2015年6月30日火曜日

削減などで空いた病床に「院内施設を」

日本慢性期医療協会(日慢協)の武久洋三会長と池端幸彦副会長は6月29日、日本慢性期医療協会の定例記者会見で、地域医療構想策定ガイドライン(GL)の方向性などに関する見解を発表しました。武久会長は地域医療構想策定ガイドラインで示された方向性に従い、病床削減が進む可能性がある点について、消極的ながらも受け入れる姿勢を示す一方、削減で空いたベッドなどについては「一時的にでも『院内施設』として利用できる、新たな類型を設けるべき」と述べられました。また7月に開催される「療養病床の在り方等に関する検討会」について池端副会長は、看護配置が25対1の病床や介護療養型医療施設の在り方が、主な議題になるとしました。






地域医療構想策定ガイドラインでは、療養病床の入院受療率の地域格差を是正する方針が打ち出されており、その結果として、病床削減が進む可能性も指摘されています。この方向性について武久会長は、人口減少が続く中では「消極的に賛成せざるを得ない」とする姿勢を示しました。
ただ、療養病床以外では受け入れが難しい人々や、地域に“受け皿”となる施設や在宅サービスがない人々がいるのも事実とし、そういう人を受け入れるため、削減の結果、空いた病床や病棟を介護保険の施設として活用できるよう、新たな類型を一時的に設けるべきと述べられました。また、療養病床の介護施設や在宅の医療施設への転換を進めるため、奨励金制度を設置する案も示しました。
池端副会長は、厚生労働省が7月から「療養病床の在り方等に関する検討会」を開催する方針を示している点について、療養病床の在り方等に関する検討会で主な議題となるのは、看護師配置が25対1の病床や介護療養型医療施設であるとする見解を示しました。
 このうち、25対1の病床については、どんな施設などに転換を進めるかといったことが議題になると予測しています。その上で、病院内の空床を介護保険の施設として認める工夫も検討すべきとしました。介護療養型医療施設については「病院として残すか、施設として残すかが議論になると思われる」と述べられました。さらに池端副会長は、検討会の議論は、確かなデータに基づいて行うべきと改めて主張されました。具体的には、データ提出加算を算定している療養病床や地域包括ケア病棟入院料を算定した療養病床などのデータを公表した上で、そうしたデータに基づき議論を進められるべきだと訴えられました。
この日の記者会見では、リハビリ提供体制の抜本改革に向けた日慢協の考え方も示されました。考え方では、基本報酬については、出来高から包括に全面転換すべきとしているほか、疾患別リハビリの廃止、算定日数制限の撤廃、9時―5時リハビリから24時間リハビリへ、嚥下障害リハビリ、膀胱直腸障害リハビリの優先といった内容が盛り込まれています。

病床削減が進む中で、地域の生活を守っていくためには、医療と介護の連携が必要不可欠となり、その垣根というのはますます低くなっていくことでしょう。ただ、これまで別のフィールドとして提供してきた医療と介護の融合は容易ではなく、その第一段階は在宅で行なうよりも削減された病床に施設を設置することで、良い機会が創成されるのではないかと感じます。








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2015年6月29日月曜日

医療用飛行機にネットで3600万円集まる

沖縄の離島に出動する医療用飛行機の購入費を募っていたNPO法人「メッシュ・サポート」(小濱正博理事長)が、インターネットで不特定多数の人から支援金を集めるクラウドファンディングで目標の3500万円を超える資金調達に成功しました。総額3629万1000円が集まり、メッシュ・サポートが利用したクラウドファンディングサービスの運営会社「READYFOR」によると、募集が終了し、成立したプロジェクトとしては国内の同サービスの中で最高額だといいます。






離島にも出動可能な固定翼機の購入を目指し、メッシュ・サポートは3月からクラウドファンディングで資金募集を始め、期限の6月1日までに延べ445人から支援を集めました。一口当たりの支援金で最も高い200万円は3口、次いで100万円は19口、50万円は2口などとなったほか、1万円と3000円もそれぞれ約200口が集まりました。READYFORではこれまで、約1億円を目標額とした別のプロジェクトで5000万円程度の支援の申し出があったものの、未達成で不成立に終わっていたといいます。
 メッシュ・サポートの小濱理事長は、今回の資金調達の成功について、「このたびのプロジェクトは前例がなく、かつ高い目標だったため厳しい取り組みとなったが、多くの応援と当法人の活動に期待し、ご支援を頂いた方々のおかげで達成できた」とコメントしております。さらに、「医療問題を抱える幾多の島々において、医療用飛行機の導入は最善の改善策」と述べ、購入する飛行機を活用した急病患者の救命活動にまい進したいとしています。
 沖縄県の離島やへき地には医師が派遣されているが、本島以外の離島などの医療機関では産婦人科医、小児科医、脳外科医らが不足し、十分な医療サービスを提供できていない現状です。そこでメッシュ・サポートは2007年、フライトドクターやフライトナースが搭乗した医療用ヘリの運用を開始しました。しかし、航空医療を広域で展開する際、ヘリは航続距離の関係上、固定翼機に比べて活動範囲が限られるため、固定翼機の購入を目指しており、今回の経緯となりました。

医療に対する世間の関心の高さが今回の支援金の額に反映されていると思います。確かに沖縄県の離島にお住まいの高齢者に向けた医療の提供はハードルが高いですが、その人がその土地で最期まで暮らすと決めたのであれば、医療人としてできる限りのことを行なうべきであるし、そのための制度と支援は国にお願いしたいものです。








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2015年6月28日日曜日

84億円の赤字要因は2014年度改定と消費増税 国立大学附属病院

国立大学附属病院長会議は6月22日の会見で、国立大学42大学43病院における2014年度収支決算での84億円の赤字見通しについて、2014年度診療報酬改定におけるDPC係数や手術料の引き下げや、同時に実施された消費税率の引き上げに伴う診療報酬での不十分な補填などが赤字要因になっているとの分析結果をあらためて明らかにしました。






病院長会議によると、42大学43病院の収支決算では約84億円の赤字を見込んでおり、その内訳は診療報酬マイナス改定による影響額が約23億円、消費増税の影響額が約54億円などとしました。実際に収支差し引きでマイナスとなる病院は22病院、その内、収支差が5億円を超える病院は9病院でした。平均すると1病院当たり平均2億円の減収になるとしました。この影響で、設備備品費が前年度比較で約87億円の減額になっているとしました。山本修一常置委員長(千葉大医学部付属病院長)は「消費税の補填が不十分なために発生した54億円のマイナス影響は2015年、2016年と確実に続く。もはや経営努力の範疇の問題ではない。高度医療を提供している大学病院が設備投資できない状況は、日本の医療に与える影響も少なくないのではないか。極めて厳しい状況だ」と強調されました。さらに、病院長会議では、2014年度診療報酬改定ではDPC係数や手術料の引き下げが大きな要因になると分析しました。石黒直樹氏(名古屋大医学部付属病院長)は、2016年度改定に向け、DPCにおける暫定調整係数の基礎係数と機能評価係数Ⅱへの置き換えが不十分との厚生労働省の調査結果などを踏まえ 「今後、われわれもDPCにおける調整係数について調査したい」との考えを示しました。
一方、山本常置委員長は、消費増税への対応について「2017年4月に税率が引き上げられる時に、課税あるいは現行の診療報酬による補填など選択肢がある。ただ、直近の課題としては、補填が不十分な状態が続いていくことから、何らかの対応を講じてもらえるか、各方面に働きかけていきたい」と述べ、再増税までに何らかの支援策が不可欠との認識を示しました。このほか、会見では「国立大学附属病院長会議将来像実現化年次報告2014/行動計画2015」についても報告しました。

2014年度の改定と消費増税は国立大学付属病院に限らず市中病院も厳しいインパクトがありました。また次回の改定も厳しくなることは避けられず、本当に地域の健康を守っていける病院は存続できるのでしょうか。何か、抜本的な改革が必要ではあると思いますが、それによって伴う痛みも大きなものである覚悟が必要なのでしょう。








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2015年6月27日土曜日

「ブラック病院」も公表対象

厚生労働省は5月中旬から、違法な長時間労働の問題のある、いわゆる「ブラック企業」について、書類送検前の是正指導段階から公表する措置を始めています。厚労省労働基準局労働基準監督課は、大学病院や国立病院機構の病院も含めて「病院や診療所も対象」「対象とならない医療機関はないとみられる」との見解です。ただ、「複数の都道府県に事業所を有している」「中小企業に該当しない」「概ね1年程度の期間に3カ所以上の以上での事実がある」などの条件が付いているため、実際に公表に至るかは未知数です。






 指導段階での公表に至る場合、以下の5つの条件を全て満たす必要があります。
(1)複数の都道府県に事業場を有していて、資本金5000万円超で、かつ常時雇用人数(非常勤なども含む)が101人以上。
(2)労働時間(労働基準法32条)、休日(同35条)、割増賃金(同37条)に係る労働基準法違反が認められている。
(3)1カ月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えている。
(4)1カ所の事業場で、10人以上、もしくは4分の1以上の労働者に、(2)と(3)が認められている。
(5)概ね1年程度の期間に3カ所以上の事業場で、(2)と(3)が認めらている。
 実質的には、(1)の条件で、小規模な医療機関は対象外となるほか、施設の立地範囲が限られる市町村立や都道府県立は対象外となるとみられます。また、(5)のため、3つ以上の経営施設がなければ、指導段階での公表はされないこととなります。ただ、書類送検された場合は、公表される可能性が残ります。
「公表に至るハードルが高い」との指摘があることについて、労働基準監督課は、「目的はあくまで指導によってトップの意識を変えることです。公表は経営などに影響を与える可能性があり、慎重であるべきです」との見解です。また、「(公表に至るかとは別に)違法な実態があれば、事実が大事。労基署に相談してほしい」としています。

実際の現場を見たら、ほとんどがブラック病院として挙がってしまうのではないでしょうか。医療の現場の過酷さが社会に伝わるのなら、それも良いのかもしれませんが、ただ固有の病院名が出てしまうと、患者動向に影響を及ぼすわけですし、情報の取り扱いには細心の配慮を願いたいものです。







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2015年6月26日金曜日

社会保障費の伸び「3年で1.5兆円」

政府は6月22日の経済財政諮問会議 (議長=安倍晋三首相)で 、6月中にも閣議決定する「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2015)の素案を提示しました。骨太に盛り込む「経済・財政再生計画」では、社会保障を歳出改革の重点分野と明記しました。安倍政権下での社会保障費の伸びは3年間で1.5兆円程度で、高齢化に伴う増加分に相当しているとし、経済・物価動向も踏まえて、その基調を2018年度まで継続していく方針を示しました。






医療分野では都道府県別1人当たり医療費の差の半減を目指すほか、都道府県への診療報酬特例、外来時定額負担を検討する姿勢です。焦点となっていた社会保障費の伸びは「3年で1.5兆円」の基調を2018年度まで継続し、2020年度に向けて「高齢化による増加分と消費税率引き上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめることを目指す」と記しました。社会保障・税一体改革の主要な改革については、2018年度までの集中改革期間に精力的に取り組む方針です。
医療分野については、地域医療構想も視野に、データ分析で都道府県別の医療の「見える化」を進め、医療費や提供体制の地域差縮小を図る考え方が大きな柱の一つになっています。医療費適正化計画も活用して、都道府県別1人当たり医療費の差の半減を目指す構えです。療養病床では、病床数や平均在院日数の地域差が大きいとして、入院受療率の地域差を縮め、地域差是正を進めます。医療構想との整合性の確保、地域間偏在の是正などの観点も踏まえ、医師・看護職員らの需給も検討します。外来医療費についても地域差を分析し、重複受診・投与・検査の適正化を図る方針です。改革に取り組む都道府県を重点的に支援する観点から、高齢者医療確保法で定める都道府県への診療報酬特例の活用についても検討します。2015年度から地域医療介護総合確保基金の配分にメリハリをつける方針 も盛り込みました。
また地域包括ケアシステム構築を進め、人生の最終段階における医療の在り方を検討します。かかりつけ医の普及の観点から、診療報酬上の対応や、外来時の定額負担についても検討します。負担の公平化の観点から、高額療養費制度や後期高齢者の窓口負担も検討課題に挙げています。

間違いなく次の診療報酬改定は厳しい改定になるでしょう。7対1も落ちるのがほとんどというか、いかに回復期へ転換するのか、それともどのような医療を提供するのか、医療機関としては、決断の時が迫ってきていると感じます。








