高橋副所長と島田千穂、中里和弘両研究員らの研究グループは、患者にこれまでの人生を振り返ってもらい、患者自身やその家族らに満足してもらえる医療の提供につなげるために、ライフデザインノートを作成しました。このライフデザインノートの普及方法などについて研究するため、板橋区医師会の会員の協力を得て通院患者114人から、終末期医療やライフデザインノートの有用感などに関する回答を得ました。
この研究に参加した患者の半数以上が75歳以上で、女性が全体の75%を占めました。48.2%が「介護経験がある」、39.6%が「配偶者を看取った経験がある」と回答しました。終末期に受けたい医療やケアについては、42.1%が家族や友人に「話したことがある」と回答しましたが、医師と話した患者は9%にとどまりました。
一方、終末期医療の希望を医師らが尊重してくれるかどうかについては、「きちんと尊重してくれる」と「ある程度尊重してくれる」を合わせた回答は、全体の9割近くを占めました。
実際にライフデザインノートに記入した患者は半数程度だったことから、高橋副所長は「死について考えることや、家族に思いを伝達することは容易でなく、記録を躊躇させた可能性が示唆されました」と指摘されました。「単に記入様式の提示にとどまらず、直接的にかかわり、促す仕組みが不可欠」とし、終末期医療に対する患者の理解を深めるには、医師や看護師などの協力が必要との考えを示しました。
高齢化社会が進み、また地域包括ケアシステムの構築と病床機能の分化により、在宅での医療介護と看取りへのシフトを厚生労働省は方針を打ち立てています。そこで重要なのが、いかに患者や家族の意思を尊重して医療を行っていくのかということです。もちろんその医療提供の環境についても、病院なのか介護施設なのか在宅なのか、納得のいく理解が必要となります。そのためには、やはり早い段階から医師と話し合うことが大切になってきます。医師が自分の思いを伝える相手として二の足を踏むのならMSWなどが病院には配置されています。自分が望む終末期について、いかに巻き込んでいくか、これからの課題ではないでしょうか。
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