2015年6月12日金曜日

診療報酬を都道府県ごとに管理

 厚生労働省の懇談会は6月9日、2035年を見すえた中長期の医療政策の提言をまとめました。都道府県ごとに医療費の総額を管理し、想定を上回った地域は保険医療の公定価格である診療報酬を減額する案を提起しました。医療費そのものの伸びを抑えるため、健康への影響が指摘されるたばこや酒、砂糖などへの課税を強化する案も盛り込みました。






 「保健医療2035」策定懇談会の渋谷健司座長(東大教授)が同日、塩崎恭久厚労相に提言書を渡しました。塩崎恭久厚労相は「できるものから着実に進めていきたい」と述べられました。
 提言の柱の一つは、地域単位での医療費の抑制策です。都道府県の医療費がそれぞれの想定を超えた場合、その地域の診療報酬を減らすことで総額を管理します。都道府県ごとにベッド数などサービス量の目標を示してもらい、供給量が上回った場合に報酬を下げる案も示しました。いずれも医療機関が受け取る報酬を調節することで医療費の総額を管理する考え方です。
 医療費の抑制にきちんと取り組まない都道府県では医療費の地方負担を増やします。1人あたりの医療費は最も高い高知県が62万5000円で、最も低い千葉県の1.6倍あります。現在は医療費のうち国が26%、地方が13%を負担しており、残りが保険料と患者負担です。
 ある地方で医療費が膨らめば、国全体の負担も同時に膨らみます。このため県民の年齢構成など構造要因以外で医療費が膨らんでいる部分は、地方の努力不足とみなして国の負担増分を地方自治体に負担してもらうという考えです。
 国民の負担増も盛り込みました。風邪など軽症の患者は自己負担を引き上げて頻繁な受診を抑えます。年齢と所得で決まっている自己負担や保険料も見直し、保有する資産も踏まえて決めることにします。豊かな高齢者に応分の負担を求める考え方です。
 国民の病気を予防するために、健康を損なう可能性があるたばこや酒、砂糖への課税強化を求めました。日本ではたばこ税や酒税はあるが、砂糖だけに課している税はありません。
 海外ではハンガリーが砂糖や塩を大量に含む食品に課税する「ポテトチップス税」を導入しました。デンマークもマーガリンなど脂肪を多く含む食品に「脂肪税」を一時課しています。価格を高くすることで消費量を減らすほか、財源を確保する狙いがあります。
 いずれの項目もすぐに実施するにはハードルが高い状況です。税制改正には財務省との調整が必要になります。地方が取り組む医療費の抑制も具体的な制度設計はこれからです。負担増には国民の反発が必至です。
 提言が想定する2035年は1971年~74年生まれの「団塊ジュニア世代」が65歳に到達し始めるタイミングです。医療保険財政が一段と厳しくなっている可能性があります。









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