2014年7月15日火曜日

小規模多機能型居宅介護について

平成25年12月の厚生労働省 社会保障審議会 介護保険部会での意見をまとめると、平成25年8月現在、小規模多機能型居宅介護の利用者は約75,000人ですが、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、在宅生活の限界点を高めるため、今後もサービスの更なる普及促進を図っていく必要があります。

登録された利用者に対して「通い」を中心に「訪問」や「泊り」を提供するサービスとしての役割を担ってきましたが、実態は「訪問」の提供量が少なく、「通い」に偏ったサービスとなっている事業所が多い状況です。

重度の要介護者、単身や夫婦のみの高齢者世帯、認知症の高齢者が増加していくことを踏まえると、「訪問」を強化する必要性が高く、更に今後は、地域包括ケアシステムを担う中核的なサービス拠点の一つとして、地域に対する役割の拡大が求められています。







具体的には、事業者の参入を促すとともに、地域住民に対する支援を柔軟に行うことが可能になるよう、小規模多機能型居宅介護事業所の役割を見直す必要があります。①これまでのように「通い」を中心としたサービス提供に加え、在宅での生活全般を支援していく観点から、「訪問」の機能を強化する方策 ②登録された利用者だけでなく、地域住民に対する支援を積極的に行うことができるよう、従事者の兼務要件の緩和等③看護職員の効率的な活用の観点から、人員配置について、他事業所との連携等の方策④事業所に配置されている介護支援専門員による要介護認定申請の手続が進むよう周知徹底⑤基準該当短期入所生活介護事業所(指定短期入所生活介護の人員基準等の要件の一部を満たしていない事業所)が併設できる事業所等への小規模多機能型居宅介護事業所の追加と、専用の居室が必要とされている設備基準の緩和。


利用者の概況として (平成25年度老人保健健康増進等事業「運営推進会議等を活用した小規模多機能型居宅介護の質の向上に関する調査研究事業」より)
平均要介護度は2.56です。認知症高齢者の日常生活自立度は、「Ⅱ」以上の者が78.5%です。要介護度・日常生活自立度ともに、開設年度に比例して、重度者の比重が高まる傾向にあります。利用経路は、「居宅介護支援事業所」(39.5%)及び「地域包括支援センター」(16.1%)に過半数を占める。また、「病院」(14.0%)からが増加傾向にあります。利用者の世帯構成は、高齢者のみ世帯(「独居(近居家族なし)」+「独居(近居家族あり)」が増加傾向にあり、一方で「子供世帯と同居」が減少傾向にあります。利用タイプ別にみると、「通い+訪問」は増加傾向にあり、一方で「通い+泊まり」は減少傾向にあります。

事業所の概況として (平成24年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成25年度調査)より)
全体の15.8%の事業所は同一建物内にサ高住等を併設しています。1事業所あたりの職員数は、平均11.2人(常勤換算数)で併設施設がある事業所は職員数も若干多い傾向です。1事業所当たりの平均受給者数は18.4人で平成22年の18.2人からほぼ横ばい状態で推移しています。開設年度別にみると、開設3年目以降(2011年以前に開設)は利用登録者数、1日あたり利用者数とも横ばいであるが、開設初年度(2013年度)は厳しい状況がみられます。1日あたりの訪問回数は、「1回~2回」が最も多く、「4回未満」が約半数である状況からも「訪問」が少ない実態が鮮明です。「登録定員」「通い定員」は、基準で定める上限数に設定している事業所が約8割を占めており、「登録者数/定員」(=充足率)は、「70~80%以下」(20.5%)で最多であり、平均は75.5%です。

地域展開の状況として (平成25年度老人保健健康増進等事業「運営推進会議等を活用した小規模多機能型居宅介護の質の向上に関する調査研究事業」より)
小規模多機能型居宅介護の本来業務以外の事業(地域交流拠点など)について、同一敷地内又は同一市町村において実施している事業所は32.9%でその他の事業内容は、配食(11.1%)や障害者支援サービス(9.7%)が多い状況です。事業所と地域とのかかわりについては、サ高住等と併設している事業所と併設なしの事業所では、全体の傾向はほぼ同様であるが、「町内会、自治会の会員となり、会の役割を担っている」と「地域住民向けに介護相談や介護研修などを行っている」の項目において、併設なしの事業所の方が実施割合がやや高い状況です。関わりのある支援者について、戸建ての利用者では「隣近所」が28.6%でサ高住等の9.7%に比べて高く、また、戸建て・集合住宅では「民生委員」が約1割の状況でした。

