2014年8月3日日曜日

「現時点」と「6年後」の各病棟機能を毎年報告

厚生労働省は7月24日に、「病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会」を開催しました。この日は議論の整理を行っており、病床機能情報報告制度の大枠が固まりました。

 社会保障・税一体改革の中では、病院・病床の機能を分化し、効率的な医療提供体制を再構築する方向が示されました。そこで、医療介護総合確保推進法では「病院が、各病棟の機能を自ら選択して都道府県に報告し、都道府県が病棟機能の状況や人口動態等をベースに『地域医療構想(地域医療ビジョン)』を策定する」との仕組みを打出しています。

 検討会では、法律成立以前から「病床機能報告制度」の詳細について議論を重ね、この日、制度の枠組みを固めるに至りました。
 まず、全病院・全有床診療所は、毎年、各病棟の機能を都道府県に報告することになります。 報告するのは、「毎年7月1日時点の病棟機能(現時点の病棟機能)」と、「今後の病棟機能の方向性(6年後の病棟機能)」です。
 後者の「今後の病棟機能の方向性」については、「平成37年(2025年)時点の病棟機能」と「6年後の病棟機能の予定」のいずれとすべきかで委員の意見は分かれていましたが、「地域医療構想実現のための協議を行う際、各医療機関の意向等について共通の認識をもつための情報を収集する」という目的に照らして、「6年後の病棟機能」について報告を求めることで決着しました。 もっとも「平成37年(2025年)時点の病棟機能の予定」も、任意での報告が認められています。この結果、病棟機能については、当面、次のように報告することになります。

●平成26年10月に、「平成26年7月1日時点の病棟機能」と「平成32年の病棟機能予定(それ以前に変更予定がある場合には、その情報も報告する)」を必ず報告する。平成37年の病棟機能の予定については、任意で報告することができる。
●平成27年(報告期限は未定)に、「平成27年7月1日時点の病棟機能」と「平成33年の病棟機能予定」を必ず報告する。平成37年の病棟機能予定についても任意で報告することができる。
●平成28年(報告期限は未定)に、「平成28年7月1日時点の病棟機能」と「平成34年の病棟機能予定」を必ず報告する。平成37年の病棟機能予定についても任意で報告することができる。

 今後、報告制度を稼動する中で、「今後の方向」の時点(6年後の予定でよいのか?)などを必要に応じて見直していくこととなります。


 医療機関が報告する病棟機能は、(1)高度急性期(2)急性期(3)回復期(4)慢性期―の4つになります。各病棟がいずれの機能を持つかを病院自らが選択し、都道府県に報告することになります。
 なお、4つの機能の内容は現時点では「定性的」に規定されており、今後、報告制度を稼動させるなかでデータを集積し、「定量的」な基準を模索していくことになります。
 ところで、(1)の高度急性期の内容は「急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、診療密度が特に高い医療を提供する機能」と定義され、(2)の急性期の内容は「急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能」と定義されているように、(1)と(2)の線引きがわかりにくいのが現状です。
 そこで厚労省は、この日の会合に「高度急性期機能に該当すると考えられる病棟の例」として、(i)特定機能病院において、急性期の患者に対して診療密度が特に高い医療を提供する病棟(ii)救命救急病棟、集中治療室、ハイケアユニット、新生児集中治療室、新生児治療回復室、小児集中治療室、総合周産期集中治療室であって、急性期の患者に対して診療密度が特に高い医療を提供する病棟―を示しました。
 しかし委員からは「高度急性期を限定するものと誤解されるのではないか」との指摘が相次ぎ、修正されることとなっています。
 ちなみに、上記例の意図は「特定機能病院やICUを持つ病院であっても、すべての病棟が高度急性期となるわけではありません。逆に、たとえばDPCのIII群病院であっても、診療密度が特に高い医療を行う病棟は高度急性期と認められる」という点にあると考えられます。







 医療機関が報告するのは「病棟の機能」だけではありません。どのような人員・構造を有しているのか、どのような医療を行っているのかも、医療機関から都道府県に報告することになっています。
 まず『構造設備・人員配置等』については、毎年7月1日時点の許可病床数、主とする診療科、保有するCTやMRI・PET、看取り状況などを医療機関または病棟単位で報告します。
 また『医療内容』については、全身麻酔下手術の実施件数、がん手術件数、救急患者への対応状況、退院調整の実施状況、リハビリの実施状況、難病患者の受入れ実績、在宅医療の状況などを報告します。
 もっとも医療機関の負担を考慮し、レセプトの情報やNDB(ナショナルデータベース)の枠組みを活用されます。
 たとえば、救急患者への対応状況については、【救急搬送診療料】や【院内トリアージ実施料】【救急医療管理加算】【救急搬送患者地域連携紹介加算】などの算定状況を、レセプトを活用して都道府県自らが把握します。つまり、多くの情報については医療機関が改めて集計し報告する必要はありません。
 当面は、毎年7月診療分のレセプトを対象に集計しますが、今後、複数月あるいは通年のデータを収集するか否かについて改めて検討されることになっています。
 なお、次期診療報酬改定に合わせて、レセプトに病棟コードを入力する欄を設ける予定であり、医療内容については、次期改定までは医療機関単位で、次期改定以後は病棟単位で報告することになります。


 病床機能報告制度は、今年(平成26年)10月から運用が開始される(医療機関が実際に報告を行う)ため、厚労省は8月にも関係の政省令や通知を整備する考えです。
 厚労省医政局総務課の担当者は、医療機関向けの「病棟機能報告マニュアル」のようなものを作成する考えも示しています。
 ちなみに冒頭に述べた「地域医療構想(地域医療ビジョン)」を策定するにあたり、厚労省はガイドラインを作成します。このガイドライン作成に向けた検討会が9月にも発足し、平成26年内にガイドラインを固める模様です。


病床機能情報報告制度の大枠が固まり、各病院においては取り急ぎ10月の報告に向けて事前準備を始めていくことになります。具体的には厚生労働省が作成する「病棟機能報告マニュアル」が通達されてから本格的になっていくかと思いますが、ただ重要なのは、現時点の報告だけでは無く、6年後の病棟機能が含まれていることです。これは厚生労働省としてもとても良い施策だと感じます。今がどうかということも重要ですが、しっかり先をみて取り組んでいこうという各病院の計画やビジョンを尊重しているということです。ただ実際には各都道府県がまとめる地域医療ビジョンによって、方向性がそぐわなければ叶わないモノとなってしまうかもしれませんが、これからの病院経営は経営力が問われるようになってくることは間違いないと感じるところです。








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