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2015年6月25日木曜日

1都3県の医・介・住まい対策、検討開始

国と東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県は6月2日、各都県が2015年度中に策定する地方版総合戦略や地方創生に関する情報を交換するための連絡会議を初めて開催しました。石破茂地方創生担当相や東京都の舛添要一知事、神奈川県の黒岩祐治知事らが出席しました。会議では今後の要介護高齢者の収容能力の不足や医療・介護人材の確保といった課題が示され、1都3県の医療・介護・住まいの総合対策を検討する必要があるといった点を確認しました。






1都3県では2025年までの10年間で後期高齢者が175万人増加すると見込まれています。これは同じ期間の全国の増加数の3分の1を占め、このままだと1都3県全域で介護施設などが足りなくなるとされています。会議では、こうした状況に対応するためには、地域の医療・介護体制の整備や空き家対策などについて、1都3県の連携や協働を想定した「広域的視点」と「早期の対応」が重要だといった意見が出ました。
 黒岩・神奈川県知事は、政府の国家戦略特区として神奈川県が「未病を治す」という取り組みを実践していることを紹介されました。また健康寿命を延伸することで、医療や介護が必要な人の増加を抑える必要性を首都圏全体で共有すべきだとしました。会議の次回会合は7月にも開かれる見通しです。

地域医療構想・地域包括ケアシステムで病院から地域・在宅へという流れが進みそうではありますが、実際には地域で看るための環境が整備されていないことが顕著に分かってきました。特に首都圏が大きな問題を抱えております。CCRC構想もありますが、日本全体でみていくことも必要となりそうですが、移民の意識を持たない国民風土にいかに浸透させることができるのか、2025年2040年に間に合わせることができるのか、問題はまだまだ山積みです。







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2015年6月24日水曜日

地域包括ケア病棟、手術を出来高評価とする方向へ

地域包括ケア病棟において、より多様な状態の患者の受け入れを促進するために「手術を包括評価の外に出す」ことなどが論点に掲げられました。今後、手術(診療報酬点数表のKコード)すべてを出来高評価とするのか、一部手術のみを出来高評価とするのかなどを、他病棟で行われている手術の内容なども見ながら議論していくことになります。






6月19日に開かれた、診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」では(1)地域包括ケア病棟(2)総合入院体制加算(3)医療資源の乏しい地域の診療報酬の3項目をテーマに議論が行われました。 地域包括ケア病棟には、▽急性期後の患者の受け入れ▽在宅復帰支援▽急性増悪時の対応という3つの機能が求められています。厚生労働省が行った調査結果を見ると、地域包括ケア病棟の入院患者の9割は「自院の急性期から、他院の急性期から、自宅から」入棟しており、また97%の病院が3機能を最重視していることが分かり、この3つの機能を相当程度果たしているようにも思えます。
 しかし厚生労働省は「患者の病態が外傷や骨折などに偏っている」点を問題視し、「より多様な状態の患者の受け入れを推進する必要がある」との考えを明らかにしています。
 この日の分科会には、地域包括ケア病棟で実施されている治療内容の実態も示され、次のような状況が明らかになっています。
・入院患者は高齢者が多く、ピークは80-84歳
・検査の実施が少ない
・手術はほとんど行われていない
・7割の患者に個別リハビリが行われているが、実施量は、少ない所から多い所まで幅広い
・疾患別リハビリの大部分は、脳結果疾患等リハビリと運動器リハビリである
・出来高算定できる摂食機能療養は、平均2回弱算定されている
・9割程度の患者が経口での栄養摂取が可能(回復期リハ病棟の患者と同程度)
手術や検査、処置などの実施が少ない背景には、これらが包括評価されている点があります。このため厚労省は「手術などを包括評価の外に出すことをどう考えるか」との論点を提示しています。
 分科会の委員も「多様な病状の患者受け入れを進めるべき」と考えており、特段の反対意見は出されませんでしたが、支払側代表である本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は「手術の出来高評価について議論するなら、具体的な疾患や患者の状態像を示してほしい」と要望しています。
 ただし、前述のように現時点で手術はほとんど行われていないため、「地域包括ケア病棟に入棟する前に実施された手術(それを地域包括ケア病棟で実施できるのか)」や「療養病棟などの他の病棟で行われている手術」などを見て議論していくことになりそうです。
 厚生労働省保険局医療課の担当者は「手術すべてを出来高とするのか、一部手術を出来高とするのかの具体案はまだない」と述べていますが、委員同士のやり取りからは「一部手術を出来高とする」方向で検討が進みそうです。もっとも手術を出来高にした場合、包括部分の点数を下げることになるでしょう。
 なお、リハビリや高額な処置などについて「出来高にすべき」「充実加算を設けるべき」との意見は出されず、手術以外の項目が出来高評価となる可能性は低そうです。本多委員は「濃密なリハビリが必要な患者は回復期リハ病棟に入棟すべきであろう」と述べ、地域包括ケア病棟と回復期リハ病棟の機能分化の必要性も指摘しています。

ところで地域包括ケア病棟については、「退院が見通せる患者を選別しているのではないか」との指摘もあります。厚生労働省の調査では、地域包括ケア病棟の平均在院日数は23.9日(中央値)と比較的短く、在宅復帰率は86.3%(同)と高いのですが、前述の通り「入院患者の状態が外傷や骨折などに偏っている」ために、このような指摘が出てくるのです。
また、厚生労働省の調査結果からも「地域包括ケア病棟の入棟患者の多くは、既に退院予定が決まっている」ことが分かっています。
この点について池端幸彦委員(医療法人池慶應会理事長)は「外傷や骨折など、クリニカルパスが整っている傷病では退院時期が見通しやすい」と述べ、『選別』が行われている可能性を指摘します。
 また筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)も「選別の可能性がある」と指摘した上で、介護保険との連携の重要性を指摘しました。厚生労働省の調査によると、地域包括ケア病棟に入棟している患者の半数程度が要介護認定を受け、要支援1以上と判定されています。こうした患者の多くはケアマネジャー(介護支援専門員)が関与しているため、筒井委員は「ケアマネとの連携を診療報酬でも評価してはどうか」と提案しています。
介護報酬では、ケアマネが病院職員などと面談し居宅サービス計画を作成して退院調整を支援した場合、「居宅介護支援費」の「退院・退所加算」として評価されます。診療報酬と介護報酬の連動という点で、重要な提案と言えるでしょう。
 「退院が見通せる患者」の選別は「多様な状態の患者を受け入れる」という地域包括ケア病棟の目的に反します。このため厚生労働省は、「退院支援の体制強化を図りつつ、より入念な退院支援を要する状態の患者受け入れを促す」ことも論点に掲げました。
 退院支援の具体例としては、「多職種カンファレンスの実施」や「専従・選任の退院支援職員の配置」などがあり、実際に早期退院の効果も上がっています。こうした取り組みを別途診療報酬(加算など)で評価するのか、あるいは施設基準などに組み込みのか、今後の議論が注目されます。

地域包括ケア病棟はこれからの医療提供体制において、大きな意義を担っていくことになりますが、その立ち位置がまだ定まらないというか、どこまでの機能を期待するのかというところの線引きが難しいともいえます。確かに地域包括ケア病棟には3つの機能が求められていますが、そこを本当に高い次元で担っていくと、急性期病棟の存在価値が希薄になるとおもいます。確かにこれから超高齢化社会へと突入していく中で、高機能を担ってくれる地域包括ケア病棟が各地域に存在してくれると地域としては本当に安心ですが、その実現に向けては、制度の整備が未完全であり、まだ道は遠いように思われます。








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2015年6月23日火曜日

日病・堺会長、諮問会議を批判

日本病院会の堺常雄会長は6月18日、長野県軽井沢町で開かれている日本病院学会で講演し、医療費の適正化が進まない地域の診療報酬を引き下げることなどを経済財政諮問会議が主張しているのに対し、「これはまさに中医協(中央社会保険医療協議会)の機能と努力を考慮しない暴言としか言いようがない」などと強く批判しました。






提案は諮問会議の民間議員らによるもので、病床数削減などの目標値(KPI)の策定を都道府県に求め、2018年度時点の進展状況を国の補助金に反映させるべきだとしています。これに対して堺会長は、「いつでもお金の話ばかり。医療の質などは全く無視。非常に残念だ」と指摘しました。
 講演は「医療改革の在るべき姿」がテーマでした。この中で堺会長は、地域ごとの医療提供体制の再編を促すため、都道府県が今年度から策定に着手する地域医療構想に触れ、「今まで診療報酬で求められてきた病床の機能分化を医療法上でしっかりと位置付けた」と評価しました。
 ただ、「これを実際に実現できるかというとなかなか難しい」との見方も示し、都道府県による構想の策定を支援する仕組みが必要だと指摘しました。

これから各都道府県で、地域医療構想が進んで行くことになりますが、まだまだ各関係各位においてのコンセンサスがとれていないというか、解決しなければならない課題は山積みであると感じます。日本の医療は諸外国と比べて、公立病院が少なく、多くの民間病院によって地域の医療が守られてきたことは事実です。ただそのことが全体としての統制を弱くしたことの根底であるのも事実ですが、いかにこれから医療提供体制を適正化していくのか、各都道府県に任せた国は、本当に傍観しているだけでよいのでしょうか。








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2015年6月22日月曜日

認知症ケアは年間14.5兆円の社会的コスト

認知症を発症することで掛かる医療・介護費など、認知症による社会的コストが、年間約14兆5000億円に上ることが厚生労働科学研究班(代表者:慶應義塾大学精神・神経科助教の佐渡充洋氏)の推計によって5月29日、明らかになりました。
 かねてから認知症の患者数増加が懸念されていたものの、これまで社会的コストに関する推計は十分に行われていませんでした。厚生労働科学研究班は今回、認知症施策立案の基礎データを作成するため、調査を実施しました。






 本調査では、まずレセプトデータを用いて医療費を算出しました。次に、認知症での介護サービス受給者数と平均利用額を要介護度ごとに掛け合わせ、それらを足し合わせた結果を介護費として推計しました。さらに、認知症の介護者への調査結果から介護に掛かった時間を算出し、家族などが無償で行っているケアの労働対価(インフォーマルケアコスト)を計算しました。これらの合計を2014年時点の1年間のコストとして推計しました。
 その結果、2014年の日本における認知症の社会的コストは年間約14.5兆円に上ることが明らかになりました。その内訳は、入院・外来医療費が1.9兆円(入院医療費9703億円、外来医療費約9412億円)、介護費・在宅施設介護費6.4兆円、インフォーマルケアコスト6.2兆円となりました。
 さらに、厚生労働科学研究班は認知症の社会的コストが今後どのように変化するかを推計しました。発病率や医療の受療率、介護サービスの利用率といった人口動態以外の要因が全て現在と同じと仮定すると、2060年の認知症の社会的コストは24兆2630億円に達すると報告しました。
 これらの結果を受け厚生労働科学研究班は、「限られた財源をいかに活用すれば患者や家族の生活の質を向上させることができるかを検討する必要がある」と述べました。

高齢化社会が進行することで認知症対策は大きな課題です。それも地域包括ケアシステムとして病院から地域へと進めていく中で、どのように認知症の方を地域で看ていけるのか、とても単純な話ではないと思います。ただ地域によってはすでに取り組んでいる地域もあります。過疎化が進み高齢化が進んでいる地域では、自分たちでどうしていくのか互助の部分が大きな役割を果たしていきます。どんどん近所づきあいが希薄になってきた現代社会が引き起こした弊害ではありますが、ここをスタートとしてこれからどのように取り組んでいくのか、地域で住民を巻き込んで進めていかなければならないと思います。








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2015年6月21日日曜日

医療機器の開発は医師のアイデアから

日本医師会は6月上旬から、医師主導の医療機器の開発・事業化支援事業に乗り出します。医師から医療機器開発のアイデアを受け付け、主に日本医療研究開発機構(AMED)などに橋渡しする業務を始めます。医療現場の臨床医から生まれた発想を、新たな医療機器の開発・事業化につなげていきます。






日本医師会は4月に発足したAMEDなどを通じて、新たな医薬品や先進的な治療技術の開発を促進させたい考えです。今回の取り組みでは、日本医師会があらゆる医療機器(MRIなどの画像データの処理をはじめとした単体プログラムを含む)に関するアイデアを臨床の医師から募集し、事業化に向けた支援を行います。具体的には、インターネット上で医師から臨床ニーズに基づくアイデアなどを登録してもらいます。医療上の有用性や市場性などの観点から、そのアイデアについて「目利き」を実施して、事業化の可能性が高い場合はアイデアを出した医師と個別面談などを進めて、AMEDへの橋渡しやコンサルティング会社に紹介するなどのステップを進めます。 日医総研に窓口業務準備室を設置し、6月上旬に業務を開始します。日本医師会のホームページを通じて専用ページにアクセスして、アイデアの申し込みができるようになります。「目利き」までは日医の会員、非会員ともに費用はかかりません。橋渡しなどに進んだ場合には、非会員からは1万円を徴収することになります。羽鳥裕常任理事は、アイデアを持ちながら多忙さから開発や事業化にたどり着けなかった医師への支援になることや、多くの若手医師に対し、さらなる治療技術の向上に向けた啓発につながる点をアピールされました。最初の登録に要する時間は1時間程度という「手軽さ」なども紹介しながら、多くの利用を呼び掛けました。

