのうえで、システムなどの効率化・制度化を展開すべきではないでしょうか。








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2015年1月2日金曜日

協会けんぽと連携し医療費抑制目指す

生活習慣病の予防のため40~74歳が受ける特定健康診査(特定健診)のデータを分析し、健康づくりの施策に生かそうと、大阪府は11月27日、中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)大阪支部とデータ提供に関する協定を結びました。約307万人が加入する大阪支部の特定健診の受診率は24・9%と全国最下位です。大阪府は分析結果を各事業所に配布し、受診率の引き上げを狙います。





 大阪府によると、大阪支部からは受診者の体重や腹囲、血液・尿検査の結果や、喫煙歴などのデータを個人が特定できない形で提供してもらいます。これまで大阪府は、自営業者や退職者らが加入する国民健康保険(国保)のデータのみを、運営する市町村から受け取って分析していましたが、その母数は大阪府民の44%にすぎませんでした。
 協会けんぽの加入者を含めると全体の76%を把握でき、生活習慣病対策に欠かせない壮年期のデータが厚くなるメリットがあります。
 厚生労働省によると、2010年の大阪府民の「健康寿命」は男性が47都道府県中44位の69.39歳で、女性も45位の72.55歳でした。2012年度の調査では特定健診の受診率も府民全体で40.5%と全国40位に低迷しています。大阪府は受診率全体を引き上げて健康寿命を延ばし、将来の医療費増加を抑えることを目指しており、データの分析結果を効果的な施策につなげる考えです。

ただこのような自治体の動きは全国的にも多く始まっています。
全国健康保険協会(協会けんぽ)宮崎支部と宮崎県延岡市は11月12日、市民の健康づくり推進に向けた包括協定を締結し、宮崎県内での協定締結は宮崎市に続き2例目となりました。
 今後は双方が所有する健診の統計データや医療費を共同で分析。地域特性の把握が可能になるほか、それぞれが行う特定健診とがん検診の受診勧奨や実施を同時にすることで受診率向上が期待できるとしています。

医療費の抑制はこれからの社会保障の維持に向けた大きな課題です。一番の策は、医療にかかる母数が減少することですが、これから超高齢化社会へと進んでいく中で、それは非常に難しい課題です。でも予防が進めば、母数をいくらかは抑制することが可能ですし、むしろ今各自治体で考えて取り組める唯一の策として注目されています。しかし、特定検診を定期的に受診したからといって、各疾病の発症率がなくなるわけではありませんし、あくまで早期発見・早期治療という観点に留まるでしょう。








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2015年1月1日木曜日

病床報告速報値 6年後も45%が急性期で現在と同水準

厚生労働省は12月25日、病床機能報告制度で医療機関が都道府県に報告した情報の集計の速報値を公表しました。それによると、病院と有床診療所(有床診)の病床の44.5%が、6年後も「急性期」機能を担うと想定しております。現在(今年7月1日時点)の医療機能を急性期と報告したのは47.0%で、ほぼ同じ水準の報告でした。






 厚生労働省が12月25日の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」の会合に示した集計の速報値によりますと、現在の医療機能別の病床割合は、「高度急性期」が16.4%、「急性期」が47.0%、「回復期」が9.1%、「慢性期」が27.5%でした。また6年後の病床割合は、高度急性期が17.1%、急性期が44.5%、回復期が11.8%、慢性期が26.6%でした。
 2014年10月にスタートした病床機能報告制度では、11月30日までに、病院6808施設(報告対象の91.6%)と有床診5395施設(同66.5%)が報告しました。12月25日に公表された速報値では、このうち12月19日時点でデータクリーニングが終わった病院5181施設(同69.7%)と有床診3774施設(同46.5%)の情報を集計したものになります。集計対象となった合計病床数は、「現在」が約93万4000床、「6年後」が約93万6000床でした。
 また速報値によると、任意の報告項目となっていた2025年7月1日時点の病床割合は、高度急性期が19.5%、急性期が42.0%、回復期が12.6%、慢性期が25.9%でした。報告のあった病床数は約47万9000床でした。

団塊世代が75歳以上に差しかかり人口構成が大きく変動する2025年に向けて、地域における医療体制を整備していかなければなりませんが、今回の病院からの病床機能報告はまだ報告制度の練習という認識があったためか、現状と6年後ではあまり大きく変化させない報告がほとんどであったようですが、納得できる部分もあります。まだ地域での協議もされていない中で、自病院がどのような機能に強化し担っていくべきか、単純に決めることは非常に困難であり、各病院長は頭を悩ませ、とりあえず今回は現状維持で報告しておこうと考えたところが多かったのではないでしょうか。ただこの報告値をもとに都道府県は地域医療構想を進めていくことになります。本当にその地域での医療体制を考えればボーダーレスになっていくことが理想であると思いますが、これだけ多くの医療法人が地域の医療を担ってきただけに、お互いの利権を担保しつつの協議は、だれがイニシアチブをとって進めていくのか、自治体にそれだけの力があるのかどうなのでしょうか。








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