2014年9月12日金曜日

居宅サービスの機能と連携の在り方 通所介護の機能 社会保障審議会 介護給付費分科会

厚生労働省は8月27日に、社会保障審議会の「介護給付費分科会」を開催しました。この日は、居宅サービスの機能と連携の在り方と通所介護の機能等をテーマに、平成27年度介護報酬改定に向けた議論が行われました。
居宅サービスは、訪問系サービス(訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリ)と通所系サービス(通所介護、通所リハビリ、療養通所介護)に分けられますが、厚生労働省老健局の迫井老人保健課長は「訪問系サービスも通所系サービスも目指すところは同じであり、体系的にサービスを整備していくことが必要であります」と強調されました。 この「目指すところ」について迫井老人保健課長は、次のように説明されています。






(i)「心身機能」「活動」「(社会)参加」などの生活機能の維持向上を図る機能、生活援助の機能、家族介護者の負担軽減を図る機能、のいずれかの機能を発揮して自立を支援する
(ii)認知症高齢者や重度の要介護者が増加する中で、在宅の限界点を高めるために、(i)の機能を効果的・効率的に組合せ、バランスよく要介護者に働きかけることで、高齢者の在宅生活を支える(居宅系サービスの、認知症高齢者・重度の要介護者への対応力を高める必要がある)
(iii)サービスの担い手の確保が今後の課題となる中で、各居宅サービスが有する専門職を有効に活用することが重要であり、多職種連携を推進する仕組みも充実していくことが求められる
(iv)「PDCAに基づくサービス提供」「地域の他の事業所や専門職との連携を通じたサービス提供」「利用者の社会性の維持」といった手法・視点に基づくサービス提供をさらに徹底する必要がある
 この(i)~(iv)の中から見えてくるのが「連携」の重要性であります。多職種連携により、「本人の有する能力を引出す介護が提供できる」「リハ専門職が向上させた生活行為能力を、介護職が生活の中での支援に活用することで、要介護者の自立を促すことができる」「看護職との連携で、介護職は医療の視点に基づく利用者の身体状況などを把握でき、重度者への在宅介護や緊急時の適切な対応に結びつけることができる」ことが期待できます。また、長時間にわたって要介護者の状態を把握できる通所系サービスと連携することで、訪問系の介護者がより適切なサービスを提供できるという効果も生じます。
しかし、多職種連携は思うように進んでいないのが実際です。連携が進まない背景には、「事業所によって取組み状況に差がある」「事業所間に距離がある」「リハ専門職や看護職が不足している」「連携の効果が十分に理解されていない」ことがあげられています。このため厚労省は次のような論点を掲げており、次期改定において多職種連携を手厚く評価する方向を示していると考えることができそうです。
●訪問系サービスと通所系サービスを一体的・総合的にとらえた機能分類や評価体系が必要ではないか
●「同じようなサービス提供については、報酬上も同じような機能として評価する」など、より一層の機能的な連携を図るとともに、異なる機能や役割についての明確化を図る必要があるのではないか
●担っている機能を明確にするための客観的な機能評価もあわせて導入することを目指すべきではないか
●認知症高齢者を含む重度の要介護者や、医療ニーズの高い高齢者(複数の慢性疾患が合併するなど)への対応を見据えた効果的・効率的なサービス提供体制を確保するために、更なる多職種連携の充実が必要ではないか
この点、鈴木委員(日医常任理事)は「居宅系サービスと、診療所や中小病院が連携し、医療者の視点で利用者の課題等を整理し、総合的なサービスを提供していく必要があります」と指摘されています。
 また、(i)では単なる「心身機能」の維持向上だけではなく、「活動」「(社会)参加」を重視しており、これは新たな高齢者リハビリが目指す方向と同じであります。この点、厚生労働省は「心身機能、活動、参加の各要素にバランスよく働きかける効果的なリハビリが徹底できていない」と現状を分析し、「居宅サービスにおけるリハビリ機能の役割や位置づけを、居宅サービス全体の機能や連携の在り方の中で再整理する必要がある」との考えを提示しています。