臨床の声が反映されて医療機器の開発が進むことは、多くの医師が望んでいることでしょう。特に正確性と効率性を高めることができれば、医療の質が向上することは確実でありますし、リスクを軽減できる可能性が高いということが何よりも大きいと思います。医療事故調査制度など、臨床の医師は多忙な労働環境の中で責任だけ追及され、現状の改善に向けた具体的な支援が欠如している現状を踏まえ、今一度医療提供の在り方を見直す時期に差し迫っているのではないかと感じるところです。








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2015年6月20日土曜日

「かかりつけ医」さらなる評価を

塩崎恭久厚生労働相は5月26日、政府の経済財政諮問会議に出席し、政府が今夏までに 策定する財政健全化計画に向けた厚生労働省の方針を示しました。医療分野では、2016年度診療報酬改定で「かかりつけ医」のさらなる評価を検討することなどを盛り込みました。






 塩崎厚労相は財政健全化計画に向けた「重点改革事項」として、保険者が本来の機能を発揮し、国民が自ら取り組む健康社会の実現、地域包括ケアシステムの構築、薬局の在り方を見直し、医薬品の使用を適正化、後発医薬品の使用の飛躍的加速化、の4点を挙げました。このうち、地域包括ケアシステム構築のメニューとして、「かかりつけ医」のさらなる普及に加え、地域医療構想の策定支援や、医療費適正化計画の前倒しと加速化などを通じた医療提供体制の確立や地域差の縮小などを盛り込みました。このほか「患者のための薬局ビジョン」を年内に公表し、全ての薬局を「患者本位のかかりつけ薬局に再編」する方針も示しました。薬局の在り方に関しては、いわゆる門前薬局から「かかりつけ薬局」への移行を進めるため、調剤報酬を2016年度以降の改定で抜本的に見直す方針も示しています。後発品の使用促進では、「2017年度末までに数量シェア60%以上」としている現行の目標達成時期を1年前倒しの「2016年度末」とするとともに、新たに2020年度末時点の数量シェア目標を「80%以上」と設定しました。これによる医療費の2020年時点の削減効果額は13兆円を見込んでいます。

「かかりつけ医」はこれから向かう地域包括ケアシステムにおいては重要な役割を担っていきますが、まだまだ病診連携の面から見ても課題は山積みであると思われます。あくまで今回の話は財政健全化というところですので、いかに社会保障費の増加を抑制するかという点です。そのためには病院から地域へのシフトを進めなければなりません。ですがその連携体制がまだ構築できていないですし、開業医の先生方も本当に地域の患者を診ていけるかといえば連携していかなければ現実的に不可能です。いかに連携して地域の患者を診ていくのか、必要な時に必要な医療が提供できる体制を構築できるのか、そうなると地域医療連携推進法人というものが、各医療圏で生まれていくのも近いかもしれません。








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2015年6月19日金曜日

東京五輪で禁煙化

国立がん研究センターのがん対策情報センターたばこ政策研究剖は5月28日、東京都民を対象に実施した「東京オリンピックのたばこ対策について都民アンケート調査」の結果を公表しました。回答者の53 %が東京五輪に向けた禁煙化を推進するため「罰則付きの規制 (法律や条例)を制属すべき」と答えました。ガイドラインの作成など「罰則なしの規制を設けるべき」との回答(22.2%)と合わせた75.6%が何らかの規制を求めています。






規制の対象にすべき施設に関する質問では「医療施設」の回答が最も多く、複数回答で93.1%に上りました。調査には都民2375人(男性1168人、女性1207人)が回答しました。回答者のうち、喫煙している者は21.8%(「毎日吸っている」20.2%と「時々吸う日がある」1.6%の合計)でした。調査では規制の必要性について、オリンピック開催都市で罰則付きの規制を制定する禁煙化の取り組みが進められてきたことを紹介した上で、東京五輪でも禁煙化を進めるべきかを聞きました。4分の3が何らかの規制導入を求めているのに対し、「何も規制しなくてもよい」は10.1%、「分からない」は14.4%でした。「毎日吸っている」と回答した人(480人)でも、24.2%は「罰則付きの規制(法律や条例)を制定すべき」と回答していました。
禁煙化の規制対象にすべき施設に関する質問 (複数回答)では「医療施設」が最も多い93.1%、 次いで「駅や図書館など公共施設」(88.8%)、「教育施設」(82.1%)、「オリンピックの競技施設」(80.9%)などが続きました。分煙についての考えでは、「効果がなく、分煙でなく禁煙にすべき」が39.5%、「効果はないと思うが、喫煙者と非喫煙者が共存する現状で分煙はやむを得ない」は 36.2%でした。

ここ数年で禁煙に対する取り組みが進んでいますが、それだけ国民の意識が大きく変わってきているということだと思います。10年20年前とは大きく変わってきたと思います。ただまだ道半ば、これからどう進めていくのか。これは今まで以上に大変だと思いますが、取り組むべきことです。ただ世間の感覚より医療従事者の喫煙率というは高く、ストレスを抱え込むよりは良いという、消去法なのでしょうか。








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2015年6月18日木曜日

在宅医療の報酬体系に「患者の重症度」

2016年度診療報酬改定に向けて、在宅医療については、疾患や重症度など「患者の状態像」に応じた評価の導入や、高齢者向け住宅向けの評価の適正化などを検討していく方向が、5月27日の中央社会保険医療協議会・総会で厚生労働省から示されました。






在宅医療の報酬体系は、現在「患者の居住する施設の種類」や「訪問回数」に応じたものになっており、患者の重症度は考慮されていません。
しかし、厚労省が行った2012年度と2014年度改定の結果検証調査によると、訪問診療の患者のうち約15%は「スモンや重症筋無力症などに罹患する、いわば重症者」ですが、その一方で、約46%は「健康相談や血圧測定のみの、いわば軽症者」であることが分かりました。
また患者の状態と訪問回数、診療時間を見ると、人口呼吸器の管理などが必要な重症患者では訪問回数が多くて診療時間も長くなっています。
このため厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は、「患者の疾患・状態に応じた評価」を検討してはどうかと述べました。
 在宅患者の状態を評価するのにどのような指標を用いるかも課題になりました。厚生労働省が5月27日の中医協総会に示した資料からは、前回の2014年度改定で新設された機能強化型訪問看護ステーションで「重症患者」とされた、末期の悪性腫瘍、スモン、多発性硬化症、重症筋無力症、など「特掲診療料施設基準等別表第七に掲げる疾病等の利用者」が参考になりそうです。
 診療側の鈴木邦彦委員は5月27日の総会で、「重症患者が必ずしも手厚い治療を必要としているわけではない」と述べられ、単純に「重症患者は高い点数」とする考え方に疑問を投げ掛けました。
在宅医療の診療報酬では「訪問回数」が大きな要素となっていますが、「訪問診療の必要性だけでなく、診療報酬の算定要件によって回数が決まっている可能性がある」とも指摘されます。
 厚生労働省の調査では、外来では月1回の診療が最も多いのに対し、在宅では月2回の診療が最も多いことが分かっており、「月2回の訪問」は在宅時医学総合管理料の算定要件などと合致します。また、訪問回数と患者の重症度(療養病棟入院基本料の医療区分で測ったもの)との間には特段の関係は認められません。
さらに、訪問回数と患者の満足度との間にも関係がないという調査結果もあります。
 これらから宮崎医療課長は、「診療頻度(訪問回数)に応じた評価をどう考えるべきか」と問題提起しました。現在は、訪問回数が月2回になると報酬が大きく上がる報酬体系ですが、「月1回から月2回への階段」をどう考えるのかが今後の論点になりそうです。
在宅医療では、高齢者がどこに居住しているかによっても診療報酬が変わります。現在は、戸建て住宅などの「居宅」と「看護職員が配置されていない高齢者向け集合住宅」(特定施設等以外)は同じ区分で、「看護職員が配置されている特定施設等」(有料老人ホームなど)に比べて高い報酬が設定されています。
しかし、厚生労働省が両者について患者の状態などを調べたところ、高齢者向け集合住宅を中心に診療する医療機関では、居宅を中心に診る医療機関に比べて、「重症者や看取り患者の割合が小さい」ことなどが分かりました。
また、高齢者向け集合住宅を中心に診療する医療機関は、同じ日に同一の建物で効率的な診療を行っていることも明らかになりました。
さらに、特定施設などに入所する患者は「褥瘡の処置」や「胃ろうなどの管理」「創傷の処置」などの医療処置を必要とすることが多いことも分かりました。
こうした点を踏まえ、宮嵜医療課長は「現在の居住施設区分が正しいのか」と問題提起しています。
在宅医療では「同一日に、同じ建物に居住する人に訪問診療を行ったか」によっても診療報酬が変わります。これは、訪問診療を行う医師らの移動コストを考慮したもので、同じ日に同じ建物に居住する2人以上の人に訪問診療を行った場合には、診療報酬は低くなります(同一日の減算)。
 ただし、厚生労働省の調査では「2-9人を訪問した場合」と「10人以上を訪問した場合」とで移動コストが異なる(後者の方が小さい)ことが分かり、宮嵜医療課長は「よりきめ細かな報酬設定を考える必要があるかもしれない」と述べました。
また、前回の改定では同一日の減算を非常に厳しくし、改定前のおよそ半分、単独訪問のおよそ4分の1に設定されました。しかし、医療現場から「重症者への訪問も行えなくなる」との悲鳴が上がったため、「単独訪問が行われた患者については、その月は同一日の減算を行わない」という例外規定が設けられました。
 この点について厚生労働省が調査したところ、「複数患者がいる建物でも、22%のケースでは単独訪問を行っている」「訪問回数が月40回、50回と増えても、頻回の訪問が行われている」「末期の悪性腫瘍など重症患者の割合は、単独訪問と複数訪問で変わらない」など、医療現場からの訴えとは異なる状況が分かりました。「高点数を算定するために単独訪問を行っている」と、うがった見方をすることもできます。
調査結果を踏まえて鈴木委員は、「見直しも考えられる」と述べており、次回改定に向けて適正化が図られる可能性もありそうです。
 こうした課題の解決に向けて、在宅医療の報酬体系は大きく見直されることも予想されます。診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は「一物多価の報酬体系は好ましくない」と述べており、この意見も踏まえると厚生労働省保険局医療課には極めて難しい作業が強いられそうです。








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2015年6月17日水曜日

研修医数は過去最多だが

厚生労働省は6月8日、今年度の臨床研修医の採用実績を公表しました。それによると、2008年度から始まった医学部の入学定員増の影響もあり、採用数は8244人(前年度比452人増)で、新医師臨床研修制度の開始以降、過去最多を更新しました。採用数は臨床研修病院と大学病院で共に増えましたが、大学病院の採用割合は41.7%(同0.1ポイント減)で過去最低を記録し、5年連続の減少となりました。






医師不足を解消するため、文部科学省は2008年度から医学部の入学定員を増やしており、今回採用された研修医の多くが医学部に入学した2009年春は、2008年度に比べて全都道府県で計693人の増員となりました。
 今回、調査の対象となったのは1018施設でした。施設別の採用数は、臨床研修病院が4808人(同350人増)、大学病院が3436人(同102人増)で、医学生らが研修先を決める昨年秋のマッチング結果に比べ、臨床研修病院は81人増えたのに対し、大学病院は236人減少しました。
 また、都道府県別では、大都市のある6都府県(東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、福岡県)を除く41道県の採用割合が56.4%(同0.8ポイント増)に上り、5年連続で過去最高を記録。対前年度比の増加率では、青森県が34.8%増で最も高く、以下は群馬県(32.1%増)、鹿児島県(26.0%増)、長崎県(25.3%増)、静岡県(24.0%増)などの順でした。
 臨床研修制度は2015年春に見直され、各都道府県の募集定員の上限が2014年度受け入れ実績の9割を下回らないとする「激変緩和措置」は廃止となっています(大幅減の見通しとなった京都を除く)。

臨床研修医については、これから始まる新・専門医制度の影響を大きく受けることになると予測されます。どこも医師の確保というのが、安定した病院経営においてウエィトは大きく、すべてと言っても過言ではないと思います。諸外国に比べて、医師不足が言われている中、それでも医師の増加に向けた動きというのは様々な利権も絡み進んでいない状況下で、少ない魚を捕り合う図式はこれからも続いてしまうのでしょう。








