2014年7月5日土曜日

日本専門医機構

 様々な学会が独自に認定してきたため、質のばらつきや乱立が指摘されていた「専門医」を、統一して認定する「日本専門医機構」が5月に発足しました。しかし、本当に患者目線でわかりやすく整理されるか、幅広い分野を診る総合診療医の育成が超高齢社会の需要に追いつくか――など課題は多い状況です。


 従来の専門医は各学会が独自基準で自由に認定しており、その種類は100を超えるとも言われています。「糖尿病」「肝臓病」「レーザー」「温泉療法」……。多くは各学会のホームページで名簿を見られますが、名乗る専門領域は臓器、病気、治療器具別など様々です。例えば、認知症に対し認知症専門医と日本老年精神医学会専門医がいるように、同じ病気を診る専門医が複数存在し、違いがわかりにくい例もあります。また、各専門医の認定基準の厳しさもバラバラで「必ずしも質(技量)が担保されているとは言えない」との指摘もありました。

 このため、厚生労働省の有識者検討会で議論の末、昨春、第三者機関で統一して認定する方針が決まりました。これに従い、日本医学会や日本医師会などが合意し発足したのが「日本専門医機構」です。

 新たな仕組みは、外科、内科、産婦人科など19の基本領域と、さらに部位別などに細分化した領域の2段階構造に整理します。複数の病気を抱える高齢者の急増を見込み、「総合診療医」を基本領域の一角に位置づけたのが特徴です。2017年度の新研修開始に向け、専門領域の整理、治療実績に基づく各領域の認定基準や研修プログラムなどを検討中です。改善へ一歩踏み出しましたが、実は課題も多いのが現状です。






 例えば、専門医領域の区分が、本当に患者にわかりやすく整理されるか。

 新機構の描く青写真では、「外科」の基本領域から枝分かれする細分化領域は「消化器外科」「心臓血管外科」などと分類される予定です。だが、「消化器外科」は、胃、食道、大腸から、肝臓、胆のう、膵臓すいぞうまで扱う範囲が幅広く、実際には「胃・食道外科」「肝胆膵外科」など、より細分化している病院も多いです。膵臓がん患者団体パンキャンジャパンの真島喜幸理事長は「消化器外科程度の分類では、患者が望む専門医情報とは言えない」と語ります。

 新設される「総合診療医」の養成も大きな課題です。まず幅広い領域の研修プログラムを全く新たに作らねばならず、試行錯誤の部分が大きいです。多数の病気を抱える高齢者の診療を想定した分野ですが、何人養成するかなどの数値目標もない状況です。

 そもそも、地域ごとに何の専門医が何人必要か、十分に議論されていません。厚労省検討会では、医師側委員から「専門医の質の確保が第一義」などの意見が多く、報告書では、医師の偏在是正に関する記述があいまいになりました。検討会委員だった「地域医療を育てる会」の藤本晴枝理事長は「地域や人数を考えない専門医は、超高齢社会のニーズに対応する仕組みとは言えない」と厳しく指摘します。

 これに対し、新機構の池田康夫理事長は「専門医研修を行う病院の認定に、一定の基準を設けることで、野放図な育成や偏在の是正にもつなげられる」と語ります。国の補助を受けて作る専門医データベースができ、全国の状況が見えれば、偏在是正の動きが出るかもしれません。ただ、これが機能する時期も不透明です。

 これまでの議論は医師主体で進んできた。新機構は今後、外部委員会を設け、「患者側の意見を聞く」としているが、自らの分野の存在感を示したい各学会の意向は根強いです。せっかくの改革が医療界内部の調整に終始し、「患者・国民目線で役立つ専門医」という理念が骨抜きになってはいけません。新機構には、患者・国民側の意見をよく聞く努力が求められています。








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