2015年2月10日火曜日

介護報酬改定 での賃金改正は実現できるか

4月からの新たな介護報酬が2月6日に決まりました。訪問介護など在宅サービスに手厚く配分しつつ、特別養護老人ホーム(特養)などの施設向けは大幅に引き下げになります。政府は平均単価を2・27%減額する一方で、人手不足が深刻な介護職員の賃金増を目指すとしていますが、減収が予想される事業者にとって賃上げ実現は難題であると感じます。






 東京都内で特養を運営する社会福祉法人の幹部は、 「パートや非正規ばかりで、長く勤められる正規職員を確保できない」と嘆いています。業務の負担が重いことなどを理由に退職者が相次ぎ、数年前に比べ職員が約30人減っています。日常業務の中心をパートに頼らざるを得ないという現状です。 2014年12月時点で、介護関係職種の有効求人倍率は全国平均で2・68倍でした。売り手市場の上、低賃金と重労働のイメージから人材確保が非常に難しい状況です。法人幹部は「同業者間で優秀な人材の奪い合いも起きている」と話しています。 夜勤に急な欠員が出れば、正規職員が休日返上で出勤しています。重くなるばかりの負担に、うつ病を患う職員も出てきている職場もあります。職員の負担を減らそうと悩んだ末、退所者が出てベッドが空いても、新規入所の受け入れ手続きの一時停止を検討しているところもあります。 空きベッドがあるのに、職員が足りないため受け入れが困難です。特養の待機者は全国で約52万人に上るが、こんな矛盾した事態が起きています。
  今回の報酬改定で厚生労働省は、職員1人当たり月1万2千円の賃金増となる「処遇改善加算」の拡充を目玉に掲げました。 加算による収入が事業者の運営資金などに回っては、職員の賃上げに結びつきません。そこで厚生労働省は、賃上げの計画や実績の報告を事業者に義務付けました。加算を獲得するには、(1)賃金体系の整備(2)研修の実施(3)正規職員への転換などに取り組む、の条件を課し、処遇改善を確実なものにしたいと考えています。 だが、利用者減少などで収入が落ち込んだ場合は、職員給与を下げて加算報酬で穴埋めすることも例外的に容認しています。この場合は賃金増が望めないが、厚生労働省幹部は「条件を厳格化し過ぎると、そもそも加算を受けない事業所も出てくる」と説明しています。 処遇改善加算で実際に賃上げは実現するのか。懐疑的な見方も多い状況です。2月6日の社会保障審議会の分科会では、委員から「賃金アップは極めて不確かだ」との指摘が相次ぎました。国会論戦でも、民主党の山井和則衆院議員が「収入が減る事業者が、どうやって賃金を上げられるのか。机上の空論だ」と批判しました。
  兵庫県伊丹市で特養を運営し、訪問介護も手がける社会福祉法人の理事長は、在宅サービス重視の改定をにらみ、訪問介護の業務量を増やすことも模索しています。しかし「介護に不慣れな新人職員は目が届く施設の方が教育しやすい。経験が問われる在宅は人材確保のハードルがより高い」と頭を抱えています。 都内の福祉系コンサルタントは「小規模事業者は淘汰(とうた)される可能性もある」と指摘しています。「事業者にとっては厳しい『いばらの道』だが、給与増を実現しなければ人材は集まらない。改定で厚労省の誘導するサービス内容に合わせなければ生き残れないだろう」と話しています。 埼玉県八潮市の自宅で要介護度5の母(91)を介護する関正子(せき・まさこ)さん(63)は「事業者の経営が立ちゆかなくなって、私自身が介護を受ける頃には近所から撤退してしまうのでは」と心配しています。

今回の介護報酬の改定は、介護職員の処遇改善加算を最大のアメとして掲げられています。しかしその最大のアメは本当のアメとなるのかどうか、懐疑的です。それでも社会保障費の抑制は政府の大きな課題でもあり、厚生労働省も財務省からかなり責められているのは事実です。ただ、それでも本当に介護の現場にまで目を向けて頂かなければ、すべてが絵に描いた餅となってしまうと思いますが、はたしてどうなるのでしょうか。








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