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2015年6月16日火曜日

区中央部に高度急性期は3割が集中

東京都地域医療構想策定部会(部会長=猪口正孝・東京都医師会副会長)は5月2 9日の2回 目の会合で、13の2次医療圏ごとの病床機能報告の結果について報告を受けました。数値は2014年7月1日時点の医療機能別の病床数 (許可病床数)で、都の高度急性期病床3万1071床に対し、区中央部 (千代田、中央、港、文京、台東)だけで9193床と全体の約3割が集中していることが明らかになりました。一方、慢性期病床では、都全体の約半数を多摩地区の5つの2次医療圏で占めていることも分かりました。都は、病床機能報告に基づく各病院からの報告状況については、膨大な情報量を整理する作業もあり、公表時期を今後検討するとしています。






都は同日の会合で、2次医療圏ごとの病床機能報告の内訳を示しました。都全体では、報告のあった10万5600床のうち、高度急性期3万1071床(構成比29.4%)、急性期4万3202床(40.9%)、回復期7038床(6.7%)、慢性期2万4289床(23.0%)の構成になっています。2次医療圏別に4医療機能別の内訳を見ると、特徴的なのが区中央部の構成比で、高度急性期9193床 (66.8%)、急性期3778床(27.5%)、回復期295床(2.1%)、慢性期495床(3.6%)となりました。 区中央部全体の3分の2を高度急性期が占め、大学病院を含めた特定機能病院が多い地域特性が鮮明になっています。区中央部の高度急性期は、都全体の高度急性期で見ても約3割に達しており、都の地域医療構想でどのように位置付けるかも焦点の一つになりそうです。
一方、慢性期病床は、多摩地区の5つの2次医療圏(西多摩・南多摩・北多摩西部・北多摩南部・北多摩北部)で1万1875病床となり、都全体の48.9%と約半数を占めました。西多摩区(青梅、福生、あきる野、奥多摩など)では全体の55.1%で、南多摩(八王子、町田、日野、多摩など)では43.3%が慢性期と回答しました。こうした傾向は、6年後でも同様の結果になっているとしました。一方、この日の策定部会では、国際医療福祉大の高橋泰教授、東京医科歯科大の河原和夫教授(副部会長)、国立がん研究センターがん医療費調査室の石川ベンジャミン光一室長の3氏が東京都の医療の現状についてプレゼンを行いました。

医療提供体制の適正化に向けて地域医療構想が進められていますが、東京のこの状況ははっきり言ってとても協議の場で解決できるようなレベルではないと思います。ここまで偏っているのは、東京という医療圏を越えても簡単に流出入できるアクセスの良さもありますし、人口の多さもあります。この日本の首都である東京の問題を解決できなければ、国が掲げている7次医療計画に向けた策も実現できないわけで、基金だけではない別の誘導施策となるものが必要不可欠ではないでしょうか。








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2015年6月15日月曜日

安倍政権最重要プロジェクト

2015年度の地域創生枠の予算規模は約1.4兆円という大型予算です。第二次安倍政権の最重要プロジェクト「地方創生」を指揮する「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部」では、医療関連での病院関係者が注目する「地域医療構想」や「地域包括ケアシステム」の推進も含まれています。






政府は、人口減少が消費・経済力の低下につながり、日本経済が低迷することを懸念しています。人口減少の要因はさまざまですが、特に、大都市での超低出生率・地方から都市への人口流出と低出生率が日本全体の人口減少につながっています。ただし、地域によって状況異なり中でも著しい東京一極集中が大きな課題となっています。こうした地域性を考慮した上で、人口減少に歯止めを掛け、2060年に1億人程度の人口を確保することを、政府は目指しています。
 また、東京圏の高齢者は病院や施設を奪い合う可能性が高く、政府は地方移住を促す提言もしました。
政府は「まち・ひと・しごと創生」を掲げて、人口減少克服と地方創生を併せて行い、将来にわたって活力ある日本社会を維持する戦略を描いています。その核となるのは、(1)東京一極集中の是正と若い世代の結婚・子育て支援による人口減少の克服(2)地域特性に応じた処方せん、の2つです。
2つの核で「まち・ひと・しごと創生」を推進し、2060年に1億人程度の人口を確保するため政府は、「地方における安定した雇用を創出する」「地方への新しいひとの流れを作る」「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」「時代にあった地域を作り、安心な暮らしを守るとともに、地域と地域を連携する」という4つの基本目標を掲げています。
 まず、国が60年に向けた長期ビジョンを描き、2015年度から2019年度(5カ年計画)の政策目標・施策(総合戦略)を策定します。その上で、地方が各々のビジョンと総合戦略を策定するというものです。
 医療関係者からすると、厚生労働省が取りまとめた「地域医療構想ガイドライン」に基づき、都道府県で地域医療構想や医療計画などを策定する流れに似ていると思われるのではないでしょうか。
また、国は各地方が長期ビジョンと総合戦略を推進していくために、3つの視点から支援を行います。
まずは情報支援として地域経済分析システム「RESAS」を提供します。RESASは地方自治体が自らの産業構造や人口動態、観光の人の流れなどの現状・実態を正確に把握し、それぞれの地域の強み・弱みなどの特性を可視化するためのツールです。例えば、「観光マップ」の「From―to分析(滞在人口)」では、どこからどこに人が集まっているのか期間を区切り、市区町村単位で詳細を視覚的にも確認することができます。
 次に、人的支援では国家公務員を小規模市区町村の補佐役として派遣する「地方創生人材支援制度」、さらには潤沢な予算枠での各種財政支援なども行っていきます。
 「まち・ひと・しごと創生」関連事業の予算には、(1)地方に仕事をつくり、安心して働けるようにする(2)地方への新しい人の流れをつくる(3)若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶える(4)時代に合った地域をつくり、安心な暮らしを守るとともに、地域と地域を連携する、の4つから成る「まち・ひと・しごと創生総合戦略における政策パッケージ」と、「その他財政的支援(国家戦略特区・社会保障制度・税制・地方財政等)」の2つの枠があり、後者には「地域医療構想の策定」や「地域包括ケアシステムの構築」も含まれています。
 
病院大再編時代の引き金にもなりかねない地域医療構想の動向に病院関係者の注目が集まっており、いかに医療圏で病床を確保するかということに躍起になっている理事長院長もいらっしゃいますが、別の視点から見ると地域医療構想は地方創生の一つと捉えることができるように密接な関係です。地域医療構想に着目する一方で、そのほかの地方創生プロジェクトがどのように進捗しているかという幅広い視点ももって、自分たちがこの地域でどのような機能をはたしていくべきなのか、今取り巻いている外的要因をしっかり捉えて取組んで行くことが、今後の医療関係者たちには求められるのではないでしょうか。








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2015年6月14日日曜日

地域包括ケア病棟は7・10対1と亜急性期の転換9割

5月29日の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」では、地域包括ケア病棟入院料の創設に関する調査結果も示されました。
 前回改定では、急性期後の受け皿として「亜急性期」の名称が【地域包括ケア病棟入院料】、【地域包括ケア入院医療管理料】となり、病棟単位と病室単位(200床未満)の届出が認められ、施設基準にも「重症度、医療・看護必要度のA項目が1点以上の患者が10%以上」要件が加味されるなど、届出に向けたハードルを高くしています。





 
 調査結果では、地域包括ケア病棟について、7対1・10対1一般病棟入院基本料と亜急性期入院医療管理料からの転換が9割以上を占めており、届出を行った医療機関の病床規模は、100~200床の医療機関が過半数でした。地域包括ケア病棟へ転換した理由は、「地域のニーズに合った医療を提供できるため」や「他の入院料の病棟と組み合わせることで、患者の状態に即した医療を提供できるため」とする回答が52~58%と多い状況でした。
  他方、地域包括ケア病棟へ入棟した患者の入棟前の居場所は、自院・他院の急性期病床と自宅が約9割でした。入院理由は、全体としては「治療のため」が多い状況ですが、他院の急性期病床から入棟した患者は、「リハビリテーションのため」が88%を占めていました。疾患別では、骨折・外傷がもっとも多い状況でした。重症度、医療・看護必要度では、A項目1点以上の患者は全体の約20%で、施設基準の要件の10%よりも高く、項目別では、「創傷処置」と「呼吸ケア」の割合が多い状況でした。
  地域包括ケア病棟に入棟した患者のうち約半数は退院予定が決まっており、退院に向けてリハビリテーションを実施している患者の割合が大きく、患者の半数近くは、入棟後15日以内の患者であり、30日以上入院している患者は全体の25%程度でした。地域包括ケア病棟の在宅復帰率は、施設基準の要件の70%を大きく上回る医療機関が多く、個別の退棟先は自宅(63%)や介護老人保健施設(9%)が多い状況でした。一方、退院できない理由では、「入所先施設確保の問題」34%や「家族の希望にかなわない」18%をあげる割合が大きくなっていました。

地域包括ケア病棟はその名の通り地域包括ケアシステムを支援する病棟になり、これからの高齢化社会を地域でいかに生活をしていくかという課題に対し最前線でとりくむべきところになります。ただし、まだその本来求められているポストアキュートとサブアキュートの部分をしっかり果たせているのかというと、まだまだ取り組むべき課題も山積みですが、それでもしっかり在宅の患者をいざという時には診てくれる病院が地域に存在するというのは、大きな役割であることには間違いありません。








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2015年6月13日土曜日

診療報酬改定に向けて

2016年度の診療報酬改定に向けて、厚生労働省は9月10日、中央社会保険医療協議会の総会と診療報酬基本問題小委員会を相次いで開き、入院医療をテーマに議論を行いました。下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」で実施された入院医療の実態調査結果も報告され、次期改定に向けて早くも論点が明確になってきています。






