2014年8月8日金曜日

社会福祉法人が私的整理  宇治病院

経営不振に陥った社会福祉法人を民間企業のノウハウを活用して再生する動きが出てきました。宇治病院(社会福祉法人宇治病院)は社会福祉法人として初めて私的整理手続きに入ることとなりました。京都銀行が債権を放棄し、東証1部上場のノーリツ鋼機グループが再生を支援することとなります。事業を続けながら再生できる私的整理を選び、患者や老人ホーム入居者などへの支障を回避することを目指します。

 政府系ファンドの地域経済活性化支援機構が私的整理と金融支援を仲介します。再生の体制が整い次第、和歌山市に本社を置く精密機器メーカーのノーリツ鋼機グループによる支援も発表する見込みです。
 社会福祉法人は高齢者や障害者を受け入れる福祉施設や保育所などを運営する非営利の法人です。法人税は課されず、国や地方からの補助も受けることができますので、一般企業からすればうらやましい限りだと思います。
 社会福祉法人を取り巻く事業環境は、企業の参入を促した2000年の介護保険法施行と介護報酬の引き下げなど収支悪化につながった2006年の同法改正で激変しました。
 一般企業も含めた老人ホームや在宅介護サービスなどを展開する「老人福祉事業者」の倒産件数は2013年に2000年以降で最多となる46件を記録しました。税制優遇や補助金を受けていても、経営戦略のまずさで経営不振に陥る社会福祉法人が今後も増えるとみられています。





 宇治病院の私的整理は、民間企業のノウハウを生かした社会福祉法人再生のモデルケースとなる公算が大きいです。
 宇治病院は病院のほか、200人程度の利用者を抱える介護事業も兼営しています。3、4年前から経営上の混乱で医師の大量離職が相次ぎ、大幅な減収に陥り、赤字に転落していました。特別養護老人ホームも運営しており、破綻すれば事業を継続できず、入居者が退去を迫られるなど混乱が生じる恐れが強まっていました。
 私的整理で事業存続を目指すのは、宇治市が病床不足で、福祉施設も全国平均と比べ少ない地域だからです。病院以外の介護事業は黒字で、地元自治体も事業の継続を望んでおります。
 京都銀行は宇治病院向けの債権を放棄し、残る債権も劣後ローンに振り替えます。金融支援額は公表しない方向です。宇治病院は保有する不動産の含み損を抱えており、実質債務超過状態にあるとみられ、債務を免除しなければ、再生できないと判断したもようです。
 宇治病院は経営陣を刷新し、新たな体制の下で再生を目指します。社会福祉法人は非営利法人で、企業支援のように出資したり買収したりしてスポンサーになることはできません。しかし、経営改善には民間企業の経営ノウハウや事業運営の手法を取り入れる必要があります。
 政府が出資する地域支援機構も幹部を派遣したり官民共同支援の姿を作ったりして、事実上、ノーリツ鋼機グループが再生を請け負う形になります。
 実際に再生作業を請け負うのは、ノーリツ鋼機のグループ会社で医療機関・福祉事業者向けのコンサルティングや債権の買い取りを手がけるエヌエスパートナーズ(東京・港)になります。人材の派遣も検討しています。ノーリツ鋼機は医療関連機器も製造するメーカーで、医療関連企業の買収を繰り返しています。今回の支援は経営ノウハウを取得する狙いがあるとみられています。
 社会福祉法人を巡っては、厚生労働省も社会福祉法改正を目指し、ガバナンス(統治)強化に着手しており、宇治病院の再生は制度見直し議論にも影響を与えそうです。
 厚生労働省は7月4日、「社会福祉法人制度のあり方について」と題した報告書を発表しました。組織改革や財務面の強化策を盛り込んだ社会福祉法の改正案を作る作業に入っています。

病院を営んでいた社会福祉法人が破たんするなんて、介護施設の経営は黒字を維持していたとのことですが、いかに病院経営が簡単ではないかということを露呈しております。宇治病院は253床でうち48床が療養病棟です。宇治市は病床不足で、福祉施設も全国平均と比べ少ない地域とのことですが、山城北医療圏には宇治徳州会病院(400床)や第二岡本総合病院(419床)・宇治武田病院(177床)などもあります。病院経営は何と言っても医師の確保が大きく影響を及ぼします。その問題を民間企業が入ってどのように再建してけるのか、注目です。








ブログランキング参加中です
応援お願いします


にほんブログ村 病気ブログ 医療情報へ


0 件のコメント:

コメントを投稿