2015年6月10日水曜日

病院の合併統合

病院の合併統合にあたって、最も重要なポイントは「誰をキーマンに据えるか」「統合の相手方へ敬意を払えるか」であると、県立病院と市立病院という、異なる設立母体を持つ自治体病院同士の合併を見事成功させ、厳しかった経営状況をV字回復させた日本海総合病院の栗谷義樹理事長が、強調しました。






日本海総合病院は、旧山形県立日本海病院と旧酒田市立酒田病院が合併統合して2008年4月に発足しました。現在は、独立行政法人「山形県・酒田市病院機構」として、旧日本海病院が急性期に特化した「日本海総合病院」に、旧酒田病院が回復期・慢性期を中心に担う「酒田医療センター」に機能分化しています。
 栗谷院長は、病院の合併統合を成功させる最大のポイントとして「誰をキーマンに据えるか」を掲げました。
 日本海総合病院のケースでは、山形県の齋藤弘知事(当時)と山形大学の嘉山孝正医学部長(当時)、さらに栗谷院長の三氏でしょう。栗谷院長は「役者がきちんとそろっていなければ合併統合は成功しない」と強調しました。
 また、「合併相手に最大限の敬意を払う」ことも極めて重要です。栗谷院長は「2つの組織が一緒になったとき、片方が出て行ったのでは単なる吸収で、真の合併ではない」と指摘しました。日本海総合病院では、同じ診療科に旧日本海病院と旧酒田病院のスタッフが混在するため、合併当初は人事や診療内容などさまざまな点でトラブルが生じました。その際、一方に肩入れすれば、眼に見えない亀裂が入り、やがては組織の崩壊につながりかねません。そのため栗谷院長は、「山形大や東北大の医学部長にも加わってもらい、職員の能力・実績を公正公平に評価し人事を決めました。また、両大の教授にエビデンスを出してもらい、診療内容面での懸念を一つ一つ解消していきました」と振り返っています。
 合併による効果は着実に表れており、統合前の2007年度には、1178億円の赤字決算であったのが、これが合併直後の2008年度には、赤字を12億円にまで圧縮しました。さらに直近の2014年度では、2億8100万円の黒字決算となっています。
 この背景には、医師数の増加、診療圏が増加し、ほかの地域からの新規入院患者数の増加、手術件数の増加(地域でのシェアが合併後にトップとなった)、1日当たり単価の上昇、などさまざまな要素が絡んでいますが、栗谷院長が特に重視するのは「地域医療・介護連携」です。
 日本海総合病院では、地域の病院と連携した「ちょうかいネット」を構築し、処方、注射、患者バイタルといった診療録のすべてを共有しています。密な情報連携によって紹介元、逆紹介先の病院、診療所、介護施設との関係が円滑になるだけでなく、同病院から診療所などへ患者を逆紹介する際に、ネットワークの情報を活用すれば済み、医師が別に詳細な情報提供をする必要がなくなったため、大幅な勤務医の負担軽減が図られました。
 「財務の好転による機器の充実や、負担軽減によって優秀な医師が集まる」→「医療の質が高まり患者が集まる」→「更に財務が好転する」という好循環が形成されていると言えるでしょう。

これから地域医療構想によって、休眠病床を持っている病院においては適正化に向けたダウンサイジングが行なわれるであろうし、医療圏ごとの最適な医療提供体制に向かい進めていくことになります。地域医療連携推進法人の話題もありますが、これからは地域における連携が求められていきます。その際にいかにイニシアチブを取ることができるのか、そのあたりはそれぞれの医療機関の規模や方向性などもあると思いますが、国が掲げているほど穏やかに進むとは思えず、各地域での主導者が必要となることは間違いないでしょう。








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