2014年9月23日火曜日

9月末で在宅強化型から4割が撤退 長崎県保険医協会が緊急アンケート

 2014年度診療報酬改定で、強化型在宅療養支援診療所・病院(以下:強化型支援診等)の施設基準において、緊急往診および看取りの実績要件の引き上げが行われました。
 連携型では、これまでは連携体制ごとにクリアしていればよかった実績が個々の医療機関にも求められ、過去1年間に緊急往診4件、看取り2件が実績要件となりました。ただし、9月末までの経過措置が設けられ、9月30日までの6カ月間に緊急往診2件、看取り1件の実績があれば、2015年3月31日まで基準を満たしているものとして取り扱われます。 しかし、経過措置期限の9月末までに緊急往診及び看取りの件数を満たせなければ強化型の施設基準を取り下げなければなりません。 長崎県保険医協会では強化型支援診等の現状を把握する緊急アンケートを実施しました。その中で多くの強化型支援診等が基準を満たせず、強化型から撤退を余儀なくされる実態が明らかになりました。






調査は8月26日から29日までの期間で、長崎県内で強化型支援診等の届出を行っている93医療機関に対して行いました。FAXで調査票を送付し、47医療機関(病院5、有床診療所15、無床診療所27)から回答が寄せられました(回答率:51%)。単独型は2医療機関で、45医療機関が連携型の強化型支援診等の届出でした。
 9月末までに緊急往診および看取りの実績を満たせない医療機関は、回答の40%に当たる19医療機関に及びました。満たせない基準の内訳は、緊急往診の件数が1医療機関、看取りの件数が11医療機関、緊急往診と看取りの両方が7医療機関で、看取り要件を満たせないことが施設基準をクリアできない主因となっていることが明らかとなりました。強化型支援診等の役割はターミナルの患者に限定されているわけではなく、在宅死は一定の頻度で発生するものではありません。

 9月末の経過措置をクリアしても、2015年3月末までに次のハードルが待っています。10月以降は過去1年間に緊急往診4件、看取り2件の実績が要件となります。9月末に施設基準を「すでに満たしている」「満たせる見込み」と回答した28医療機関のうち、17医療機関が継続して施設基準を満たすのは「かなり難しい」「少し難しい」と回答しています。9月末までに施設基準を満たせない(見込みも含む)11医療機関と合わせると38医療機関となり、回答の81%に達っします。
 この傾向は病院・有床診の強化型支援診等ではさらに顕著となります。当初は在宅死を望んでいても、患者の死期が近付くと家族が入院を希望するケースは多いのです。長年在宅医療を行っている有床診療所の院長はアンケートの自由意見の中で、「有床診の場合、終末期は入院させることを希望され、年間看取りは10件以上あっても入院での看取りになり、在宅で看取ったのは30年間に5件以内である」と述べています。ターミナルケアを行っていても、最後は入院させて看取れば、強化型支援診等の施設基準としての看取りとしてはカウントされません。
9月末までに緊急往診及び看取りの実績を満たせない病院・有床診は、回答の55%に当たる11医療機関でした。残りの9医療機関のうち、施設基準を継続して満たすことは「難しくない」と回答したのは僅か2医療機関のみでした。

連携型の強化型支援診等では、連携医療機関の中の1医療機関でも施設基準をクリアできなければ、全体が施設基準を満たさなくなります。連携型45医療機関のうち、連携先医療機関が施設基準を「すべて満たしている」は10医療機関で、「一部満たしていない」が32医療機関でした。強化型を維持するためには、施設基準を満たさない医療機関を切り離さないとなりません。連携の要となる病院・有床診が施設基準を満たさず、連携グループから離脱すれば、今後の運営に大きな支障が生じます。
 施設基準を満たさなくなった場合の対応としては、「強化型以外の支援診の届出をだす」「強化型をクリアした時点で再届出をする」が多かったのですが、「往診・訪問診療で対応する」も4医療機関ありました。
 施設基準を満たさず強化型を取り下げた医療機関が連携のグループから離脱するか、あるいは強化型以外の支援診として低い点数でグループに残るかは個々の医療機関で判断の分かれる所です。しかし、いずれの選択をしたとしても不合理であることに変わりありません。
 アンケートの自由意見では、看取りの件数を施設基準の実績要件とすることに対する異論、反対の声が多く寄せられていました。「人を死なせないといけなくして、誘引を設定しているものに従うのは自分の倫理観にあいません」は多くの在宅医の実感であると思います。20年近く在宅医療に関ってきた看護師の、「亡くなる方を、家族を支えていきたいのに看取りのカウントを意識しながらでは、「早く死んでくれ」と願っているようで悲しいです」は切実な現場の声であります。
 今回の緊急アンケートは9月末に4割の医療機関が強化型から撤退し、10月以降を含めると8割の医療機関が強化型から撤退する可能性を示しています。厳しすぎる実績要件の引き上げと言えます。


地域包括ケアシステムの構築において、訪問看護の存在ばかりクローズアップされていますが、診療所の役割はとても重要なものです。いかに在宅で療養を続けていけるかは、主治医の機能を担う診療所の医師にかかるところが非常に大きいです。ただ、今回の診療報酬改定では、強化型在宅療養支援診療所の要件が厳しくなっております。全国的に見ても多くの診療所において強化型から離脱することが予想されています。ただ、在宅医療に対する熱意を失わずに、地域の医療を守り続けて頂きたいものです。







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