2014年7月16日水曜日

区分支給限度基準額 ケアマネジメント 社会保障審議会 介護給付費分科会

厚生労働省は6月25日に、社会保障審議会の「介護給付費分科会」を開催しました。この日も平成27年度の介護報酬改定に向けた議論を行いました。テーマは、(1)区分支給限度基準額(2)ケアマネジメントの2点です。

 介護サービスの中には、生活支援など「あれば便利」なものが多く、利用に歯止めがかかりにくい状況です。また、同じ要介護度であっても利用者の心身状況はさまざまであります。
 こうしたことを受け、介護保険制度では、居宅の利用者が1ヵ月に利用できる公的介護サービスの上限額が要介護度別に定められています。
 ちなみに、上限額を超えるサービスを利用者が欲する場合には、「上限額までは介護保険を利用し、超過部分は全額自己負担」という混合介護が認められています。

 区分支給限度基準額は、平成26年度の消費増税に伴う介護報酬改定では引上げられましたが、他の改定時には見直されていません。
 しかし、介護報酬(サービスの価格)は見直されており、区分支給限度基準額の中で利用できるサービス量も変化してきています。

 この点、厚生労働省の調査からは、次のような状況が明らかになりました。
(i)受給者1人あたりの平均費用額(実際に利用した額)が限度基準額に占める割合は、要介護5でもっとも高く65.1%ですが、要支援1・2を除き、趨勢的に増加傾向にあります
(ii)限度基準額を超えて利用している人の割合は、要介護5でもっとも多く5.9%ですが、要支援1・2を除き、趨勢的に増加傾向にあります
(iii)新たなサービスである「定期巡回・随時対応」「複合型」「小規模多機能型居宅介護」は包括報酬でありますが、これらの基本サービス費(介護報酬)と限度基準額との差は小さい(新サービスを利用すると、それだけで限度基準額いっぱいになってしまう)
(iii)のうち「定期巡回・随時対応サービス」の状況を少し詳しく見てみますと、「定期巡回・随時対応の利用者は、福祉用具貸与、通所介護の利用が多いですが、要介護4・5の通所介護利用は、平均的なサービス利用よりも少ない」「定期巡回・随時対応と福祉用具貸与、通所介護を組み合わせると、要介護2~5では合算額が限度基準額を超過してしまう」ことなどがわかります。

 また「複合型サービス」については、福祉用具貸与を併用する利用者が多いですが、「複合型と福祉用具貸与を組み合わせると、要介護2~4では合算額が限度基準額上限にほぼ相当する」状況であります。

 さらに、「小規模多機能型居宅介護」では、福祉用具貸与や医療系サービス(訪問看護や居宅療養管理指導)を組み合わせると、合算額が要介護2~4では限度基準額を超過する状況にあります。

 こうした点を踏まえ、今後、区分支給限度基準額を見直すべきか否かなどを議論していくことになります。
 この点、厚労省老健局の迫井老人保健課長は「定期巡回・随時対応などについて、財源確保を前提として、独自の限度基準額設定はありうるか」「限度基準額に含まれない加算(P6参照)を拡大していくことで、限度基準額の引上げと同じ効果があるが、これをどう考えるか」という2つの視点に立った議論も要望しています。

 これらについて、阿部委員(日本経団連常務理事)や本多委員(健保連理事)は、「定期巡回・随時対応サービス等の普及は重要な課題ですが、ケアマネジメントの質の向上や、サービスの周知徹底が不十分ではないかとまず感じています。独自の限度基準額設定がサービスの普及につながるかは疑問である」と述べられています。
 また小林委員(全国健康保険協会理事長)は、「独自の限度基準額設定や加算の活用を議論するにあたって、財政影響に関する資料を提示してほしい」と要望しています。

 一方、内田委員(日本介護福祉士会副会長)は、「限度基準額を超過している人については、まずケアプランの見直しが必要であります。また限度基準額引上げよりも、加算の活用といった手法が好ましいのではないでしょうか」との見解を述べられています。

 また村上委員(老施協副会長)は、「限度基準額は、標準的なサービス提供内容をベースに設定されています。最新の『要介護者の状態像』『標準的なサービス提供内容』を勘案して、限度基準額の見直しを検討すべきではないでしょうか」と提案しています。