この日のテーマは、(1)急性期入院医療(2)地域包括ケア病棟・在宅復帰の促進―の2点でした。
 急性期入院医療については、主に7対1一般病棟をターゲットに「より急性期にふさわしい病棟」の評価に向けた検討が進められました。
 7対1一般病棟は、創設当初2-3万床程度と見込まれましたが、2014年3月には約38万400床と膨大な数の届け出がなされました。ここには「急性期にふさわしくない病棟・病床も含まれているのではないか」との指摘があり、2012年度、2014年度の診療報酬改定で施設基準の厳格化(平均在院日数の短縮や、重症度、医療・看護必要度の見直しなど)が行われています。
 厳格化の影響で7対1病床数は減少し始め、2014年10月には約1万4000床減の36万6200床になったことは既報のとおりです。10日に厚生労働省が発表した資料によると、7対1病床はさらに減少し、今年4月時点で36万3900床となっています(26年10月から約2300床減少)。届け出病院数は、2015年4月時点で約1530施設になりました。
厳格化の中で、病院が「もっとも厳しい」と考えているのは「重症度、医療・看護必要度」の見直しのようです。ただし、「重症度、医療・看護必要度」のA項目2点以上・B項目3点以上の患者が15%以上という基準を満たす患者の割合は、全体で見ると26年度改定の前後で大きな変化は見られません。
この点に関連して、白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)ら支払側委員からは「重症度、医療・看護必要度の基準を満たす15%以外の、つまり残りの85%の患者の状態像はどのようなものなのかを知りたい」との要望が出されました。白川委員は、「7対1病床数は減少しているが、我々の想定にははるかに及ばない。次期改定に向けて施設基準や算定要件の厳格化が必要と考えている」とも述べ、急性期、とりわけ7対1病棟の入院患者の実態を明らかにすべきと求めました。
 しかし診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「大学病院の入院患者であっても、治療を継続する中で状態が改善していく。すべての入院患者のうち重症度、医療・看護必要度を満たす患者が15%以上いるという基準は決して緩くはない。わが国では『状態が改善したので、すぐに転院』とはならない。そこが日本の医療の良さである」と述べ、「7対1に不適切な入院があるとすれば問題だが、我々はそうは考えていない」と強く反論しました。
 次期改定でも「7対1の施設基準」が最重要テーマの1つになると予想されており、早くも診療側と支払側の間で火花が飛んでいます。
厚生労働省は「7対1病院が、ほかにどのような入院料を届け出ているのか」を病床規模別に調べています。それによると、特定機能病院や500床以上の大病院では「特定集中治療室管理用」や「救命救急入院料」が多く、200床未満の中小病院では「地域包括ケア病棟」「回復期リハ病棟」「療養病棟」などが多くなっています。10対1病院でも同様の傾向があります。
ただし、大病院の中にも「地域包括ケア病棟」や「回復期リハ病棟」を届け出ている所もあります。これについて、診療側の鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は「大病院は高度急性期や急性期に特化すべきだ。病床稼働率維持のために地域包括ケア病棟などに転換することは、適正な地域連携を阻害する。稼働率維持はダウンサイジングで対応すべき」と述べ、「自治体病院の急性期病床数削減」や、「大病院における地域包括ケア届け出の制限」などを検討すべきと主張しました。一方で鈴木委員は「大病院が急性期に特化できるよう、特定集中治療室管理料や総合入院体制加算を手厚く評価すべき」とも付言しています。鈴木委員は、機能分化を「病院単位」で行うべきと考えているようです。
 もっとも万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は、「病院単位の機能分化もあるが、病床機能報告制度などを考えれば、別の機能分化の形態もある」と述べ、大病院のケアミックスに理解を示しています。
 診療側の中でも「機能分化」の考え方に温度差があることが分かり、次期改定はもとより、医療提供体制の再編に向けてどのような動きがあるのか注目されます。
地域包括ケア病棟については、厚生労働省から「2015年4月時点で約1170施設から、約3万1700床の届け出があった」ことが報告されました。2014年10月時点で約920施設・2万4600床の届け出なので、順調に整備が進んでいると言えそうです。
ただし、厚生労働省保険局医療課の宮嵜雅則課長は「地域包括ケア病棟での受け入れが、特定の状態の患者(骨折・外傷など)に集中する傾向が見られる」と指摘し、地域包括ケアシステムの中で期待される役割を踏まえて「病態がより複雑な患者」や「在宅復帰が困難な患者」の診療に関する評価のあり方を検討してはどうかと提案しました。
この点に関連し、万代委員は「地域包括ケア病棟には、▽急性期後の患者受け入れ▽在宅復帰支援▽救急患者の受け入れ―という3つの役割が期待されているが、手術料が包括されているので、救急患者の受け入れを躊躇する病院もある。手術や高額な医薬品などは出来高算定とする方向で検討してほしい」と求めています。
 複雑な病態の患者に適切な診療を行うという点に鑑みて、万代委員の提案は、今後、重要な論点となりそうです。
退院支援は、在院日数短縮が進む中で、多くの病院が苦労されているテーマの1つでしょう。7対1病棟や地域包括ケア病棟には施設基準として「在宅復帰率」が導入され、療養病棟1には「在宅復帰機能強化加算」が新設されるなど、厚生労働省も「退院支援」「在宅復帰支援」に力を入れていることが分かります。
この点、厚生労働省は「入院時に、早期退院に向けた多職種カンファレンスを実施する施設が多い」という調査結果を報告しました。しかも、この取り組みを実施する施設では、実施していない施設に比べて在院日数が短いことも明らかになっています。
厚生労働省保険局医療課の担当者は「カンファレンスと在院日数との因果関係は不明」と前置きした上で、「在院日数に差があるのは事実である。特に、回復期リハ病棟や療養病棟では在院日数がかなり短くなっている」と説明しています。
 宮嵜課長は、こうした状況を踏まえて「在宅復帰を支援するための院内の体制や、ほかの施設との連携の推進」を次期改定に向けた重要論点の1つに位置付けました。
 なお、医学的な理由以外で退院が困難な患者では「食事・排泄・移動などの介護」が必要なケースが多くなっています。この点、回復期リハ病棟や地域包括ケア病棟では「経口摂取できない患者」の受け入れ割合が低く、クリームスキミングが生じている可能性も疑われます。
在宅復帰支援に向けて、前述の「多職種による退院カンファレンス」の評価や、地域包括ケア病棟などの施設基準への「経口摂取困難な患者受け入れ実績」導入などが検討される可能性があります。

2016年の診療報酬改定はマイナス改定が予測されています。特に7対1の急性期病院においては厳しい改定となることでしょう。また地域医療構想にむけた病床機能報告で病院内の情報も外に出てきました。これから本当に地域において存在感を発揮した病院であり続けるためには、転換の時期なのかもしれませんが、多くの医療機関は現状にしがみついていくのでしょうか。








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2015年6月12日金曜日

診療報酬を都道府県ごとに管理

 厚生労働省の懇談会は6月9日、2035年を見すえた中長期の医療政策の提言をまとめました。都道府県ごとに医療費の総額を管理し、想定を上回った地域は保険医療の公定価格である診療報酬を減額する案を提起しました。医療費そのものの伸びを抑えるため、健康への影響が指摘されるたばこや酒、砂糖などへの課税を強化する案も盛り込みました。






 「保健医療2035」策定懇談会の渋谷健司座長(東大教授)が同日、塩崎恭久厚労相に提言書を渡しました。塩崎恭久厚労相は「できるものから着実に進めていきたい」と述べられました。
 提言の柱の一つは、地域単位での医療費の抑制策です。都道府県の医療費がそれぞれの想定を超えた場合、その地域の診療報酬を減らすことで総額を管理します。都道府県ごとにベッド数などサービス量の目標を示してもらい、供給量が上回った場合に報酬を下げる案も示しました。いずれも医療機関が受け取る報酬を調節することで医療費の総額を管理する考え方です。
 医療費の抑制にきちんと取り組まない都道府県では医療費の地方負担を増やします。1人あたりの医療費は最も高い高知県が62万5000円で、最も低い千葉県の1.6倍あります。現在は医療費のうち国が26%、地方が13%を負担しており、残りが保険料と患者負担です。
 ある地方で医療費が膨らめば、国全体の負担も同時に膨らみます。このため県民の年齢構成など構造要因以外で医療費が膨らんでいる部分は、地方の努力不足とみなして国の負担増分を地方自治体に負担してもらうという考えです。
 国民の負担増も盛り込みました。風邪など軽症の患者は自己負担を引き上げて頻繁な受診を抑えます。年齢と所得で決まっている自己負担や保険料も見直し、保有する資産も踏まえて決めることにします。豊かな高齢者に応分の負担を求める考え方です。
 国民の病気を予防するために、健康を損なう可能性があるたばこや酒、砂糖への課税強化を求めました。日本ではたばこ税や酒税はあるが、砂糖だけに課している税はありません。
 海外ではハンガリーが砂糖や塩を大量に含む食品に課税する「ポテトチップス税」を導入しました。デンマークもマーガリンなど脂肪を多く含む食品に「脂肪税」を一時課しています。価格を高くすることで消費量を減らすほか、財源を確保する狙いがあります。
 いずれの項目もすぐに実施するにはハードルが高い状況です。税制改正には財務省との調整が必要になります。地方が取り組む医療費の抑制も具体的な制度設計はこれからです。負担増には国民の反発が必至です。
 提言が想定する2035年は1971年~74年生まれの「団塊ジュニア世代」が65歳に到達し始めるタイミングです。医療保険財政が一段と厳しくなっている可能性があります。









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2015年6月11日木曜日

データヘルス計画の意義

2015年度から本格的にスタートした「データヘルス計画」について、厚生労働省の関係協議会で座長を務めた辻一郎・東北大教授は、医療ビッグデータを活用して個々に合った対策を立てるという健康戦略の有効性を強調しました。






データヘルス計画は、すべての保険者がレセプトや健康診断などのデータ分析に基づき、加入者それぞれに効果的な保健事業に取り組むものです。生活習慣病の治療が必要と思われるのに医療機関を受診していない人や治療効果が見られない人を抽出して受診勧奨や保健指導を行ったり、同業種と比べて喫煙率が高いといった職場の健康課題を明確にしたりなどの取り組みがイメージされています。社会保障費の適正化などを狙って日本再興戦略に盛り込まれ、保険者は事業計画の策定が求められました。
 計画作成の指針取りまとめなどに携わった辻教授は、超高齢・人口減少社会の中で社会保障制度を持続させるためには、年金よりも伸び率の大きい医療・介護費をいかに抑制できるかが課題だと指摘しております。「労働力人口も高齢化していく中、職場の健康管理がこれまで以上に重要になる」と、データヘルス計画の背景を説明しました。
 近年の肥満・メタボリック症候群対策で肥満者や糖尿病患者の増加に歯止めがかかっている。宮城県大崎市を中心としたコホート研究などから、喫煙・肥満・運動不足を改善することで国レベルでは5兆円規模の医療・介護費削減が期待されるとし、効果的な健康づくり対策によって生活習慣病の発症・重症化を予防する意義を述べられました。
ただし、ハイリスク者に受診勧奨するなど積極的に介入することで、短期的には医療費の増加が見込まれることにも言及されました。福島県西会津町では健康づくりの取り組みの数年後から医療費が下がり始めたことを紹介し、「最初の数年は当然増える。そこで誤った評価をすると、計画はとん挫してしまう。予防から治療まで一貫して見ることで、全体的な最適化が可能になる」としました。

これからの医療費の増加を抑制する一つの有用な策が、予防医学の発展であるという見解は多くの方が持っていられます。まだまだ日本人の予防医学に対する意識は低いです。しかし医療保険などは手厚く組んでいるところがあったりと本末転倒な方が多いこの考え方を変えるような大きな仕掛けが必要になってくるでしょう。








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2015年6月10日水曜日

病院の合併統合

病院の合併統合にあたって、最も重要なポイントは「誰をキーマンに据えるか」「統合の相手方へ敬意を払えるか」であると、県立病院と市立病院という、異なる設立母体を持つ自治体病院同士の合併を見事成功させ、厳しかった経営状況をV字回復させた日本海総合病院の栗谷義樹理事長が、強調しました。






日本海総合病院は、旧山形県立日本海病院と旧酒田市立酒田病院が合併統合して2008年4月に発足しました。現在は、独立行政法人「山形県・酒田市病院機構」として、旧日本海病院が急性期に特化した「日本海総合病院」に、旧酒田病院が回復期・慢性期を中心に担う「酒田医療センター」に機能分化しています。
 栗谷院長は、病院の合併統合を成功させる最大のポイントとして「誰をキーマンに据えるか」を掲げました。
 日本海総合病院のケースでは、山形県の齋藤弘知事(当時)と山形大学の嘉山孝正医学部長(当時)、さらに栗谷院長の三氏でしょう。栗谷院長は「役者がきちんとそろっていなければ合併統合は成功しない」と強調しました。
 また、「合併相手に最大限の敬意を払う」ことも極めて重要です。栗谷院長は「2つの組織が一緒になったとき、片方が出て行ったのでは単なる吸収で、真の合併ではない」と指摘しました。日本海総合病院では、同じ診療科に旧日本海病院と旧酒田病院のスタッフが混在するため、合併当初は人事や診療内容などさまざまな点でトラブルが生じました。その際、一方に肩入れすれば、眼に見えない亀裂が入り、やがては組織の崩壊につながりかねません。そのため栗谷院長は、「山形大や東北大の医学部長にも加わってもらい、職員の能力・実績を公正公平に評価し人事を決めました。また、両大の教授にエビデンスを出してもらい、診療内容面での懸念を一つ一つ解消していきました」と振り返っています。
 合併による効果は着実に表れており、統合前の2007年度には、1178億円の赤字決算であったのが、これが合併直後の2008年度には、赤字を12億円にまで圧縮しました。さらに直近の2014年度では、2億8100万円の黒字決算となっています。
 この背景には、医師数の増加、診療圏が増加し、ほかの地域からの新規入院患者数の増加、手術件数の増加(地域でのシェアが合併後にトップとなった)、1日当たり単価の上昇、などさまざまな要素が絡んでいますが、栗谷院長が特に重視するのは「地域医療・介護連携」です。
 日本海総合病院では、地域の病院と連携した「ちょうかいネット」を構築し、処方、注射、患者バイタルといった診療録のすべてを共有しています。密な情報連携によって紹介元、逆紹介先の病院、診療所、介護施設との関係が円滑になるだけでなく、同病院から診療所などへ患者を逆紹介する際に、ネットワークの情報を活用すれば済み、医師が別に詳細な情報提供をする必要がなくなったため、大幅な勤務医の負担軽減が図られました。
 「財務の好転による機器の充実や、負担軽減によって優秀な医師が集まる」→「医療の質が高まり患者が集まる」→「更に財務が好転する」という好循環が形成されていると言えるでしょう。

これから地域医療構想によって、休眠病床を持っている病院においては適正化に向けたダウンサイジングが行なわれるであろうし、医療圏ごとの最適な医療提供体制に向かい進めていくことになります。地域医療連携推進法人の話題もありますが、これからは地域における連携が求められていきます。その際にいかにイニシアチブを取ることができるのか、そのあたりはそれぞれの医療機関の規模や方向性などもあると思いますが、国が掲げているほど穏やかに進むとは思えず、各地域での主導者が必要となることは間違いないでしょう。