 さらに迫井老人保健課長は、「高齢者リハビリの在り方を集中的に検討する場を、介護給付費分科会とは別に設置する」考えを示しました。高齢者リハビリは重要なテーマであり、検討すべき課題も多い状況です。迫井老人保健課長は、「早急に検討会を立上げ、年内に3~4回の会合を開いていただき、平成27年度の介護報酬改定で対応すべき項目と、引続き検討を深めていく項目などを整理していただきたい」と会合後にコメントされています。 なお、リハビリについては「評価指標を設定すべき」との考えが、齋藤訓子委員(日看協常任理事)や東委員(全老健会長)から強調されています。

通所介護については、利用者、事業所、費用のいずれもが大きく増加しています。たとえば、平成25年度末の利用者は約173万人(平成13年度末の約2.6倍)、平成25年度末の事業所数は3万9196ヵ所(平成13年度末の約4倍)で、とくに小規模型事業所の増加率が高い状況です。このため利用者の多様化、事業所の多様化が進み、通所介護事業所で取組んでいる内容はさまざまです。たとえば小規模・短時間(3時間以上5時間未満)の事業所では、「身体機能への働きかけ(事業所の92.9%が実施)」「自宅での実際の生活行為力の向上(同65.9%)」などが多く、「栄養改善等(11.1%)」や「認知機能への働きかけ(34.9%)」などは少ない傾向が見られます。一方、通常規模や大規模では、「認知機能への働きかけ(通常規模は74.4%、大規模は69.9%)」や「口腔機能への働きかけ(通常規模は61.1%、大規模は52.4%)」の比重が高くなり、「医療依存度の高い人の受入れ」も小規模に比べて多くなっています。こうした状況を受け厚生労働省は、「通所介護の(i)認知症対応機能(ii)重度者対応機能(iii)心身機能訓練から生活行為力向上訓練まで総合的に行う機能―を充実させていく必要があると考えられますが、これらの機能を評価する軸として介護報酬上の評価をどう考えるべきか」という論点を掲げています。厚生労働省老健局の高橋振興課長は、「たとえば加算の設定や強化なども1つの選択肢であります」との考えを示しています。 これに関連し、武久委員(日本慢性期医療協会会長)は、「訪問介護や通所介護は報酬設定が低く、一部負担も軽いために利用しやすい状況です。そのため医療ニーズの高い重度の要介護者の利用も増えています。しかし本来は、医療ニーズの高い利用者は、訪問看護や通所リハを選択すべきです。現状を是認するのか、本来の姿に立返るのか、きちんと議論すべきです」との問題提起を行いました。また、多くの委員からは「通所介護でもリハビリを行っており、機能や実施しているケアの内容などに応じた評価をすべきではないか」との考え方が示された。この点、迫井老人保健課長は「『通所介護』『通所リハ』というサービス区分に応じた評価ではなく、通所サービスの中で『サービスの内容』『役割』『マンパワー』に応じて評価していくべきというのが委員の一致したイメージのようです」と述べています。平成27年度改定では、通所サービスについて大きな報酬体系の見直しが行われる可能性も出てきたようです。

これからいかに居宅の介護事業を充実させて、病院から在宅へのシフトを図る地域包括ケアシステムの構築を目指しています。病院の患者を在宅に帰らすには、在宅における医療と介護の充実が必要不可欠ですし、まずそのための制度の整備が先決です。多職種連携とは綺麗な言葉ですが、実際に居宅介護で機能するためには今の制度を大きく見直さなければなりません。また医療ももっと深く在宅へ入り込まなければなりません。かかりつけ医の存在が重要となってきますが、そこまで地域の医療と介護を診ていける医師というのは限られていますし、その範囲と言うのは到底充足しておりません。しっかり医療の基盤を固めるためにまず何をしなければならないのか。もっと視野を地域へ在宅へ向けていかなければなりません。








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