2015年5月5日火曜日

循環器病のビッグデータ

日本循環器学会は、診療報酬の算定に用いられるDPCデータを大規模レジストリー研究に活用する試みを始めていることを、4月24日から3日間にわたって大阪市で開催された第79回学術集会の場で明らかにしました。概要を解説した国立循環器病研究センター心臓血管内科部門長の安田聡氏は、「日々の診療で多忙な専門医の時間を奪うことなく、質の高い日本全体のデータ収集が可能になる」と述べ、それが最大のメリットと強調しました。






この取り組みは、日本循環器学会が全国の循環器科・心臓血管外科を標榜する施設を対象に2004年から毎年実施している「循環器疾患診療実態調査」(JROAD)の一環になります。
 JROADはこれまで施設レベルの解析にとどまり、個人レベルのデータ解析がなされていなかったことから、さらなる医療の質の向上につなげるため、2012年分からDPCデータの収集を開始したといいます。
 2012年分の調査でDPCデータを提供する承諾が得られたのは、全国のDPC対象施設1505施設(厚生労働省医療施設調査)の41%に当たる610施設でした。病床数でいえば、33万9746床で、全国のDPC対象施設の71%に当たります。現在、国立循環器病研究センターの循環器病統合情報センターで、集められた70万4593例の診療録情報のデータ解析が進められています。
 疾患別の症例数はそれぞれ、狭心症が18万419例、急性心筋梗塞が3万5824例、心房細動および粗動が2万7315例、心不全が10万8665例に上ります。
安田氏は、急性心筋梗塞の症例データを解析した結果、JROADの報告数とDPCデータの算出数が良好な正の相関を示したことから、データの信頼性は高いと評価できるとしました。また、急性心筋梗塞症例を性別や年齢別に見ると、男性72%、女性28%、男性では60代が、女性では80代が最も多く、従来のレジストリー研究と類似傾向が見られたと説明しました。
 その上で、東京都CCUネットワークのデータ(東京都CCU)と比較したところ、平均年齢が男性ではJROADが67歳、東京都CCUが65歳、女性ではJROADが77歳、東京都CCUが75歳と、東京都CCUの方がやや低い傾向が見られたことや、Killip分類で重症度の高いIVの症例の院内死亡率がJROADは45.4%、東京都CCUは34.8%と差があったことから、JROADは地域の特徴を見る比較データに活用できる可能性があるとした。

 ほかに、急性心筋梗塞症例では入院患者数が多い施設ほど院内死亡率が低い点や、心不全症例が男女共に80代が最も多く高年齢化している点、急性心筋梗塞症例の退院時に処方する主要薬剤の処方率(アスピリン82.5%、β遮断薬44.8%、ACE・ARB53.5%、スタチン66.9%)などを報告しました。
 安田氏は、今回の発表では情報の正確性の検証や医療の質の評価を一部示したとし、「国際比較という展望も考えられるし、全国レベルのデータをガイドラインの策定に使っていく、あるいは発症・重症度のリスクスコアに用いていく、医療効果やコストの点で検証していくというような、さまざまな展望が期待できる」と、今後の展開について語られました。

これから各病院のデータというのはどんどん開示され共有されていく流れになるでしょう。もうブラックボックスではなくなるということです。自院の情報も近隣の医療機関に筒抜けになることで、これから医療の競争は激しさを増すと言った狭い見解をお持ちの方もいらっしゃいますが、進めていきたい方向性は地域包括ケアシステムということで共栄共存していくことが正の方向性であると思います。ただそのためには克服しなければならない課題は、まだまだ山積みですが。








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