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2015年6月9日火曜日

2025年の訪問看護とは

日本看護協会、日本訪問看護財団、全国訪問看護事業協会の3団体は2014年度末、「訪問看護アクションプラン2025」を策定しました。2025年に向けて訪間看護が目指す姿と、それを達成するためのアクションプランを示しました。全国訪問看護事業協会の伊藤雅治会長は、「3団体が中心となり、行動していく方向性を示すという意味でアクションプランを作成しました。訪問看護ステーション自らが動くことが大事である」と述べられ、訪問看護師に対し、アクションプランで掲げた取り組みの周知を図る考えを示しました。






アクションプランには国民へのメッセージも盛り込んでいます。3団体が設置した訪問看護推進連携会議は2009年3月に「訪問看護10カ年戦略」を策定しました。訪問看護の在り方を示す指針として活動を進めてきましたが、訪問看護を取り巻く環境の変化を受け、同戦略を新たに見直す必要があると判断しました。
アクションプランは 訪問看護の量的拡大、訪問看護の機能拡大、訪問看護の質の向上、地域包括ケアヘの対応、で構成されています。量的拡大では、訪問看護師数を2025年までに現在の3倍程度(約15万人)に増やす目標を盛りこんでいます。伊藤会長は、日本の在宅死亡率の割合が、諸外国と比較して低いデータなどに言及し「日本でも訪問看護師を増やしていけば、在宅死亡率を上げられる」と説明しました。機能拡大では、機能強化型訪問看護ステーションを2次医療圏ごとに少なくとも1 カ所以上設置することや、看護小規模多機能型居宅介護を全市町村に1カ所以上設置する目標も掲げました。質の向上では、看護の専門性を発揮して多職種と協働できるスキルの強化を挙げました。地域包括ケアの対応では、国民への訪問看護に関する周知や、地域での生活を包括的に支援するため訪問看護ステーションの機能を強化する必要性も示しました。介護保険事業計画や地域医療計画といった自治体の計画策定プロセスに参加し、訪問看護の立場から政策提言することも掲げています。アクションプランでは、訪問看護に求められる重要な課題の一つに「日本全国どこでも24時間365日、いつでも必要な質の高い訪問看護サービスを届ける仕組みをつくること」を挙げ、そのために訪問看護が目指すべき姿の一つに「多機能化・大規模化」を位置付けています。また、2025年に向けて訪間看護ステーションが核になり、多職種で在宅療養する人に対して、必要な介護サービス、生活支援サービスを一体的に提供する仕組みづくりが必要との考えを示しました。

地域包括ケアシステムの構築に向けて、訪問看護の存在は必要不可欠であることは間違いと思います。正直、開業医がどれだけまめに訪問診療に行くかといわれても懐疑的なところがあります。訪問診療を行なっていても、やはり患者に寄り添えるのは看護師の方が上であると思います。それが看護師の本意でもあるわけですから。これから在宅療養が進めば、これまでと違った次元での医療の提供が求められていきます。その際に訪問看護が中心となって多職種で連携を行ない、地域を看ていくことが必要となっていくでしょう。








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2015年6月8日月曜日

大病院が“独り機能分化”

中央社会保険医療協議会の鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は5月13日の診療報酬基本問題小委員会で、大規模な急性期病院による単独での機能分化が、地域内の医療連携を妨げかねないとの危機感を表明され、診療報酬上の適切な対応を求めました。






 この日了承した入院医療等の調査・評価分科会の調査スケジュールや審議テーマに対する認識で、鈴木委員は基本小委の会合の席上、一部の大規模な急性期病院が2014年度の診療報酬以降、単独で機能分化を進めていると指摘されました。「入院医療の機能分化と連携には、病院内の機能分化ではなくて病院ごとの機能分化が必要」などと述べられ、特定集中治療室管理料と地域包括ケア病棟入院料の両方を算定している病院がどれだけあるかなど実態の把握を求めました。
 厚労省保険局の宮嵜雅則医療課長が「議論に資するようなデータを出せると思う」と応じると、鈴木委員は「大病院は、ケアミックス化ではなくて高度急性期や急性期に特化していかないと、本来の趣旨である機能分化は進まない」と診療報酬上での配慮を求めました。
この日の基本小委では診療側の中川俊男委員(日医副会長)が、「経済財政諮問会議や財政審(財政制度等審議会)が診療報酬改定の具体的な項目に言及することは中医協に対する圧力、もしくは越権行為に当たるのではないか」と批判しました。
 諮問会議や財政審による議論の中で、7対1入院基本料の引き下げなどに踏み込んだ発言が相次いでいるのを受けたもので、同じ診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)が「中医協をないがしろにする可能性がある」とこうした動きに懸念を表明したほか、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)も中川委員に同調しました。

地域医療構想に向けての各医療機関の動向が物議を醸しています。ワイングラス型からヤクルト型へのシフトを厚生労働省は掲げていますが、それにより病床の一部を回復期などへと切り替えていくことが、独り機能分化であるとは、そうといえばそうでありますが、なかなか難しいところです。医療機関側からすると、病床の一部の機能を変えることが適正な方向ではないというのならどのようにしたらよいのかと反論が聞こえてきそうです。要は、厚生労働省としては、高度急性期・急性期の病床を単純に減少させるダウンサイジングが理想の形として推し進めたいのでしょうが、これまで地域の医療を一手に行なってきた各医療機関にあまりにも一方的にマイナスの方向性は、医療提供体制の維持に支障をきたすのではないかと懸念致します。








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2015年6月7日日曜日

一般病床、在院日数短縮するが、病床利用率も低下

厚生労働省が6月2日に発表した病院報告によりますと、2015年2月に一般病床の平均在院日数は17.0日で、前月に比べて0.7日短縮したものの、病床利用率も0.8ポイント低下したことなどが分かりました。






病院報告では、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率が毎月示されます。2015年2月の状況では、(1)の1日平均患者数は、病院全体では入院128万9738人(前月比2万1991人、1.7%増)、外来137万3671人(同5万9519人、4.5%増)と、入院・外来とも増加しました。診療所の療養病床では入院6957人(同4人、0.1%増)の微増となっています。
 一般病床の入院患者数は69万9136人で、前月比1万8104人(2.7%)増加しています。また、療養病床の入院患者数は29万5754人で、前月比3039人(1.0%)の増加となっています。
(2)の平均在院日数を見ると、病院全体では29.6日で、1.4日短縮しました。病床種別に見ると、一般病床17.0日(前月比0.7日減)、療養病床153.0日(同11.0日減)、介護療養病床296.6日(同31.5日減)、精神病床277.4日(同23.5日減)という状況。また、有床診療所は95.8日(同7.0日減)で、すべての種別で短縮しています。
 在院日数の短縮は、医療費の効率化や、院内感染リスクの解消やADL低下の防止など医療の質の向上につながるため、政府の重要政策の一つに位置付けられていますが、月ごとの変動も大きいため長期的な視点で見る必要があります。
最後に(3)の月末病床利用率を見ると、病院全体では79.5%で、0.4ポイントとわずかながら低下しました。病床種別では、一般病床73.7%(同0.8ポイント低下)、療養病床89.8%(同0.4ポイント上昇)、介護療養病床92.5%(同0.5ポイント上昇)、精神病床86.2%(増減なし)となっており、前月から大きな変化はありません。
在院日数短縮を進めると、病院の経営面では減収方向にシフトするため、病床稼働率を上げる必要があります。その際、地域の医療機関との連携強化による集患対策はもちろんですが、ほかにも病床規模の縮小や機能転換などの多角的な対策も検討する必要があります。

 一般病床については、平均在院日数が0.7日短縮したものの、病床利用率も0.8ポイント下がってしまっており、「稼働率向上」対策が十分に機能していない状況がうかがえます。この空床をどのように考えるかで、病院の運営は変わってきます。空いているよりは今の患者にいてもらった方が収益を確保できると考えて、患者の在院日数が長くなるように働きかけている病院は、まだまだあります。実際、損益分岐を上下に移動している医療機関でしたら、今月は何とかしたいと部分最適に目線が行ってしまった誤まった方向です。正直、経営幹部もそれは分かっていながらも、病院を存続させなければならず、そのためには必要最低限の利益を確保しなければなりません。医療の世界は法に守られたブルーオーシャンだと他業界からは見られているところがあるようですが、実状はそんなに生ぬるくない状況で地域の住民の健康に対する安全と安心のために努めています。








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2015年6月6日土曜日

東京圏の高齢者は、地方移住を

 民間有識者でつくる日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)は6月4日、東京など1都3県で高齢化が進行し、介護施設が2025年に13万人分不足するとの推計結果をまとめました。そして施設や人材面で医療や介護の受け入れ機能が整っている全国41地域を移住先の候補地として示しました。






 創成会議は「東京圏高齢化危機回避戦略」と題する提言をまとめました。全国896の市区町村が人口減少によって出産年齢人口の女性が激減する「消滅可能性都市」であるとした昨年のリポートに次ぐ第2弾になります。
 東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県では、今後10年間で75歳以上の後期高齢者が175万人増えると予測されています。この結果、医療や介護に対応できなくなり、高齢者が病院や施設を奪い合う構図になると予測しました。解決策として移住のほか、外国人介護士の受け入れ、大規模団地の再生、空き家の活用などを提案しました。
 移住候補地は函館、青森、富山、福井、岡山、松山、北九州など一定以上の生活機能を満たした都市部が中心でした。過疎地域は生活の利便性を考え、移住先候補から除いたといいます。観光地としても有名な別府や宮古島なども入っています。
 高齢者移住の候補地域は以下の通りになります(地名は地域の中心都市で、かっこ内は介護施設の追加整備で受け入れ可能になる準候補地域です)。
 【北海道】室蘭市、函館市、旭川市、帯広市、釧路市、(北見市)
 【東北】青森市、弘前市、秋田市、山形市、(盛岡市)
 【中部】上越市、富山市、高岡市、福井市、(金沢市)
 【近畿】福知山市、和歌山市
 【中国】岡山市、鳥取市、米子市、松江市、宇部市、(山口市、下関市)
 【四国】高松市、坂出市、三豊市、徳島市、新居浜市、松山市、高知市
 【九州・沖縄】北九州市、大牟田市、鳥栖市、別府市、八代市、宮古島市、(熊本市、長崎市、鹿児島市)

首都圏の高齢化問題は、これまでも懸念はされておりましたが、ここまでしっかりと数値で公表されたのは初めてであり、それだけインパクトもありました。ただ、だからといってすぐに医療や介護の機能が整っている地域へ移住しようかという考えには日本人としては結びつかないと思います。そこにはこれまでの文化もありますし、変わることへの恐怖心がまだ打ち勝っているからです。これを国や地域が促していくことで少しずつ変化が見られ、2025年には多少なりとも危機状況を回避できていればと願います。








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2015年6月5日金曜日

診療報酬のマイナス改定を財政審が提言

財務省の財政制度等審議会(財政審)は6月1日、国の財政再建に向けた基本的な考えをまとめた「財政健全化計画等に関する建議」を財務大臣の麻生太郎氏に提出しました。社会保障分野の歳出改革の方針として、今後5年間の社会保障関係費の伸びを、少なくとも高齢化による自然増分に相当する年間5000億円の範囲内に抑え、診療報酬や介護報酬は全体でマイナス改定とすること、2017年度までの後発医薬品の数量ベースにおけるシェア目標を60%から80%に引き上げることなどを要望しました。






 建議では、今後5年間の社会保障関係費の伸びの抑制に関する方針として、医療・介護分野では、公的保険給付範囲の見直し、サービス単価の抑制、負担能力に応じた公平な負担にかかる制度改革を集中的に行うほか、医療の効率化を進める必要があるとしました。
 具体的な方策として、後発品について、現在の「2017年度内に数量ベースのシェア60%以上」という目標を、80%に引き上げることを提案しました。「80%」の目標を2016年度診療報酬改定に反映することで、目標達成は可能としました。さらに、2018年度以降は、後発品のある先発品(長期収載品)の保険給付額を後発品の価格までとする制度改革も求めています。
 一方で財政審は、高齢化などの要因によって医療費や介護費が今後増え、医療機関や介護事業者の収入総額は増加するとし、国民の負担増の抑制の観点から、診療報酬本体・介護報酬は「メリハリをつけつつ、全体としてはマイナスとする必要がある」と提言しました。自己負担や保険料負担については、世代間や世代内の負担の公平性を図るため、年齢や就業先にかかわらず、負担能力に応じて負担を求めるべきとしました。
高齢者の負担に関しては、現在は75歳以上の自己負担割合は原則1割で、70~74歳では1割から2割に順次引き上げていますが、「原則3割負担の若年世代に比べ優遇されており、是正する必要がある」と指摘しました。具体的には、2019年度以降に75歳に到達した後も2割負担とするほか、2019年度時点で既に75歳になっている高齢者も数年かけて2割負担に引き上げることを要求しました。
 このほか、国民皆保険を維持する観点から、少額の患者定額負担も導入すべきと提言しました。
 医療の効率化については、医療提供体制の改革を提案しました。財政審は現状の医療提供体制の問題点として、「7対1入院基本料」を算定する病床が過剰だと指摘しました。さらに、人口10万人当たり病床数にも地域差があり、「適正化の余地が大きい」としました。このため、厚生労働省が掲げる「地域医療構想(ビジョン)」と整合した診療報酬体系を構築し、過剰な急性期病床の解消を含む病床の機能分化や、療養病床の地域差の解消を推進することを求めました。
 介護では、要支援や要介護1、要介護2に相当する軽度者に対する掃除や調理などの生活援助サービスのあり方を問題視しました。例えば、訪問介護の生活援助の利用件数が要介護1では全件数の5割を超えているとし、原則自己負担(一部補助)の仕組みに切り替える必要性を訴えました。通所介護などについても人員・設備基準に関する自治体の裁量を拡大し、地域支援事業といった予算の範囲内で実施する枠組みへ移行すべきとしました。
 財政審は今回の建議の内容を、政府が今後まとめる財政健全化計画に反映するよう求めています。

