2014年12月27日土曜日

在宅医療 信念は永遠 がんと闘う愛知県の医師  閉院

 愛知県東海市で、在宅医療に長く取り組んできた内科伊藤医院が12月27日をもって閉院します。院長の伊藤光保さん(63)が終末期の膵臓(すいぞう)がんで、診療を続けられなくなったためです。迫り来る死を静かに受け止め、患者に迷惑をかけないように万全の引き継ぎをする伊藤さんの姿が、感銘を呼んでいます。





 11月中旬、伊藤さんは最後の往診に回りました。行く先々で正座し、「長い間ありがとうございました。勉強させていただきました。こちらが先に弱ってしまってすみません」と丁重なあいさつをしました。
 車いすの女性(72)は、涙を流して伊藤さんの手を握り締めました。往診して7年になる寝たきりの女性(98)はベッドの上に座り直し、深々と頭を下げました。脊椎損傷の寝たきりの男性(75)は「頼りにしていたから本当にショック。今後も雑談に来てほしい」と話しておりました。
 伊藤院長は父が開業していた医院を1991年に継ぐと、すぐに在宅部門を新設しました。人工呼吸器を付けた在宅の重度障害者、精神疾患の患者など、在宅診療医の多くが敬遠するケースもすべて受けてきました。24時間態勢で深夜の呼び出しにも駆け付けました。伊藤院長がまだ公立病院に勤務していたころ、「在宅医療を充実させないと救急医療が破綻する」と感じていたからです。ホームレスの医療支援、在宅診療所の全国組織の世話人など、社会活動にも熱心に取り組んできておりました。
 膵臓がんが分かったのは3月でした。手術を受けましたが、既に転移していました。「今まで2千人の死亡診断書を書いたし、親友を3人、がんで亡くしていたから淡々と受け止めました。ただ、患者さんに迷惑をかけないようにしようと…」。隣接する愛知県大府市で今月開業した「いきいき在宅クリニック」の中島一光院長(55)を11月まで副院長に迎え、患者の引き継ぎも丹念にしました。
 外来診療は21日まで続けました。かかりつけの患者450人に希望を聞き、他の医療機関への紹介状を書く作業に追われました。
 がんが転移した左肩から左腕にかけて痛みが激しく、1週間ほど前からは「横になると痛くて眠れないので、いすにもたれて寝ていました」。主治医からは痛み止めに強い医療用麻薬を使うよう指示されましたが、診療中に判断が鈍るのを恐れ、最小限しか使いませんでした。
  仲間たちが企画する感謝の会や囲む会で、伊藤院長は「人と人のつながりが十分に生かされる社会、地域」という言葉をしばしば口にされます。社会の格差が広がる中、医療・福祉制度の矛盾、ひずみを埋めていくのは「熱意ある人と人の連携」との信念は揺るがないものです。

全国には伊藤院長に限らず、自らの身を削って地域の診療にあたって下さっている医師が多く存在していると思います。ただ高齢化社会が進む中ではその絶対数はまだまだ少なく、かかりつけ医として地域の医療を網羅できるレベルまではまだまだ道半ばの状況です。しかし、本当に国が掲げるような地域包括ケアシステムが構築されるには、総合診療医である開業医の存在が非常に大きくあります。しかし、一人医院では限界があります。そのあたりをいかに改善していくか、意欲的な医師に負荷をかけ続ける時代は終わりにしたいものです。








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