 さらに武久委員(日本慢性期医療協会会長)からは、「複合型や定期巡回・随時対応の理念は素晴らしいものであり、広めるべきです。しかし、単位数から判断すると複合型は人件費も出ないシステムだと思います。サービスが普及しないのは、報酬体系などにも問題があると思います。単純に限度基準額を引き上げたり、独自設定をすることには慎重であるべきではないでしょうか」との意見が寄せられました。







 (2)のケアマネジメントは『介護保険制度の要』ともいえる仕組みですが、「利用者の言いなりになっている」「経営母体のサービスに偏っている」「ケアプランの水準にばらつきがある」などの指摘もあります。
 そのため、厚生労働省は平成27年度改定に向けて次のような点を議論してはどうかと提案しています。
●公正・中立性を確保するために、特定事業所集中減算や、独立型と併設型(グループの傘下にある事業所を含む)のあり方をどう考えるべきか
●ケアマネジメントの質の向上を目指した評価(特定事業所加算など)をどう考えるべきか
●ケアプランに「退院直後のリハビリ」など、保健・医療・福祉サービスの一体的提供に必要なものが十分に組込まれていない点を踏まえ、自立支援に資するケアマネジメントの実践や、多職種連携の強化、地域ケア会議、在宅医療介護連携推進事業の活用をどう推進するべきか
●ケアマネジメントの適正化を進めるため、「福祉用具貸与のみのケアマネジメント」「同一建物居住者へのケアマネジメント」をどう考えるか
●新たな地域支援事業の導入・実施に伴い、介護予防給付の利用者が総合事業(地域支援事業の1つ)を利用するようになるが、そうした点への対応をどう考えるか

 この点、鷲見委員(日本介護支援専門員協会会長)からは、「ケアマネジメントは専門職である介護支援専門員が行うべきであります」「居宅介護支援事業所の約9割が併設事業所であることを踏まえたうえで、公正中立を保てる仕組みを構築する必要があります」といった意見が提出されました。

 一方、齊藤秀樹委員(全国老人クラブ連合会常務理事)は、「ケアマネには公正中立が求められますが、圧倒的に併設事業所が多い状況です。1人事業所の開設に賛成するものではありませんが、独立型に誘導していく施策が重要であると考えられます。おざなりなプランを排除するために、第三者機関によるプラン点検の仕組みも検討していくべきではないでしょうか」とのコメントを寄せています。

 また、齋藤訓子委員(日看協常任理事)は、「多職種連携を目指しているが、すべての市町村できちんと体制ができるまでにはタイムラグがあります。とくに医療ニーズの高い利用者に対応するために、医師との連携が重要だが、連携がとりづらいというのも実態です。さまざまな職種が協力して連携を支援する仕組みが必要ではないでしょうか」と提案しています。


これから地域包括ケアを構築していくにあたり居宅介護は重要な役割を担っていくことは間違いありません。国の方針としては、複合型サービスや定期巡回・随時対応サービスの推進に意識が傾いておりますが、普及しないのには普及しないなりの理由があるはずです。その大元となる要因をしっかりと把握しなければ、小手先だけでの改善ではおそらく不可能でしょう。看護師も介護福祉士も利用者のお住まいに入り込んで、日々頑張っておられます。ただその現場と方針にズレが生じているのではないでしょうか。居宅での生活における不自由さ不便さを解消し少しでも快適に過ごせるように、介護サービスを利用されているわけで、確かに言い出せば切りがありません。その中で、限度基準額があるわけですが、しかし定期巡回・随時対応サービスや複合型サービスを利用しつつ、福祉用具貸与を組み合わせると上限を超過する制度自体に問題があるのではないでしょうか。区分変更もサービスの利用量が増加してきて上限に達した、また自己負担額が膨張してきたなどの状況に対して、介護度を見直して枠を広げようという動きをとっているのが現状です。多く使いたいから介護度を見直す。しかし包括契約のサービスなら利用者にとっては介護区分を見直す必要性はないのです。このあたりから歪みが生じてきているのではないでしょうか。今後、包括契約が浸透してくることは予想されます。そうなるとケアプランはどうなっていくのでしょうか。ケアマネに求められるニーズとはどのように変貌していくんでしょうか。理想の社会保障ならび地域包括ケアの実現には、問題が山積みです。






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