2016年の診療報酬改定は確実にマイナス改定であるという予測がされていますが、7対1の締め付けは進むのでしょうか。それとも2018年の7次医療計画に向けて先行して大きな改革も行なわれるのでしょうか。ただこれまで国民の健康を守り続けてきた国民皆保険の良さを忘れることなく、適正は方向へと導いて頂きたいものです。









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2015年6月4日木曜日

地域医療構想GLは「地域医療を考えるきっかけ」

日本病院会は5月30日に社員総会を開催し、堺常雄会長をはじめ、執行部の再任を決めました。 総会後に開かれた記者会見の席上、相澤孝夫副会長は地域医療構想について「3000点や600点という数字は、地域のベッドの機能などを決めるものではない」ことを強調した上で、「地域医療構想ガイドラインは、地域の実情を最も把握している医師が、地域の医療提供体制を考えるきっかけとなるものだ」と説明されました。






相澤副会長は、「あるべき医療の姿はどのようなものなのか、そのためにはどれだけの費用が必要なのかを提示することが日本病院会の役割だと思う。一方で、時代の要請に合わせて変えていかなければならない部分もある。地域の医療の実情は、地域の医師が最もよく分かっている。地域医療構想は、こうした点を考えるきっかけになるのではないか」との考えを表明されました。ガイドラインに示された「急性期は3000点以上、急性期は600点以上」などの数字が一人歩きし、「600点以上でない病床は急性期ではない」などと誤った解釈が広まることに強い懸念を示しました。
 また堺会長は、主に二次医療圏単位で設定される構想区域ごとの診療データを活用して「例えばA県のa市と、B県のb町の状況が似ているなどということが分かると思う。このように類型化をし、a市ではこういった取り組みをしており効果を上げているので、b町でも同様の取り組みをしてはどうかといった議論が可能になると思う」と見通しました。
 診療データの活用については、相澤副会長から「自院が現在の姿と、周囲の医療機関の姿を比較できるような形でデータを示してもらえるよう厚生労働省に求めている。ただし、すべての医療機関がデータを十分に活用できるわけではないだろうから、日本病院会が『見える化』を行っていきたい」との考えも示されました。
2016年度の診療報酬改定について堺会長は、「マイナス改定に近い状況という感触がある」と見通した上で、「国民にとって、病院も診療所もあまり関係ない。病院のことだけでなく、国民の視点に立って考える必要がある」との考えを強調されました。
 また、前回の改定で新設された地域包括ケア病棟の届け出が進んでいない点に触れ、「地域包括ケア病棟には、急性期後の患者の受け入れや緊急時の対応といった機能が求められているが、急性期を担うためには現在の診療報酬では厳しいと思う。一方、7対1から地域包括ケアに移行する場合、現場の看護師は『なぜ』という思いを持つのではないだろうか。現在の地域包括ケア病棟には、経済的にもそれ以外にも十分なインセンティブが付いていないと思う」と述べられ、7対1からの転換をより促すような報酬設定が必要との考えを示しています。
 なお大道道大副会長は「5月29日に入院医療等の調査・評価分科会に調査結果が示されたが、中小病院、特に100床前後の病院の実態は見えてこない。例えば光熱費が1年のうちに何度も引き上げられるような状況の中で、中小病院には16年度の報酬改定を乗り越えられるのかという不安感がある。日病が中小病院のデータをそろえ、提言していきたい」との考えを述べられました。

地域医療構想については、様々な情報が行き交っており、誤まった情報から誤まった分析を行なっている医療機関も見受けられます。そこには、いかに構想区域でイニチアティブを取るかという視点で自院のことしか考えていないところがありますが、ここの目的はそうではないことを各医療機関の経営幹部が理解するまでにはまだ少し先になりそうですが、そういっている間に協議の場が開かれるわけで、構想区域によっては協議など進まないことも懸念されます。









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2015年6月3日水曜日

DPCの組織的なアップコーディングに、是正勧告

DPCの診断群分類を決める際、組織的にアップコーディングをするなど不適切な事例には、国が是正勧告などを行うべきであると、5月27日に開かれた中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会で、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は強く求めました。






中医協の下部組織である診療報酬調査専門組織「DPC評価分科会」では、精神科病床がないなど機能の低いI群病院について機能評価係数IIで対応する、「適切なコーディングに関する委員会」の開催頻度を増やす、などの方針を固めていて、5月27日の小委に報告され、了承されています。 このうち適正なコーディングについては、「一部の病院ではミスコーディングが多い」との指摘があったことから、DPC評価分科会でヒアリング調査を行い、その結果を基に固めたものになります。
 DPC対象病院におけるミスコーディングの割合は平均0.66%と低い中、「ミスコーディングによって収益がプラスになる」のはその半数(49.9%)にとどまります。
 しかし、ヒアリング調査の対象となった病院ではミスコーディングの割合が2.7-3.7%と高く、その上「収益がプラスになる」ものが85.5-98.8%と大半を占めておりました。
 この状況について白川委員は、「不適切なアップコーディングを組織的に行っているように見える。こういった病院には、ペナルティーとまではいかないまでも、厳しく是正勧告を行うような仕組みを作る必要がある」と述べ、厚生労働省に対応を強く求めました。
 この要望に対する明確な答えは示されませんでしたが、厚労省保険局医療課の担当者は会合終了後に「DPC評価分科会に白川委員の意見を伝え、検討してもらうことになると思う」と見通しています。

不適切なアップコーディングは確かに問題かもしれませんが、本来請求できる額を請求できていなかったらそれは病院の経営の大きく影響します。損益分岐点付近をさまよっている病院にとっては過誤も大きな痛手です。それでも見解の違いはしっかり正さなければなりませんし、医療事務が誤まった見解のままではせっかくの現場の汗が徒労に終わってしまいます。適正化は足元から行なっていかなければならないです。








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2015年6月2日火曜日

「重症度、医療・看護必要度」、患者像反映に課題も

厚生労働省は5月29日の中医協・入院医療等の調査・評価分科会(分科会長=武藤正樹・国際医療福祉大大学院教授)に、2014年度診療報酬改定で要件が厳格化された7対1など一般病棟入院基本料の見直しによる影響や新設された地域包括ケア病棟入院料の影響、さらには療養病棟、障害者病棟、特殊疾患病棟等における慢性期入院医療の在り方など6項目の2014年度調査結果を報告しました。






 この日の議論を含め調査結果は、今後の中医協基本問題小委員会に報告されます。2016年度改定での対応が注目される一般病棟入院基本料見直しに関する調査では、要件厳格化が行われた7対1や10対1に関する「重症度、医療・看護必要度」や、90日超入院の特定除外制度の廃止、短期滞在手術等基本料等の見直しなどを取り上げました。7対1の届出数では、3月の中医協で報告された通り、改定前の約38万床が2014年10月時点で約366万床となり、実質1.4万床の減少となっています。7対1から転換された病棟・病床をみると (複数回答)、10対1入院基本料や地域包括ケア入院医療管理料1、休床の割合が高くなっています。7対1からの転換理由 (複数回答)は、「重症度、医療・看護必要度の基準を満たさないため」が最も多い状況でした。「重症度、医療・看護必要度」で見直し後のA項目では、喀痰吸引のみの場合を除く見直しが行われた「呼吸ケア」などの割合が低下しており、抗悪性腫瘍薬や抗血栓塞栓薬などによる「専門的な治療・処置」の割合が増えています。重症度、医療・看護必要度の基準に該当する患者割合からは、医療処置等を必要とする患者を積極的に受け入れている医療機関であっても、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合に十分反映されていないとしました。さらに、新たな要件となった在宅復帰率は、平均で約94%でほとんどの医療機関が高値を示していますが、必ずしも自宅等への退院割合が高くない医療機関も含まれているとしました。このほか、短期滞在手術等基本料3では、眼科の水晶体再建術や腹腔鏡下鼠径ヘルニア術について、左右の複数回の手術のための再入院の必要性や、点数が低くて採算が取れないなどの意見が出ていることなどが報告されました。
これに対して本多伸行委員(健保連理事)は、「重症度、医療・看護必要度」について「医療機関の分布からみると、多くは20%以下になっている。 7対1入院基本料を算定する医療機関は、入院忠者が7対1の費用を負担することから、15%以上という現行基準の妥当性についても議論すべきだ」と指摘しました。在宅復帰率についても「全体の平均94%に対し自宅等への退院は78%で、現行の基準(75%)が緩いのではないか」とし、今後検討すべきとしました。神野正博委員(全日本病院協会副会長)は、短期滞在手術等基本料3で腹腔鏡下鼠径ヘルニア術の5割が採算が取れていない実態は見直すことが必要ではないかと指摘しました。

次の診療報酬改定である2016年改定は厳しいマイナス改定となることが予測されています。特に急性期のところについて、どこまで厳格になるのか、看護配置による入院基本料がこのまま続くのか、これからますます病院経営が厳しくなることは間違いありません。事務長任せの経営から脱却したところが生き残っていくのでしょう。








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2015年6月1日月曜日

地域医療構想に対する理解度は

全日本病院協会の常任理事会・理事会が5月23日開かれ、全日本病院協会が実施した地域医療構想に関する調査結果の報告を受けました。それによると地域医療構想への理解度については、全体の6割弱の支部が「不明な点が多い」などと回答している実態があることが明らかになりました。






 全日病の調査は、地域医療構想に関する各支部の現状認識や意見、調整会議への対応状況などを把握する目的で実施されました。調査期間は2015年4月30日~5月13日まで、47支部のうち44支部から回答を得ました。地域医療構想への各支部の理解について尋ねたところ、「十分理解している」の回答は3支部、「大枠理解している」が16支部でした。一方で「不明な点が多い」21支部、「よく理解できていない」4支部で、両者を合わせた25支部、全体の6割弱が不明もしくは理解しきれていないと回答しました。この25支部に理由を聞いたところ(複数回答可)、最も多かったのは「調整会議の役割と運営」「調整会議における病院団体の役割」で19支部、次いで「医療機能区分の判断」17支部、「構想区域の設定」「調整と既存病床との関係」14支部などと続きました。西澤寛俊会長は「現場がガイドラインの文言に疑間を感じているという現状は理解できる。全日病として各支部への情報提供や支援を強化する必要性を感じている」と話されました。また、同日の常任理事会・理事会では、全日病が、2015年度看護師の特定行為に係る指導者育成事業実施団体として選定を受けたことも報告されました。西澤会長は「全日病が、これまでも講習会・研修会を多岐にわたって実施してきたことが評価されたのだろう。看護師の特定行為に係る指導者育成事業は、7月から全国8カ所で講習会を実施する予定」と話されました。

これから協議の場として調整会議が行なわれていくことになりますが、各医療機関はいかに生き残るかを模索しており、情報収集を行ないシミュレーションするなど方向性を検討しています。まずは、どのような数で都道府県から各医療圏の適正病床数が出されるのか、そこに掛かってきますが、各支部の理解度が低いと、調整も円滑に進んでいかないでしょう。








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2015年5月31日日曜日

第2のスティーブ・ジョブズ エリザベス・ホームズ

「第2のスティーブ・ジョブズ」と言われている女性起業家エリザベス・ホームズをご存じでしょうか。「痛くない注射」を発明した米国の女性起業家です。1960年代から大きな技術革新がなかったのが血液検査の世界でした。エリザベス・ホームズ氏は、そこに徹底した長期戦略と、確かな実行力を伴って、大きな変革をもたらそうとしています。10年間の開発と特許出願などを経てサービスの品質を高めた上で、2013年秋にアメリカ大手薬局チェーンのウォルグリーン薬局と組み、革命的な血液検査がようやく日の目を見ました。






