2015年6月24日水曜日

地域包括ケア病棟、手術を出来高評価とする方向へ

地域包括ケア病棟において、より多様な状態の患者の受け入れを促進するために「手術を包括評価の外に出す」ことなどが論点に掲げられました。今後、手術(診療報酬点数表のKコード)すべてを出来高評価とするのか、一部手術のみを出来高評価とするのかなどを、他病棟で行われている手術の内容なども見ながら議論していくことになります。






6月19日に開かれた、診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」では(1)地域包括ケア病棟(2)総合入院体制加算(3)医療資源の乏しい地域の診療報酬の3項目をテーマに議論が行われました。 地域包括ケア病棟には、▽急性期後の患者の受け入れ▽在宅復帰支援▽急性増悪時の対応という3つの機能が求められています。厚生労働省が行った調査結果を見ると、地域包括ケア病棟の入院患者の9割は「自院の急性期から、他院の急性期から、自宅から」入棟しており、また97%の病院が3機能を最重視していることが分かり、この3つの機能を相当程度果たしているようにも思えます。
 しかし厚生労働省は「患者の病態が外傷や骨折などに偏っている」点を問題視し、「より多様な状態の患者の受け入れを推進する必要がある」との考えを明らかにしています。
 この日の分科会には、地域包括ケア病棟で実施されている治療内容の実態も示され、次のような状況が明らかになっています。
・入院患者は高齢者が多く、ピークは80-84歳
・検査の実施が少ない
・手術はほとんど行われていない
・7割の患者に個別リハビリが行われているが、実施量は、少ない所から多い所まで幅広い
・疾患別リハビリの大部分は、脳結果疾患等リハビリと運動器リハビリである
・出来高算定できる摂食機能療養は、平均2回弱算定されている
・9割程度の患者が経口での栄養摂取が可能(回復期リハ病棟の患者と同程度)
手術や検査、処置などの実施が少ない背景には、これらが包括評価されている点があります。このため厚労省は「手術などを包括評価の外に出すことをどう考えるか」との論点を提示しています。
 分科会の委員も「多様な病状の患者受け入れを進めるべき」と考えており、特段の反対意見は出されませんでしたが、支払側代表である本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は「手術の出来高評価について議論するなら、具体的な疾患や患者の状態像を示してほしい」と要望しています。
 ただし、前述のように現時点で手術はほとんど行われていないため、「地域包括ケア病棟に入棟する前に実施された手術(それを地域包括ケア病棟で実施できるのか)」や「療養病棟などの他の病棟で行われている手術」などを見て議論していくことになりそうです。
 厚生労働省保険局医療課の担当者は「手術すべてを出来高とするのか、一部手術を出来高とするのかの具体案はまだない」と述べていますが、委員同士のやり取りからは「一部手術を出来高とする」方向で検討が進みそうです。もっとも手術を出来高にした場合、包括部分の点数を下げることになるでしょう。
 なお、リハビリや高額な処置などについて「出来高にすべき」「充実加算を設けるべき」との意見は出されず、手術以外の項目が出来高評価となる可能性は低そうです。本多委員は「濃密なリハビリが必要な患者は回復期リハ病棟に入棟すべきであろう」と述べ、地域包括ケア病棟と回復期リハ病棟の機能分化の必要性も指摘しています。

ところで地域包括ケア病棟については、「退院が見通せる患者を選別しているのではないか」との指摘もあります。厚生労働省の調査では、地域包括ケア病棟の平均在院日数は23.9日(中央値)と比較的短く、在宅復帰率は86.3%(同)と高いのですが、前述の通り「入院患者の状態が外傷や骨折などに偏っている」ために、このような指摘が出てくるのです。
また、厚生労働省の調査結果からも「地域包括ケア病棟の入棟患者の多くは、既に退院予定が決まっている」ことが分かっています。
この点について池端幸彦委員(医療法人池慶應会理事長)は「外傷や骨折など、クリニカルパスが整っている傷病では退院時期が見通しやすい」と述べ、『選別』が行われている可能性を指摘します。
 また筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)も「選別の可能性がある」と指摘した上で、介護保険との連携の重要性を指摘しました。厚生労働省の調査によると、地域包括ケア病棟に入棟している患者の半数程度が要介護認定を受け、要支援1以上と判定されています。こうした患者の多くはケアマネジャー(介護支援専門員)が関与しているため、筒井委員は「ケアマネとの連携を診療報酬でも評価してはどうか」と提案しています。
介護報酬では、ケアマネが病院職員などと面談し居宅サービス計画を作成して退院調整を支援した場合、「居宅介護支援費」の「退院・退所加算」として評価されます。診療報酬と介護報酬の連動という点で、重要な提案と言えるでしょう。
 「退院が見通せる患者」の選別は「多様な状態の患者を受け入れる」という地域包括ケア病棟の目的に反します。このため厚生労働省は、「退院支援の体制強化を図りつつ、より入念な退院支援を要する状態の患者受け入れを促す」ことも論点に掲げました。
 退院支援の具体例としては、「多職種カンファレンスの実施」や「専従・選任の退院支援職員の配置」などがあり、実際に早期退院の効果も上がっています。こうした取り組みを別途診療報酬(加算など)で評価するのか、あるいは施設基準などに組み込みのか、今後の議論が注目されます。

地域包括ケア病棟はこれからの医療提供体制において、大きな意義を担っていくことになりますが、その立ち位置がまだ定まらないというか、どこまでの機能を期待するのかというところの線引きが難しいともいえます。確かに地域包括ケア病棟には3つの機能が求められていますが、そこを本当に高い次元で担っていくと、急性期病棟の存在価値が希薄になるとおもいます。確かにこれから超高齢化社会へと突入していく中で、高機能を担ってくれる地域包括ケア病棟が各地域に存在してくれると地域としては本当に安心ですが、その実現に向けては、制度の整備が未完全であり、まだ道は遠いように思われます。








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