2015年4月1日水曜日

横倉会長 挨拶

団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向け、今後ますます重要になるのは「健康寿命の延伸」に向けた取り組みです。健康寿命を延伸させていく上では、すべての国民に“かかりつけ医"を持ってもらうことが必要と考えています。地域のかかりつけ医が豊富な知識と経験をもとに、高齢者に対して栄養、運動、療養上の指導などを一体的に提供することが、健康寿命を延伸することになるのは間違いありません。






かかりつけ医の役割の重要性が、広く国民に浸透していく中で、多くの国民がかかりつけ医を持つようになれば、かかりつけ医機能を中心に据えた地域医療提供体制の確立を果たせるものと確信しています。そのためには、かかりつけ医の活動を支援すべく必要な研修を用意し、地域の医療、介護に係る情報を把握、提供できる体制整備が必要です。折しも2015年4月から、地域の実情に応じて過不足ない医療提供体制を適切に構築するための「地域医療構想」が原則として2次医療圏ごとに策定されます。これらは、いずれも各地域の医師会が主導して、その役割を担うことが期待されているので、日本医師会としては各地域医師会の取り組みを全力で支援していく中で、かかりつけ医機能の充実、強化に努めていきたい。こうした取り組みをより実効あるものにするためにも、会員組織率の向上等による医師会組織の強化が急務です。医師会が真にわが国の医師を代表する団体として、医療界のみならず、対外的にも認められ続けていくためには、これ以上の組織率の低下は防がなければなりません。「日本医師会綱領」の理念の下、大同団結を呼び掛け続けていくとともに、全ての世代、性別、就労形態にコミットした、魅力ある医師会づくりが不可欠で、会内に設置した「医師会組織強化検討委員会」で鋭意議論しています。

医師会組織は二重構造であるため、オールジャバンの強い医師会を目指すには、都道府県医師会、郡市区等医師会の協力が欠かせません。都道府県医師会員で日医に未加入の方が1万6000人、郡市区等医師会員で日医に未加入の方が2万7000人おり、まずはこうした方々に何らかの形で参加いただければ組織強化に向けた大きな一歩になります。2015年10月には医療事故調査制度の運用が開始され、年末に向けて2016年度診療報酬改定と2017年4月の消費税率引き上げに関する議論が本格的に開始されるなど、重要な案件が数多く予定されています。こうした軍要案件に対し、医師会としての主張を貫くためにも、より多くの医師会員の力強い後押しが不可欠です。消費税率の引き上げは2017年4月に延期となりましたが、このほど会内に「医療機関等の消費税問題に関する検討会」を新たに立ち上げ、財務省主税局、厚生労働省保険局、医政局の担当官とともに三師会、四病院団体協議会の税制担当役員をメンバーに迎えました。2015年度税制改正大綱では、医療に係る消費税等の税制の在り方について「個々の診療報酬項目に含まれる仕入税額相当分を“見える化"することなどにより実態の正確な把握を行う」と記されました。この「見える化」に向けた取り組みを検討会で進め、年末に決定予定の2016年度税制改正大綱をにらみながら、控除対象外消費税問題の抜本的解決を図っていきます。わが国と地方の長期債務が1000兆円を超 える中、将来的には労働人口の減少も見込まれています。加えて、高齢化の進展に伴い、医療や介護等を中心に社会保障費のさらなる増加が予想され、国家財政上の大きな課題になっています。2015年度介護報酬改定率は、政府の2016年度予算編成で、全体でマイナス2.27%と非常に厳しい内容になりました。今後も財政を健全化しようとする立場から、規制改革や成長戦略の名の下に、社会保障費の削減を図り、公的医療保険給付の範囲を狭めるような圧力は続いていくものと思われます。ただ、医療と介護は、高い雇用誘発効果を持つため、地域の雇用を下支えしているほか、医学分野での技術革新は経済成長にも寄与しており、社会保障と経済は相互作用の関係にあります。本来、社会の病を癒やすべき経済学が、社会保障に間違った原理を持ち込み、格差社会という病を拡大させることのないよう、注意が必要です。今こそ、この国の医療政策を、医師の専門家集団たるわれわれが主導していく中で、社会の安定に寄与し、国民の将来の安心を約束していかなければな りません。その決意と覚悟を持って、国民のためを思いながら、2015年度の会務運営に臨んでいくべきです。








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