2014年7月19日土曜日

救急搬送の実態 救急出動件数と救急搬送人員からみた課題

救急搬送は、出動件数・搬送人員とも増加し続け、2013年には出動件数が5,915,956件、搬送人員が5,342,427人と過去最多を記録しています。救急出動件数が増加した527の消防本部によると、その要因として「高齢者の傷病者の増加」(75.1%)、「急病の傷病者の増加」(73.4%)、「一般負傷の増加」(42.4%)、「転院搬送の増加」(41.4%)などがあげられています。
一方で、救急搬送人員の約半数は軽症と中等症であり、診療の結果として帰宅可能で、一部には不要不急の救急要請もあることなど、利用する側のモラルが求められる側面もあります。
2014年2月にまとめられた「救急医療体制等のあり方に関する検討会」報告書では、地域における救急医療確保に向けた対応や、救急医療機関のあり方などについての検討結果が提示されています。ひっ迫する救急医療に対し、医療機関が行なうべき支援について考える必要性が高まっています。






救急医療については、昭和38年から救急搬送業務が法制化され、昭和39年には救急病院・救急診療所の告示制度が始まりました。昭和52年から初期・二次・三次救急医療機関の整備が行なわれるようになり、平成3年には救急救命士制度が創設され、救急搬送体制の充実が図られました。
平成12年には、病院前救護における医療の質を確保するため、メディカルコントロール体制を各地で整備することが求められることとなり、平成21年には消防法改正により、各都道府県で傷病者の搬送・受入れの実施基準を定め、実施基準に関する協議等を行なうための協議会が設置されました。
この間、救急搬送人員数は平成13~23年の10年間で3割以上増加し、その後も過去最多を記録し続けています。救急搬送人員の約半数は軽症・中等症で帰宅可能と診断される患者であり、一部には不要不急の救急要請もあります。このような利用については、国民がより適切に救急医療を受けるべきだという指摘もあります。病院前医療では、メディカルコントロール体制の整備が進められていきましたが、救急救命士による特定行為の実施件数増大等に伴い、メディカルコントロールに従事する医師は通常業務における診療に加え、特定行為の指示や検証作業を行なうため、総じて負担が増大しています。
このような最近の救急医療を取り巻く状況を踏まえ、2014年2月にまとめられたのが「救急医療体制等のあり方に関する検討会」報告書になります。報告書では、救急医療体制や取り組みに関する現状と課題として、①メディカルコントロール体制、②高齢者搬送の増加、③小児救急電話相談事業、④院内トリアージ、⑤救命救急センター、⑥高度救命救急センター、⑦二次救急医療機関、⑧初期救急医療機関、⑨ドクターヘリ、⑩高次医療機関からの転院搬送、⑪小児救急医療における救急医療機関との連携、⑫母体救命に関する救急医療機関との連携、⑬精神疾患を有する患者の受入れおよび対応後の精神科との連携体制の構築、の13分野について述べているほか、今後検討すべき事項と方向性を示しています。

メディカルコントロール協議会が各都道府県に設置されているものの、活動内容に地域差があることから、行政機関・消防機関・医療機関・医師会等関係団体が連携し、増大する救急活動の事後検証や搬送困難事例への対応等、求められる役割を果たすことが重要になります。
高齢の救急搬送患者は、増加の一途であり大きな課題となっています。高齢者は複数の疾病を罹患している可能性が高く、病歴の把握の時間を要すること等の理由から、救急隊による医療機関の紹介回数の増加や現場滞在時間の延長につながりやすい状況となっています。このため救急度の高い患者を迅速・適切に搬送する体制を維持するためには、高齢者の増加に対応した病院前医療体制の改革が求められます。急変リスクが高い高齢者や基礎疾患を有する患者にあっては、普段よりかかりつけ医が中心となって緊急時に適切に医療が受けられるよう準備しておくことが重要であります。
院内トリアージは、医療機関において救急外来や組成室に展開させる人的資源について、患者の緊急度・重症度に応じて合理的な人員の動員・配置を期するために行なわれています。今後院内トリアージの効果をさらにあげるために、事後検証等を行なうことで、トリアージの標準化を含め、質を保証するべきです。救急医療の質の評価に繋げるために、救急搬送時に消防によって得られた救急度判定等のデータと、院内でのトリアージや転帰のデータとを連結させるシステムの構築も求められます。
今後さらなる救急需要の増加が見込まれる中、救急医療体制の確保・充実は、地域住民の安心と安全にとって重要な課題であります。逼迫する救急医療に対し、メディカルコントロール協議会への積極的な参加、地域住民の救急医療への理解を深める支援など、期待される要件は多くあります。






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