運営推進会議の状況として (平成25年度老人保健健康増進等事業「運営推進会議等を活用した小規模多機能型居宅介護の質の向上に関する調査研究事業」より)
運営推進会議の開催状況としてサービス・制度内容の説明、利用状況等の報告が96.9%と一番高く、「事業所のサービス評価に関すること」について開催されたのは58.1%で登録者のケース以外の地域課題に対する取組について開催されたのは25.8%に過ぎませんでした。

看取りの状況として (平成25年度老人保健健康増進等事業「運営推進会議等を活用した小規模多機能型居宅介護の質の向上に関する調査研究事業」より)
安定期から死亡まで通じて事業所が関わったケースは29.3%であり、安定期から一定の時期(終末期、臨死期の前)まで事業所が関わったケースを含めると73.5%でありました。ただ全て又はほとんどの職員に看取りの知識があるとする事業所は36.7%にすぎない状況です。

医療職のあり方として (平成24年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成25年度調査)より)
一日の業務時間に占める、看護職員が実施する必要性区分別の割合についてみると、小規模多機能型居宅介護では一日の業務時間の60%以上が「看護職員による判断や実施が求められる業務(バイタル確認、看護記録等) 」を行っている割合は約4割でした。小規模多機能型居宅介護では「看護職員による介入の必要性はないが、結果的に看護職員が実施した業務」にかかる時間が40%を超えていたのは2割強でした。また、各行為における必要性区分別に見ると、小規模多機能型居宅介護では、「居室・リビングでの見守り」「食事」「排泄ケア」「集団レクリエーション」などで「看護職員による介入の必要性はない」業務が多くなっている状況です。

医療ニーズの状況について (平成24年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成25年度調査)より)
利用者が有する傷病は、認知症(59.7%)が一番多く、次いで高血圧が(42.4%)、脳卒中が(22.7%)となっています。また利用者の医療ニーズとしましては、服薬管理(56.7%)リハビリ(6.8%)摘便(4.2%)と服薬管理が非常に高い状況です。

集合住宅におけるサービス提供状況として (平成24年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成25年度調査)より)
利用者1人あたり、平均的なサービス提供回数は、1カ月(平成25年11月)で、通いは平均は17.0回、訪問は10.5回、宿泊は7.3回でした。住居が有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、旧高齢者専用賃貸住宅では、「訪問」の提供回数52.0回・36.5回・50.2回と多く、「宿泊」の提供回数は1.0回・0.8回・0.8回と少なく、戸建とは大きく異なる傾向がみられました。戸建(訪問回数:6.3回、宿泊回数:7.7回)送迎実施は、戸建ての利用者では84.3%にのぼったが、サ高住等では43.6%と低い状況でご自身で通われてくる方が半数以上です。調査期間の1週間における「通い」の有無は、いずれも80%以上の実施率でした。同じく1週間における「訪問」は、戸建ての利用者では35.2%の実施率だが、サ高住等では85.3%と大きく差がみられました。一方、宿泊については、サ高住等の利用者は5.1%と実施率が低い状況でした。調査期間の1週間におけるサービスの提供時間は、戸建ての利用者で3,674分(61.2時間)、サ高住等で2,330分(38.8時間)で大きく差がついています。サービス別に見ますと、通いは戸建て:2,016分、サ高住等:1461分、訪問は戸建て:110分、サ高住:623分、宿泊は戸建て:1549分、サ高住:246分とそれぞれの生活環境により提供しているサービスのニーズも異なっていると見られます。

今後、在宅において、重度の要介護者、認知症高齢者が増加が見込まれ、従来の「通い」を中心としたサービス提供に加え、在宅での生活全般を支援していく観点から、「訪問」の機能を強化する方策をどうするか、例えば25名の登録定員の弾力化であったり、人員配置の見直し等が課題と挙げられます。もちろんその先には在宅での看取りをどのように進めていくのかという体制づくりも挙げられます。また、医療ニーズに対応できるように複合型サービスへの転換も進んでいかなければ、地域包括ケアシステムを担う中核的なサービス拠点として担っていくことは厳しくなっていくでしょう。







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