2014年7月10日木曜日

赤字病院が半数以上 全国自治体病院

全国自治体病院協議会(全自病)は7月9日、地方公営企業法が適用される自治体病院のうち、2013年度の経常損益が赤字になる病院数が、過半数を占める見通しだとする調査結果を発表しました。赤字病院が過半数を占めれば、赤字病院数が黒字病院数を3年ぶりに上回った2012年度に続き2年連続になります。

 調査には、地方公営企業法が適用される会員病院のうち466病院が回答しました。2013年度末時点の決算見込額などを調べたところ、経常損益が赤字なのは247病院(53%)で、黒字の219病院(47%)を上回っております。

 総務省によると、地方公営企業法が適用される全病院の中で、経常損益が赤字の病院の割合は、2009年度が59.9%、2010年度が47.7%、2011年度が48.1%でした。2012年度は51.6%でしたので2010年度から悪化が継続している状況となっております。


 全国自治体病院協議会の調査に答えた466病院のうち235病院(50.4%)は、2012年度の決算額は黒字でした。このうち179病院は2013年度の決算見込額も黒字ですが、56病院は赤字に転落の見通しとなっております。一方、赤字だった231病院のうち、40病院は2013年度に黒字になる見通しであると、全体的に厳しい状況下にありますが改善している病院も存在しています。

 全国自治体病院協議会の担当者は、調査対象となった466病院の中に2012年度に黒字だった病院が多く含まれることから、「2013年度の赤字病院の割合は、2012年度以上に増える可能性があります」と見通しています。

赤字病院の割合を病床区分別にみると、100~199床が最も高く65.7%(前年度60.8%)。次いで200~299床59.6%(59.6%)、20~99床55.0%(55.0%)、300~399床51.5%(50.0%)、400~499床50.0%(34.8%)の順で、500床以上は27.9%(21.3%)でした。病床規模が大きいほど赤字病院は少ないものの、前年比でみると病床規模の大きい病院でも赤字病院の数が拡大傾向にあることがうかがえる現状です。

また開設者別の赤字病院の割合は、市立病院で57.7%(53.1%)、町村立病院56.8%(54.3%)、組合立病院55.9%(47.5%)、指定都市立病院38.9%(33.3%)、都道府県立病院38.2%(39.5%)と続いています。







 また調査によると、2013年度の100床当たりの経常損益は、262万円の赤字でした。医業収益は18億6640万円で、2012年度と比べ2112万円増加しております。このうち、入院収益は12億2430万円(2012年度比690万円増)、外来収益は5億3361万円(2012年度比1040万円増)。医業外収益は2億2760万円(2012年度比228万円減)となっております。

 これに対し医業費用は、3770万円増の19億9803万円となっております。その内訳は、職員給与費が10億2547万円(2012年度比1121万円増)、材料費が4億6125万円(2012年度比1191万円増)、委託費が1億6903万円(2012年度比749万円増)、光熱水費が3906万円(2012年度比457万円増)など。医業外費用は9859万円で、232万円減少しました。

 一病院当たりの昨年度の一日平均患者数は、入院が192.4人、外来が472.2人で、それぞれ3.3人と6.9人減少しました。病床利用率は1.3ポイント減の75.5%となっております。患者一人一日当たりの診療収入は、入院が4万5198円(2012年度比1031円増)、外来が1万1977円(2012年度比398円増)でした。


 全国自治体病院協議会は、2012年度までに地方独立行政法人へ移行した会員病院についても調査しました。回答した36病院のうち、2013年度決算見込額の経常損益が黒字なのは25病院(69.4%)でした。2012年度決算が黒字だったのは36病院中29病院でしたので、4病院が赤字に転じたかたちとなりましたが、自治体病院より経営状況は大きく差を開けている状況です。





2011年度の一般病院における経常利益率は運営母体別に見ますと、医療法人:3.8%、自治体:-0.8%、社会保険関係団体:1.9%(全社連:1.1%・厚生団:9.7%・連合会:3.3%)となっており自治体運営における収支状況は厳しいものです。療養型病院における経常利益率では、医療法人:6.7%、自治体:-3.7%と自治体運営の収支の厳しさは顕著です。

公的病院は補助金があるので倒産はありませんが,廃院,撤退は現に行われています。私立病院にも公的病院と同じ様に補助金を出すとしたら,年間6.5兆円が必要ではないかと見られます。私立病院の経営も決して順風満帆で楽というわけではないのです。そのためこの10年間で約8%の私立病院が廃院となっています。

私立病院も公的病院と同じように公的役割を担っているところは多いです。それでも赤字病院が少なく運営できているのは、費用対効果、コスト意識が根付いているからでしょう。それでも医療という分野ですので、他の事業分野の運営に比べればまだまだ見直す余地は多くありますが、自治体病院においてはまず意識改革から行なわなければ改善は困難でしょう。そのための一つが指定管理制度などを用いて外部の民間に運営を託す手段。

地域包括ケアが構築されていけば、おのずと自治体病院の役割も明確化していくことと思われます。厚生労働省が提示した非営利ホールディングカンパニー型法人制度 (仮称)のあり方について、自治体中心型というパターンがまず一番に挙げられています。都道府県や市町村が域内の医療法人らに呼び掛けて設立する形として、地域医療ビジョンにマッチしたカタチで進めていける最善の策とも考えられています。

そのためには、やはり自治体病院の運営基盤の強化が急務であるはずです。







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