2014年7月22日火曜日

混合診療の行方   日本医師会

岩盤規制の象徴だった「混合診療」が拡大します。政府は6月の成長戦略で、保険外の先端医療を地域の病院でも受けられる制度を作ることを決めました。日本医師会は当初は安全面に問題があるとして猛反発していましたが、容認に転じました。


 混合診療は公的な保険診療と保険がきかない自由診療を組み合わせる制度になります。現在は保険がきく部分まで全額自己負担になってしまう問題があります。例外として安全性や有効性が確認できた先進医療に限って保険が使える規定もあります。
 政府の規制改革会議が当初めざしたのは混合診療の全面解禁でした。同会議が3月に提案した「選択療養」は患者と医師が合意すれば混合診療を認める制度でした。これが事実上の「全面解禁案」となったのです。
 4月に記者会見した日本医師会の横倉義武会長は「安全性や有効性が疑わしい治療が横行しかねない」と反発しておりました。規制改革会議が想定した範囲内の反応でしたが、本音は別とみていました。混合診療が拡大すると、保険診療が縮小する可能性があります。保険がきくことで患者を集めている診療所は収入が減る恐れがあるのです。








 ところが難病の患者団体や医療費を支払う健康保険組合の団体もこぞって反対しました。反対派からすれば「終わった話」(自民党厚労族幹部)のはずだったのですが、改革の目玉を作りたい規制改革会議は粘りました。「現行制度を変えることを検討してほしい」と述べた安倍晋三首相の後押しもありました。
 例外規定では一定数の症例を集めた研究目的でないと認められません。選択療養は患者の希望で治療法や未承認薬の申請ができる点で、医師会とは相いれないのです。同会議はやむなく全面解禁をあきらめ、医師会や厚生労働省との妥協を探りました。譲れない一線は「患者本位」というキーワードでした。
 6月末に会長任期が迫っていた横倉氏は、安倍首相との近さが売りでした。過去には医師会が断固反対していた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉入りでも政権と折り合いをつけた実績があります。横倉氏は、安倍首相がオバマ米大統領と会談した直後に「医療の皆保険は守れることになった」と、携帯電話に報告を受けました。この首相の確約を反対論者の説得材料にしました。今回も首相の確約が決定打になるとみました。
 「はじめから政権と敵対することはあり得ない」とする横倉氏でした。いずれは医療費に切り込まざるを得ない時が来ます。反対論ばかりで政策決定の場から閉め出されるより、関与した方がよほど医師会の利益になります。医師会幹部は混合診療の全面解禁に歯止めをかけるべく働きかけを強めました。
 できあがった案は「患者申し出療養制度」と名前を変えました。患者本位という規制改革会議のメンツをたてる一方、国が専門家の意見を踏まえて決める仕組みを作ることにして全面解禁は避けました。

横倉氏は「安倍首相が(対象になった治療は)保険を適用するとはっきり言ったので医師会がめざす方向と同じになりました」と賛成に転じた理由を説明しました。
 6月29日開いた日本医師会の代議員会において、前日に無投票で会長に再選された横倉氏は、混合診療への対応をめぐり、舞台裏を知らない地方の医師会から厳しい言葉で詰め寄られました。横倉氏は「政府はさまざまな提案を出してきていますが、声高に反対するだけでは通らない」と理解を求めました。
 彼らにとって真の正念場は、新制度に肉付けする中央社会保険医療協議会や社会保障審議会・医療保険部会です。6月末の中医協では医師会出身の委員が「法改正は必要ないのではないか」と、現行制度の改善で対処するように求めました。法改正しなければ新制度は実現しません。地域の医療機関で実施する案も「大学病院だけで地域の診療所は入らない」とけん制しました。
 

混合診療の行方としては、「患者申し出療養制度」という名称で、拡大していきます。そのことによる医療機関への影響度は良くも悪くもまだ図ることが難しく、どこも既得権を失いたくないので、反対派が多くを占めます。ただ本当に「患者本位」という目線で見て、「患者申し出療養制度」は良い制度となるのでしょうか。どうしても特別な治療をするなら自己負担でするように、自己負担出来る患者は申し出て下さい、と言っているように聞こえてしまうのは私だけでしょうか。また、今後それらの治療が本当に保険対象の治療として認められていくのかが大きな問題点だと感じます。私個人的には、「患者申し出療養制度」を導入するより、保険対象の治療の拡大に努めた策の方が、「患者本位」の政策ではないかと感じるところです。






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