2015年1月19日月曜日

介護福祉士取得の留学生の就労について

 外国人介護人材の受け入れについて議論する厚生労働省の検討会が1月8日、東京都内で開かれました。日本国内の養成施設を卒業し、介護福祉士の国家資格を取得した外国人留学生が、国内で働き続けられるよう制度を見直すための検討が行われました。EPA(経済連携協定)の枠組みでは認められていない介護福祉士の訪問系サービスでの就労について、委員からは、地域包括ケアシステムを構築する必要性から、実務経験や日本語能力といった一定の条件を付けた上で、将来的には就労を認めるべきという声が多く上がりました。






 現在、「高度に専門的な職業」に就く外国人は日本で働くことが認められています。具体的には医師や看護師などがこれに当たりますが、介護福祉士は含まれておらず、田中博一委員(日本介護福祉士養成施設協会副会長)によると、養成施設を卒業して資格を取得しても帰国してしまう留学生が少なくないといいます。
 こうした実情から、2014年6月に閣議決定された「日本再興戦略」では、日本の養成施設を卒業し、介護福祉士などの国家資格を取得した外国人留学生について、「引き続き国内で活躍できるよう、在留資格の拡充を含め、就労を認めること等について年内を目途に制度設計等を行う」とされていました。厚生労働省は当初、2014年末までに議論を取りまとめる予定でしたが、衆議院選挙の影響などで遅れが生じているため、厚生労働省は早期に次回会合を開いて取りまとめ案を示します。
 今回の在留資格拡充の対象者の範囲について厚生労働省は、「介護福祉士の国家資格取得を目的として養成施設に留学し、介護福祉士資格を取得した者を想定する」との対応案を示し、これについて委員から反対意見は出ませんでした。
 また、EPAの枠組みで働く外国人については、在留の状況を適切に管理する必要性などから、介護福祉士取得後も訪問系サービスには従事できないとされています。厚生労働省はこれを踏まえ、介護福祉士資格を取得した留学生が、利用者と1対1でサービスを提供することが想定される訪問介護など訪問系サービスで働くことについて、外国人労働者の人権を守る観点などからどのように考えるべきか、委員らに議論を促しました。
 石橋真二委員(日本介護福祉士会長)は、「実務経験や日本語レベルなどある程度の条件の下であれば、将来的に訪問介護を認めてもいいのでは」と発言されました。白井孝子委員(学校法人滋慶学園東京福祉専門学校ケアワーク学部教務主任)も、「卒業後すぐに在宅サービスに就くのは難しいだろうが、経験を積む中では在宅も視野に入れられるよう(就労を認める範囲の)幅を持たせるのがいい」と述べられ、他の委員からも同様の声が上がりました。
 一方で、熊谷和正委員(全国老人福祉施設協議会副会長)からは、「これまでの諸外国の例を見ると、訪問系は1対1なので介護する側への人権侵害もあると聞いている」とし、慎重な議論を求めました。

 技能実習制度を通じた外国人介護人材の受け入れについても議論されました。これまで同検討会で4回にわたり話し合ってきたが、この日は検討課題として残っていた「適切な実習実施機関の対象範囲」などについて検討しました。
 厚生労働省は、技能実習制度の対象職種に介護分野を追加する場合、適切な実施機関の対象範囲として、「『介護』の業務が行われていることが制度上想定される範囲に限定すべき」とし、具体的には、介護福祉士の国家試験の受験資格要件を満たすための実務経験として認められている施設などとする案を提示しました。この中には特別養護老人ホームや介護老人保健施設、病院、診療所などが含まれており、さらにその中でも、経営が一定程度安定しているところに限定すべきとしました。
 これについて多くの委員が賛成したが、訪問系サービスについては、実習実施機関の対象外とすべきという意見が数多く上がりました。「外国人実習生が訪問介護に行った場合、利用者は不安を抱くだろうし、本人もうまく実習ができないということが考えられる」と石橋委員が述べたほか、白井委員も、「訪問系ではいろいろな利用者がいるため何が起きるか分からないし、他の人が手を差し伸べてあげられない状況では、実習生の人権を守るために避けた方がいいのでは」と述べられました。
 厚生労働省はこのほか、介護人材を確保するため、外国の看護師資格取得者が日本の介護分野で働けるようにすべきかどうかも論点として提示しました。しかし、平川則男委員(連合総合政策局生活福祉局長)は、これまでの同検討会では、いかに介護の質を担保するかを前提に議論してきたにもかかわらず、「日本語能力について何ら検討もされておらず、単に外国で看護師資格を取得したことをもって日本の介護分野で働けるようにするのは相当乱暴な議論だ」と述べられました。他の委員からも、外国人介護人材の受け入れについては、まず技能実習生や留学生の国内就労の議論を深めるべきとの声がありました。

2025年を見据えて、介護職員を大幅に増やさなければならないことは必須です。しかし少子高齢化の中で、それだけの人員を確保することはとても難しいでしょう。そこで目を向けたのが外国人労働者。もちろん、有資格者に限ると言えど、なかなか判断が難しいところです。それは、日本が島国という文化でこれまで歩んできたからであり、我々日本人に刷り込まれた思想はなかなか変えられないでしょう。しかし、医療と介護の体制だけでなく、我々国民一人ひとりの考えも変えていかなければ、ならない時に差し迫っているのだと痛感いたしました。








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