2014年7月22日火曜日

7千万円の科学研究費不正、慈恵会医大の元講師



東京慈恵会医大(東京都港区)の松藤千弥学長らは7月18日、学内で記者会見を開き、総合健診・予防医学センターに所属していた元講師が2004年度以降、文部科学省の科学研究費19課題分、計7029万円を不正受給していたと発表しました。元講師は研究計画調書に、学内のほかの研究者名を無断で使用したり、事実と異なる研究業績を記載したりして、科学研究費を申請しておりました。採択されて得た科学研究費を、別の研究課題にも使用したといいます。東京慈恵会医大は、6月26日付で、元講師を懲戒解雇にしました。

 元講師は、助手だった2004年、同様の方法で科学研究費を不正受給して東京慈恵会医大からけん責処分を受け、2005年度から5年間、文部科学省から科学研究費の受給資格停止の措置を受けていました。今回の不正のほとんどは、この間に起きたものでした。松藤学長は7月18日の会見で、「元講師は以前にも科学研究費の不正によって処分を受けており、同様の不正が繰り返されていた事態の重大さを、大学として深刻に受け止めている」として、陳謝しました。






 東京慈恵会医大では2013年12月、元講師が不正をしている可能性があるとのうわさが医局内で広まりました。これをきっかけに、12月28日に学内調査委員会を立ち上げ、2004年度から2013年度に科学研究費の申請と交付を受けた研究代表者や、2013年度に申請した全研究課題の代表者などに、聞き取りやアンケートによる調査を実施しました。会見に同席した同委員会の岡部正隆委員長は、元講師が不正受給した理由について、「(元講師は聞き取り調査に対し)『自分の研究費がたくさん必要だった。研究計画を書くのが好きで、やりたい研究やアイデアがたくさんあった』と話していた」ことを明らかにしました。

 元講師は、科学研究費を申請した32課題について、学内のほかの研究者の名前を、研究計画の研究代表者欄に無断で記載しておりました。このうち採択された18課題と、自身の名前で申請して採択された1課題の計19課題について、研究業績欄に科学誌への掲載が決まっていない投稿中の論文を記載するなどの不適切な行為で、研究業績を水増ししていました。岡部委員長によると、名前を利用された研究者らは科学研究費に関心が薄かったため、元講師に依頼され、科学研究費の電子申請に必要なID・パスワードを貸与してしまったといいます。

 東京慈恵会医大は元講師を懲戒解雇したほか、元講師を含む研究グループを統括している教授を減給、ID・パスワードを貸与して結果的に不正受給をほう助した別の講師ら7人をけん責の処分にしました。また、ID・パスワードを貸与したものの採択されなかった教授ら5人と、研究費の管理を行う職員2人を厳重注意にしました。

 また、東京慈恵会医大は、今回の不正の背景に、違法な申請を発見する仕組みがなかったことと、公的資金を使うという意識が研究者に不足していたことを挙げ、再発防止策として、研究コンプライアンス教育に特化した学内組織を設置するほか、外部有識者を長とする研究不正の警告・調査・告発などを担う組織を立ち上げることとしました。これら2つの新組織は、学長の直轄になります。

 東京慈恵会医大は、不正受給した科学研究費の返還も視野に、週明けにも、同委員会の調査報告書を同省と日本学術振興会に提出する予定です。

不正受給はいま少しホットな話題かもしれませんが、おそらく多くのところで起きていることであると誰もが感じていると思います。返還したら良いというだけの問題でもありませんし、それらに対するチェック機能がなかったということが組織としての脆弱さを露呈してしまったということになります。しかし研究には莫大な資金が必要なモノも多くあります。未来の発展のためには先行投資も必要ですし、日本の医療はまだまだ発展していきますし、成長戦略の一つとしてこれからさらに注目度も増していきます。ただ文部科学省は今回の件で、科学研究費を減額するなどの見直しはせずに、本当に必要なところへ資金を注入できる先見性をもち続けて頂きたいと願います。





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