 指先から小さな針で採血し、極力人手を介さない分析工程と流通網を構築しました。痛みが少なく、より正確で、低価格な血液検査を即時に提供することを実現しています。技術の革新性もすごいですが、31歳という若さと、医療費削減の期待などから普及の可能性が評価されてか、アメリカのフォーブス誌の世界億万長者ランキングに「最年少で成功した女性起業家」としても紹介され「アメリカ富豪400人」の一人に選ばれました。なんとエリザベス・ホームズ氏の個人資産は45億ドル(約5380億円)と言われています。
エリザベス・ホームズ氏は19歳で米スタンフォード大学1年目で最優秀学生の1人に選ばれたものの、19歳で中退しました。理由は「学費にかかる多額のお金をもっと有効に使う方法があると思ったから」。彼女が大学をやめてまで実現したかったのは、誰もがフェアに受けられる医療の実現でした。血液検査や遺伝子分析の領域でさまざまな特許を申請しながら、現在のサービスを作り上げました。
エリザベス・ホームズ氏は、10年間でメディケアで980億ドル、メディケイドで1040億ドルの医療費削減効果をもたらす会社に成長したと言われています。
またエリザベス・ホームズ氏は、大学を中退して独立し、菜食主義者で、いつも黒のタートルネック姿で登場することなどから、米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏と重ねて見られることもあるようです。コンピュータ産業に革命をもたらしたジョブズ氏と、医療界に革命をもたらそうとしているホームズ氏という構造も、こうした見方を促しているのかもしれません。
エリザベス・ホームズ氏が率いる血液検査サービス会社「セラノス(Theranos)」は、セラピー(Therapy)と診断(Diagnosis)を掛け合わせた社名とのことです。 医療は全世界で成長産業としての発展が期待されています。健全な発展には、医療の質向上を伴う成長が欠かせません。医療との身近な接点である血液検査は、国民にとっても分かりやすい「医療の質向上」の実例になるので、セラノス社とエリザベス・ホームズ氏のさらなる活躍に期待が集まっています。アメリカ大手薬局チェーンのウォルグリーンと提携を結んだことで、この注射器の利用は全米に広がりつつあります。
アメリカには世界的に見ても貧富の差が激しく、医療保険の無い国民も多く存在します。エリザベス・ホームズ氏の努力がアメリカ社会、さらには世界中の医療弱者を救う一歩となることを期待したいです。









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2015年5月30日土曜日

病床機能の転換奨励する補助金で

日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、5月21日に「現在、病床過剰であることは間違いないが、診療報酬で病床数などを絞っていく手法では地域医療が崩壊してしまう。地域医療を守るために、転換奨励金(補助金)などを医政局予算として確保し、急性期から慢性期への転換を促していくべき」との見解を示しました。






武久洋三会長は、「日本では20万-30万床の病床が過剰と想定される。これは間違いない」と指摘されました。その根拠として、厚生労働省が3月4日の中央社会保険医療協議会総会に、「医療機関が『受け入れ条件が整えば退院できる』と考える患者が11万5000人いる」とのデータを挙げ、「医療機関自らがそう思うのであるから、実態はもっと多い」との見方を示しました。
また、厚生労働省の「病院報告」では、2014年12月に一般病床の稼働率が平均60.9%に激減しました。その後75%前後に持ち直しますが、一方で、平均在院日数は1.5日延びています。武久洋三会長はこの点にも触れ、「素直に考えれば、2014年改定における7対1の経過措置が終了して病床稼働率が大きく下がった。これでは経営が成り立たないので病院側が在院日数を延ばして、病床稼働を維持したとみることができる」と指摘されました。
武久洋三会長は「このような姑息(こそく)とも言える手段で病院側が経営を維持しなければならない状態は異常だ。こうした診療報酬で病床数を絞っていく手法では地域医療が崩壊する。急性期から慢性期、慢性期から介護施設に移行する場合の『転換奨励金』を医政局が確保し、医療機関や患者が路頭に迷わないようにすべき」と提案しました。
 「病床過剰」を医療団体のトップが認めるのは極めて異例ですが、武久洋三会長は「事実は認め、その上で(転換奨励金などの)新たな提案をしなければいけない」と強調しています。
 ところで、病床機能の転換を促すために、厚生労働省は「地域医療介護総合確保基金」を都道府県が設置するための予算を2014年度予算から確保しています。
 しかし、武久洋三会長や日本慢性期医療協会の池端幸彦事務局長は「基金は都道府県がコントロールしており、総花的に『地域連携ネットワーク』などに補助がなされるケースが多く、個別の病院の機能転換を推進するようには動いていないのが実際だ」と述べられ、基金とは別個に「転換奨励金」予算を確保すべきと強調しました。

病床機能報告の結果が厚生労働省から出てくる頃ですが、いよいよ地域医療構想に向けた動きが各都道府県で医療圏ごとに活発になってくるのかと思います。適正な病床へと転換するためには、それなりにアメがなければ民間の医療機関の動きは大きく変わらないでしょう。確かに都道府県ごとに基金がありますが、それを病床機能の転換の為に活用しようとしている都道府県は少なく、地域連携ネットワークなど本質とはかけ離れたところへ基金が流れていき、結局のところは効果は期待できません。本当に機能分化を進めるのなら、そこに特化した施策と予算を置かなければ、実現は難しいと同感致します。










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2015年5月29日金曜日

薬局再編は「すべて残すわけでない」

塩崎恭久厚生労働相は5月26日の経済財政諮問会議(議長=安倍晋三首相)の会合で、全国に約5万7000件ある薬局を患者本位の「かかりつけ薬局」に再編する方針などを表明した上で、「すべて(の薬局)を残すわけではない」と述べられました。






塩崎厚労相は、社会保障分野の改革についての厚生労働省としての中長期的な考え方を提示されました。この中で、後発医薬品の使用に関する現行の目標の達成時期を前倒しして新たな目標を定めるほか、「患者のための薬局ビジョン」を年内に策定し、それに基づいて全薬局を「かかりつけ薬局」にするための施策を進めるとしました。
 諮問会議の前回会合では、民間議員が社会保障分野の改革に関して提案していました。甘利担当相によると、この日の会合で塩崎厚労相に対して民間議員が、医療法人の本務としての営利性業務の解禁などについても踏み込んだ対応を検討するよう要望致しました。さらに、「地域間の医療費の差を半分程度に縮減することや、薬局を再編して、薬局数を半減させるなどの目標も検討課題だ」などと主張したといいます。
甘利担当相はこの日の会合を、後発医薬品の使用目標や薬局の在り方の見直しなどでは参加者の意見がおおむね一致したと振り返りました。一方で、診療報酬全体の在り方や、健康産業での医療関係者の活躍策などについては、さらに議論を深める必要があると指摘されました。「厚労省の方針が出たが、具体的に各論に踏み込んでいる部分は少ない」と述べられ、厚生労働省側との調整を今後進めるとしました。

適正な社会保障費を目指して抑制に対する施策があちこちで上がってきておりますが、よく白羽の矢が当たるのがこの薬価のところです。その中で薬局の数を半減するとともに、ただ機能を高めかかりつけ薬局を目指していくということ。大きな変革に向けて、門前薬局が立ち並ぶ病院周辺の風景も大きく変わっていくのでしょう。








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2015年5月28日木曜日

「まるで奴隷!」 フィリピン人が集団提訴

 フィリピン人女性9人が大阪府東大阪市の介護施設で『奴隷のように働かされた』などとして、施設の運営会社に対し、損害賠償を求めて集団提訴することがわかりました。






 代理人などによりますと、日本人男性との間に生まれた子どもについて、『日本国籍を取れるようにする』などと勧誘されて来日し、東大阪市の介護施設「寿寿」で介護士として働いていました。
 しかし、実際に国籍取得の手続きはされず、事前に説明されていたより低い給料だった上、渡航費用などの借金を天引きされたということです。
 「借金が終わらなかったら、仕事を辞めることはできない。子どもが病気の時に(私が)連日、勤務だから(誰も)めんどうをみてくれない。同じ人間として見てほしい」と彼女たちは提訴しました。
「寿寿」が立て替えた渡航費など数十万円を借金として抱えており「転職したくてもできなかった」と元職員の証言もあります。
 また、『自分が死んでも会社は責任を問わない』とする権利放棄書にも署名させられ、人格権を侵害されたなどとしてあわせて数千万円の損害賠償を求めています。
 「寿寿」を巡っては既に元従業員の女性1人も提訴しています。施設側は『担当者が分からないため答えられない』と話しています。
これまでにも、夜勤のフィリピン人職員に対する時間外手当が未払いだったことや、勤務時間中に交通事故に遭った職員の労働災害手続きを怠っていたり、元職員のフィリピン人女性が、残業代などの未払い賃金や慰謝料の支払いを求めて大阪地裁に提訴したり、宿直勤務を月間13回させた書類も残っていたりと、平成21年ごろにフィリピン人女性の採用を始めた「寿寿」には、多くの雇用において逸脱した運営をしてきたようです。

EPAで希望を胸に来日しても言葉の壁なども立ちはだかり合格できずに帰国した人も多くいる中で、日本としては、いか医療と介護の従事者不足を補うかというところで進めてきているにも関わらずこのようなニュースが出てくるということは、実際の現場では、資格取得に向けた勉強どころではない環境の粗悪な現実があったのでしょう。まだまだ氷山の一角なのかもしれませんが、国としてしっかりとした引き締めを発令して頂きたいものです。








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2015年5月27日水曜日

東京都の構想区域設定

東京都の地域医療構想策定部会(部会長=猪口正孝・東京都医師会副会長・都病院協会副会長)は5月29日の会合から、東京都の将来あるべき医療提供体制の議論を開始しますが、現在13ある2次医療圏ごとの構想区域の設定は現実的ではないという意見が強まっています。






 2次医療圏をまたいでの患者流出入が多いことに加え、地域によって高度急性期医療や慢性期医療が集中するなど医療圏ごとのばらつきが大きいことが背景にあります。猪口部会長は「13の2次医療圏ごとの構想区域設定は極めて難しい」と述べられ、東京都特有の事情を反映させた構想区域設定の在り方を探っていく考えを示しました。東京都の2次医療圏は、国立がん研究センターや大学病院などを含めた高度急性期医療が集中している「区中央部」(文京・港・千代田・中央・台東)など23区で7つの2次医療圏と、療養病床が集中する多摩地区の5つの2次医療圏、島しょの合計13の2次医療圏で構成しています。23区内でも、区中央部などでは既存病床数が基準病床数を上回っているものの、区南部(品川・大田)、区西部(新宿・中野・杉並)、区西北部(豊島・北・板橋・練馬)、区東北部(荒川・足立・葛飾)では既存病床数が基準病床数に達していない状況となっています。
猪口部会長は、東京都では「区中央部や区西部の高度急性期医療は、2次医療圏に関係なく多くの患者が受診している。例えば葛飾や足立、荒川区の2次医療圏で構想区域を考えたとしても、患者は高度急性期医療を文京区に求める」と指摘しています。その上で「都の医療の実態と、構想区域を合わせようとすれば“23区で1つの構想区域 "という考え方もあるが、23区だけでは慢性期病床が少なく、4つの医療機能を入れた構想区域とするのは極めて難しい」と述べられた。さらに「東京都全体で1つの構想区域という声も強いが、それでは地域偏在が依然として解消できない」とし、東京都の構想区域の設定が大きな課題になっているとの認識を強調しました。また、構想区域設定に関する議論に臨むに当たり「いろいろ課題があっても既存の2次医療圏で構想区域を設定すべきという意見や、先ほど言ったように東京都全体を1つの構想区域にする案、病床機能ごとに構想区域を変える案、特定機能病院を外した上で 基準病床を策定する案、23区は1構想区域で多摩地区は2次医療圏で設定する案など、さまざまな声がある」とし、意見集約に向けた部会の議論を慎重に進める考えを示しました。

地域医療構想において、東京都は他の地域とは明らかに異なるでしょう。おそらく現状の2次医療圏をベースに考えることは、現状にそぐわないからです。ただ、東京都を一つの構想区域としてしまうと、構想区域の設定の本質とはかけ離れていきますし、なかなか難しいと思います。ただ、これだけ高度急性期医療が集中している地域は東京以外にはありませんし、人口密度がここまで高い地域もありません。しかし問題は医療提供体制だけでなく、高齢者を看ていく施設が全然足りていないこともあります。おそらく今からサ高住などの建設も行なわれるかもしれませんが、それでも追いつかないでしょう。そうなると、移住という選択肢も必要なのかもしれません。地域包括ケアシステムの本質からはずれますが、医療や介護の資源が枯渇している地域での生活に不安を感じるなら、それも誤まった方向性でもないのかもしれません。








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