2014年7月18日金曜日

介護保険の変革   地域医療・介護総合確保推進法より

 全国で約300万人が利用する介護保険が大きく変わることになります。先の国会で成立した「地域医療・介護総合確保推進法」には、2015年8月から65歳以上の自己負担割合を2割に引き上げ、段階的に介護サービスの一部を市町村に委ねる内容が盛り込まれました。
 介護保険制度が始まった当時に比べ、認定者数は2.4倍に増えています。介護を家族任せにせず、社会全体で支え合う趣旨からすれば定着した結果とも言えますが、その分歪みも出てきています。





 団塊の世代が75歳以上になる2025年を展望した場合、現在9兆円の費用が20兆円に達する見通しです。介護保険制度を永続させるためには、自己負担の増加もやむを得ない措置になります。
 ただし自己負担が2割になるのは一定の所得以上の層です。厚生労働省は年金収入が年280万円以上の人を想定しています。この負担割合の引き上げは介護保険創設以来初となります。一方、年金が少ない層に対して保険料の軽減を2段階から3段階へ増やします。そのことで軽減割合も大きくなり、負担能力に応じたバランスを狙っています。
年金収入が同じでも資産や持ち家があるかどうかで、高齢者の生活実態は大きく異なります。資産状況も考慮するなど、公平さを確保した線引きが必要です。

 市町村の事業に移行するのは、介護の必要度が低い要支援1、2の人向けの訪問・通所介護事業です。市町村ごとにサービス内容や利用料を決め、介護事業者以外のボランティアやNPOにも委託できるようにしました。
 国会審議では全国一律のサービスが崩れ、地域格差が出ると批判が出て論議になりました。しかし、与党の安定多数の中、財政力の格差をどう埋めるかなどについて不透明さを残したままです。
 ボランティアの活用についても簡単ではありません。ごみ出しなどの生活支援は成り立っても、要支援の利用者は認知症の人も多いと見られています。専門知識がなければ、症状の悪化に気づかない恐れもあり、最近ニュースでよく聞くところの認知症の徘徊問題などにもつながりかねません。
 特別養護老人ホームに新たに入所する条件も厳しくなります。原則要介護3以上とし、要支援1、2の場合は「認知症で常時見守りが欠かせない」などの特殊事情を認められたケースに限られます。
 利用料が安価で希望者が多く、施設数が不足しているための対策です。全国で約52万人が入所待ちの状態にあり、そのうち3分の2を要介護3以上の人が占めています。
 ただ、これらの方針は利用者の選択肢を狭めることにもなります。介護保険の基本には多様な医療・福祉サービスの中から自分らしい生き方を選ぶ「利用者本位」の理念があります。制度の根幹に関わる変更ではないかと考えさせられます。


 地域医療・介護総合確保推進法にはもちろん医療制度の見直しも含まれています。リハビリに重きを置いた病院を増やし、スムーズに自宅や施設へ移ることを目指そうとしています。地域包括ケアの構築に向けた様々な方策が立て続けに出されています。
いかに地域で連携して医療と介護の両面から在宅療養の高齢者を診ていくのか。そして看取りまで行なっていくのか。まだまだ2025年に向けて介護保険は改定を繰り返して理想のカタチを目指していくのでしょう。






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